転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4381話

「わぁ……」

 

 瞬動を使って空を飛ぶ……いや、跳ぶ。

 そんな中、俺の腕の中にいるヤオモモは、上空から地上の景色を見て歓声を上げる。

 創造の個性を持つヤオモモなら、空を飛ぶ方法くらい幾らでもありそうだけどな。

 いや、それ以前にヤオモモの家はかなりの金持ちなのだから、飛行機やヘリに乗るくらいは普通に経験しているような気がする。

 ……あるいは、機械を使って空を飛ぶのと、こうして生身で空を飛ぶのとでは色々と感覚が違うのかもしれないな。

 地面に着地したら、これから1人でスクーターを生み出し、それを使ってUSJから脱出するといったことを考えれば、今くらいは楽しんでいてもいいだろう。

 今からここで緊張していたら、いざ行動するという時に上手くいかない可能性も高い訳だし。

 とはいえ……

 

「楽しんでいるところを悪いけど、そろそろ地面に着地するぞ」

「あ……」

 

 どうやら眼下の景色に完全に目を奪われていたらしく、俺の言葉でヤオモモは現在自分がどのような状態なのかを思い出したらしく、薄らと頬が赤くなる。

 

「普段は大人っぽいヤオモモの、喜んでいる姿を見る事が出来て俺は嬉しかったけどな」

「……もうっ、アクセルさん!? 怒りますわよ!?」

 

 別にからかっているつもりはなかったのだが、どうやらヤオモモにはそういう風に感じられたらしい。

 その件については悪く思いながらも、俺は再び口を開く。

 

「着地をするから、大丈夫だとは思うけど衝撃に……あー、うん。それでいい」

 

 衝撃に備えろと言おうとしたのだが、優秀なヤオモモは俺が何を言いたいのかを即座に理解し、しっかりと抱きついてくる。

 その豊かな双丘が俺の身体に思い切り押し潰され、ひしゃげる。

 何しろヤオモモのヒーローコスチュームはヒーローコスチュームというよりは色っぽい衣装……もっと直接的に言えば、露出度の高いエロい服だ。

 そんな服で俺に力一杯抱きついてくるのだから、見えてはいけない場所が見えてしまいそうになるし、どこがとは言えないが零れ落ちそうにすらなっている。

 ……うん。さっきも思ったけど、この光景を峰田が見なくて本当にラッキーだったな。

 そんな風に思いつつ、衝撃を感じさせずに地面に着地する。

 俺の身体に強く抱きつきながら身体を固めているヤオモモだったが……

 

「もういいぞ」

「……え?」

 

 俺の言葉に、恐る恐るといった様子で俺から身体を離す。

 そしてヤオモモが周囲の状況を見ると、既に俺は地面に着地していた。

 

「……え?」

 

 数秒前と全く同じ言葉を口にするヤオモモ。

 ヤオモモにしてみれば、まさか衝撃が殆どないままに着地したというのは信じられなかったのだろう。

 

「降ろすぞ?」

「あ、はい。……その、全く衝撃を感じなかったのですが」

「着地の衝撃を可能な限り殺したからな」

「……そのような事が出来るのですか?」

「技術があればな」

 

 驚き……というよりは、信じられないといった様子のヤオモモにそう返す。

 まぁ、ヤオモモにしてみればそう感じても仕方がないだろうな。

 俺にとっては普通の事だが、何気に高い技術を必要とする行為だ。

 初めて経験するヤオモモが驚いても、無理はない。

 

「ありがとうございます」

 

 俺から離れる……お姫様抱っこの状態から解放されると、身体の様子を見るように軽く動かす。

 柔らかく暖かなヤオモモの身体が離れたのを少しだけ残念に思いながらも、それについては表情に出さないようにする。

 

「じゃあ、俺は相澤のいる場所に向かうから、そっちもしっかりとな」

「……はい。アクセルさんもお気を付けて」

 

 そうして言葉を交わすと、俺は上空から見た場所……噴水のある方に向かって走る。

 先程のようにヤオモモを連れたりはしていないので、誰に遠慮する事もなく俺は真っ直ぐに噴水のある方に向かう。

 影のゲートを使って転移するか? とも思ったが、USJの広さを考えれば影のゲートを使わず、普通に走ってもそう時間は変わらない。

 これが隣の国……そこまでいかずとも、隣の県とかそういう場所なら俺も大人しく影のゲートを使ったりするだろうが。

 そんな訳で、先程の場所……噴水のある方に向かって走り続けると……

 

「うわ」

 

 遠くに見えてきた光景に、思わずそう呟く。

 何しろ俺の視線の先では相澤が押さえ込まれていたのだから。

 ……いや、ただ押さえ込まれているだけなら、俺も驚きの声を口にしたりはしない。

 しかし、視線の先では何とも言いがたい存在に相澤は押さえ込まれていたのだ。

 具体的には、脳みそに直接眼球が埋め込まれている、どこか鳥を思わせるような顔を持つ存在。

 ただし、鳥と一口に言っても常闇のような鳥とはまた違う……そう、グロテスクさを感じる、そんな鳥っぽさ。

 常闇の場合は、鳥は鳥でも普通にそういう存在だと認識出来る異形系なのだが……あの脳みそ剥き出しのヴィランの場合、下手に鳥系ではあってもそこに似せようとしていないのが余計に違和感となっている。

 ともあれ脳みそ剥き出しのヴィランは結構な巨体で、相澤もあそこまで押さえ込まれては対処出来ない。

 こうなると……仕方がないか。

 問題なのは、ここからどうやって行動をするかだな。

 というか、死柄木はどこだ?

 そう思ったが、相澤の側で何かを喋っている。

 あの様子からすると、自分が圧倒的に有利な状況になって余裕を見せているといったところか。

 俺にしてみれば猶予が出来たという意味でラッキーだけど……さて、どうしたものか。

 この状況からでもどうにか出来る手段は幾らでもある。

 とはいえ、死柄木達はともかく相澤がいる状況では迂闊に混沌精霊としての力は見せたくない。

 ……まぁ、相澤が信頼出来る相手だと知れば多少は秘密を打ち明けてもいいのかもしれないが、相澤はなんというか……いかにも不審者っぽいしな。

 一応プロヒーローなんだから、多少は身嗜みにも気を付ければいいものを。

 また、他にも個性把握テストの時の除籍宣言。

 そんな諸々から、個人的には相澤を信用し、信頼するというのは今はちょっと難しい。

 そうなると……気配遮断でも使うか。

 見た目が派手な炎獣や白炎、あるいは魔法と違って気配遮断は目立たない。

 ……いや、見えないというのが正確か。

 もっとも、その見えないというのはあくまでも俺が攻撃をするまでだが。

 そして脳みそ剥き出しのヴィランが相澤を押さえている状況を考えれば、丁度いい。

 ただ、問題なのは……相澤がゴーグルをしている事なんだよな。

 俺の使う気配遮断は、生身の目で見た時は効果を発揮するが、カメラの類を使われると普通に見える。

 眼鏡やゴーグルが、気配遮断に対してどういう扱いになるのかちょっと気になる。

 俺があの脳みそ剥き出しのヴィランに攻撃をしようと近付いた時、相澤が俺の姿を見たらどう思うか。

 脳みそ剥き出しのヴィランや死柄木からは俺の姿は見えていないのに、相澤からだけは見えている。

 だとすれば、相澤が俺に来るなと叫んだりしてもおかしくはない。

 もっとも、死柄木も脳みそ剥き出しのヴィランも、俺の姿を……あー……死柄木は問題なさそうけど、脳みそ剥き出しのヴィランの方は明らかに人外、異形系だし、もしかしたら見える可能性もあるのか?

 まぁ、見つかったら見つかった脳みそ剥き出しのヴィランを即座に攻撃して、相澤を人質に取られるような事をしなければいいだけだ。

 そんな風に思いつつ、俺は気配遮断を使う。

 ……いつも思うけど、気配遮断を使いはしても、自分で特に何か違いがあったりとかはしないんだよな。

 まぁ、このスキルはそういうものだと思えば、それはそれで仕方がないのだが。

 とにかく気配遮断を使ってから、脳みそ剥き出しのヴィランのいる方に向かって歩き出す。

 この気配遮断の厄介なところは、攻撃した瞬間、すぐにスキルの効果が切れるところだろう。

 つまり攻撃するまでは隣にいても敵に気が付かれる心配はないのだが、攻撃をした瞬間に気配遮断の効果が消えて、向こうから俺の姿が丸見えになってしまう。

 なので、相澤を確保するにはあの脳みそ剥き出しのヴィランを一撃で倒す……もしくは吹き飛ばして相澤から引き離す必要があった。

 ヒロアカ世界で厄介なのは、外見だけで相手の能力を完全に把握するのが難しいという事だろう。

 何しろ個性によっては、細身でも剛力であったり、あるいは筋骨隆々な身体をしていても力はそうでもない……といったような者達がいてもおかしくはないのだから。

 ただ、相澤を押さえ込んでいる脳みそ剥き出しのヴィランは、見るからに力がある。

 ましてや、恐らくだが相澤は個性を使い、あの脳みそ剥き出しのヴィランの個性を消している筈だ。

 それでも相澤をしっかりと押さえ込んでいるのだから、あの脳みそ剥き出しのヴィランは素の力がかなり強力なのだろう。

 とはいえ、だからといって俺が力で負けるとは思えないけど。

 そんな風に思いつつ相澤達に向かって近付くが……予想通り、あるいは予想外にか。

 ともあれ、気配遮断を使っている俺の姿は誰にも見つけられていない。

 相澤のゴーグルだったり、脳みそ剥き出しのヴィランのような異形系であっても気配遮断が通じるのは嬉しい誤算だな。

 そしてこうして気配遮断が通じている以上、あの脳みそ剥き出しのヴィランを吹き飛ばすのはそう難しい事ではない。

 死柄木が何かを言ってるが……そっちについては、今のところ気にしなくてもいいだろう。

 いや、それとも脳みそ剥き出しのヴィランを吹き飛ばしたら即座に死柄木に攻撃を仕掛けるというのもありかもしれないな。

 雄英に直接乗り込んできた死柄木が、そこまで油断しているとは思えない。

 思えないが、それでも噴水の側に最初に転移してきた時は明らかに油断していた。

 俺が不意を突いて攻撃をした時も、まさか自分がそんな風に攻撃されるとは全く思っていなかったらしく、防ぐ様子すらないまま、あっさり肋骨を折る一撃を食らったし。

 ……というか、肋骨が折れているのは間違いないのに、よくあんな風に痛がる様子もなく話していられるな。

 あるいはそれが死柄木の何らかの個性なのか。

 そうも思ったが、すぐにそれを否定する。

 何故なら、死柄木は自分の両手に絶対の自信を持っていた。

 それこそ念動力が危険だと、そう俺に示すかのように。

 治癒能力とか、そっち系の個性であれば念動力が危険を察知する筈もない。

 となると……俺がこの場に戻ってくるまでの間に即効性の鎮痛薬を使ったのか、それともテンションが上がりまくってアドレナリンが出まくっていて痛みを感じないのか。

 理由がどうであっても、ダメージを受けているのは間違いないと思いたい。

 相澤にやられた有象無象のヴィランの中に、回復系の個性の持ち主がいたりしたら、それはそれで面倒ではあったが……そもそもリカバリーガールの例を見れば分かるように、回復系の個性というのはかなり希少だ。

 もしそんな個性を持っていたら、余程の事がない限りはヴィランになったりとかはせず、それこそ普通に暮らしているだろう。

 勿論、その人物の個性……というか、性格によっては何らかの理由があって表の世界で活動出来ないとか、そういう可能性も十分にあるけど。

 ともあれ、今はまず相澤を助けるのが最優先だ。

 相澤が自由に動けるようになれば、相手の個性を消したり、あるいは俺達の前で見せた捕縛布を使った戦闘によって、十分こちらの戦力として数えられるのだから。

 少し早歩きで相澤と脳みそ剥き出しのヴィランの側まで移動し……しっかりと場所を確認する。

 脳みそ剥き出しのヴィランを吹き飛ばした後で即座に死柄木を攻撃するには、位置取りをしっかりとしておかないといけないしな。

 それに一度攻撃したら気配遮断の効果は完全に切れる。

 だからこそ、今の状況で出来る準備はしっかりとしておく必要があった。

 それも終わり……さて、じゃあやるか。

 隣にいる脳みそ剥き出しのヴィランを見て、拳を握り……それが攻撃と判断されたのか、不意に脳みそ剥き出しのヴィランがこちらに視線を向けようとする。

 だが……遅い。

 次の瞬間には俺の拳がまずは脳みそ剥き出しのヴィランの腕……相澤を押さえ込んでいる腕の骨をへし折り、続けて筋骨隆々の胴体に向けて拳を振るう。

 うん? 何だか腕もそうだが、胴体を殴った時の感触が……

 そう疑問に思うが、脳みそ剥き出しのヴィランは俺の一撃に耐えられずに吹き飛んでいく。

 ……ただ、吹き飛びながらも拳を振るって俺に一撃を与えようとしていたのを見ると、痛みを感じないタイプか、それとも何か別の理由があるのか。

 その辺りについては俺も分からないが、とにかくこれで相澤が自由になったのは事実だ。

 

「は? 脳無?」

 

 良い気分で喋っていた……演説していた死柄木が、吹き飛んだ脳みそ剥き出しのヴィラン……いや、死柄木の言葉からすると脳無を見て呆然と呟く。

 それにしても、脳無……脳みそが剥き出しになっているヴィランの名称としては相応しいな。

 そんな風に思いながら……

 

「スマッシュ!」

 

 俺の一撃は、死柄木の腹に再度めり込むのだった。

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