転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1716 / 2196
4370話

 お好み焼きと言っても、大まかには2種類ある。

 広島のお好み焼きと、大阪のお好み焼きだな。

 俺にしてみれば、お好み焼きと言えば大阪風のもので、広島の奴は広島焼きと呼ぶのだが……広島県に住む者の中にはそれが許容出来ない者も多いらしい。

 なので、広島焼きという名称を使うのには注意が必要だ。

 幸い、この場には広島出身の者はいなかったので、砂藤が行きたいというお好み焼き屋が大阪風の奴だからといって、それをお好み焼きと呼ぶのに怒るような者はいなかった。

 

「いかにも学生とかが通いそうな店だな」

 

 店の中を見回し、そう呟く。

 もし雄英で……というか、このヒロアカ世界に運動部とかがまだ残っていたりしたら、そういう運動部がこの店を行きつけにしていてもおかしくはない。

 そんな……アットホームと言えばいいのか? とにかくそんな感じの店だった。

 そして実際、何人か雄英の生徒と思しき者達の姿が見える。

 店そのものはそれなりに広いので、向こうの邪魔をしてはいけないと少し離れた場所に座る。

 

「これ、知ってる。自分達で焼くのよね?」

 

 テーブルの中央にある鉄板を見て、葉隠が期待を込めて……それでいて少し不安そうな様子で言う。

 まぁ、お好み焼きを焼く……いや、引っ繰り返すというのは、それなりに難しい。

 慣れなかったり、あるいは恐る恐るやると失敗しやすいんだよな。

 寧ろこういうのは大胆にやった方が上手くいくのは間違いなかった。

 

「自分でやってみるのもいいし、難しそうなら俺がやってもいいけど?」

 

 俺は料理は決して得意という訳ではないが、それでもお好み焼きを引っ繰り返すくらいのことは出来る。

 ましてや、混沌精霊としての力を使えば、引っ繰り返すのに失敗する事はまずないだろう。

 

「えっと、うん。難しそうならお願いしてもいい?」

「あー……イチャついてるところ悪いけどよ、どうやら引っ繰り返すのに自信がないのなら、店員が焼いて持ってきてくれるサービスもあるみたいだぜ」

 

 上鳴が言うように、壁には店員が焼いて持っていくサービスについてしっかりと書かれていた。

 それを見ていた俺だったが、すぐに隣の紙に注意を向けられる。

 そこにあったのは、俗に言うチャレンジメニュー。

 お好み焼き20枚を食べたら、賞金1万円というものだった。

 

「あれだな」

「え? あれって? ……ちょっ、アクセル本気で言ってるの!?」

 

 葉隠の隣で俺と同じく店員が焼くサービスがあるというのを見ていた三奈は、俺の言葉を聞くと、その隣にあるチャレンジメニューの紙を目にし、驚きながらそう言う。

 実際、俺の言葉を聞いて驚いているのは三奈だけではない。

 他の面々もいきなり俺がチャレンジメニューに挑戦するというのを聞いて、驚きの表情を浮かべていた。

 

「ちょっ、本気かよアクセル!? お好み焼き20枚だぜ!? それもただのお好み焼きじゃなくて、全部乗せって書いてあるぞ! その上で制限時間が1時間しかないんだぜ!?」

 

 瀬呂が言うように、チャレンジするお好み焼きのメニューは、全部乗せ……エビ、イカ、豚肉、チーズ、餅、明太子、ソバ入りの奴だ。

 ……お好み焼きでソバと言えば、やはり真っ先に思い出されるのは広島焼きだろう。

 だが、大阪風のお好み焼きにもソバを使ったメニューがあるのを知っている。

 モダン焼きという、お好み焼きだ。

 どうやらチャレンジメニューは、そのモダン焼きらしい。

 まぁ、店側の気持ちも分からないではない。

 チャレンジメニューを完食すれば、1万円の賞金を支払わないといけない。

 店にとって1万円というのは、かなり痛いだろう。

 ましてや、チャレンジメニューを完食したという事は、モダン焼き……それも全部乗せということでかなり高額なのを20枚分無料で俺に食べられるという事を意味しているのだから。

 

「心配するな。俺はその気になればかなりの大食いだからな」

 

 そう言うと、店員を呼ぶ。

 他の面々は俺がチャレンジメニューに挑戦するのを心配そうにしながらも、自分の注文するメニューを選んでいく。

 なお、今日初めてお好み焼きを食べるというヤオモモは、一般的な豚玉を頼むらしい。

 

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」

 

 店員に、俺以外の面々が注文していく。

 そして最後に俺の番となり……

 

「俺はチャレンジメニューを」

「え? ……その、本当に大丈夫ですか? うちのチャレンジメニューは、時間内に食べきれなかった場合は20枚分の料金を全てお支払い戴く事になりますが」

「ああ、それで構わない」

「分かりました。では……申し訳ありませんが、こちらの準備が出来ましたら席を移って貰う事になりますが、構いませんか?」

「席を移る? 何でまた?」

「その……以前、1人で食べきれなかった挑戦者の方が、一緒に来ていた人に食べさせていたという事例がありますので、もしくは個性を使って食べてないのに食べたと見せ掛ける人も……なので、挑戦者の方には専用の場所で食べて貰う事になっています」

 

 なるほど、店員の主張は分からないでもない。

 一緒に来ていた友人に食べさせるというのはともかく、個性の中には食べていないのに食べたように見せ掛けるといったようなものや、他にも何か誤魔化すのに向いている個性なんかもあるだろう。

 そんな個性を許容すれば、店としても大損なのは間違いない。

 それを防ぐ意味でも、そういうのが出来ないように専用の席を用意するというのは分からないでもなかった。

 

「分かった。それでいい」

「では、準備が出来ましたらお呼びします。……チャレンジメニュー、入りました!」

 

 店員が、店の中に響き渡るように声を発する。

 するとそれを聞いた店の中の客がこちらに視線を向けてくる。

 その中には、先程俺が見た雄英の生徒達の姿もある。

 俺達と同じ1年……いや、制服を着慣れている様子からすると、恐らくは2年か3年だろう。

 まぁ、1年でも制服を着慣れていないとは限らない訳だが。

 そして、その生徒達は小声で話しているのだが……混沌精霊の俺の耳には、しっかりとその声が聞こえてくる。

 とはいえ、それは別にこっちを馬鹿にするように言っている訳ではない。

 それこそ1年が何も知らないでチャレンジメニューに挑戦したのではないかと、そんな心配をしている声だった。

 

「おい、アクセル。本当に大丈夫か? 見た感じ、凄い注目を集めてるけど」

 

 切島が心配そうに言ってくる。

 

「だから、大丈夫だって。ああ、そうだ。俺がチャレンジメニューを食べきったら賞金を貰えるし、今日は俺の奢りでいいよ」

 

 人数もそんなに多くはないし、値段を見たところどれもそこまで高くはない。

 ……いや、全部乗せとかのメニューを見れば分かるように、高いのは高いけど。

 だが、豚玉とかイカ玉とか、豚イカ玉とか、ちょっと珍しいのはタコ玉なんでのもある。

 もっとも、お好み焼きにイカを入れるのは食材としての意味もあるが、具材から出る出汁を生地に行き渡らせるというのもある。

 そういう意味では、イカよりもタコの方が旨みは大きいので、タコ玉というのがあってもおかしくはないのか?

 

「マジか!? いよっしゃぁっ、頑張れアクセル!」

「こんな事なら、もっと高いメニューを頼んでおけばよかった」

「悪いですわ。アクセルさんに奢って貰うなんて」

 

 そんな言葉が聞こえてくる。

 今日は初めての自主練だったんだし、今日くらいは俺が奢ってもおかしくはないだろう。

 もっとも、これで明日以降も奢りを……と言われれば困るけど。

 公安のクレジットカードを使っているので、本当に無理かと言われると実は何とかなったりするんだが、別に俺はクラスの財布になりたい訳じゃないしな。

 今日は気紛れというか、そんな感じだ。

 そう思っていると、先程の店員がやってくる。

 ちなみに店員が焼くサービスがあるという話だったが、どうやらヤオモモも自分で挑戦するつもりになったらしい。

 まぁ、お好み焼き初心者なら、自分で挑戦してみたくなるのも当然だろう。

 それに引っ繰り返すのに失敗をしても、こういう鉄板ならリカバリーも出来るし。

 ……これがフライパンの場合、引っ繰り返すのに失敗するとコンロとかにお好み焼き、それも生焼けの生地が散らばって大惨事になったりするんだよな。

 IHであれば平たいので、ガスコンロよりはマシだが。

 だがこうして鉄板があれば、引っ繰り返すのに失敗しても落ちるのは鉄板の上だ。

 まぁ、中にはとんでもない方向に生地を飛ばすような奴もいるかもしれないから、それも絶対という訳ではないのだが。

 それぞれが生地を鉄板の上に流し、あるいはヤオモモにやり方を教えているのを見ていると……

 

「お客様、準備が出来ましたのでこちらへ」

 

 店員に促され、立ち上がる。

 

「じゃあ、チャレンジメニューを制覇してくるな」

「頑張ってね、アクセル」

 

 一足先に生地を流し終え、豚バラを生地の上に並べた三奈が、俺に向かってそう言ってくる。

 三奈は人との付き合い方が上手い、いわゆるコミュ強だから中学時代にも友人達とお好み焼き屋に行ったりしていたのかもしれないな。

 

「ああ、任せろ」

 

 そう三奈に返し、店員と共に移動する。

 三奈以外の面々も、そんな俺を心配そうに見ていた。

 ……もっとも、その中の何人かは、俺がチャレンジメニューに失敗すれば賞金を貰えず、今日の奢りというのもなくなると思ったからなのだろうが。

 峰田や上鳴辺りはそんな心配をしてそうだよな。

 そんな風に思いつつ、俺は用意された席に座る。

 焼いたお好み焼きをすぐに食べられるようにする為だろう。

 その席はカウンターのすぐ前にあり、どうやら俺がお好み焼きを食べている間にカウンターで次のお好み焼きを焼いておき、それがチャレンジメニュー用の席にある鉄板に持ってくるといった感じになっているのだろう。

 

「では、こちらがタイマーになります。このタイマーをスタートさせてから1時間以内にチャレンジメニューのお好み焼き、モダン焼きの全部乗せを20枚完食したら、賞金1万円を支払いますが、途中でギブアップした場合はモダン焼きの代金、1枚1000円が20枚で2万円支払って貰いますが、問題ありませんか?」

 

 俺が席に座ると、店員が目の前にお好み焼き……モダン焼きの全部乗せを起き、ソースやマヨネーズ、青海苔、鰹節といった諸々でトッピングし、飲み物……氷水の入ったコップを置くと、そう言ってくる。

 

「ああ、それで問題ない」

「分かりました。では、準備が出来たら合図をお願いします」

 

 店員のその言葉に頷き、俺は店内を見回す。

 雄英の生徒の溜まり場的な店かと思っていたのだが、夕食時というのもあってか、何気に結構客が入ってきていた。

 そんな客達が……特に俺達が来る前からいた雄英の生徒達が、チラチラとこちらを見ているのが分かる。

 多分、チャレンジメニューについては今まで何度も挑戦をしてきた者達がいたんだろうな。

 普通に考えて、お好み焼き……それもただのお好み焼きではなく、ソバ入りのモダン焼き、しかも全部乗せを20枚というのは、とてもではないが食べるのは難しい。

 特にこういう粉ものというのは腹に溜まりやすい……かなりの満腹感があるし。

 これが2枚や3枚、あるいはそれなりに食べる量に自信のある者なら5枚くらいはあっさりと食べられるだろうが、これが10枚とかになると、プロの大食い……いわゆるフードファイターと呼ばれるような、大食い大会とかに出て優勝するような者達でなければ難しいだろう。

 なら、俺はどうか。

 ……まぁ、その辺については仕上げをご覧じろって奴だな。うん? ちょっと使い方が違うか?

 ともあれ、準備は整ったので店員に頷く。

 

「では……スタート!」

 

 その言葉と共にタイマーが押され、俺は早速モダン焼きをヘラで切断し、一口サイズにすると直接ヘラで口の中に運ぶ。

 まず感じるのは、鰹節と青海苔の風味。そしてソースとマヨネーズに味と続き、そしてモダン焼きの生地を楽しむ。

 中の今切った場所には、イカとエビが。

 そして上には豚肉があり……そしてモダン焼きの代名詞であるソバが口の中で踊る。

 なる程、これは……チャレンジメニュー用のモダン焼きだが、手を抜いたりせず、しっかり作られている。

 この辺は好感触だな。

 今までそれなりにチャレンジメニューの類には挑んで来たが、中にはチャレンジメニューだからという事で適当に調理したりする店もあるんだよな。

 そういう意味では、この店はチャレンジメニューであってもしっかりと手を抜かずに調理しているので好印象だ。

 そんな風に思いながらモダン焼きを食べ進めていき……

 

「お代わり」

 

 その言葉と共に、店員が俺の前にモダン焼きを持ってくる。

 既にソースやマヨネーズ、鰹節、青海苔のトッピングは終わっており、俺はそれにヘラを突き刺し、一口大に切っていき、口に運ぶ。

 うん、美味い。

 でも今はいいけど、このまま食べ進めると味に飽きてきそうなのがちょっと心配だな。

 そんな風に思いながら、俺はモダン焼きを食べ進めるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。