転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4390話

 緑谷との話の中で、好きなヒーローと言われて口にした、リューキュウとマウントレディ。

 それを聞いた峰田は同志を見るような目で見てくるし、女達からはジト目やら呆れやらの視線を向けられる。

 ……軽蔑の視線を向けられる訳ではないだけ、まだマシかもしれないが。

 

「僕はアクセル君の気持ちは分かるよ」

 

 そんな微妙な雰囲気の中で俺に声を掛けてきたのは青山だった。

 あれ? 珍しいな。

 青山とは席も近いが、今まであまり喋る機会はなかった。

 とはいえ、別に嫌っていたとかそういう訳ではない。

 ただ、青山が俺を……そう、微妙に避けていたといった感じだ。

 青山にしてみれば、恐らく俺という存在は苦手だったのだろう。

 とはいえ、それはあくまでも苦手であって、嫌われている訳ではないようだが。

 

「そうか? ……ほら、青山もこう言ってるし、別にリューキュウやマウントレディを好きなのは普通だと思わないか?」

「アクセル君の言う通りだね。実際、リューキュウやマウントレディはヒーロービルボードチャートでも上位にいるって言うしね。僕も彼女達の煌めきを見習いたいね」

 

 あれ? えーっと……いやまぁ、うん。

 青山が言う煌めきってのが何なのかは分からない。

 ただ、ヒーロービルボードチャートでも上位に来るのは間違いないだろうというので、一種のカリスマ性とでも呼ぶべきものがある。

 ……ある、か?

 いや、龍子はその手のカリスマ性があるとは思うが、優は……うーん、どうなんだ?

 もっとも、優は私生活はともかく、プロヒーローとしては……というか、外面を上手く取り繕うのが得意だしな。

 そういう意味では、青山が優を煌めきだとかどうか、そんな風に言っても理解出来ない訳ではないんだよな。

 

「ふーん。アクセル君は勿論、青山君もああいう女の人が好みなんや」

 

 麗日がそう言うが、そこには棘のようなものはない。

 単純に、俺の好みを知る事が出来たといったように思ったのだろう。

 ……これが緑谷であれば、麗日ももう少し違う反応をしたのかもしれないが。

 

「アクセル君って大人の女が好みなの?」

 

 葉隠のその疑問に、三奈やヤオモモ、耳郎、梅雨ちゃん、麗日といった女子全員の視線が俺に向けられる。

 これは別に全員が俺にそのような気持ちを抱いている訳ではなく、単純に三奈のように恋愛に……それこそ、他人の恋愛に強い興味を抱いているのだろう。

 とはいえ、さてどう反応したものか。

 いやまぁ、俺が大人の女が好みなのかと言われれば、それは決して間違いではない。

 実際、俺の恋人の中には大人っぽい女が多いし。

 レモン、コーネリア、マリュー、ミナト、エリナ、シーマ、モニクなんかは大人の女といった感じだろう。

 もっとも、実際には今挙げた面々とそう年齢が変わらない恋人達もいるのだが……この辺はあくまでもイメージだしな。

 俺がそう感じたから、そうなのだというだけでしかない。

 とはいえ、だからといってまさかここでそんな事を言える筈もない。

 もし恋人が多数いると口にすれば、それこそ夢でも見てるのかと……あるいは妄想を抱いているのかと、そのように言われても仕方がないのだから。

 これがホワイトスターに繋がった後でなら、また話は別だが。

 もっとも、ホワイトスターに繋がれば、俺もこうして呑気に学生をやっているような余裕はなくなる……なくなる……うーん、どうだろうな。

 もし緑谷が、この世界の原作の主人公がいなければ、ゲートを設置したら俺も高校を中退するなり、あるいは他の学校に転校するといったカバーストーリーで雄英を辞めたりするだろう。

 だが、この世界の原作主人公がいるとなれば、ちょっとな。

 ヒロアカ世界の状況を思えば……それに何より、USJでの一件を思えば、間違いなくこれからもA組は騒動に巻き込まれるだろう。

 そうなると、三奈を始めとして親しくなった面々が心配になってしまう。

 勿論、俺がいないからといってなんらかの被害を受けるとは限らない。

 限らないが、それでも俺がいれば防げたのにと、そのように思ってしまうのは、出来れば避けたかった。

 

「どうだろうな。高校生くらいの男なら、年上に憧れるってのは何かで聞いた覚えがあるけど」

 

 ともあれ、そう話を誤魔化す。

 俺の好みという事になれば、何となく危険な感じがした為だ。

 いやまぁ、どうしても知りたいって訳でもなくて、今のは単純に話の流れでそんな風に言っただけなんだろうというのはすぐに分かったが。

 ……ただ、三奈を含めた何人かが俺の言葉を聞いても納得するのではなく、寧ろ不満そうな表情で俺を見ていたのが気になったが。

 そんな感じで微妙な雰囲気になったところで、飯田が教室の前……に出る。

 

「皆、朝のHRが始まるから、席に着け!」

 

 飯田にしてみれば、副委員長としての仕事だとでも思っての事なのだろう。

 そんな飯田の言葉を聞き、俺や三奈の机の周辺に集まっていた面々がそれぞれ自分の席に着く。

 何人かは仕切る飯田に不満そうな視線を向けていたりもしたが、それでも不満を口にするような者は殆どおらず、それぞれが自分の席に着く。

 飯田にしてみれば、相澤が来るまでの間に全員が席に着くようにと考えての行動……言ってみれば、善意からの行動だろう。

 実際、相澤の性格を考えるとHRが始まるというのに席に着いていないのを見ると除籍だとか言いかねないしな。

 一昨日のUSJの件で、文字通りの意味で身体を張って生徒達を守ったという意味では、間違いなく多くの生徒に見直されただろう。

 だが……それでも、個性把握テストの時の最下位は除籍というのは、強く印象づけられていた。

 見直されて信頼はしたものの、だからといって何を言い出すのか分からないという思いがあるのは間違いない。

 とはいえ、さっきも少し話題になったが脳無との戦いでボコボコにされ、その上でシラタキ達が個性を使えないように一緒にいたという事は、シラタキ達が乗っていた護送車にも同乗していた事を意味し、そうなると龍子達が緊急で呼び出されたあの一件にも、まず間違いなく巻き込まれているだろう。

 だとすれば、USJの一件に加えて護送車の襲撃にも巻き込まれた今の相澤は、一体どれだけの怪我をしているのか。

 その辺、少し気になるのは決して俺の気のせいという訳ではないだろう。

 無難に考えれば、他の教師が来るだろうけど。

 そんな風に思いながら席に座っていると……

 

「おはよう」

 

 不意に扉が開き、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 それが誰なのか、一瞬分からなかったのは……文字通りの意味で身体中に包帯が巻かれていたからだ。

 

「先生、無事だったんですね!」

 

 ヤオモモが相澤を見てそう言う。

 

「あれ、無事言うんかな?」

 

 そんなヤオモモの言葉に、麗日が突っ込んでいる声が聞こえてくる。

 実際、相澤は教壇のある場所まで移動するにもよろめいており、麗日が言うように必ずしも無事と表現出来ないのは間違いなかった。

 これ、相澤は普通に学校に来られるような状況ではないのでは?

 そうも思ったが、それでもこうして相澤が学校に来る辺り、素直に凄いとは思う。

 根性によるものか、それとも生徒を思う心でそうしたのか、あるいはそれ以外に何か理由があってのものなのか。

 ……他の教師が相澤を止めなかったのかといった疑問がない訳でもなかったが。

 

「俺の安否はどうでもいい。何より、まだ戦いは終わっていない」

 

 教壇に立ち、そう言う相澤。

 相澤がこの状態であっても言う、まだ終わっていない戦い?

 そんな疑問を抱く。

 もしかして、一昨日の護送車襲撃について何か俺達にも関係があるとか、そういう訳じゃないよな?

 いやまぁ、シラタキ達を捕まえるのに俺は結構な活躍をした。

 それを思えば、その件で何かあると相澤が言ってもおかしくはないと……そう思う。

 

「雄英体育祭が迫っている」

『クソ学校っぽいの来たぁっ!』

 

 相澤の口から出た言葉に、A組の多くの生徒達が声を合わせてそう叫ぶ。

 いや……それでも……今の相澤の状況を考えると、それでも出てくるのはどうなんだ?

 別の教師に任せた方が……そのように思うのは、決して俺だけではないだろう。

 とはいえ、相澤にしてみれば何かそうしなければならない理由があったりするのかもしれないし、その辺について俺が突っ込むのは止めておこう。

 にしても、雄英の体育祭か。

 以前……このヒロアカ世界に来てからそう経っていない頃に調べた事があったが、個性というのが現れてからスポーツというのは、とてもではないが同じ条件では出来なくなってしまった。

 多少の例外はあれども、異形系は素の身体能力が普通の人間よりも高い。

 なら、異形系を抜きにしてオリンピックをやろうにも、そうなれば人権問題だなんだと騒ぐ者も多いし、それを無視してもスポーツに参加している選手が何らかの個性を使って自分を有利にしたりする可能性も十分にある。

 そんな諸々について考えれば、このヒロアカ世界でオリンピックをやるのはまず不可能だろう。

 ……そもそも個性がない時のオリンピックも、平和の祭典だとかのお題目はともかくとして、一部の人間の金儲けの為に行われているようなものだったし。

 また、行われるオリンピックでも、その場所によっては自分達の国を有利にする為に審判を買収したり、エアコンは環境に悪いから使わないと言いつつ、自分達の国だけはエアコンを使ったり、泳ぐ競技ではとてもではないが泳げない汚い川で無理矢理に泳がせて選手に吐かせたり……うん、そんな諸々を考えれば、オリンピックがなくなったのは寧ろ良い事だったのかもしれないな。

 ただ、世界はともかく日本においてはオリンピックがなくなった代わりに、何らかのスポーツの祭典を求め、それに当て嵌まったのが雄英の体育祭だった訳だ。

 そんな諸々について緑谷と峰田が話している様子だったが、峰田にしてみればヴィラン連合の一件があってすぐにそういう……またヴィランの襲撃が起こるかもしれないイベントをやってもいいのかと、そう思ったのだろう。

 USJの一件で、梅雨ちゃんや緑谷と一緒にいた峰田は、俺や相澤がシラタキ、黒霧、脳無と戦うのを間近で見ている。

 ……いや、俺の戦いを見ていたのなら、俺が一方的に勝利をしたのだから、ここまで怯える必要はないか。

 そうなると、こうして怯えているのは……やはり相澤が脳無にボコボコにされて取り押さえられたのが原因か?

 

「体育祭は全国のプロヒーローもスカウト目的で見ますのよ」

「知ってるよ。知ってるけどよ……」

 

 ヤオモモの言葉に峰田が微妙な表情でそう言う。

 峰田、このままだと途中でギブアップしてしまいそうだな。

 とはいえ、何だかんだと峰田も雄英に入学出来るだけの実力はある訳で……うん、そうだな。

 取りあえずクラスの中で露骨に体育祭に消極的なのは峰田だけである以上、峰田をどうにかすればいい。

 そんな訳で……

 

「峰田、ちょっといいか?」

 

 1時間目の授業が終わり、2時間目が始まるまでの10分の休み時間。

 時間もないので、俺は急いで峰田に近付く。

 そう言えば、授業と授業の間の休み時間も10分だったり15分だったりと学校によって微妙に違いがあったりするんだよな。

 雄英は10分だけど。

 

「ん? どうしたんだよ、アクセル。オイラに何か用か?」

「言っておきたいというか、アドバイスというか、そういうのがあってな」

「……アドバイス?」

 

 訝しげな様子で俺を見てくる峰田。

 一体何に対するアドバイスなのか、全く理解出来ていないのだろう。

 

「ああ、アドバイスだ。峰田は体育祭にやる気がなかったみたいだけど」

「あー……うん。USJの一件があった後だろ? だから……」

「その気持ちは分からないでもない。けどな、こう考えるんだ」

 

 そこまで言って、一旦言葉を止める。

 そうして十分に溜めて……

 峰田が俺の言葉を待っているものの、やがて焦れて口を開こうとする。

 それに被せるように、俺もまた口を開く。

 

「体育祭で活躍すれば、それを見た女にモテる」

「っしゃおらぁっ! 体育祭はオイラが勝ぁつっ! 誰でも掛かってこい!」

「……かもしれない」

 

 最後の言葉だけ、そっと小声で呟く。

 うん、分かっていたけど峰田の極度の女好きというのは、ある意味で峰田を扱いやすくしてくれるな。

 女にモテると言えば、それこそ何でもやりそうなくらいには。

 とはいえ、女にモテると口にしたのは決して嘘でもデタラメでもない。

 実際に体育祭で活躍をすれば、オリンピックに代わる競技である以上、派手に放映されるだろう。

 そういう意味では、活躍出来るかどうか、それによって峰田のファンが出来るかどうかは、体育祭の時の峰田の活躍次第なのだから。

 ……まぁ、実際に体育祭で活躍し、女好きなのを露骨に示さなければ、峰田がモテる可能性は十分にある。

 そんな訳で、俺はこうしてクラスの中で最も体育祭に消極的な峰田の考えを変える事に成功するのだった。

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