転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4369話

「うぐ……まさか、全員でもアクセルに勝てないなんて……」

 

 地面に倒れた三奈が、無念そうに言う。

 そろそろ自主訓練も終わりの時間になるということで、最後の締めくくりとして自主訓練に参加した生徒達全員対俺で模擬戦をやったのだが……うん。

 三奈を始めとして、全員が地面に倒れているか、座り込んでいるのを見れば分かるように、模擬戦は俺の勝利で終わった。

 爆豪や轟といったクラスでもトップクラスの実力を持つ2人が参加していないというのも、この場合は大きいのだろうが。

 後は、緑谷もミッドナイトやヤオモモとの話で何らかのヒントは得たようだったが、そのヒントを聞いてすぐに使える訳ではない以上、結局緑谷は個性を使えない状態のまま、俺との模擬戦に参加する事になってしまった。

 

「……凄いわね。話については聞いていたし、受験の実技試験の映像でも見たけど……」

「ミッドナイト先生にそう言って貰えるのは嬉しいですね」

 

 ミッドナイトの言葉に、俺はそう言葉を返す。

 実際には、言葉で言う程に嬉しがっている訳ではないのだが。

 A組の生徒は、間違いなく素質は非常に高い。

 だが……それはあくまでも素質が高いだけであって、現在の実力となると、まだ高校生になったばかりでしかない。

 中学でもそれなりに自主訓練はしていただろうし、昨日の戦闘訓練でもそれなりに動けていたのだろうが、それでも俺を相手にするには足りない。

 というか、この状況で生徒達に勝ったからといって、俺にとっては別に喜ぶようなことじゃないんだよな。

 それでもミッドナイトから称賛の声を向けられれば、生徒として……そして首席だった者として、一応こういう風に言っておく必要はあった。

 

「……そう」

 

 俺の言葉に何か思う様子を見せつつも、ミッドナイトはそう返してくる。

 俺の件で色々と思うところがあるのは間違いないだろう。

 ただ、それでも実際に何も聞いてこないのは、恐らく公安との関係があるのだろう。

 ……そう考えれば、相澤は一体どう思っているのやら。

 俺に抹消の個性を使っていたりしないよな?

 いや、あるいは抹消の個性を使っても、相澤が個性を使えなくしたかどうか分かるか、分からないかでも色々と状況は違ってくるしな。

 

「取りあえず、もうこれ以上は訓練は出来ないので、今日の訓練はこれで終わりたいと思います」

「そうね。……私から見た限りでも、これ以上立ち上がるのは難しいと思うわ。じゃあ、今日の訓練はここまでという事でいいのよね?」

 

 ミッドナイトの言葉に頷き、こうして今日の自主訓練は終わったのだった。

 

 

 

 

 

「オイラを狙いすぎじゃないか、アクセル?」

 

 更衣室で着替え終わり、帰る途中で峰田が不満そうに言ってくる。

 

「そう言われてもな。峰田は自覚がないみたいだが、お前の個性のモギモギは相当強力なんだぞ?」

 

 そう言うと、嘘だといったように峰田が俺を見てくる。

 峰田は俺の言葉を全く信じてはいないが、それは明らかに過小評価だ。

 峰田の個性を上手く使えば、それこそ今日の模擬戦でも俺を倒す……のは無理でも、動きを封じるくらいは出来たかもしれないと俺は思っている。

 とはいえ、峰田は自分の個性についてそこまで自信がないし、何よりまだクラスメイトになったばかりの者達と連携を取るのは難しい。

 お互いの個性もまだ完全に把握出来ている訳ではないのだし。

 そんな訳で、俺に対する切り札となりえる……それでいながら、個人としては決して強くない峰田を優先的に狙うのは当然だった。

 

「それに、今日勝った俺が言うのもなんだけど……いや、勝った俺だから言えるのか? とにかく峰田は小さくて非力に見えるから、弱い相手から倒そうと思った時の候補だしな」

「ぐっ……」

「あー、分かる。峰田は小さいから、真っ先に狙われやすいよな」

 

 俺の言葉に上鳴が同意するが……

 

「上鳴、お前も個性の使い方に問題があるぞ」

「うぐっ……わ、分かってるよ」

 

 上鳴は今でこそこうして普通に俺とやり取りをしているが、模擬戦の途中でいきなりあほ面になって『ウェイウェイ』言い始めた時は、一体何があったのかと思った。

 予想外の展開に隙を見せてしまい、そこに砂藤と切島が突っ込んで来たのが、今日の模擬戦の中で一番危なかった状況だろうな。

 それでも結局2人の攻撃は回避、カウンターでそれぞれを鎮めたのだが。

 

「いやぁ、あの時は驚いたよね。まさか、アクセルがそこまで隙を見せるとは思わなかったし」

「ケロ。でも、咄嗟に動けなかったのは反省だわ」

 

 耳郎と梅雨ちゃんがそう話しているが……上鳴のいきなりの変貌に驚いたのは、俺だけじゃない筈だ。

 

「お前達の中にも、ウェイってる上鳴を見て動きを止めた奴がいた筈だが?」

「ぷっ、ちょっ、アクセル君……ウェイってるって……」

 

 ウェイってるという表現がツボに入ったのか、葉隠が噴き出す。

 いや、透明なので本当に噴き出したのかどうかは分からないが、今の様子を見る限りだと間違いではないだろう。

 そして葉隠以外にも、どうやらウェイってるというのはツボだった者がいるらしく、噴き出したり、笑いを堪えている者達がいた。

 

「何だよ、俺だって別になりたくなああいう風になってる訳じゃないんだぜ? ウェイってな」

「ぶふっ、か、上鳴……ごめん、止めて……黙って……」

 

 上鳴の言葉に、耳郎が噴き出すのを何とか堪えるようとするものの、上手くいかない。

 それを見た上鳴は、不意に笑みを浮かべて耳郎に近より……

 

「ウェイ、ウェイ、ウェイ」

「ばっ、馬鹿……止めてってば……」

 

 必死になって笑いを堪えようとする耳郎だったが、上鳴の言葉に最終的には決壊してしまう。

 

「あ、あは。あははははは、ウェイって、ウェイって……ぶふっ! だ、駄目……お腹痛い……」

 

 どうやら笑いすぎたらしく、耳郎は腹を押さえて笑い続ける。

 そんな上鳴を、何故か峰田は羨ましそうに見ていた。

 まだ雄英に通い始めて数日だが、峰田と上鳴は半ばコンビのような……相棒のような存在となっている。

 その為、峰田にしてみれば上鳴だけが女の耳郎と仲良くしてるのが羨ましいのだろう。

 ……とはいえ、これについては正直な気持ちだが、峰田も上鳴も女好きというのは同じでも、上鳴は普通にしていれば顔立ちはそれなりに整っている。

 美形やイケメンとまではいかない、7割イケメンくらいと言っても間違いではないだろう。

 もっとも、それなのにウェイっていたり、あるいは峰田と一緒に自分の欲望を表に出しすぎるのもあってか、どうしてもモテるとは言いがたいが。

 峰田の方は……うん。峰田が悪い訳ではないのだろうが、異形系と言ってもいい程に頭身が小さいので、可愛いとは思っても、格好いいとは思われにくいだろう。

 恋人とかは……世の中には色々な趣味や性癖を持つ者がいるので、そういう相手になら上手くいけば峰田も受け入れられるかもしれないが、それはそれでちょっと……いや、かなり難しいのは間違いないんだよな。

 そうして、笑いながら歩いていたのだが……

 

「え? ちょ……何よあれ?」

 

 三奈が、不意に驚きと共にそんな風に言う。

 その言葉に、俺も含めて話しをしながら歩いていた面々がそちらに視線を向けると……

 

「うげ、マジかよ」

 

 上鳴が驚きの声を上げる。

 

「これはまた……」

 

 俺もまた、その光景にはそんな声を上げることしか出来ない。

 何しろ、俺達の視線の先……雄英の正門が、破壊される……というよりは、溶ける? とにかくそんな表現が相応しい状況になっていたのだから。

 

「なるほど、昼休みのマスコミが一体どうやって雄英に入ったのか気になっていたのだが、どうやらこれが原因のようだな!」

 

 飯田が断言する。

 あの昼休みの一件で副委員長になった飯田にしてみれば、複雑な気分なのは間違いないだろう。

 

「これ、マスコミがやったのか? ……こういうのを見ると、マスゴミって言いたくなるアクセルの気持ちが分かるよな」

 

 切島が俺の方を見ながら言う。

 あれ? 切島の前でマスゴミって言ったっけ?

 少しだけそんな疑問を抱いたものの、あるいは誰かから聞いたのかもしれないなと思い直しておく。

 マスゴミの存在が非常に厄介なのは、この様子を見れば明らかだ。

 実際、切島も俺のマスゴミという意見に同意しているし。

 

「君達、まだ学校に残っていたのか。……これから正門を修理するから、早く出るように」

 

 破壊された門を見ながら歩いていると、門の側にいた教師がそう言ってくる。

 ただ……なんというか、随分と愉快な見た目をしているな。

 こんにゃく型というか、長方形型というか。

 俺はこれが誰だか知っている。

 まだ龍子の事務所で居候とをしていた時に、ヒーローについて調べた中で出てきた顔だ。

 セメントス。

 そのヒーローネーム通り、セメントを自由に操る個性を持つプロヒーローにして、雄英の教師だ。

 というか、雄英がこれだけ広かったり、あるいは戦いの場となる訓練上があれだけ大量にあるのは、セメントスがいるお陰でもあるらしい。

 田舎……それもコンクリートとかのない、本当の意味での山奥とかでならその個性は何の役にも立たないが、このような街中では無類の強さを発揮するのがセメントスだ。

 ここにいるのも、自分で言っていたように門を修理する為にやってきたのだろう。

 

「はーい」

 

 葉隠がセメントスの言葉に元気に返事をする。

 そんな葉隠の様子に、セメントスは幾らか雰囲気を和らげ、笑みを浮かべる。

 どうやらセメントスにとって、葉隠の言葉はそれだけ嬉しいものだったらしい。

 いや、それはそれでどうなんだ? と思わないでもなかったが。

 ともあれ、ここで何かを言って小言を言われるのもどうかと思うし、俺達は素直にそのまま校門を出る。

 丁度破壊された門を取り外すところだったらしいので、その邪魔をしたのはどうかと思うが。

 にしても……コンクリートを自由に操る個性か。

 街中だと本当に使い道の大きな個性だな。

 シャドウミラー的にも、あの個性は美味しいと思う。

 そんな風に考えつつ、雄英の敷地内から外に出る。

 

「もしかしたらマスコミがいるかもしれないと思ったのですが、いませんわね」

「ケロ。もしいたとしても、この時間だと既に殆どの生徒達が帰っているから、もういなくなったんじゃないかしら」

「セメントス先生とかもいるし、残っていても……ね」

 

 ヤオモモの言葉に梅雨ちゃんと耳郎がそう返す。

 その言葉通り、既に時間が5時近い。

 4月ということもあってか、既に周囲はかなり薄暗い。

 これから夏に向けて次第に日が落ちるのも遅くなってはいくのだろうが……今はまだ、そこまでではなかった。

 それだけにマスゴミが残っていても、生徒がいないのだからここにいる意味はない。それに夕方や夜のニュースに合わせるように帰ってもおかしくはないし、何よりもし残っていたら、セメントスを含めた雄英の教師が色々と対応するだろう。

 聞いた話によれば、昼休みに雄英の敷地内に入ってきたマスゴミ達は雄英が警察を呼んで引き渡したらしいしな。

 そもそもニュースや新聞のネタにしたいからって、雄英の門を壊してまで敷地内に入ってくるというのは、どう考えてもやりすぎだろう。

 

「それで、どうする? もう暗いし、このまま帰るか……それとも自主練で身体を動かして腹も減ったし、どこかで何か食べていくか?」

「あ、それならちょっと行ってみたい店……穴場の店が駅の近くにあるんだけど、寄っていかないか? お好み焼き屋なんだけど」

 

 瀬呂の言葉に砂藤がそう言う。

 それを聞いた者達の目が輝く。

 どうやら程よく……といよりはかなり腹が減っている今のこの状況において。お好み焼きというのはかなり魅力的だったらしい。

 それは当然ながら俺にとっても同じで、お好み焼きに行くのに反対はしない。

 ただ、当然ながら全員が行けるかと言えばそうでもなく。

 家に帰って家族と食事をしたいというものや、色々と金を使った影響で余裕がなかったり、あるいはそれ以外にも色々な理由があってお好み焼き屋にはいけないという者もおり……

 

「結局残ったのはこの面子か」

 

 既に駅の近くまで来ていたので、帰るという者達と別れて残った者達でお好み焼き屋に行く事にする。

 その面子は、俺と行ってみたいと言った砂藤。それと上鳴、切島、峰田。女はヤオモモと三奈と葉隠と耳郎。

 

「……ヤオモモ、大丈夫なのか?」

 

 いつもヤオモモが帰る時は、家から高級車で迎えに来ていた。

 なのに、こうして俺達と一緒にお好み焼き屋に行っても大丈夫なのかと疑問に感じて尋ねたのだが……

 

「はい、お好み焼きというは初めて食べるので、これもヒーローとしての経験ですわ。もっとも、あまり遅くまではいられないと思いますが」

「初めてお好み焼きを食べるって……ヤオモモ……」

 

 俺とヤオモモの会話を聞いた耳郎が、唖然とした様子でそのように呟いているのが、印象的だった。

 お好み焼きを食べるのがヒーローとしての経験になるのかどうかは俺にも分からない。

 ただ、初めて食べるというのなら、それはそれで悪くないだろうと、そう思うのだった。

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