転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4408話

「貴方の悪かったところ? ……うーん、そうね。もっと積極的に動いてもよかったんじゃない?」

 

 昼食としてリューキュウが買ってきた屋台の料理も大半が食べ終え、現在は食後のお茶を楽しんでいた。

 とはいえ、飲んでいるのは缶紅茶だったりするのだが。

 ただ、缶紅茶とはいえ、味は悪くない。

 それどころか、下手な喫茶店で飲む紅茶と比べても上ではないかと思うくらいには上手い、いわゆる普通の缶紅茶ではなく、高級嗜好の缶紅茶だ。

 そんな紅茶を飲みながら、拳藤はリューキュウに騎馬戦で自分の悪かったところを聞いていた。

 

「そうね。折角騎馬戦では使いやすい個性だったんだし、もっと積極的に個性を使った方がよかったと思うわよ?」

 

 マウントレディも、リューキュウの言葉に同意するようにそう言う。

 

「うう……やっぱり。でも、下手に目立つとアクセルに狙われそうだったし」

『あー』

 

 拳藤の言葉に、リューキュウとマウントレディが揃えて声を出す。

 

「いや、何でそこでそういう反応なんだ? ここはもっとこう……違うんじゃないか?」

「だって、アクセルよ?」

「そうね。アクセルだものね」

 

 目と目で意思疎通しながら、リューキュウとマウントレディがそう言ってくる。

 いやまぁ、俺が色々と特殊な存在なのは分かるが、ここでそういう風に言う事か?

 

「えっと、その反応からすると……もしかして、リューキュウやマウントレディもアクセルに負けた事があったりするんですか?」

「……ええ」

「否定は出来ないわね」

 

 拳藤の言葉に、そう言う2人。

 それでいながら、2人が揃って俺を一瞥し、感謝しなさいといった視線を向けてくる。

 いやまぁ、実際に今の2人の言葉は、俺にとってもありがたかったのは間違いないのだが。

 何しろ、俺はこの2人との模擬戦では負けなしだし、それどころかこの2人にプラスして3年のねじれの3人を同時に相手にしても負けなしだ。

 もしそれについて話されたりしようものなら……しかも、拳藤からB組、そしてB組を通じてA組や他の学科に、更には2年、3年、教師にまで話が広がると、間違いなく厄介なことになってしまう。

 リューキュウもマウントレディも、その辺を理解しているからこそ俺の強さについて何かを言ったりはしないのだろう。

 もっとも、リューキュウはともかくマウントレディはあっさりと口を滑らせそうだったりするけど。

 とはいえ、俺の件については公安が秘密にしている。

 ましてや、リューキュウとマウントレディは半ば公安に雇われているかのような状況だ。

 それを思えば、リューキュウもマウントレディも口を滑らせる事はないだろう。

 

「えっと……これ以上は聞かない方がいい感じですか?」

「ええ、そうして貰える? それで体育祭に話を戻すけど」

「あー……はい。B組から最終種目に進めるのは1人だけなんですよね。後は普通科とサポート科から1人ずつ。……ヒーロー科の面目丸潰れです」

 

 こうして改めて話していると、色々と思うところがあるらしい拳藤が憂鬱そうな表情を浮かべる。

 まぁ、その気持ちは分からないではない。

 何しろ最終種目に進んだ者の大半はA組の生徒なのだから。

 

「心操だったっけ? あいつの騎馬になっていた奴だよな?」

「ああ。……もっとも、その心操の騎馬も校長の気紛れで最終種目に進むのが1組追加されてやっとだったけど」

「そういう意味では、ラッキーだったな」

 

 もっとも、それをラッキーと取るか、哀れまれたと取るのか人によって違うだろうが。

 とはいえ校長の判断だしな。

 ただ……校長のその考えも、正直なところ分からないではない。

 もし校長が追加でもう1組最終種目に進ませなければ、緑谷の騎馬だったサポート科の女以外、全員がA組となる。

 観客や放映されているのを見ている視聴者にしてみれば、その辺はあまり気にしないだろうが、実際に体育祭に参加している生徒達にしてみれば、サポート科の1人以外全員A組というのは面白くないだろう。

 それこそ、これからの行事の士気に関わる。

 だからこそ、校長も1組追加したのだろう。

 ……多分だけどこれ、俺のせいだよな。

 原作では当然のように俺は存在しないので、俺の騎馬がなかった代わりに心操の騎馬が4位になって最終種目に残っていたんだと思う。

 だが、この世界では俺がいるので心操の騎馬が弾き出された形になった訳だ。

 そう考えると、最終種目に残った面子は残るべくして残ったといったところか。

 

「ラッキーか。……そうだな。今回はラッキーだったけど、次は実力で残ってみせるよ」

「頑張れ。俺も選手宣誓で言ったように、壁として拳藤の前に立ち塞がるから」

「……ねぇ」

「……うん」

 

 俺の言葉に、リューキュウとマウントレディがそれぞれ短く言葉を交わす。

 

「何だよ?」

 

 そんな2人の様子に不満そうに言うと、再度リューキュウとマウントレディが視線を交わし、やがてリューキュウが口を開く。

 

「私達も開会式での選手宣誓については聞いていたわ、けど……アクセルが壁となると、壁は壁でも鉄壁と呼ぶのが相応しい壁じゃない?」

「そうそう、私達から見てもアクセルが壁というのは厳しいと思うし」

「プロヒーローの2人に……それもリューキュウにここまで言わせるなんて、アクセルって一体……」

 

 拳藤が信じられないといった視線をこちらに向けてくる。

 リューキュウとマウントレディの会話を聞いていて、そこに思うところがあったのだろう。

 

「まぁ、俺も色々と訳ありだからな。……とにかく、今の俺はヒーロー科の生徒達の前に壁として立ち塞がる存在だと、そういう風に覚えておけばいい」

「普通なら何を言ってるんだって突っ込みたくなるところだけど、アクセルの場合は実績があるしな。入試で首席、個性把握テストでも1位、その上で体育祭でも障害物競走、騎馬戦と続いて1位だし」

 

 実際にはそこにプラスして、USJで襲ってきたヴィラン連合とかいう集団の幹部と思しき者達を捕らえるといった功績もあったりするんだが。

 ただ、こちらについては秘密にするように言われてるしな。

 ……雄英にヴィラン連合が襲撃をしたというのは、あっさりとニュースで広まったものの、俺がヴィラン連合の幹部を捕らえたのは未だに広まってないんだよな。

 もしかしたら、ヴィラン襲撃の件が広まったのは、雄英の教師や警察による意図的なものだったりするのか?

 人というのは、一度秘密を見つければそれを更に追及しない……とは言い切れないが、それでも多くの者は最初に秘密を見つけた時点で満足する。

 分かりやすく説明するのなら、あれだ。

 人の死体を埋める時は、かなり深い場所に埋めて、その上……浅い場所には犬の死体なりなんなりを埋めておくといった感じで。

 もし掘った跡があって、それを怪しいと思う者がいて地面を掘っても、そこに犬の骨があれば、それを埋めたのかと満足し、その下に埋まっている人の骨を見つける事は出来ない。

 それと同じような感じ……なのか?

 実際のところは、俺にもその辺は分からない。

 雄英が襲撃されたという情報はあっさりと漏れたから、襲撃してきたヴィランの重要人物を俺が捕らえたというのは絶対に情報が漏れないようにした結果が今の状況なのかもしれないし。

 あるいは、他にも何か全く理解出来ない事態によって、今のような状況になっている可能性もある。

 

「拳藤に褒められると困るな。……とはいえ、そういう拳藤だってB組で学級委員長になってるんだし、実績という意味では負けてないだろ? 俺も学級委員長にはなれてないんだし」

 

 実際には面倒だから学級委員長にならなかったというのが正直なところなのだが。

 俺はこのヒロアカ世界でプロヒーローになるつもりもないので、内申点とかも気にしなくてもいいし。

 ただ、そんな中で唯一心配なのは相澤だろう。

 USJの一件で相澤が身体を張ってでも生徒を守るといった気概を持った人物であるというのは、理解している。

 だが同時に、あっさりと除籍にするような性格であるのも理解はしている。

 そんな相澤だけに、俺の行動によっては例え首席だろうとなんだろうと、あっさりと除籍にしてくる可能性は否定出来なかった。

 ……もっとも、俺の入学には公安も絡んでいるというのは、相澤も知っている筈だ。

 だとすれば、普通に考えればそう簡単に除籍には出来ないと思うが。

 ただ、それでもやろうと思えばやってしまうのが相澤なので、こちらも気を抜く事は出来ない。

 まぁ、それでも峰田がまだ除籍になっていないのを考えると、そう簡単に除籍になったりとかはしないのかもしれないが。

 

「学級委員長は……まぁ、その……何となく成り行きで」

「拳藤の人望があってこそだと思うけどな」

「……何だか急にアクセルに褒められると、照れるな」

「別に意図して褒めているつもりはない。俺から見て、普通にそう思っているだけだ」

 

 実際、姐御肌の拳藤は多くの者達に好かれている。

 それは取蔭や塩崎とかを見れば分かるし、USJの件でA組の前に来たB組の男も拳藤には頭が上がらない様子だった。

 そんな拳藤だからこそ、B組の中でも学級委員長に選ばれたのだろう。

 もっとも、拳藤が言うにはB組の中にはアレな奴がいるという話だったから、そのアレな奴が学級委員長になろうと思って拳藤に負けた……とかそういう事で恨んだりしていないといいんだが。

 そういえば、結局拳藤が言うアレな奴ってのは一体誰だったんだ?

 騎馬戦に残っているかどうかは分からないけど……

 

「なぁ、拳藤?」

「どうしたんだよ。言っておくけど、褒め殺しは、もう止めてくれよ」

「褒め殺しって……別に俺はそういうつもりじゃなかったんだけどな。まぁ、それはいいとして。以前拳藤が言っていた、B組にいるアレな奴ってのは、どうなったんだ? 具体的に誰なのか分からないけど」

「アレな奴? ……ああ、物間の事か」

 

 アレな奴と言われてすぐに物間という奴だと思い当たるという事は、拳藤にとって物間という人物は心の底からアレな奴と思っているらしい。

 

「あんたのところのアレな奴と戦ってハチマキを取られたみたいだよ。もっとも、そのハチマキもアクセルに奪われたようだったけど」

 

 そう言われ、俺が思い浮かべたのは爆豪だ。

 拳藤がアレな奴と言われて物間という人物を思い浮かべたように、俺もまたアレな奴と言われれば、A組のアレな奴代表と言うべき爆豪を思い出す。

 ……もっとも、A組の場合は爆豪以外にも峰田というアレな奴がいたりするが。

 ただ、その峰田は障子の肩甲骨に隠れていてハチマキを奪うことは出来なかったので、俺がハチマキを奪ったとなると、やっぱり爆豪となる。

 となると、最初に俺が爆豪からハチマキを奪った後で爆豪が揉めていたB組の男、あれが多分物間なのだろう。

 しっかりと確認した訳ではないが、見た感じでは顔立ちが整っている男のように思えた。

 まぁ、顔立ちが整っているからアレな奴じゃないと言われれば、俺もそうだろうなとしか返事が出来ないのだが。

 

「あの男か」

「物間を知ってるの?」

「知ってるって程じゃなくて、爆豪とハチマキを奪い合っているところを少し見ただけだけど」

 

 そう言うと、拳藤は何故か呆れの視線をこちらに向けてくる。

 

「アクセルの持っている1000万のハチマキを狙ってたのは大勢いたし、実際に多くの者達と戦っていたのに、そんな中でも周囲の状況をよく見ていたんだね」

 

 なるほど、拳藤にしてみれば皆に集中して狙われている中で、まさか俺が爆豪と物間の戦いについても見ているとは思わなかったのだろう。

 俺にしてみれば当然の事だし、それこそ一定の実力があれば恐らく誰でも出来る事だろうとは思うものの、まだヒーロー科に入ったばかりの拳藤や他の生徒達にしてみれば、そこまで考えろと、認識しろと言う方が無理だったのだろう。

 

「今は無理でも、訓練を重ねていけばそのうち出来るようになると思うぞ」

「……本当に?」

「拳藤なら恐らく間違いなく」

 

 この辺りは人によってかなり違ってくる。

 センスというか、才能というか。

 だからこそ、人によってはどうやっても無理だという者もいれば、少しコツを掴んだだけであっさりと視野の広さを手に入れる者もいる。

 出来るようになった者にしてみれば、あれ? 何でこんなのが前は出来なかったんだ? といったように思ってしまう事なのだが。

 

「……アクセルがそう言うのなら、頑張ってみようかな」

「うわぁ……どう思います、先輩?」

「アクセルが意識してか、それとも無意識か……とにかく、アクセルらしいと言えばらしいのかもしれないわね」

「え? ちょ……リューキュウ、マウントレディも、えっと、何か勘違いしてないですか!? 私は別に……」

「そう言えば、彼女はアクセルと毎日仲良く登校してるらしいですよ、先輩」

「あら、それはもう決まりかしらね」

「だから……違うんですってばぁっ!」

 

 拳藤の絶叫が教室の中に響き渡るのだった。

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