転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4399話

 1年の生徒が全て会場に入場したところで、ミッドナイトが壇上の前に出る。

 俺達……というか、A組の中でも俺が行っている自主訓練に参加している者達は、ミッドナイトが監督をしてくれる事が多かったので、何気に接する機会は多い。

 ……何しろ、ミッドナイトがいるのといないのとでは、峰田のやる気が露骨に違う。

 実際、今も峰田はやる気満々……というか、欲望全開の目でミッドナイトを見ている。

 さっきまでは他のクラスの生徒達からの視線で胃が痛いとか言っていたのだが、今となってはそんなのは全く関係ない様子を見せている。

 これを見ただけでも、ミッドナイトという存在が峰田にどこまでやる気を出させる原動力となるか、分かるだろう。

 何だか常闇が『18禁ヒーローなのに高校にいてもいいのか』とか呟いているが、側にいる峰田が即座に『いい』と返しているのを見ても、峰田のやる気に火が点いたのは明らかだった。

 

「そこ、静かにしなさい! 選手代表、アクセル・アルマー!」

 

 ミッドナイトに指摘され、俺は前に出る。

 控え室での一件もあるので、A組の生徒達は俺が選手宣誓をやるというのに驚いた様子はない。

 ……他のクラスでは、俺が呼ばれた事に驚いている奴もいたが。

 いや、これは俺が選ばれた事に驚いた訳ではなく、俺の名前が日本風じゃなくて、明らかに外国人だから驚かれるのかもしれないな。

 まぁ、それはいい。

 俺は前に出る際に轟の横を通ると、その轟は俺に強い視線を向けていた。

 控え室の一件で、選手宣誓を聞けば分かると、そんな風に言ったからだろう。

 そんな轟の視線を……そして何気に強烈な爆豪からの視線も浴びながら、前に出る。

 轟はともかく、爆豪がああいう視線を向けてくるのは、もし自分が首席だったら選手宣誓をやるのは恐らく爆豪だったからだろう。

 セーフ。ギリギリ、セーフといった感じか。

 もし爆豪が選手宣誓をする場合、一体何を言うのか想像が出来ない。

 いや、爆豪の性格を考えれば、寧ろ容易に想像出来ると言った方が正しいか。

 だからといって、俺が問題を起こさないという訳ではないのだが。

 そうして皆の前に出ると、ミッドナイトと入れ替わるように壇上に立つ。

 

「宣誓、我々はスポーツマンシップに則り……」

 

 そこまで言うと、何故かA組の生徒の何人かが安堵している様子が見えたが……甘い。

 

「……という典型的な事は、聞かされる方も面白くないだろうから、少し語らせて貰う」

 

 そう言いながらミッドナイトに視線を向けると、特に止める様子もなく、それどころか満足そうな笑みを浮かべて頷いていた。

 ……ちなみにちょうど今の俺から真っ正面の観客席に龍子と優の姿があり、そこでは龍子が頭を抱え、優が嬉しそうに笑っている。

 もっとも、2人共私服ではなくヒーローコスチュームを着ているので、リューキュウとマウントレディと言った方がいいのかもしれないが。

 

「俺は端的に言って1年の中では最強だと思う。それは入試で首席だったり、個性把握テストの結果だったり、さっきプレゼント・マイク先生が言ったヴィランの襲撃の時に多くのヴィランを倒した事からも明らかだろう」

 

 そう言うと、話を聞いていた生徒達の多く、そして観客達の多くもキョトンとし、一体何を言ってるんだこいつはといった様子を見せる。

 まぁ、その気持ちは分からないではない。

 もし俺が話を聞く方であっても、恐らく同じように思うだろうし。

 とはいえ、壁としての立場を示すには絶好の機会だしな。

 

「A組の生徒は俺の強さを十分に知っていると思う。だが……同時に、他のクラスの生徒達は俺の強さを知らないだろう。だから、ここで宣言しておく。俺は壁だ。お前達の前にそびえ立つ、巨大な壁。お前達はそんな壁を前に、どうする? 登って越えるか、横を通り抜けるか、破壊しようとするか……それとも、壁を越える事を諦めるか。その選択は、人にどうこう言われたりするよりも自分で考えるべきだ。そして、諦めるなら諦めるでいい。だが、ヒーロー科の生徒であったり、ヒーロー科に編入を狙っている者なら、俺という壁を前に諦めない事を期待する。俺に挑む者がいることを期待しながら、選手宣誓を終わる」

 

 そう言うと、俺は壇上から降りる。

 周囲には、どこか微妙な……危険なと言い換えてもいいが、そんな雰囲気が漂っている。

 特に普通科の場所にいる、A組に宣戦布告に来た男は強い視線を俺に向けていた。

 へぇ……俺の言葉を聞いて、あれだけやる気満々の視線を向けてくるのか。

 宣戦布告をしてきただけの事はあるな。

 ちなみに他の生徒達も俺に向ける視線は厳しいものがある。

 ブーイングの類は起こっていないが、それはブーイングをする以上に苛立っているからなのか、この状況でブーイングをすれば俺に挑まなければならないと思ってなのか。

 その辺りについてはちょっと分からないが、とにかく多くの1年が……学科も男女も関係なく、俺に不満を抱いているのは明らかだった。

 とはいえ、全員がそうだという訳でもない。

 B組の中でも前にいた取蔭は、嬉しそうな様子で俺に笑みを向けているし。

 ……拳藤は呆れの視線を向けていたし、塩崎は何を思ったのか茨の髪をわなわなと震わせている。

 そして……A組の中では、轟が強い視線をこちらに向けており、爆豪は半ば敵意が混ざっている視線を俺に向けている。

 ヤオモモや三奈は、どこか困った視線を向けており、耳郎は呆れの視線を向けている。

 ……そんな中、唯一俺に感謝の視線を向けているのが、峰田。

 うん、まぁ……分からないでもないけど。

 先程までは他の学科の敵意の視線は峰田に集まっていたが、今はそのかなりの部分が俺に向けられており、自然と峰田に向けられる敵意の視線は減っている。

 峰田にしてみれば、俺が何を言ってもいいけど、自分に向けられていた敵意の視線が減ったのは、それだけ嬉しかったのだろう。

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう。これはいわゆる予選よ! 毎年、多くの者がここでティアドロップ……涙を飲むわ!」

 

 そう言いながら、壁にあるモニタが起動し、そして……

 

「運命の第一種目……それは、これ!」

 

 ドゥルルルルルル……ダダン、と。そんな音と共にモニタには『障害物競走』の文字が映し出される。

 

「障害物競走!?」

 

 緑谷が驚いたように言う。

 障害物競走は、別にそこまで驚くような事ではないと思うんだが。

 まぁ、その辺については俺がどうこう言うよりも、実際に始まってからの話だろう。

 とはいえ、他の生徒達も障害物競走という種目に、多かれ少なかれ驚いている者も多かったが。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周、約4km。雄英は自由さが売り文句。コースさえ守れば、何をしたって構わないわ。さあさあ、位置につきまくりなさい!」

 

 ミッドナイトの指示に従い、会場から……スタジアムから出る扉が、俺達が入ってきたのとは違う、外に出る為の扉が開く。

 そして信号っぽい奴。よくF1レースとかで使われる奴……名前はちょっと分からないが、とにかくその信号が灯っていく。

 多くの生徒達が、少しでも自分が有利になるようにと前に向かう。

 俺はそれを見て後ろの方で待機していた。

 

「おや、アクセル君だったよね? 何で君はここにいるんだい? ここにいるのは、その多くが経営科の生徒だよ」

 

 俺の近くにいた男が、そう声を掛けてくる。

 その言葉に周囲を見ると、なるほど。多くの生徒が決して運動が得意そうに見えない。

 もっとも、世の中には外見からは想像出来ないくらいに運動が得意な奴もいたりするが。

 ただ、俺に声を掛けてきた男の様子を見る限りだと、そういう感じではないらしい。

 

「わざわざ、あの人混みの中に突っ込みたいとは思わないな」

「……選手宣誓であれだけの事を言っておきながら、予選の第一種目で失格になったりしたら、笑いものになるよ?」

 

 それは俺を心配しての言葉なのか、それともそうなった方が面白いと思っての言葉なのか。

 その辺りは俺にも分からなかったが、周囲にいる他の生徒達もそれに同意するように頷いていた。

 

「予選で負けるつもりはない。寧ろ、この予選も1位で通過するつもりだよ」

「……なら、何故ここにいるんだい?」

「それこそ、さっきの選手宣誓で言っただろう? 俺は最強だ。なら、わざわざあんな人混みの中に入らなくても、ここからでも全く問題はない」

 

 そう言うと、俺に声を掛けてきた男も、周囲にいる他の生徒達も唖然とした様子で俺を見る。

 まさか、俺がそのようなことを言うとは思っていなかったのだろう。

 もしくは予想通りすぎて驚いたといった可能性もないではないが。

 

「もし賭けがあるのなら、俺は自分の優勝に賭けるんだけどな」

 

 ピクリ、と。

 俺と話していた男が賭けという言葉に微妙に反応する。

 こういう点では、さすが経営科といったところか。

 もっとも、自分達もこうして参加している以上、賭けをする訳にはいかないだろうが。

 

「そうなったら、その時の胴元は僕達がやりたいね」

「それについては……ああ、そろそろ始まるな」

 

 ランプを見れば、もうスタート直前だ。

 それを見ながら、俺は準備をする。

 とはいえ、別に何かこれといって特別な準備をする訳ではない。

 

「スタート!」

 

 ミッドナイトの声が周囲に響き、同時に生徒達が一斉に走り出す。

 スタートの門は狭く、途中で完全に詰まっている状況だ。

 それを見れば、やはり最初に門の近くまでいかなかったのは正解だったな。

 ……もっとも、それはつまり最初の関門とも呼ぶべき場所を通り抜けた者達はまだ詰まっている者達と比べても1歩も2歩も先んじた形になるのだろうが。

 

「さて、じゃあ俺も行くよ」

「……あそこに行くのかい? 気を付けて」

 

 経営科の男の言葉は、少し意外だった。

 それこそ俺の選手宣誓を聞いて、不機嫌に思っているのではないかと思っていたのだ。

 普通に俺と話をしていたのも、経営科だからこそ俺に嫌悪感を抱いても、それはそれで、俺という首席の人物と知り合っておくのを優先したのではないかと、そのように思っていたのだが。

 もしかしたら、経営科の生徒はヒーロー科に受からなかった者は少なく、最初から経営科1本でやってきた者達が多いのかもしれないな。

 

「ああ。じゃあ、またな」

 

 そう言い、俺は門に向かって走り出す。

 当然ながら、そうなればまだ門の前にいる生徒達との距離が縮まる。

 後ろの経営科の生徒達の口から一体どうするのとかといったような言葉が聞こえてくるが……

 

「こうするんだよ」

 

 そう言い、俺は門に群がっている生徒達の中の一番後ろの生徒から少し離れたところで、跳躍する。

 それだけなら、普通に考えれば門の前に集まっている生徒達の中に落ちるだろうが……虚空瞬動を使い、空中を蹴る。

 そのまま数度虚空瞬動を使って、門の前に集まっている生徒達の頭上を移動していく。

 

「おわぁっ!」

「何だ!?」

「おい、あれ!」

「うわっ、ずっけぇっ!」

 

 俺が通りすぎるとそんな声が聞こえてくるが、それは特に気にする必要はない。

 そもそも、空を飛べる個性……いや、俺の場合は空を跳べる個性か。もっとも、個性じゃなくて技術、スキルだけど。

 とにかく、こうして門の側に人が詰まっている状態なら、詰まっていない場所を通ればいいだけだ。

 それでいながら、門を通らないのはミッドナイトが言っていたコースさえ守ればといった事から失格になる可能性もあるので、きちんと門を通る。

 虚空瞬動を使って移動する俺は、あっさりと門から外に出る事に成功する。

 ここまで来れば、普通科や経営科、サポート科といった面々の数は大分少なくなり、ヒーロー科のA組の生徒や、見覚えがないが恐らくはB組の生徒なのだろう者達の姿を確認出来る。

 ただ……少し疑問なのは、何だかB組の生徒の多くは先頭ではなく、そこから少し後ろ。マラソンでいう第2集団的な場所に固まっている事か。

 ただの偶然という可能性もあったが、個性というのは千差万別。

 だというのに、B組だけが固まっているのはちょっと疑問だな。

 とはいえ、ここで何でそんな事をしているのかと言っても、B組に何か考えがあるのなら、そう簡単に答えたりはしないし。

 それに……B組が固まっているとはいえ、それは別にB組全員がという訳ではない。

 真っ先に出たらしい轟を追うようにA組の面々が走っているが、その中にはB組の塩崎の姿もある。

 塩崎の様子を見れば、別にB組全員が何らかの意思で動いている……といった訳ではないのだろう。

 もっとも、塩崎を先行させるのがB組の目的であるという可能性はある以上、決めつけるのはどうかと思わないでもなかったが。

 そんな風に思いながらも、俺は虚空瞬動を使って生徒達の頭上を移動していく。

 轟を追うA組の面々も追い抜きそうになったところで……

 

「させるか、このヒモ野郎がぁっ!」

 

 爆豪が手から放つ爆発を使って空中を跳び、俺の方に突っ込んでくるのだった。

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