転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4406話

「おかえり、アクセル」

 

 騎馬に着地すると、三奈がそう言ってくる。

 それはいいのだが、どこか得意げな様子なのは、一体何がどうなってそうなったんだ?

 

「何かあったのか」

「ふふん。ほら、動けるようになったのよ」

 

 自慢げな様子で三奈が言う。

 え? と思って視線を下に向けると、なるほどこちらの騎馬が動いている。

 

「一体どうやって?」

 

 周囲を見た感じ、まだ多くの騎馬は動けていない。

 それは、俺が他の騎馬からハチマキを奪ってきたのだから明らかだ。

 もし騎馬がもっと自由に動けるのなら、それこそ俺にハチマキを奪われまいとして抵抗していただろう。

 だが、そのような抵抗をする様子は一切なかった。

 ……いや、実際には色々と抵抗をしてきた者達もいたが騎馬が動けない状態では俺に抵抗出来なかったというのが正しいだろう。

 だが、三奈、葉隠、瀬呂の3人で作られた騎馬は普通に動けている。

 

「アクセルは私の個性を忘れたの?」

 

 三奈の言葉に、なるほどと納得する。

 三奈の個性は酸。

 つまり、氷に酸を使って氷を溶かしたのだろう。

 ……あれ? でも酸に氷を入れると即座に溶けるけど、化学反応によって周囲の気温が下がるじゃなかったか?

 いや、これは硫酸ならの話で、三奈の酸は別に硫酸ではない……というか、個性によって生み出された酸と考えれば、硫酸とは似て非なるものなのかもしれないな。

 

「寒くならなかったのか?」

「……微妙に寒くなった気はするけど、今は燃えているから大丈夫。とはいえ、酸で氷を溶かすって案は透に教えて貰ったんだけど」

「あはは。ちょっと思いついただけだよ。私は三奈ちゃんや瀬呂君のように騎馬戦では役に立たないから、こうして頭を使うくらいしか出来ないし」

 

 葉隠の言葉に、三奈と瀬呂が何と言ったらいいのか分からないといった様子を見せる。

 どうやらこの感じだと、三奈も瀬呂も酸を使って氷を溶かすといったことを思い浮かべられなかったことを悔しく思っているのだろう。

 とはいえ、三奈と瀬呂は酸とテープを使って俺の援護をしたり、周囲の様子を警戒して近付いてくる相手には対応するべく準備をしていた筈だ。

 そういう意味では、この状況では特に何かやることがある訳でもない葉隠が、どうにかして自分達が動けなくなっている理由の氷に対処しようと考えるのは、そうおかしな話ではない。

 

「よし、じゃあ取りあえずここから離れよう」

「……氷のお陰でぬかるんだ地面からも動けるようになったけど、それでもここにいた方がいいんじゃない? 私達がアクセルの足場となっているんだし」

「三奈の言いたい事も分かる。けど……ぶっちゃけ、ここにいる理由がもう殆どないしな」

「え?」

「あー、ほら。アクセルがさっき色々と動き回っていただろ? その前には轟が。その時、この周辺にいる騎馬のハチマキは全部奪ってるんだよ。つまり、俺達がこのままここにいても、こっちはハチマキを奪う事が出来なくて、相手から一方的に狙われるって訳」

 

 瀬呂の説明に、三奈と葉隠は納得した様子を見せる。

 実際、瀬呂の説明は間違っていないのだから、俺もそれに異を唱えたりはしない。

 

「そういう訳だ。周囲にハチマキを持っている獲物がいないのに、このままここにいたら一方的に狙われるだけになるだろうし」

 

 俺が虚空瞬動を使って騎馬の上にいなければ、騎馬が攻撃されるようなこともないだろう。

 だが、俺だけが目立つというのも、それはそれでどうかと思う。

 この辺、難しいところだよな。

 俺はしっかりと壁として1年最強の存在であると見せつけると同時に、俺と騎馬を組んでくれた三奈達の実力をしっかりと観客達に見せる必要もある。

 何しろ雄英の体育祭は、プロヒーローがインターンで希望する生徒とかを決める為の重要な場でもあるらしいし。

 ……他のヒーロー科を持つ学校では、それこそ雄英と並び立つと言われている士傑であっても、体育祭をTVで放映したりはしない。

 この辺を考えると、やっぱり士傑は雄英に並ぶじゃなくて、雄英の後を追う高校といった認識が正しいよな。

 

「でも、アクセル君。私達はアクセル君のハチマキさえ持っていれば、それだけで騎馬戦は1位なんだよ? 無理に他のハチマキを奪いに行く必要があるかな?」

 

 葉隠のその言葉も、決して間違いではない。

 間違いではないが、同時に完全な正解という訳でもない。

 俺のハチマキは1000万ポイントで、他のハチマキとは比べものにならないのは事実。

 そういう意味ではこのハチマキを俺が持っている時点で奪われるといったことを考える必要はないが……

 

「どうせ1位になるのなら、守りに入って1位になるんじゃなくて、攻めの姿勢で1位になる方がいいだろ。それに、俺だけで活躍するんじゃなくて、三奈と瀬呂にも……あとは近接戦闘になった時は、葉隠にも活躍して貰おうと思うし」

「あ……うん。そうだね」

 

 微妙に元気がない様子の葉隠。

 やっぱり騎馬戦で活躍出来ていないのが微妙に気になっているのだろう。

 だからこそ、やっぱりここではしっかりと活躍して貰う必要がある訳だ。

 ……ただ、近接戦闘になると、遠くから見たり、TVで放映されているのを見たりしても、誰がどんな活躍をしたのかとか、少し分かりにくいんだよな。

 とはいえ、それでも分かる者には分かるという事で。

 

「そんな訳で、さっさと移動するぞ。……競技時間も残りはそんなにないしな」

 

 これが、例えばハチマキを奪われたらその時点で失格になるとかだったら、時間を決めていなくても最終的な勝利者は決まるだろう。

 だが、この騎馬戦においてはハチマキを奪われても失格ではなく、また他の騎馬のハチマキを奪える。

 爆豪が俺に向かってやってくる際に、自分のハチマキがないのなら他の人のハチマキを奪って持ってくるといった事をしているように。

 だからこそ、時間制限があるのだろうが……その時間も残り少ない。

 

「分かった。じゃあここから脱出しよう」

 

 瀬呂の言葉に三奈と葉隠も反対するようなことはせず、場所を移動する。

 その際、轟の氷によってまだ動けない他の騎馬から怨嗟の声が聞こえてきたが、それは無視する。

 ちなみに俺達以外にも幾つかの騎馬が個性を使って氷の対処に成功し、動き始めていた。

 ……ただし、自由に動けるようになったからといって、俺を狙ってくる様子はなかったが。

 正面から戦っても、俺に勝てないと判断したのだろう。

 それはそれでいいと思うのだが、この騎馬戦では当然ながら俺も相手を殺すとか、重傷を負わせるといったような攻撃はしないので、こういう時に俺に挑んでくればいいと思うんだが。

 そんな風に思っていると、1つの騎馬がこちらに向かってくる。

 騎手は、宣戦布告をしてきた普通科の生徒。

 騎馬は尾白と青山、後はB組の生徒……へぇ、珍しいな。あれだけA組に対抗心を持っていたB組の生徒がA組の生徒と協力するなんて。

 ただ、尾白と青山に何か違和感があるような、ないような?

 

「アクセル、どうする?」

「当然、迎え撃つ」

 

 瀬呂の言葉に一瞬の躊躇もなくそう返す。

 壁として存在すると宣言した俺が、逃げるというのは不味い。

 選手宣誓を見ていた者達にしてみれば、一体何をしているといったように思えてもおかしくはないのだから。

 そういう風に思われるのは、これから壁として行動する上で不味い。

 だからこそ、正面から戦うのは当然であり……

 

「へぇ、てっきり逃げるかと思ったけど」

 

 宣戦布告をした普通科の生徒が、俺に向かってそう言ってくる。

 

「逃げる? 1年のNo.1である俺がか?」

 

 ん? 何だ?

 俺が答えた瞬間、何故か普通科の男がしてやったりといった笑みを浮かべる。

 

「アクセルが持ってるハチマキを寄越せ」

 

 堂々とそう指示というか命令してくるが……

 

「何でそんな事をする必要があるんだ? 瀬呂」

「任せろ!」

「は?」

 

 俺の指示に従って、瀬呂がテープを飛ばし、そのテープで男の首に巻いていたハチマキを奪う。

 ただテープにくっつけただけでは、首から掛けているハチマキは首が邪魔になって取れない。

 だが、瀬呂は手を上手く動かし、それでテープの自由自在……とまではいかないが、ある程度は操れる。

それによって、テープは見事に普通科の男の首からハチマキを奪い、瀬呂は手元に戻されたテープから受け取ったハチマキをこちらに渡してくる。

 

「な、何でだ!?」

 

 ハチマキを手にした俺を見て、普通科の男が叫ぶ。

 

「は? 何でって、何がだ? そもそも、何で俺がお前の命令を聞く必要がある?」

「っ!? くっ、ここを離れるぞ! 他のハチマキを奪う!」

 

 普通科の男が叫ぶと、尾白、青山、B組の男の騎馬は移動する。

 

「……何だったんだ?」

「さぁ?」

 

 相手の行動の意味不明さに疑問を口にすると、三奈が不思議そうに首を傾げる。

 瀬呂と葉隠の2人も、今のは一体何だったのかと、そんな疑問を抱いている様子だった。

 ……いや、本当に今のは一体何だったんだ?

 

「ともあれ、それなりにハチマキをゲット出来たんだし、他のハチマキを奪いにいくか。……とはいえ、もうハチマキを持っている騎馬はそこまででもないんだよな」

「そうだな。けど……ハチマキを持っていないからこそ、奪いに来る騎馬もいるみたいだけど」

 

 瀬呂の言うように、一発逆転を狙って俺からハチマキを奪おうと、既にハチマキを持っていない多くの騎馬が集まってくる。

 出来れば他のハチマキも全て奪いたかったが……残念ながら、この様子だと逃がしてくれそうにない。

 いや、どうしても逃げようと思えば逃げられるとは思うけど。

 けど、この連中は三奈、葉隠、瀬呂を活躍させるのには丁度いい相手でもある。

 そんな訳で、俺はハチマキを奪おうとしてくる他の騎馬との戦いを始める。

 視界の隅では轟や爆豪、緑谷の騎馬がそれぞれハチマキを奪い合ったり、他のまだハチマキを持っている騎馬を襲撃したりしていたが。

 そうして時間が経過していき……

 

『さぁ、もう時間もないぞ。残り30秒。ここで諦める者は、勝負に生き残る事は出来ない! 頑張れ、頑張るんだ! 青春の煌めきがそこにはあるぞ!』

『何を言ってるんだお前は』

 

 プレゼント・マイクの言葉に、相澤が突っ込む。

 そんな突っ込みを聞いているくらいには、俺にはまだ余裕があった。

 最初は結構な数の騎馬が襲い掛かってきたのだが、三奈が滑らせる酸を放つ事が出来るようになると、勝ち目がないと判断し、俺以外からハチマキを奪おうと……

 

「うおっ、凄い」

 

 轟の騎馬が猛烈な速度で緑谷の騎馬に突っ込み、緑谷が幾つか手に入れていたハチマキの何本かを奪い取った。

 あの速度は、轟の騎馬の面子からすると、飯田の個性によるものだろう。

 それでも緑谷はその強力な個性を発揮し、轟に全てのハチマキを奪われるのを防いだ訳だ。

 

『5……4……3……2……1……0! TIME UP!』

 

 プレゼント・マイクの言葉がスタジアムに響き、騎馬戦は終わるのだった。

 

『さて、これで騎馬戦も終わりだ。上位4チームを見てみよう! 1位、お前一体どのくらいハチマキを集めたんだ、アクセルチーム!』

『わああああああああああああああああああああああああああああ!』

 

 プレゼント・マイクの言葉に、観客達から歓声が上がる。

 

『2位、アクセルにハチマキを取られた後は、クレバーに行動し、ハチマキを集めた轟チーム!』

『わああああああああああああああああああああああああああああ!』

 

 俺の時と同じくらいの歓声が上がる。

 ただ、轟の表情は特に変わっていない。

 

『3位、連携を上手く使ってここまで来たぞ、緑谷チーム!』

『わああああああああああああああああああ!』

 

 俺や轟の時より少し低くなったが、それでも歓声が上がる。

 これ……多分、緑谷が地味な顔立ちだからなんだろうな。

 この世界の原作の主人公である筈なのに、哀れな。

 

『4位、空中を自由に動き回るその個性の使い方には驚いたぞ、爆豪チーム!』

『わああああああああ!』

 

 緑谷よりも歓声が低いのは……うん、多分爆豪の行動を見て、ヴィランっぽさに思うところがあったのだろう。

 見ている者達にしてみれば、何で爆豪が雄英のヒーロー科にいるのかと思ってもおかしくはない。

 とはいえ、それでも爆豪がヒーロー科にいるのは間違いないんだよな。

 

『以上4チームが最終種目へ……と言いたいところだが、ここでサプライズ! 校長からのお達しによって、1年は特別に5チームが最終種目へ参加だ! その幸運な5チーム目は……普通科、心操人使チームだぁあああぁぁぁぁあぁっ!』

『わああああああああああああああああああああああああああああ!』

 

 プレゼント・マイクのその言葉に、宣戦布告をしてきた普通科の男……心操人使という名前らしいが、その心操が信じられないといった表情を浮かべていた。

 まさか、自分が最終種目に出られるとは思わなかったのだろう。

 とはいえ……うん。そうなった理由は何となく予想出来る。

 騎馬戦において、俺が縦横無尽に活躍したから、こういう扱いになったのだろう。

 それを嬉しく思うべきか、残念に思うべきか、それとも感心すべきか……微妙な気持ちになりながらも、俺はこちらを強烈な視線で見てくる心操を見返すのだった。

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