転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4405話

 俺の騎馬が地上に戻った瞬間、こちらに……騎馬に乗っている俺に向かって氷が飛んでくる。

 それは誰がやったのかは、考えるまでもないだろう。

 こちらがそれを見た瞬間、俺は騎馬を離れる。

 瀬呂、三奈、葉隠で作られた騎馬の上に俺がいれば、俺に向かって行われた攻撃に騎馬が巻き込まれる可能性は十分にある。

 それについては絶対に避けたいので、こうして空を跳んだのだが……

 

「は? うおっ!」

 

 いきなり俺の前に手が現れ、それを見た瞬間、反射的に虚空瞬動を使ってその場から離れる。

 すると一瞬前まで俺の頭があった場所を、手が通りすぎていく。

 ……そう、手だ。

 空中に浮かんでいたのは、あくまでも手だけ。

 手首や腕、肩、胴体……そんな物は一切存在しない、本当に手だけ。

 何だ、これ?

 

「あはは、驚いた?」

「っ!?」

 

 少し離れた場所から聞こえてきた声に、虚空瞬動で移動する。

 そうしながら、一体何なんだ? とそちらに視線を向ければ、そこには口だけが浮かんでいた。

 ……それが一体誰の仕業なのかは、聞こえてきた声ですぐに分かった。

 なるほど、これが取蔭の個性か。

 取蔭……トカゲ、か。

 このヒロアカ世界においては、名前が能力の一端を示す事が多い。

 そうなると、取蔭もまたトカゲという意味でなのだろう。

 同じような感じの能力では個性が蛙という梅雨ちゃんがいるが、取蔭の場合は個性がトカゲでトカゲらしい事が出来るといったものではなく、トカゲの能力の一つ……いわゆるトカゲの尻尾切りって奴だな。

 もっとも、俺の知っているトカゲの尻尾切りと取蔭の個性は微妙に違うが。

 ただ、個性である以上はあくまでもそれに似ているというだけで、実際には色々と違うのだろう。

 ともあれ、取蔭は身体の一部を切り離し……しかもただ切り離すだけではなく、それを自由に操れるといった個性らしい。

 かなり優秀な個性だな。

 単純に手数を増やせるといった意味でも強力だし、口で喋るといったことが出来るのなら、目だけを切り離して空中を飛ばし、それによって偵察出来たりといった事も出来る訳だし。

 そう言えば、取蔭は推薦入学だっていつだったか、朝の通学の時に拳藤が言ってたな。

 A組の推薦入学は創造の個性を持つヤオモモ、氷の個性を持つ轟だ。

 ……轟は氷以外に炎も使えるようだったが、今まで見た限りでは基本的に氷しか使っていない。

 とにかく、ヤオモモ、轟、取蔭と今年の1年の推薦入学者が4人中3人がこの場に集まっている訳だ。

 もう1人、B組に推薦入学者がいる筈だったが、それについては聞いていないので分からない。

 取蔭の件について聞いたのも、取蔭と俺が知り合いだからという事で通学の途中で話題になり、それで拳藤から教えて貰っただけだし。

 ともあれ、取蔭の攻撃を回避しつつ轟に向かう。

 今の俺にしてみれば、轟よりも取蔭の方が厄介なんだが、取蔭がどこにいるのか分からないしな。

 なら、今は見える場所にいて、ハチマキを大量に持っている轟を襲撃してハチマキを奪った方がいい。

 そう判断して轟を見ると、轟と視線が合う。

 轟もまた俺に狙われていると、判断したのだろう。

 即座に氷の盾を自分と俺との間に作る。

 

「八百万、飯田!」

 

 即座に指示を出すと、ヤオモモが巨大な金属の板を作り、こちらの視線を遮り……飯田のエンジンの個性を使い、素早く遠ざかっていくのが見えた。

 おいおい、俺に挑みに来たんじゃなかったのか?

 そう思ったが、今この状況で俺をやり合うのは厳しいと判断したのだろう。

 俺や爆豪、あるい取蔭のように空中を移動出来る方法がある分けでもないし。

 氷で空中に道を作るといったことは出来るかもしれないが、騎馬でそのような場所を移動するのは無理があるだろうし、かといって轟だけで氷の道を移動する場合、地面から伸びている氷の道に触れるのがアウトの可能性もある。

 恐らくは轟はそれで失格になるのを避ける為に、氷の道を作って自分で俺に挑むといった事をしなかったのだろう。

 ……あるいは、単純に俺を相手にして勝ち目がないと判断して退いたのかもしれないが。

 となると、まずは轟に足下を凍らされた奴の中でハチマキが奪われていない相手からハチマキを奪っていくか。

 そう判断し、虚空瞬動を使って地面を蹴り、幾つかの騎馬からハチマキを奪う。

 そして最後に狙ったのが……

 

「は?」

 

 俺が最後に狙ったのは、障子。

 障子なんだが……あれ? 1人?

 騎馬戦で1人ってのは、ありなのか?

 戸惑いつつもよく見れば、障子の頭部にハチマキはない。

 障子の場合は身体をある程度自由に変形させられる、1人VF状態とでも呼ぶべき個性なので、もしかしたら身体を上手く変形させることでハチマキを隠しているのかもしれないと思ったが、ハチマキは首から上というルールがあるのを考えると、それも違うか。

 そんな風に思ってると、不意に障子の肩の上……というか、中? 肉体を変化させて肩の上で盛り上がっている部分から何かが放たれる。

 その一撃を回避し……なるほど、そうきたかと納得する。

 障子の肩の隙間から放たれたのは、俺にとっても見覚えのあるもの。

 普段は耳郎のイヤホンと同様、峰田や上鳴に向かって放たれる事が多いそれ。

 小柄な身体の梅雨ちゃんと、身体をある程度自由に変形させられる障子。

 この2人がいれば、鉄壁の防御と呼ぶべき今のような状況にする事も出来る訳だ。

 とはいえ、これは厄介だな。

 ハチマキを持つだろう梅雨ちゃんからハチマキを奪うには、障子の肩の防壁をどうにかする必要がある。

 だが、場合によってはそれが騎馬に対する大きな攻撃と見なされる可能性もある訳で……

 

「オイラもいるぞ、アクセルぅっ!」

 

 どうするか迷った一瞬。

 その一瞬の隙を突いたかのように、障子の肩の防壁が少しだけ開き、そこから俺にとっても見覚えのある物体……モギモギが飛んでくる。

 

「だと、思ったよ!」

 

 そう言い、虚空瞬動で逃げる。

 小柄な梅雨ちゃんがいるのなら、A組の中で最も小柄な峰田が同じようにそこにいてもおかしくはない。

 それに障害物競走の時、峰田は梅雨ちゃんにひっついてゴールしていたし。

 そういう関係もあって、峰田、梅雨ちゃん、障子が騎馬を組んでいても不思議ではない。

 

「うわぁっ!」

「ちょっ、デク君。バランスが!」

「俺がダークシャドウで!」

「大丈夫、私のベイビーがあればこの程度!」

 

 離れた場所から聞こえてきた声に、虚空瞬動で移動しつつ視線を向ける。

 するとそこには、一体どうやってか浮かんでいる緑谷の騎馬があった。

 ……いや、緑谷の騎馬は、緑谷、常闇、麗日、後は初めて見る女が1人。

 となると、麗日の個性によって浮かんでいるのだろう。

 ただ、麗日の個性はあくまでも浮かぶだけで、空を自由に飛ぶといったことは出来ない。

 となると、それをやったのは他の3人の誰か……いや、緑谷の増強系や、常闇のブラックシャドウというモンスター的な存在を自由に操る個性では、空を自由に移動することは出来ないだろうから、恐らくあの見知らぬ女の個性によって移動しているのだろう。

 ともあれ、そうやって空中を俺に向かって近付いてきていた緑谷の騎馬だったが、どうやら見る限り速度そのものはそこまで出せる様子もなく、俺が回避した峰田のモギモギが見事に常闇に命中していた。

 ……もっとも、峰田のモギモギはあくまでも何かと何か、誰かと誰かをくっつけるといった能力で、1人だけがそれに触れたところで、意味はない。

 それこそ、今の常闇のように。

 少しだけ見た目が間抜けなのはどうかと思うが。

 とにかく、今の常闇もこのままでは特に問題がない。……誰かが常闇のモギモギに触れたりしたら、話は別だったが。

 そんな事を考えつつ、虚空瞬動を使って瀬呂達の騎馬に戻ろうとしたところで……

 

「おら、待てやヒモ野郎がぁっ!」

 

 ちょうどそのタイミングを待っていたかのように、爆豪が襲撃してきた。

 あれ? さっきまでお前B組の騎馬と戦ってなかったか?

 そう思ったが、爆豪が新しいハチマキを手に入れているのを見れば、もう先程やり合っていたB組の騎馬からハチマキを奪ったのは間違いないのだろう。

 そうしてハチマキを奪ったので、改めて俺を襲撃してきたらしい。

 

「デク、どけやごらぁっ!」

 

 俺が移動した結果、緑谷の騎馬が邪魔になったのだろう。

 叫ぶ爆豪に、緑谷は半ば反射的に道を譲る。

 これが、例えば爆豪の狙いが緑谷……より正確には緑谷の持つハチマキであれば、緑谷も爆豪にも立ち向かったかもしれない。

 だが、爆豪の狙いは俺である以上、緑谷はわざわざここで自分が爆豪の相手をするまでもないと判断したのだろう。

 実際、その判断は間違っていない。

 緑谷の騎馬が移動した結果、爆豪は緑谷は無視して俺に向かって一直線にやって来たのだから。

 

「くたばれ、このホスト野郎がぁっ!」

 

 そう言いつつ、掌で生み出した爆発を俺に向けて放ってくる爆豪。

 それはいいが、ヒモかホストかどっちかにしてくれないかなと思いつつ、虚空瞬動を使って爆破を回避しながら爆豪との距離を詰める。

 

「けっ!」

 

 自分に向かってくる俺を見て、獰猛な笑みを浮かべる爆豪。

 爆豪にしてみれば、さっきのやり取りは決して満足出来るものではなかったのだろう。

 いやまぁ、自分のハチマキを奪われたのを思えば、それで満足しろという方が無理かもしれないが。

 近付く俺に向かい、片手を後ろに回して爆破を起こし、俺との間合いを一気に詰めてくる。

 そして、もう片方の手で俺に一撃を放とうとするも……

 

「残念」

 

 虚空瞬動を使い、その場で一瞬……1秒にも満たない時間を稼ぐ。

 たかが1秒、されど1秒。

 戦いの中において、1秒というのは非常に大きな意味を持つ。

 実際、爆豪が振るった拳はその1秒で間合いを外され……へぇ。

 空振った拳の一撃で爆発を起こし、それを起点に回し蹴りを放つ爆豪。

 咄嗟にこういう風に動けるというには、爆豪の高い戦闘センスを感じさせる。

 やっぱり爆豪は、才能という意味で間違いなくA組でも……いや、B組を合わせてもトップクラスなんだよな。

 峰田に才能マンと呼ばれるだけの事はあるよな。

 ……その才能についても、普段の言動で台無しになってしまっているが。

 とはいえ、それでも……

 

「甘い」

 

 何故そこで回し蹴りを選ぶのか。

 いや、蹴りの威力が高いのは知っているし、それはそれで分からないではない。

 だが蹴りは威力が高いが、命中させるのは簡単ではない。

 爆豪のセンスがあれば攻撃を命中させるのは難しくはないだろうが、それは俺以外の場合だ。

 そんな大振りの一撃に当たる程に俺は鈍くない。

 あっさりと爆豪の回し蹴りを回避し、同時にこちらに向かって放たれる一撃を回避しつつ手を伸ばし……

 

「2度もやらせるかよっ!」

 

 そんな俺の手の一撃を、爆破を使って回避する。

 へぇ。

 爆豪にとって、今の動きは計算通りだったのかもしれないが……それでも、俺から見れば甘い。

 引き戻した手を再び放ち、爆豪のハチマキを奪い取る。

 

「てめぇっ! 返せやゴラァッ!」

 

 ハチマキを奪われたのを理解したのだろう。

 爆豪は無理にでもこちらに手を伸ばし、俺が奪ったハチマキを奪い返そうとするが……

 

「また、ハチマキを持ってきてくれ」

 

 そう言、爆豪に向かって蹴りを放つ。

 ただし、それは蹴りは蹴りであっても、爆豪にダメージを与えるような蹴りではなく、押すような、あるいは吹き飛ばすかのような、そんな蹴りだ。

 その蹴りによって強制的に地上に……より正確には爆豪の騎馬に向かって移動する。

 爆豪はそんな俺に向けて、顔だけを向けて睨み付けてくる。

 強烈な不満を向けてくる爆豪だったが、俺はそんな爆豪に向かって軽く手を振り……次の瞬間、ギンッという擬音が相応しい眼力で先程以上に睨み付けてくる爆豪。

 だが、そのまま俺に向かって襲ってくるのかと思いきや、それ以上は何もせず、大人しく……そのまま自分の騎馬に向かう。

 途中で何度か爆発を起こし、微調整をして騎馬の上に降り立つ爆豪。

 へぇ、爆豪の性格を考えると、てっきりまたこっちに突っ込んで来るかと思ったんだが、どうやら今は自分の騎馬に戻る事にしたらしい。

 それが、爆破を連続で使う回数に限界があるのか、それとも口調や態度とは裏腹に頭の中は冷静で、この状況で何度俺に突っ掛かっても勝てるとは思わなかったのか。

 ……いや、爆豪の性格を考えると、勝てないと思ってもそれを素直に認めるとは思えない。

 だとすれば、やはり個性の限界とかそんな感じなのか?

 そんな風に思いつつ……

 

「だから、甘いって」

 

 こちらに向かって飛んできた取蔭の手を蹴り、遠くに向かって弾き飛ばす。

 どうやら俺が爆豪と戦っている隙を突こうとしていたらしい。

 取蔭の厄介なところは、身体の一部という事もあって、気配を察知するのがかなり難しいということだ。

 これが先程の緑谷のように集団で動いているのなら、気配の察知も簡単なのだが。

 ……ちなみに、その緑谷は、爆豪とのやり取りを見て俺からハチマキを奪うのを諦めたのか、今は障子の騎馬とやり合っている様子だった。

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