転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4377話

 黒霧の生み出した黒い霧を、精神コマンドの直撃を使って蹴って、ヤオモモ達に合流する事に成功し……そのまま転移する。

 そうして転移した後で、もしかしたらこの場合は精神コマンドの直撃を使ってもっと強力な一撃を、それこそ殺しても構わないと思えるような一撃を使い、黒霧を一瞬にして戦闘不能にすればそれぞれに転移させられることもなかったのかもしれないと、ヤオモモにぶつかった衝撃で、その豊かな双丘の柔らかさを顔で感じつつ、思う。

 とはいえ、ヒーロー科の生徒としてここにいる以上、相手を戦闘不能にするのはともかく、殺すのは問題となる。

 そう考えれば、結局これでよかったと思うしかない。

 転移の範囲にいない事であの場に残った面々も結構な数がいたので、そっちについては13号もいる以上、今は心配しないでもいいだろう。

 そんな風に思っていると……ヤオモモの胸に顔を突っ込んでいる状態であっても、微かに――この表現が出来るのがヤオモモの大人っぽい身体付きを示しているが――外気に触れている部分から異変を感じる。

 これは……落ちてる!?

 それを察した瞬間、強引に顔を動かしてヤオモモの双丘から顔を動かす。

 

「きゃあっ!」

 

 そんな声が聞こえてきたが、今はそれどころではない。

 この覚えのある落下感。

 これは間違いなく落ちている。

 顔を動かして周囲……というか、地面の様子を見ると、下には山……といっても、木々は殆ど生えていないような感じだが、とにかく山がある。

 そして、ざっと見た感じでは、俺達はその山の数百mは上に放り出されてしまったらしい。

 これが、精神コマンドの直撃を使って黒霧を蹴り飛ばしたのが原因なのか、それともあの状態で自分にダメージを与えた俺を危険視した黒霧が高い場所から落として殺そうとしたのか。

 どちらの理由なのかは俺にも分からなかったが……出来れば後者であって欲しいと思う。

 何しろ前者の場合だと、黒霧を蹴った影響が出ているのが俺達だけとは限らないのだから。

 他の場所に転移させられた者達も、俺達と同じように高い場所に放り出された可能性がある。

 勿論、それぞれが雄英のヒーロー科に入るだけの個性や実力の持ち主だ。

 多少高い場所から落ちても、何とか対処出来るだけの実力は持っているだろう。

 ……それでも合流した時、誰も欠けていませんようにと思いながら、俺は周囲の様子を確認する。

 俺が抱きしめている葉隠に、密着しているヤオモモ。

 転移する前に確認した限りだと、他にも耳郎と上鳴がいた筈だが……いた。

 耳郎は焦った様子を見せており、上鳴にいたっては何かを必死に喚いていた。

 

「ヤオモモ、力一杯俺に抱きつけ、ちょっとやそっとの衝撃で離れることがないくらいにな」

「分かりましたわ」

 

 俺の言葉に、何も疑問を口にせずヤオモモがしっかりと俺に抱きつく。

 これが今のような非常時でもなければ、ヤオモモの双丘の感触を楽しむことも出来るんだが。

 頭の片隅でそう思いながら、俺が抱きしめている葉隠にも声を掛ける。

 

「葉隠、お前もしっかりと俺に抱きつけ。激しく動くから、吹き飛ばされないようにな」「わ、分かった!」

 

 その言葉と共に葉隠もしっかりと俺に抱きついてくる。

 それを確認してから、まずは虚空瞬動を使って耳郎に向かう。

 

「耳郎!」

「っ!? アクセル!」

 

 咄嗟に手を伸ばすと、耳郎は俺が何をしたいのかを理解したのだろう。

 必死に手を伸ばし……それでも俺の手に届かず、耳から伸びているイヤホンをこちらに向け、俺の手に巻き付けると、それを頼りにこちらに向かってくる。

 そうして耳郎が俺の手を掴むと、再度虚空瞬動を使って上鳴の方に向かう。

 

「アクセルゥッ!」

 

 耳郎が助けられた光景を見ていたのか、それとも俺を見た瞬間に自分が助かるにはこれしかないと判断したのか。

 とにかく上鳴は必死になって俺に手を伸ばしてくる。

 ……しくったな。

 今更ながらに、そう思う。

 耳郎の場合はイヤホンがあるので、それを使えば多少離れていてもそれを掴むことで耳郎を助けられる。

 だが、そんな耳郎とは違い、上鳴はイヤホンのような物はない。

 今の上鳴に出来るのは、それこそ雷を放つだけだ。

 だが、当然ながら上鳴の放った雷は耳郎のイヤホンのように使える訳ではない。

 雷に触れれば、ダメージを受けるのは間違いない。

 であれば、やはり先に上鳴を助けた方がよかったのは間違いない。

 

「仕方がない。全員、衝撃に備えろ!」

 

 俺に抱きついているヤオモモと葉隠。そして俺の右手を握っている耳郎に声を掛け、再度虚空瞬動を使って半ば体当たりするかのように上鳴にぶつかって、その瞬間に上鳴の身体を掴む。

 

「ああああああ、アクセル……?」

 

 衝撃から、上鳴はようやく俺の存在に気が付いたのだろう。

 あるいは身体を握る俺の手の感触でその事に気が付いたのか。

 諸々の理由はあれども、とにかく上鳴は間近で俺を見た事で安堵の表情を浮かべる。

 上鳴の個性を考えれば、上手く使うとある程度は何とか出来そうな気もするが……そう思うが、上鳴も雄英に入学したばかりであると考えればそれも仕方がないのだろう。

 

「よし、これで全員だな」

 

 上鳴の言葉には何も言わず、一応周囲の様子を確認する。

 しかし、空中には俺達以外には誰の姿もいない。

 ……もし葉隠が全裸の状態であれば見逃したかもしれないが、その葉隠は今俺の身体にしっかりと抱きついている。

 峰田辺りがいたら、もしかしたら見逃したかもしれないな。

 ただ、峰田は緑谷達と一緒にいたので、ここにいるとは思えないから、心配する必要はないだろう。

 

「後は、上手く着地出来るかどうかだが……その辺については心配いらないから、安心してくれ」

 

 俺以外に空中に放り出された面々の救出に成功した以上、もう心配はない。

 ただ、それはあくまでも俺の認識での事で……他の面々にしてみれば、今のように言われても納得出来ないだろう。

 

「ちょっと、アクセル。本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

 耳郎の叫ぶ声が聞こえる。

 普段はクールな性格をしている耳郎なのだが、やはりこういう時は叫んでしまうのだろう。

 あるいは単純に、落下しながらなので俺に聞こえるように叫んでいるのかもしれないが。

 論より証拠。

 

「何度か空中を蹴って速度を殺すから、衝撃に備えろ。ヤオモモと葉隠は俺から絶対に離れないようにしっかりと抱きつけ! 耳郎と上鳴は、衝撃で手が離れないように力一杯掴んでいろ!」

 

 そう叫ぶと、ヤオモモと葉隠が力一杯俺の身体にしがみつき、耳郎は自分の握力だけでは心配に思ったのか、手を握りながら俺の腕にイヤホンを巻き付けてくる。

 そういうのが出来ない上鳴は、必死になって俺の手を握り締めていた。

 他の面々の様子を確認すると、虚空瞬動を使って落下しながら空中を蹴る。

 当然の話だが、最初の一歩目こそが虚空瞬動を使う上でも一番衝撃が強い

 ガクン、と。

 俺の身体に強い衝撃が走る。

 4人中3人が女とはいえ、それでも4人分の体重が落下した速度や重力といった諸々によって俺の身体に衝撃として掛かる。

 

「ぐっ!」

 

 上鳴がその衝撃に呻き声を上げる。

 ……耳郎を含めた女達も我慢してるんだから、上鳴も少しくらいは我慢して欲しい。

 そう思いながらも、1度、2度、3度、4度と虚空瞬動を使って衝撃を殺していく。

 こっそりと、虚空瞬動以外にも空を飛んで衝撃を減らしていったのは内緒だ。

 最終的には衝撃を殆ど殺し、地面に着地する事に成功した。

 

「ふぅ……もういいぞ」

 

 真っ先に目を開けたのは、俺と手を繋いでいた耳郎と上鳴。

 抱きついていたのではなく、自分の足で地面に着地したので上手い具合に着地したのを理解出来たのだろう。

 

「ふぃ……助かった」

「……本当にね」

 

 上鳴がドサリと地面に腰を下ろすと、耳郎も同じように地面に座り込み……やがて俺を見る。

 そこにあったのは、感謝の色。

 それは間違いなかったのだが、その感謝の色が次第に呆れに代わっていく。

 

「それで? アクセルはいつまでもその2人に抱きしめられてるの?」

「個人的にはいつまででもと言いたいところなんだけどな。……まぁ、そういう訳にはいかないか。ヤオモモ、葉隠、もう地面に着地したから、離れても問題ないぞ」

 

 そう言いながら、ふと気が付く。

 あれ? 葉隠ってこれ……もしかしてかなり胸が大きくないか?

 ヤオモモ以上という事はないが、俺の身体に押し潰されている感触からすると、ヤオモモに匹敵するくらいには胸が大きい気がする。

 そんな風に思っていると、ヤオモモと葉隠が俺から離れる。

 

「もーっ! びっくりしたよ。いきなりアクセル君が突っ込んで来たかと思ったら、抱きしめるんだもん。しかも気が付いたら空にいて落ちてるし!」

「私もその……いきなり胸に顔を埋められるのは少し困ります」

 

 そう言う2人だったが、2人共その手が微かに震えているのが分かった。

 無理もない。俺が助けたとはいえ、普通なら死んでいてもおかしくはない高さから落とされたのだから。

 つまり、文字通りの意味で命の危機だった訳だし。

 とはいえ……今はそんな2人を励まし続けるといった事は出来ない。

 

「全員、助かったのが嬉しいのは分かるけど……どうやら、まだ危機は終わっていないみたいだぞ」

 

 そう言いながら、俺はこちらに近付いてくる集団を見る。

 明らかに雄英の生徒とは思えない……それこそ、噴水の側で相澤に倒されていた連中の同類にしか見えない。

 ましてや、黒霧が散らして嬲り殺すといっていたのを思えば、自分達が出て来たとのと同じように、前もってここにも戦力を派遣しておいたのだろう。

 

「へっへっへ。来た来た来た」

「にしても、予定の場所から少し離れてるじゃねえか」

「それくらいはいいだろ。あの黒霧って奴が送り込んできた連中がこれなら、俺は寧ろ歓迎だな。見てみろよ、あのエロい服の女、女子高生には見えないくらい美味そうな身体をしてるぜ。俺はああいう女をヒィヒィ言わせるのが好きなんだよ」

「ヒィヒィって、いつの言葉だよ。……まぁ、お前の気持ちは分からないでもないけどな。……ただ、もう1人の女はどっちが表か裏かも分からねえような貧相な身体だぜ? それで楽しめるのは、特殊な性癖の持ち主だけだろ」

「いやいや、待て待て。ヒーローコスチューム……かどうかは分からないが、手袋が浮いていて、ブーツがそれに連動しているのも、声を聞く限りだと女だろ?」

 

 そんな声が聞こえてくる。

 

「許さん」

 

 うおっ!

 少し離れた場所で地面に座っていた耳郎が、殺意マシマシといった感じで立ち上がる。

 我知らず、数歩後退ってしまった。

 えっと……いやまぁ、うん。耳郎にとって体型というのは恐らくコンプレックス……それもちょっとやそっとではなく、もの凄いコンプレックスなのだろう。

 ヤオモモなんかは制服の上からでも胸が大きく盛り上がってるのが分かるが、耳郎の場合は、何と言うか……こう、ストーンって感じだし。

 ましてや、ヴィランに特殊性癖だとかそんな風にコンプレックスの塊について言われれば、耳郎にとって到底我慢出来るような事ではないのだろう。

 一緒にいる……比べられたのがヤオモモだったのが、この場合は致命的だったな。

 だからこそ、普段の耳郎が言うような言葉ではない感じで『許さん』とか、我慢の限界を超えた様子で言ったのだろうが。

 

「じ……耳郎さん……?」

 

 俺の側にいた上鳴が、圧倒的な闘気を纏っているかのような耳郎を見て、恐る恐るといった様子で声を掛ける。

 ……声を掛けつつも、迂闊に何かを言ったら間違いなく自分にとって最悪の出来事が待っていると分かっているのか、その声は決して大きくはない。

 声を掛けはしたが、出来れば耳郎にその声が届いて欲しくないといったような、そんな感じの声だ。

 それだけ、今の上鳴にとって耳郎は畏怖すべき存在なのだろう。

 今の耳郎を見れば、そのように思うのはそうおかしくはないと思うけど。

 耳郎にしてみれば、ヤオモモと葉隠というA組の中でもトップクラスに女らしい身体付きの面々と一緒だったというのは、喜ぶべきか悲しむべきか。

 正直、微妙なところではあるのだろう。

 

「な……何だ、てめえ……」

 

 耳郎に睨まれたヴィラン……耳郎に特殊性癖がどうこうと言ったヴィランが、耳郎の視線に気圧されたように後退りながらそう言う。

 だが、自分がこうして後退ったというのを理解した瞬間、それが絶対に許せないといった様子で叫ぶ。

 

「ざっけんなごらぁっ! 小娘が俺を睨んでいいと思ってるのか!?」

「プクク。だっせぇ、あんな貧乳に睨まれてビビってや……ん……の……」

 

 虚勢を張るかのように叫んだヴィランを馬鹿にした別のヴィランだったが、その笑い声も途中で止まる。

 耳郎にとっての禁句……それを口にした為に、視線の向けられる先が変更されたのだ。

 そして耳郎に睨まれた仲間を嘲笑したヴィランだったが、いざ自分が耳郎に睨まれると、何も言えなくなる。

 取りあえず耳郎は怒らせないようにして、胸についての話題は口にしない方がいいな。

 俺と上鳴は、視線でそう意思疎通をするのだった。

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