転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4372話

「おはよう、アクセル」

「ああ、おはよう」

 

 いつもの駅で俺は拳藤と合流し、電車に乗る。

 後は雄英の最寄り駅に到着するまで特にやる事もないし、乗り換えとかそういうのもないので、拳藤との雑談を楽しむ。

 

「そう言えば、LINでも書いてあったけど、拳藤が学級委員長になったって?」

「あー……うん。あはは」

 

 俺の言葉に少し困った様子で笑みを浮かべる拳藤。

 この様子を見ると、拳藤としては別にそこまで学級委員長になりたかったという訳ではないのだろう。

 A組では大半の者が学級委員長に立候補していたんだが、この辺りはクラスによって違うのかもしれないな。

 

「ヤオモモからも一緒に頑張ろうって言われたけど」

「ヤオモモの場合はやる気満々といった感じだったしな。それに……まぁ、拳藤が学級委員長になるのは何となく自然の流れとして分からないでもないけどな」

 

 俺の言葉に拳藤は微妙な表情を浮かべる。

 姐御と呼ばれる拳藤は、当然ながら面倒見もいい。

 それが数日の生活でB組の連中にも分かったのだろう。

 ……あるいは、取蔭辺りが面白がって拳藤を推薦したのかもしれないな。

 他にもB組の面々については殆ど知らないので分からないが、取蔭と一緒になって拳藤を推薦するような者がいてもおかしくはない。

 

「べ、別にいいだろ、そんな事は。それより、昨日の自主訓練はどうだったんだ?」

 

 拳藤にしてみれば、このまま学級委員長の件でからかわれるのは嫌だったのだろう。

 慌てて話題を逸らす。

 とはいえ、その件については昨日LINで話題になっていたんだから、拳藤も大体理解出来ている筈なんだが。

 

「俺は基本的には緑谷の訓練に付き合っていたな」

「緑谷? えっと、誰だっけ? どこかで聞いたような気はするけど……」

 

 拳藤は緑谷と会ったことはなかったからか、少し戸惑ったように言う。

 

「ほら、受験の実技試験で俺以外にもう1人だけ0Pを倒した受験生がいるってリカバリーガールが言ってたろ?」

「ああ! アクセルとは違ってかなりの重傷を負ったっていう」

「そうそう、それだ」

 

 実技試験が終わった時、リカバリーガールが話していた内容はしっかりと覚えていたのだろう。

 

「その緑谷が個性をしっかりと使えるようにな。それ以外は、他の面々と模擬戦をしたくらいか」

「うわ……」

 

 模擬戦という言葉に微妙な表情を浮かべる拳藤。

 

「おい、その反応はどうなんだ?」

「いや、だってアクセルと模擬戦だろう? ……実技試験の時の戦いを見ていた私にしてみれば、とてもじゃないけどどうにか出来ると思えないし。それに、A組の中でも最強に近い2人を同時に相手にして、それで傷らしい傷も負わないままで勝ったんだろう?」

「そうだな。けど、その辺りは逆に考えてみたらどうだ? そんなに強い俺を相手にして、死ぬという事はないままで模擬戦を出来るんだぞ? そう考えれば、悪くないと思わないか?」

「……なるほど、言われてみればそうかもしれないね。もっとも、私がその自主訓練に参加するのがいつになるのかは分からないけど」

「俺としては別に今日から参加しても構わないと思うんだけどな」

 

 拳藤にしてみれば、B組の自分がA組が主体で行っている自主訓練に参加するのはどうかと、そう思うのだろう。

 俺にしてみれば。別にその辺についてそこまで気にするような事ではないと思うんだが。

 とはいえ、これはあくまでも俺がそのように思っているだけで、この場合重要なのは俺じゃなくて拳藤がどのように思うかだ。

 その拳藤が今はまだ参加出来ないと言ってるのだから、無理強いは出来ない。

 

「もう少し待ってくれよ。な?」

「別に今日すぐにとかは思ってないけど……ただ、俺がこういう風に言うのもどうかと思うけど、A組が自主訓練をやっているのにB組がそういうのをやらないとなると、どうしても実力差は開いていくぞ?」

「ぐ……それは……」

 

 俺の言葉を聞いた拳藤が、悔しそうな様子で呻く。

 

「俺がやっている自主訓練に参加するのが嫌なら、B組はB組で自主訓練をしてみるとかはどうだ?」

「それは……きゃっ!」

「っと!」

 

 拳藤が何かを言おうとしたところで、不意に電車に急ブレーキが掛かる。

 座席に空いている場所はなかったので、俺と拳藤は立っていたのだが、それがマイナスに働いた形だ。

 その急ブレーキによって吊り輪を掴んでいた拳藤が手を離してしまい、転びそうになり……それを見た瞬間、俺は手を伸ばして拳藤の腰を支え、そのまま抱き寄せる。

 

「っ! ……え? あれ? アクセル?」

 

 急ブレーキによる電車の揺れも止まり、我に返った拳藤は目の前に俺の顔がある事に気が付き、戸惑った様子で俺の名前を呼ぶ。

 

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫だけど……その、そろそろ放してくれてもいいから」

 

 薄らと顔を赤くしながら、拳藤が言う。

 姐御と呼ばれる拳藤だったが、こういう仕草は十分に女らしい。

 

「ああ、分かった。ちょっと残念だけどな」

「……馬鹿な事を言ってるなよ。それこそ三奈が言っていた峰田と上鳴だったか? その2人みたいな感じに思えるぞ。……って、ヴィランの仕業か。雄英も大分近いのに、よくこんな場所で騒動を起こすな」

 

 半ば照れ隠しなのかもしれないが、拳藤は電車の中に流れた放送を聞いて不満そうに言う。

 その放送によれば、朝っぱらからヴィランが暴れたらしい。それも線路の近くで。

 これがせめて線路から離れた場所なら、電車が急ブレーキを掛ける事もなかったんだろうが、何でよりによって線路の側で暴れるかな。

 もっとも、すぐにヒーローに鎮圧されたらしいが。

 

「誰だと思う?」

 

 拳藤の細い腰から手を放し、そう尋ねる

 拳藤はまだ薄らと頬を赤くしたまま、少し考えて……

 

「やっぱり、オールマイト先生とかじゃない? あるいは、雄英の先生達の誰かとか」

「その可能性が高いか」

 

 雄英の教師達も、当然ながら自分の家から雄英に通ってる訳で、そうなると自然と俺達と行動範囲が被る。

 だからこそ、今回のような俺達の近くでヴィランが暴れたりした場合、雄英の教師が通勤中にそれに遭遇して取り押さえてもおかしくはない訳だ。

 

「普通に考えたら、雄英の近くでヴィランが活動をするのはどうかと思うんだけどな」

 

 そんな拳藤の言葉に、だろうなと俺も頷くのだった。

 

 

 

 

 

「おはよう、アクセル。ねぇ、知ってる? 今朝、ヴィランが近くで暴れたって」

 

 教室に入ると、俺を見つけた三奈がそう声を掛けてくる。

 

「ああ、知っているどころか、俺が電車に乗ってる時に電車が急ブレーキを掛けたよ」

「ありゃ、それは悲惨だったね」

 

 そうして会話をしていると、やがて相澤がやってきてSHRが始まるのだった。

 

 

 

 

 

 昼休み、俺は瀬呂と三奈、葉隠、ヤオモモといったいつもの面子と学食に来ていた。

 梅雨ちゃんや耳郎といった面々も一緒に食べる時があるのだが、今日はこの面子となる。

 

「今日の午後のヒーロー基礎学って、何をやるんだろうな」

 

 カレーとナンを食べながら瀬呂がそう呟く。

 

「オールマイトの授業だと考えると、やっぱりまた戦闘訓練じゃないのか?」

「えー、私は戦闘訓練ばっかりってのはどうかと思うんだけど」

 

 葉隠にしてみれば、その辺はかなり重要な事だろう。

 透明という個性を持つ葉隠だけに、その気になればかなりの戦闘力を発揮する筈だ。

 俺が昨日思ったように、太陽の光を収束してレーザーとして放つとか……そこまではいかなくても、透明で敵に見えないというのはそれだけでかなりのアドバンテージなんだが。

 ただ、葉隠の性格を考えると、戦いに向いているとは思えないんだよな。

 もっとも、それは決して悪い事ではない。

 プロヒーローの全てが戦闘力に秀でているといった事はないのだかから。

 中には戦闘力が皆無……とまではいかないが、それでも決して高くない者もいるのだから。

 

「うーん、でも実際にヒーロー基礎学として考えれば、やっぱり戦闘訓練が大きくなるんじゃない? ヤオモモはどう思う?」

「私ですか? そうですわね。戦闘訓練が重要というのは分かりますけど、私達はまだ1年です。そうなると、戦闘訓練よりも基礎的な訓練の方が多くなってもおかしくはないと思いますけど」

 

 天むすを食べ終わったヤオモモが、そう自分の意見を口にする。

 けど……なるほど。基礎的な訓練というのはあるかもしれないな。

 俺は色々な意味で例外としても、爆豪を始めとしたクラスのトップ層はかなりの体力を持っているが、同時に葉隠や峰田のように個性は強力でも身体能力的な意味でまだ中学を卒業してすぐというような者もいる。

 この場合、爆豪とかは特に気にする必要はないだろうが、葉隠や峰田のように体力の低い者達はしっかりと鍛え、最終的にはプロヒーローとして活躍出来る程度の体力は必要となる。

 そういう意味で、ヤオモモが言うように基礎的な訓練を行うというのは十分に可能性のある事ではあった。

 

「いや、けどよ。なら、オールマイトが最初にやった戦闘訓練はなんだったんだ? それこそいきなり戦闘訓練をやるってのはどうかと思うぞ」

 

 瀬呂の言葉は正論ではある。

 正論ではあるが……

 

「まずは自分に足りない事を知るのが重要だとか言っていただろう? 実際、あの模擬戦で自分に足りないのが何なのか分かった奴も多いだろうし」

「はいはいはーい。私は取りあえず、ヒーローコスチュームの方をどうにかしようと思います!」

 

 真っ先にそう主張したのは、葉隠。

 まぁ……うん。葉隠の場合は本気を出す時は全裸になるというどこぞの痴女か女神かといったような戦い方だ。

 実際全裸になると相手には見えなくなるという意味では非常に強力ではあるんだが、戦闘訓練で当たった相手が悪かったな。

 葉隠と尾白のコンビが戦ったのは、轟と障子。

 障子が何をするでもなく――個性を使ってどこに葉隠と尾白がいるのかを確認はしたようだったが――轟が個性を使ってビルそのものを凍り付かせ、その時点で勝負は決まってしまった。

 そんな凍り付いたビルの中で葉隠は全裸だった訳で……うん。それがどのくらい寒かったのかは、想像するのは難しくない。

 というか、多分……本当に多分だが、轟は俺にとっても天敵に近い存在だろう。

 今はまだそのような相手ではなくても、これからヒーロー科で鍛えていけば十分に俺の脅威となる可能性はあった。

 何しろ俺は混沌精霊といっても割合的には炎が多い。

 白炎や炎獣、炎の魔法を使っているのを見れば、その辺は明らかだろう。

 そんな炎を使う俺に対し、氷を使うのが轟だ。

 もっとも凍った葉隠や尾白達を炎で溶かしていたのを思えば、氷だけじゃなくて炎と氷というのが轟の個性なのだろうが。

 

「ヒーローコスチュームについては、サポート科に行けば改良出来るらしいって相澤先生が言ってたよ」

「うん、だから近いうちにサポート科に顔を出してみるつもり」

「あ、じゃあ私も一緒に行っていい? ちょっとサポート科に興味あるんだよね」

 

 葉隠と三奈はそうして言葉を交わし、一緒にサポート科に行く事になったらしい。

 ヤオモモも少し興味深そうにしていたので、恐らくだがヤオモモも一緒に行くんだと思う。

 

「どうする、瀬呂?」

「うーん……サポート科か。興味がないって言えば嘘になるけど。サポートアイテムとか興味深いのもあるし。ただ、今のところヒーローコスチュームに不満はないんだよな」

 

 そう言う瀬呂だったが、実際にはまだ1度しかヒーローコスチュームを着てないのだから、すぐに不満は出ないのはおかしくない。

 何しろ、雄英に自分の要望を書いて作って貰ったコスチューム……言ってみれば、自分の理想のコスチュームなのだから。

 それでも使っていればいずれ不満は出て来るかもしれないが、今のところそういのはないらしい。

 葉隠の場合は……うん。ちょっと色々とこう、やっぱり全裸というのが問題なんだよな。

 

「私も出来ればもう少し肌の露出度を大きくしたいのですが」

「ちょっ、ヤオモモ!? 今でさえちょっとアレなのに……」

 

 ヤオモモの言葉に三奈が突っ込む。

 実際、ヤオモモは個性の創造を使う際に自分の皮膚から出す。

 つまり、露出度が多ければ多い程に大きな物を作れる……のか?

 あるいは大きいのを掌から出すとなると、時間が掛かるのかもしれないな。

 とにかく、最初のヒーロー基礎学の時も言っていたが、ヤオモモとしては露出度の低い今のコスチュームには不満があるらしい。

 下手に露出度の高いコスチュームにすると……それもヤオモモのように年齢以上、それこそ大人の女と言っても間違いではない身体付きのヤオモモが露出度を上げると、峰田や上鳴辺りが暴走しそうで心配なんだが。

 A組から性犯罪者を出すのは絶対に避けたいし。

 そんな風に思いつつ、俺は昼食を食べながら会話を続けるのだった。

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