転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4387話

「転移の個性持ちが……ね」

 

 食事をしながら事情を説明すると、ワンタンスープを飲みながら龍子が嫌そうに呟く。

 当然だが、この嫌そうなのは、ワンタンスープが不味くてそのように言ってる訳ではなく、かなり希少な転移系の個性を持つ黒霧というヴィランの存在に対してだろう。

 

「転移なんて希少な個性を持っているのなら、ヴィランなんかやらなくてもいいでしょうにね」

 

 優もまた、厄介だといった表情を浮かべながらクリームシチュー入りの器にパイ生地で蓋をされてる奴を食べながら、そう呟く。

 

「2人の気持ちは分かるんだけど、取りあえず俺が捕らえて相澤……イレイザーヘッドの個性を使って、反撃出来ないようにしてから警察に引き渡したから、取りあえずその辺についてはあまり心配はいらないと思う」

 

 そう言うも、多分……何かがあるだろうなと、そんな風には思ってしまう。

 何しろ今回の一件は、恐らく緑谷がいた事からも原作の出来事だ。

 そうなると、シラタキと黒霧の2人は、もしかしたら原作における緑谷のライバルといった可能性は否定出来なかった。

 ……もっとも、今回の襲撃で緑谷は特に活動らしい活動をしていない。

 そうなると、もしかしたらだがシラタキや黒霧の憎悪の対象は俺に向けられる可能性もあるな。

 原作主人公だろう緑谷を守るという意味では、俺の行動は悪くない結果だろう。

 ただ、俺が矢面に立ったという意味では、緑谷が実戦を経験する機会を奪ったという事を意味している。

 とはいえ、こっちについては俺が行っている自主訓練に参加させることで、ある程度は対処が可能だが。

 ……もっとも、訓練と実戦では大きく違う。

 それこそゲーム的に言うと得られる経験値は数倍から十数倍も違うと言われても納得出来てしまう。

 それについては、自主訓練を繰り返す事でどうにか対処したい。

 他にも今回の一件については俺が前に出たものの、これからも同じように俺が前に出るといったことが出来ないかもしれないし。

 だとすれば、俺がいない場所で緑谷が何らかのトラブルに巻き込まれ、それによって実戦の経験を積んで貰う事を楽しみにしよう。

 

「アクセルと敵対したのが、そのヴィラン連合の不運だったわね」

「アクセルのいるA組じゃなくて、B組を狙っていたら危険だったかもしれないね」

 

 龍子の言葉に、ねじれがそう続ける。

 だが……なるほど。

 言われてみればそうだよな。

 シラタキや黒霧が所属するヴィラン連合は、一体何故A組を狙ったのか。

 1年を狙うというのは分かる。

 何しろ今の1年は数ヶ月前まではまだ中学生だった。

 それと比べると、2年は去年ヒーロー科の授業を受けているし、3年はねじれを見れば分かるようにインターンとして半ばプロヒーローとして活躍している。

 そういう意味では、1年を狙うというのは分かるのだ。

 だが、それで何故B組ではなくA組を狙ったのか。

 単純にA組だったからとか?

 もしくは、入試首席の俺がA組にいたからか。

 あるいはマスゴミの一件の時にシラタキ達が入手したカリキュラムがA組のものだったからか。

 ……それとも、A組でなければならない、何らかの理由があった?

 

「どうしたのよ、アクセル。急に黙り込んで」

 

 優のその言葉に、俺はねじれの言葉から思いついた疑問を3人に説明する。

 

「考えすぎよ、考えすぎ。アクセルはそういう風に思うかもしれないけど、大抵のヴィランは行き当たりばったりでやってるのよ」

 

 笑いながらそう言う優。

 優のその言葉は、決して間違っている訳ではないだろう。

 実際にプロヒーローとして活動し、それなりに多くのヴィランと戦ってきた優の言葉だけに、それなりに説得力はある。

 俺の前では駄目なところを多々見せる優だったが、若手プロヒーローの中ではトップクラスの実力を持ってるのは間違いのない事実なのだから。

 もっとも、トップクラスという意味ではリューキュウもいるのだが。

 他にもホークスやミルコとか。

 

「けど、仮にもヴィラン連合なんて組織を作ってるんだぞ? 末端の連中……この場合は転移先で俺達を待ち受けていた数だけの雑魚ならともかく、シラタキや黒霧といった連中はそこまで何も考えてないとは思えないんだが」

 

 そう言うと、龍子と優が微妙な表情をする。

 それはヴィラン連合という組織についてではなく、俺が口にしたシラタキ……死柄木の事だろう。

 最初にそれを聞いた時は、龍子からすき焼きでも食べたいの? と心配されてしまった程だ。

 いやまぁ、すき焼きは好きな料理だから、あれば食べたいとは思うけど。

 ともあれ、死柄木が呼びにくいからシラタキと呼んでいると言ったら……うん。笑いが爆発した訳だ。

 俺にしてみれば、そこまで笑うような事か? と思わないでもなかったけど。

 

「組織名については、勝手に名乗っただけとかは?」

 

 龍子の言葉に首を横に振る。

 

「多分、それはないな。非常に希少な黒霧の転移。後は相澤から聞いたけど、シラタキの崩壊。どっちも極めて強力な個性だ。そんな連中が名乗ったんだから、流れで適当につけたとか、そういう事はまずないと思う」

 

 死柄木の個性の崩壊。

 これについては相澤から聞いた情報で、実際にその名前に相応しい個性らしい。

 強力な個性の事を、強個性と呼ぶ。

 分かりやすい例だと、轟の氷とか爆豪の爆破とかだな。

 応用力という意味ではヤオモモの創造なんかもそうだろう。

 だが……シラタキの崩壊というのは、それこそ攻撃にしか使えそうにない強力な個性という意味での強個性ではなく、凶悪な個性という意味での凶個性だ。

 もっとも事故や災害の時に崩壊を使えば救出が楽になったりするから、そういう意味では凶悪ってだけでもないんだが。

 13号のブラックホールも似たような系統の個性だしな。

 とにかく、シラタキの崩壊という個性が厄介なのは間違いない。

 俺の念動力が危険を察知して反応したのも分かるというものだ。

 

「個性の強さと本人の性格とかそういうのはあまり関係がないと思うけど」

 

 優を見ながら言う龍子に、俺も思わずなるほどと頷く。

 

「ちょっと、先輩。一体何で私を見てそんな風に言うんですか? アクセルも」

 

 優は自分を見ながら俺と龍子がそれぞれ頷いているのを見て、不満そうに言う。

 とはいえ、俺と龍子のやり取りを見て思うところがあるというのは、それこそ自分にそのように言われるような何かがあると、そう思っての事なんだろうな。

 

「何でマウントレディは怒ってるの? 何で何で?」

 

 そしてこちらは、優が何故怒っているのか分からない様子で……それでいながら、何故かどこか楽しそうな様子で聞いてくるねじれ。

 もしかして、ねじれは何で優が怒っているのか、分かっていて今のように言ってないか?

 そんな疑問を抱くものの、まさかそれをねじれに聞く訳にもいかないだろう。

 ……いや、寧ろそれを聞いたら普通に答えて優を怒らせそうなので、その件については余計に聞く訳にはいかないのだが。

 

「こほん、とにかく話を元に戻すわよ」

 

 これ以上は不味いと判断したのか、龍子がそう言う。

 すると優も不承不承だがその言葉に頷き……ちょうどそのタイミングで龍子のスマホに連絡が入る。

 

「ちょっと待ってて」

 

 そう断りを入れ、スマホに出る龍子。

 いざこれからという時にこんな状況になったのが不満そうな優。

 とはいえ、スマホに連絡が来た以上、仕方がないと優も思っているのだろう。

 

「え? 何ですって? それは本当なのね? 誤情報とか、そういうのではなく」

 

 スマホで相手の話を聞いていた龍子が、真剣な表情で、そして深刻な様子でそう言うのを聞き、何かがあったのだろうと理解する。

 この場合の何かというのは、当然ながら恐らくはヴィラン関係の何かなのは間違いない。

 具体的にそれが何なのかまでは、生憎と俺にも分からないが。

 聴覚に集中すれば、あるいはその辺りの話も聞こえたのかもしれないが、今はそういう風にしていなかったし。

 

「分かったわ、すぐに向かう。マウントレディもいるけど……ええ、ええ」

 

 優のを見ながら龍子がスマホの向こう側の相手と何らかの会話を続ける。

 それを聞きながら、優はテーブルの上の料理を素早く口に詰め込む。

 今の龍子の様子から、自分も出動する事になると理解したのだろう。

 ねじれもまた、そんな優の様子を見て同様に料理を口に詰め込み始める。

 こうなってしまうと、料理を味わうというよりも空腹にならないように、とにかく急いで詰め込むといった感じだ。

 そして龍子がスマホを切ると、俺に真剣な視線を向けてくる。

 いや、何で俺?

 この場合はサイドキックのねじれと、チームアップをしている優に視線を向けるべきなんじゃ?

 そう思ったのだが……

 

「アクセル、落ち着いて聞いてちょうだい。今、公安から連絡があったんだけど、アクセルが今日捕まえたヴィラン……自称ヴィラン連合だったかしら? そのヴィランの中心人物の2人が奪われたそうよ」

「奪われた? つまり、警察署をヴィラン連合の残党……いや、残党かどうかは分からないが、とにかくそういう連中が襲ったのか?」

「いえ、どうやらもっとしっかりとした留置場のある場所に護送中に襲撃されたという話よ」

「……相澤は?」

 

 シラタキ、黒霧、脳無の3人の中で2人だけが奪還されたというのは少し疑問だったが、それよりもこの場合は相澤だろう。

 崩壊や転移といった強力な、そして希少な個性を使う相手を捕らえておくのに、一番重要なのはやはりその個性を使わせない事だ。

 サポートアイテムとして個性を使わせないようにするといった物もあったりするのかもしれないが……残念ながら、俺はそういうのがあるとは知らない。

 それにそういうのがあれば、それこそ相澤がここまで重用されないだろうと思う。

 つまり、その手のサポートアイテムはないか、もしあったとにしても非常に巨大な装置で、簡単に持ち運び出来ないとか、そんな感じなのかもしれない。

 ともあれ、シラタキと黒霧が個性を使わないようにするには、相澤の個性を使うのが一番手っ取り早い訳で……護送車が襲撃されたとなると、当然ながらそこには相澤もいた筈だ。

 そしてシラタキや黒霧、脳無にしてみれば、今回の襲撃については、まさにこれ幸いといったところだろう。

 ……とはいえ、ヴィランに奪還されたのが2人だという事は、誰か1人は確保したんだろうけど。

 

「少し怪我をしたけど、重傷という訳ではないわ」

「そうか」

 

 龍子の言葉に安堵する。

 とはいえ、今日のヴィラン連合の襲撃……もっと言えば、脳無との戦いの時点で相澤は既に重傷となっていた。

 リカバリーガールの治療を受けてはいるんだろうが……ともあれ、こうして無事だったのは俺にとっても嬉しい事ではある。

 

「相澤の件はそれでいいとして、奪われた2人というのはシラタキと黒霧でいいのか?」

「ええ、死柄木と黒霧ね」

 

 シラタキと口にした俺の言葉に、龍子も言い返すようなことはしない。

 また、最初にシラタキという言葉を聞いた時のように、笑ったりもしない。

 今はそのようなことをしているような余裕はないと、そう理解しているのだろう。

 

「で? 龍子に連絡が来たって事は……」

「ええ、この近くって訳じゃないけど、行けない距離でもないから」

「でも……今の時間だと、かなり混んでるんじゃないか?」

 

 今は午後7時くらいだ。

 午後5時くらい比べれば渋滞も少なくなっているだろうが、それでも静岡県の……いや、この辺りの人口を考えると、結構な渋滞になっている筈だった。

 そんな中、今すぐにこのマンションから車で移動しても、その渋滞に掴まるだろう。

 

「大丈夫。公安から許可を貰ったから、変身して空から行くわ」

「……そうきたか」

 

 龍子が変身するドラゴンは、ドラゴンなのにブレスを使ったりは出来ないものの、空を飛ぶといったことは普通に出来る。

 だからこそ、公安も龍子に連絡をしてきたのだろう。

 

「まぁ、正直なところ飛ぶ速度はそこまで速い訳じゃないんだけどね。ただ、空を移動出来るというだけで、地上を移動するよりもこっちの方が圧倒的に移動はスムーズだし。……それに、優やねじれも連れていくから、戦力的にも問題ないわ」

「俺も行こうか?」

 

 そう言うと、龍子は思い切り悩んだ様子を見せる。

 何しろ、俺の強さを龍子は十分に知っているのだから。

 実際、今日の襲撃でもシラタキと黒霧と脳無を倒したのは俺だし。

 ……倒した後で、個性を使わせないようにして捕らえたのは、俺じゃなくて相澤だったが。

 龍子と優、ねじれの3人を同時に相手にしても勝利出来るだけの実力があるというのも、この場合は大きいだろう。

 そんな訳で、俺という存在は戦力的には大きいのだが……

 

「いえ、アクセルは残ってちょうだい。アクセルの強さは知ってるけど、ここは私達プロヒーローの出番だもの。それに、アクセルの事だから多分大丈夫だとは思うけど、万が一があった場合大変でしょう?」

 

 そう言う龍子の言葉に、ねじれはまだプロヒーローではないのでは? といった突っ込みが出来る筈もなく、ただ黙って頷くのだった。

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