転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4403話

「15分経ったわ。それじゃあ、いよいよ始めるわね」

 

 ミッドナイトがそう言うと、騎馬戦に参加する多くの者達がそれぞれにやる気を見せる。

 全員が、まさに気合い十分といった様子だ。

 

『さぁ、起きろイレイザー。15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに騎馬が揃ったぜ』

『なかなか面白い組が揃ったな』

 

 プレゼント・マイクと相澤の会話が聞こえてくる。

 どうやら最初の障害物競走に続いて、この騎馬戦でも解説とかそんな感じの事をやるらしい。

 まぁ、1年の体育祭だけに、それを見ている者達にとっては誰がどういう個性を持っているのかとか、そういうのは分からないしな。

 それを説明する為に、プレゼント・マイクは今日こうして1年の担当をしているのだろう。

 

『さあ、上げてけ鬨の声! 血で血を洗う雄英の合戦が今、狼煙を上げる! 行くぜ、残虐バトルロイヤル、カウントダウン!』

 

 そう言い、プレゼント・マイクはカウントダウンを始めていく。

 

「取りあえずは予定通りだ。……敵からこっちに来てくれるのなら、寧ろありがたい。そうなったら、俺の方からしっかりとお持てなしをしないといけないからな」

「……アクセルのお持てなしって、受けたくねえ……まぁ、アクセルなら虚空瞬動だったか? それがあるから大丈夫だとは思うけど、いざとなったら俺がテープを伸ばすから、それに掴まってくれ」

 

 瀬呂の言葉に、分かったと頷く。

 実際、虚空瞬動が使えるのなら地面に落ちるといった心配はない。

 心配はないのだが、それでも瀬呂にしてみれば念の為にそう言ってきたのだろう。

 

「分かっている。三奈は酸を使って近付いてくる騎馬を転ばせたりしてくれ」

「任せて!」

「葉隠は、この競技だとあまり使い道はないから仕方がないけど、怪我をしないように注意してな。ただ、透明なのを使って相手を混乱させるとかはありかもしれないな」

 

 葉隠は体操服を着ているので、透明の個性を存分に発揮するのは不可能だ。

 だが、それでも体操服が浮かんでいるのを見れば、何も知らない相手は驚いて動きが止まったりしもおかしくはない。

 

「うん、分かった。あまり活躍出来ないかもしれないけど、頑張るね」

 

 そう言う葉隠は、少しだけ残念そうだ。

 個性把握テストの時もそうだったが、透明という個性はかなり強力なのは間違いないが、それを有効利用するのは難しいのも事実。

 実際にプロヒーローとして活動するのなら、透明という個性はもの凄く便利そうな気がするんだが。

 

『1……0、スタート!』

 

 プレゼント・マイクの合図により、騎馬戦が開始される。

 そして、B組の生徒が2組、俺に向かって突っ込んで来る。

 まずは2組か。

 一気に5組、10組といった数が襲ってくるよりは、2組ずつ襲ってきてくれた方がこっちとしてはやりやすい。

 

「うおっ!」

「きゃあっ!」

「わぁっ!」

 

 不意に瀬呂、三奈、葉隠がそれぞれそんな悲鳴を上げる。

 何だ? と思って下を見ると、3人の足が地面に沈んでいってるのが見えた。

 誰か……いや、誰かじゃないな。こっちに向かって来ている2組の騎馬のどちらかを構成している者の個性だろう。

 

「ちょっ、おい、アクセル。どうする!?」

「取りあえずハチマキを奪ってくるから、そこで待ってろ。多分そこまで深くは埋まらないだろうし」

 

 ミッドナイトが言っていたように、露骨に騎馬を攻撃するのは禁止されている。

 騎馬が動けない……もしくは動きにくくなる程度のものならともかく、地面に完全に埋めるような事はしないだろう。

 

「いきなり動けなくなるとか、何それー!」

 

 三奈が不満そうな様子で叫んでいるが、戻ってくる場所が固定されたと考えれば、この状況は決して悪くはない……と思う。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくる!」

 

 そう言い、俺は空中に跳び出す。

 

『おおっと、1000万ポイントを持つアクセルがいきなり跳び出したぞ!?』

 

 プレゼント・マイクの驚きの声が響く。

 俺が虚空瞬動といった技術が使えるのは、雄英の教師の間では既に周知されている筈だ。

 プレゼント・マイクも当然ながらその辺りの事情については知っている筈だろうに、それでもこういう風に言うのは……恐らく、盛り上がりを考えてのものだろうな。

 実際、プレゼント・マイクのその言葉で観客がざわめいているし。

 何も知らない観客達にしてみれば、俺が自分から騎馬を下りたように見えるのだろうが……次の瞬間、虚空瞬動を使って空中を蹴った俺を見て、観客達がざわめく。

 そして俺が向かったのは、こちらに向かってくるB組の騎馬の1つ。

 もっと言えば、2週間前にA組の前に来て、拳藤に殴られていた奴だ。

 

「おら、来いやぁっ!」

 

 俺が向かってくるのを見て取ったその男は、やる気満々といった様子で叫ぶ。

 なら、丁度いいという事で、そのまま真っ直ぐに進み……

 

「うらぁっ!」

 

 俺の頭に巻かれているハチマキを取ろうと……いや、これは寧ろ俺を殴ろうとしてないか?

 とにかくそんな感じで俺に向かって拳を振るってくる。

 だが、俺はそんな相手の攻撃を回避しつつ、素早く相手の額に巻かれているハチマキを奪う。

 

「は?」

 

 男は、一体自分が何をされたのか分からない様子で、そんな声を上げる。

 それでいながら、次の瞬間には俺は再び虚空瞬動を使い、もう1組のB組に向かって突っ込む。

 

「んっ!」

 

 巨漢の上に乗っている小柄な女が、近付いてくる俺を見て小さく呟く。

 すると次の瞬間、巨漢から液体状の何かが放たれる。

 咄嗟に虚空瞬動でその液体を回避しつつ、連続で使うことによって三角跳びに近い感じで騎馬との距離を詰め……

 

「ん!」

「は!?」

 

 女が何かを投げたかと思うと、不意に巨大な丸形の盾……まるでUC世界でギャンが使っていたような、そんな丸い盾が……いや、違う。これは盾じゃなくてボタン? それも巨大なボタン? 一体何がどうなって……個性以外にないか。

 恐らく、騎手をやっている女の個性なのだろう。

 だが……目眩ましとしてはいいが、結局ボタンはボタンでしかない、

 そのボタンを掴むと、そのまま適当に放り投げる。

 

「うわぁっ! 何だこれ!?」

 

 そんな悲鳴が聞こえてきたが、それはスルー。

 そのまま騎手の女に近付くと、横を通り抜けざまにハチマキを奪っていく。

 最初にやってきた2組の騎馬をこうして片付け、再度虚空瞬動を使って元の場所に……俺の騎馬となっている面々のいる場所に戻っていく。

 

「さすがアクセルだな。もうハチマキ2つゲットか」

「このくらいはな。それで、地面はどうだ?」

 

 騎馬の上に着地したところで尋ねるが、その問いに返ってきたのは三奈の言葉だった。

 

「駄目。足が沈んだままで動けない」

「でも、アクセル君がいないから襲ってくる人がいなかった……んだけど……」

 

 三奈に続いて葉隠がそう言ってくる。

 最後に言い淀むのを見て周囲を見れば、なるほどそれなりの数が俺達を取り囲んでいるな。

 とはいえ、それでも今まで攻撃を仕掛けてこなかったのは、俺がいなかったからだろう。

 この騎馬戦、当然ながらポイントとなるハチマキをゲットするには、騎手のハチマキを奪う必要がある。

 また、ミッドナイトからも騎馬に対する過剰な攻撃は禁止で、もし破った即座に失格と念押しすらされていた。

 そのような状況で、俺のいない騎馬を攻撃するといったことは出来ない。

 つまり、俺が虚空瞬動で騎馬から離れている間、騎馬は安全になる訳だ。

 

「俺が戻ってきたら、スタートってか。……ああ、お前ならそうするか」

「ヒモ野郎っ、てめえのハチマキを寄越せやぁっ!」

 

 まるでこちらのタイミングに合わせるかのように、爆豪が空を飛んで……いや、跳んで俺に向かってくる。

 爆豪にしてみれば、強烈な対抗心を抱いている俺に挑む好機だ。

 選手宣誓で俺が他の生徒達よりも格上だと宣言し、障害物競走ではそれを示すかのようにダントツで1位。

 それと比べると、爆豪は轟は勿論、緑谷にも負けて4位で、ベスト3にも入る事は出来なかった。

 俺だけならまだしも、見下していた緑谷にも負けたのだからこそ、それによって爆豪のプライドはこれ以上ない程に傷ついただろう。

 その傷ついたプライドを回復する為に、こうして俺に挑んでくるのは、爆豪の性格から考えておかしな話ではない。

 とはいえ、どうせなら原作主人公である緑谷に攻撃をして欲しかったというのが正直な気持ちだったりしたのだが。

 

「さて、じゃあ行ってくるか」

「待った。アクセル、どうせなら俺達にも援護させてくれよ」

「そうそう。アクセルだけに任せっぱなしってのはどうかと思うしね」

「……いいなぁ、2人とも」

 

 瀬呂と三奈が援護をすると言い、この状況では何も出来ない葉隠はそれを羨ましがる。

 とはいえ、騎馬戦は葉隠の個性に合わない競技だったのだから、そういう風に思っても仕方がない。

 どの競技にしろ、必ずその競技に合わない者というのはいるのだから。

 

「分かった、任せる」

 

 既に爆豪はこちらに向かって突っ込み、爆破によってコースを微調整しながら向かって来ていた。

 そんな爆豪に対し、最初に瀬呂のテープが放たれる。

 瀬呂のテープは爆豪に向かって一直線に飛び……

 

「けっ!」

 

 そんな一声と共に、あっさりと爆豪に回避される。

 

「だと思ったよ!」

 

 しかし、爆豪が回避するのは瀬呂にとっても予想通りだったらしい。

 そんな爆豪に向かって飛ばしたテープを激しく動かす。

 テープの発射部位である手……いや、肘か。その肘を激しく動かせば、当然ながらテープもまた動く。

 ただし、騎馬である瀬呂が片手を個性に使う以上、当然ながら騎手である俺を支える負担が厳しくなるのだが……その辺は、瀬呂もしっかりと鍛えているので、長時間はともかく、短い時間であれば問題はないらしい。

 

「ちぃっ! 醤油顔がっ!」

 

 そう言いながら、爆豪は追加で爆発を起こして不規則に波打つテープから距離を取る。

 

「じゃあ、次は私だね。いっくよぉっ!」

 

 その言葉と共に、三奈も手を大きく振るう。

 するとその動きに合わせるように酸が放たれる。

 とはいえ、三奈もまさか相手に怪我をさせる濃度の酸を放ったりはしないだろう。

 ……爆豪を相手にしたのなら、そういう酸を放っても問題ないとは思うが。

 ただ、恐らくは滑る系の酸か、もしくは目潰し的な意味での酸か。

 ともあれ、それがどのような酸であっても……

 

「うざってぇんだよ、黒目ぇっ!」

「ちょっ、黒目って私の事!? 酷くない!?」

 

 爆豪の言葉に三奈が抗議の声を上げるが、それを聞いた俺の姿は既に空中にあった。

 虚空瞬動を使い、爆豪に向かっていく。

 爆豪もまた、瀬呂と三奈の攻撃で体勢を崩してはいたが、それでも手の中で爆発を起こして体勢を整え、こちらに向かおうとする。

 だが、虚空瞬動を使った俺に対して、その余分な動作は致命的ですらあった。

 一瞬にして爆豪との距離を縮めた俺は、素早く爆豪のハチマキを奪う。

 ……額に結ぶのではなく、ネックレスか何かのように首に掛けていたので、奪う時の動きは慎重に行う必要があった。

 何しろ俺の力は強力だ。

 下手にハチマキを引っ張って奪おうとしたりすれば、その瞬間には爆豪の首の骨が折れてもおかしくはないのだから。

 首より上にハチマキはしないといけないとミッドナイトは言っていたが、どうせなら頭に巻かなければならないとかにして欲しかったな。

 異形系が何人かいるから、その対策という意味もあるのだろうけど。

 ともあれ、上手い具合に爆豪のハチマキを奪うとそのまま蹴りを放ち……可能な限り手加減をして、爆豪の騎馬の方に吹き飛ばす。

 

「てめえええええええぇぇっ!」

 

 ドップラー効果染みた叫びを上げながら吹き飛んでいく爆豪。

 ともあれ、こうして爆豪のハチマキも入手した俺は、そのまま騎馬に戻ろうとし……

 

「っと!」

 

 こちらに向かって来た騎馬の騎手をしている耳郎のイヤホンがこちらに伸びてくるのを回避する。

 耳郎のイヤホンは、細くてそれでいながらかなりの頑丈さを持つ。しかも動かすのに特に音がする訳でもないので、こういった感じで隙を突くのに向いている。

 ただ、そういうのだと分かっていれば、対処するのは俺にとって難しくはない。

 

「避けられた!? さすがアクセル。だけど!」

 

 1本が無理なら、もう1本。

 耳郎のイヤホンは、両耳から伸びている。

 今のように1本が無理であっても、もう1本でと、伸ばしてくる。

 だが、イヤホンは隠密効果は高いものの、速度そのものはそこまで高い訳ではない。

 イヤホンが伸びてきた時、既にそこに俺の姿はなく、騎馬の上に戻っていた。

 

「爆豪からあっさりハチマキを奪ったのはさすがだな。けど……」

「ねぇ?」

「うん」

 

 瀬呂が微妙に言葉を濁し、とある方向……爆豪の騎馬を見る。

 三奈と葉隠もそれに同意するようにして、そちらを見る。

 そんな3人の様子に俺も爆豪の騎馬に視線を向けると……そこには、とてもではないがヒーロー科の生徒とは思えないような、ヴィランそのものといった様子の表情の爆豪の姿があった。

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