転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4394話

 峰田を前に出しながら俺の言葉を聞いた生徒達の表情は、次第に険しくなっていく。

 峰田が一体どのような存在なのかを十分に理解しているからだろう。

 あるいは峰田についてまだそこまで詳しい訳ではなかったが、俺と峰田のやり取りを聞けば、峰田がどういう存在なのかは分かりやすい。

 これでヒーロー科のA組やB組なら、同じヒーロー科という事でそこまで峰田との差を感じなくてもいいのだが、ヒーロー科を落ちた者達にしてみれば、今の時点でお前達よりも峰田の方が……『この』峰田の方が評価が上だと言っても、決して否定は出来ない。

 実際に峰田よりも評価が高いのなら、それこそ峰田の代わりに自分達がヒーロー科に入学していてもおかしくはなかったのだから。

 だが、実際にはそうはならなかった。

 この……そう、『この』峰田よりも自分が下だと雄英の教師達に思われているというのは、ここにいる生徒達にとって絶対に許せるような事ではなかったらしい。

 しん、と。

 先程まで騒がしかったA組の教室前には静寂が満ちる。

 ちなみに鎮まったのは俺に掴まれている峰田もだったりする。

 というか、後頭部を含めて峰田の身体が小刻みに震えているような。

 A組の前に集まってきた生徒達の視線が俺……正確には俺が掴んでいる峰田に集まっているのが原因なのだろう。

 

「さて、それで体育祭で良い成績を残せばヒーロー科に編入可能だって話だったか。もしそうなれば、峰田よりも上になるかもしれないけど……放課後になったのに、自分の実力を磨くようなこともしないでA組に様子を見に来る連中が、そんな事は出来るかな?」

 

 煽る。

 もっとも、これはやってきた連中を見てから即興で考えた事なので、煽る言葉にも色々と問題がある可能性は十分にあるが。

 ただ、俺が雄英にいるのは公安から生徒達の越えるべき壁として立ち塞がるように頼まれたからだ。

 その対象は雄英の生徒であって、A組だけではない。

 同じヒーロー科のB組は勿論、さっきの男が言ったようにヒーロー科に編入を狙っている者達に対してもそれは同様だろう。

 ……峰田をそれに巻き込んでしまった事には少し思うところがあるが。

 けど、峰田が自分から俺に向かって突っ込んで来たんだから、自業自得という事にしておこう。

 そんな風に思っていると、俺の言葉に思うところでもあったのか、1人、また1人とA組の教室の前から立ち去っていく。

 ちなみに最初に立ち去ったのは、宣戦布告をしてきた男。

 宣戦布告をするだけあって、本気でヒーロー科の編入を狙っているのだろう。

 だからこそ、俺の言葉を聞いて即座に反応し……少しでも自分を鍛えようと、そう考えたのだろう。

 最終的には5分も掛からず、A組の前にいた者達が全員いなくなる。

 ちなみにこの騒動の理由となった拳藤は、殴った男の耳を引っ張り、こっちに……そして教室の中から様子を見ていた三奈達に向かって悪いと軽く謝罪してから去っていった。

 ただ、拳藤と耳を引っ張られた男はともかく、それ以外の他の面々の多くは、立ち去る前に俺……いや、俺が掴んでいる峰田を睨み付けてから、立ち去っていったが。

 峰田が震えているのは、多分その辺りの理由もあるのだろう。

 何しろ今のやり取りで、A組の前に来た拳藤達B組以外の生徒は雄英的には峰田よりも下だと、そう証明されたのだから。

 つまり、あの生徒達……いや、あの生徒達だけじゃなくて、生徒達から話を聞いた他の生徒達も、体育祭では峰田よりも上の順位を狙うだろう。

 

「アクセル……お前、オイラに恨みでもあるのかよぅ」

 

 震えつつそう言ってくる峰田だったが……

 

「ないと思ってるのか?」

 

 そう返す。

 実際、俺としては峰田はかなり優秀な個性を持っていると思うし、性格的に……極度の女好きはどうかと思うが、接しやすい奴だと思う。

 それに女好き云々に関しては、20人以上の恋人を持つ俺がどうこう言えるような事でもないしな。

 ただ、それはそれとして、三奈達と話している度に嫉妬の視線で……それも血涙を流しながら見られるのは、決して好ましくはない。

 それも1度や2度ならまだしも、毎日のように……それに1日に何度もそんな風に見られているのだから、それで恨みを持つなという方が無理だろう。

 

「ぐぬぅ」

 

 俺の言葉に反論出来ず、峰田は呻く。

 そんな峰田を見ながら、取りあえず峰田の役目はもう終わったので、手を放す。

 すると床に着地した峰田が、急いで俺から距離を取った。

 俺と一緒にいると何をされるか分からないとでも思ったのだろう。

 もっとも、俺としては別に何かするつもりはなかったのだが。

 

「けっ! 好きにしやがれ」

 

 そんな俺と峰田のやり取りを見ていた爆豪は、不機嫌そうに吐き捨てると誰もいなくなった廊下に出ていく。

 さて、後は……

 

「この一件はこれで終わりとして、さっきの続きだ。体育祭も近いし、自主訓練をやる為に場所を使えるようにして貰う。参加する人は? ……ああ、峰田と緑谷は強制参加な」

「ええっ!?」

 

 いきなり名前を呼ばれた緑谷は、先程の一件で多くの者の標的になった峰田はともかく、何で自分まで名前を呼ばれるのかと、驚きの声を上げる。

 

「あのな、緑谷。お前の個性は間違いなく強力だ。それこそA組の中で見ても明らかにトップクラスの強個性と言ってもいいだろう」

「いやぁ……その、アクセル君に褒められると照れるんだけど」

 

 いや、このくらい褒めただけで、そこまで照られたら、それはそれで困るんだが。

 とはいえ、無理もないか。

 緑谷はその強力な個性が故に、身体が耐えられるまでは無個性として扱われてきた。

 10人に1が無個性の世の中ではあるだけに、無個性の者達は差別される事も多い。

 また、これで例えば顔立ちが整っているとか、もの凄い運動神経があるとかであれば、無個性は無個性であってもそれなりの道はあったのだろう。

 だが、緑谷はこう言ってはんだが決して顔立ちが整っている訳ではないし、素の運動能力も葉隠よりも下だ。

 それを思えば、緑谷が他人から褒められるような事は殆どなかっただろう。

 そんな人生だったたけに、今こうして少し褒められただけで照れるのも仕方がない事だった。

 とはいえ、この世界の原作の主人公であるのがほぼ間違いない緑谷だけに、鍛えないという選択肢はない。

 

「照れてる場合か? 緑谷の個性が強力なのは間違いない。間違いないが、今の緑谷はそれを使いこなせているとは、到底言えない。体育祭では峰田を……そしてA組が狙われる事になるのは確実だ。なら、緑谷を鍛えないという選択肢はないだろ」

「って、煽ったのアクセル君だよね!?」

 

 緑谷の突っ込みに、話を聞いていたA組の生徒の多くが頷く。

 いやまぁ、実際に間違ってはいないんだが。

 

「雄英のヒーロー科として、挑んでくる相手は倒すつもりで行動するのは当然だろう?」

 

 そう言うが、実際には違う。

 いや、今の言葉が全て嘘という訳ではないし、実際に俺はそのように思っている点があるのも間違いではない。

 だが……それを込みで考えても、緑谷を鍛えようとするのには別の理由があった。

 その理由が、USJの一件だ。

 後になって思ったのだが、恐らく相澤が脳無にやられている時、原作だと緑谷が助けた可能性が高い。

 であれば、シラタキや黒霧との戦いでも緑谷は苦戦しながらオールマイトが来るまでやり合っていた筈だ。

 だが……そこに、俺が乱入してしまった。

 本来なら緑谷の貴重な実戦経験……それも緑谷の様子から見ると、恐らくは初めての実戦となるのだろう行動を、俺が邪魔してしまったのだ。

 まぁ、実戦という意味ではちょっと話を聞いた限りだとヘドロヴィランの一件で爆豪が捕まった時に飛び出したりしたから、決して実戦経験がない訳ではないのだろう。

 ともあれ、その時は個性を使えた訳ではない以上、実戦に入れるのはどうかと思うし。

 ただ、まさか緑谷にお前はこの世界の原作の主人公の可能性は高いといったような事を言える筈もない。

 

「相澤も言っていただろう? いつまでもこのままでいい訳じゃないって。……緑谷は、今のまま個性をしっかりと使えなくてもいいのか?」

 

 USJの時も、黒霧によって転移させられた場所で個性を使ったらしいが、個性の反動で指の骨を折ったらしい。

 もっとも、怪我はそこまで重傷という訳ではなかったので、リカバリーガールによってすぐに治療を受けたらしいが。

 とはいえ、それでも個性の反動から被害を受けたのは間違いない。

 雄英の学生である今は、リカバリーガールがいるので個性の反動で多少の怪我をしてもすぐに治療して貰える。

 だが、それはあくまでも今……こうして学生をしている時だけだからだ。

 進学し、卒業し、プロヒーローとして活動しても個性を上手くコントロール出来ず、その反動で怪我をするというのはどうか。

 もし俺がヒーローに助けられる側だとしたら、とてもではないがそんなヒーローに助けて欲しいとは思わない。

 ……まぁ、今日俺と訓練をして、明日すぐに個性を完全に使いこなせるようになるという訳ではないが。

 それでも訓練をしないよりは、した方がいい。

 

「それは……」

「そんな訳で、緑谷は強制参加な」

「……分かった」

 

 緑谷も俺の言葉に完全に納得した訳ではなかったが、それでも自分の個性については色々と思うところがあるのだろう。

 最終的には俺の言葉を受け入れ、自主訓練に参加する事になる。

 

「アクセル、オイラも参加強制なのか?」

 

 緑谷が頷いたと思ったら、次に不満を口にしたのは峰田だ。

 

「当然だろ。……ちなみに自覚がないのか、それとも意図的に考えないようにしているのかは分からないが、今度の体育祭でどういう競技が行われるのかは分からないが、多人数が参加する競技だと、峰田は間違いなく他の科の生徒達に狙われるぞ」

「アクセルがそういう風に仕向けたからだろ!?」

 

 悲痛な様子で叫ぶ峰田だったが、教室に残っている生徒達から同情の視線はない。

 ……まぁ、他のクラスにも知れ渡るくらいに問題を起こしていたのだから、当然だろう。

 これがあるいは、問題を起こすのがA組だけだったのなら、また話は違ったのかもしれないが、残念ながらそういう事はない。

 であれば、峰田に同情の視線が向けられないのは当然だろう。

 あ、でも上鳴が微妙に同情の視線を向けているような感じだな。

 もっとも、それはあくまでも上鳴だけの話だが。

 

「仕向けたのはそうかもしれないが、峰田のいつもの行動が問題なかったら、ああいう風にはならなかったと思うぞ?」

 

 俺が拳藤と話したのを見ただけでブチ切れて突っ込んできた峰田。

 もしそういう事がなければ、俺も峰田に他の学生の敵意を集中させようとは思わなかっただろうし、あるいは日頃の行いに問題がなければ、A組の前に来た生徒達の敵意が峰田に向けられる事もなかっただろう。

 そういう意味では、やはり日頃の行いって大事だな。

 ……俺が言ってもあまり説得力はないかもしれないが。

 

「それは……オイラは、自分の信念を曲げねえ!」

 

 ドン、と。

 もし峰田がこの言葉を原作で言っていれば、恐らくそんな効果音があっただろう感じで言う。

 こういう状況になっても信念を曲げないというのは、素直に凄いと思う。

 凄いと思うが、それならその信念の結果を受け入れて欲しいと思うのは俺だけではないだろう。

 

「なら、その信念に従ってお前に挑戦してくる奴に対処するんだな。そして対処する為には実力を伸ばす必要がある」

 

 峰田はUSJで緑谷と一緒に行動していた。

 それを思えば、実戦経験を奪ったのは緑谷だけではなく、峰田にしても同様だろう。

 ……他にも梅雨ちゃんが一緒にいたが、梅雨ちゃんの場合は自分の実力を伸ばすのに躊躇しないだろうから、俺が何を言わなくても自主訓練には参加するだろうし。

 

「ううう……」

 

 俺の言葉に葛藤する峰田。

 峰田にしてみれば、どうやら今日の自主訓練には参加したくないらしい。

 今の件もあって、その気持ちも分からないではないが。

 だが、だからといって峰田をそのままにしておく訳にもいかない訳で。

 どうにかして峰田のやる気を出す……ああ、別にそう難しくはないな。

 

「いいか、峰田?」

「……なんだよ?」

 

 俺の言葉に、不満そうな様子を見せつつも聞く様子を見せる峰田。

 

「体育祭はTVで放映されるだろう? つまり、そこで目立てば峰田にもファンは出来る。当然女のファンもな」

「ぐ……それは……」

 

 俺の言葉に何かを耐える様子を見せる峰田だったが、俺はそこに追加の言葉を加える。

 

「自主訓練をやるには監督役が必要だけど、その監督役をミッドナイトに頼もう」

「おっしゃぁっ! お前達、いつまでもぼさっとしてんじゃねえぞ! オイラは自主訓練をやる気満々だぜぇっ!」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、峰田は言葉通りやる気満々といった様子で叫ぶ。

 ……それを見ているA組の生徒達、特に三奈達の視線が冷たかったが。

 そして何故か俺にまでそんな冷たい視線が向けられたものの、ともあれ峰田のやる気を出す事には成功するのだった。

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