1試合目、緑谷と心操。
2試合目、轟と瀬呂。
3試合目、塩崎と俺、アクセル。
4試合目、芦戸と青山。
5試合目、常闇とヤオモモ。
6試合目、飯田と発目。
7試合目、鉄哲と切島。
8試合目、麗日と爆豪。
9試合目、上鳴と葉隠。
以上が抽選の結果決まった試合順だった。
ちなみに鉄哲という奴のチームがトーナメントに参加する事になったが、棄権したのが尾白と庄田の2人だった為、4人の中の2人だけがトーナメントに参加する事になり、それが鉄哲と塩崎の2人になった訳だ。
……ちなみに、合計18人での試合となった事もあってか、後半の方の面々が前半の俺達よりも試合数が多くなる。
この辺は、雄英お得意のPlus Ultraって奴だろう。
そうして組み合わせが決まったところで、トーナメント前のレクリエーションが始まるのだった。
「凄いな、あれ」
レクリエーションが終わり、トーナメントが始まる。
そんなトーナメントの会場を、セメントスは自分の個性を使ってあっさりと作ったのだ。
セメントを自由に使えるのが個性……だったか?
山奥とかだと意味がない個性だが、街中ではもの凄い活躍をしそうな個性だな。
「何でも、雄英にある各種施設もセメントス先生がいるから、作れるって一面があるらしいよ」
俺の呟きにそう返してきたのは、拳藤。
「あれ? 拳藤? こっちに来ていいのか?」
拳藤の声にB組の方を見ると、物間だったか? B組のアレな奴が何かを騒いでおり、取蔭に止められていた。
「あはは、まぁ、ちょっとアクセルと話したくてね」
そう拳藤が言うが、それなら別に今ここで話す必要はないだろうに。
それこそ毎日一緒に登校してるんだから、その時に話してもいいし、あるいはメッセージアプリのLINを使って話してもいい。
……まぁ、別に拳藤と直接話すのが嫌だって訳じゃないけど。
「俺に話? どうしたんだ?」
「私はアクセルとはそれなりに仲が良いとは思っている」
「……まぁ、そうだな。改めて言われると少し照れるが」
「当然だろぉっ! そんな美人に仲が良いって……ぎゃあっ!」
「峰田、まだ説教は終わってないんだよ。正座を崩してもいいって許可も出してはいないんだけど?」
「ひぃっ!」
「あ、えっと、耳郎? その……もうそろそろ……あ、いえ。何でもないです」
拳藤と話していると、下心丸出しの峰田の叫びが聞こえてくるも、即座に耳郎にイヤホンを突き刺され、悲鳴を上げる。
峰田の隣に正座している上鳴がそんな相棒を庇おうとするものの、耳郎の鋭い視線で睨まれると、何も言えなくなってしまう。
……まぁ、A組女子の中だと、耳郎が一番チアガールのコスチュームを恥ずかしがっていたしな。
ましてや、その光景が日本中に放映されたとなれば、あそこまで耳郎が怒る理由も分からないではなかった。
「えっと……アクセル、あれは?」
とはいえ、ああなっている事情を理解しろというのは、拳藤にとっては不可能だろう。
ただあの光景を見て、一体何があったのかと疑問に思った様子で俺に聞いてくる。
「ほら、昼休みが終わった時、A組の女子はチアガールの格好をしていただろう? あの件を企んだのが、あそこに正座している2人な訳だ」
「……ふーん。一体何があったのかって疑問に思ってたんだけど。B組の男子の中にも喜んでいる連中がいたよ。……本当に男って」
呆れた様子でそう言い、ジト目を向けてくる拳藤。
この件で俺が責められるのは、ちょっと違わないか?
そう思ったが、実際にチアガールをした耳郎達を見て喜んだのは間違いなかったし。
「そうだよな。出来ればB組もチアガールの格好をすればよかったのに、峰田と上鳴も気が利かないな」
「あのねぇ、アクセル? 私達も巻き込まないでくれる? 大体、その……私がああいう可愛らしい格好をしたって、似合わないだろうし」
「そうか? 俺は拳藤のチアガール姿はかなり似合うと思っているし、眼福だと思うけどな」
「ばっ、馬鹿! いきなり何を言うんだよ!」
「っと!」
俺の言葉に照れた拳藤は、俺の背中を叩こうと手を振るう。
……個性を使って手を大きくしていなかったのは助かったが。
とにかく、その一撃を何とか回避する。
「うわ、これも回避するのか。……とにかく、あまり私をからかうなよ。私も自分がああいう可愛らしい服装が似合わないって事くらいは分かってるんだから」
「別にからかってる訳でも、お世辞とかそういう意味でもなく、純粋に拳藤のチアガール姿は似合っていると思うんだけどな」
そう告げる俺の言葉に、拳藤は驚きの視線を向けてくる。
……まぁ、正直なところ、分からないでもない。
拳藤は姐御系の性格をしており、凜々しい系の美人だ。
つまり、男にも好かれるが、それ以上に女……それも後輩からお姉様と慕われるタイプだ。
実際、LINでその辺についてちょっと聞いた時、以前は年上の……それこそ、高校を卒業したような相手からも何故かお姉様と言われた事があるって書いてたしな。
一体何がどうなってそんな風になったのか、ちょっと気になるけど、その辺りの詳細については結局教えてくれなかったんだよな。
ともあれ、拳藤は自分が他人からそういう視線で見られているというのは分かっているし、自分でもそういう性格だと思っていて、だからこそチアガールの衣装は自分に似合わないと思っているのだろうが……俺にしてみれば、十分にそういうのも似合うと思うんだけどな。
「ば……馬鹿言うなよ! 私にあんなチアガールの衣装なんて……」
「ほら、あそこ」
「え?」
このままだと、また叩かれそうになるかもしれないと判断し、俺は少し離れた場所で峰田と上鳴を正座させている耳郎を見る。
当然ながら、耳郎は既にチアガールの衣装ではなく体操着に戻っているが、それでも耳郎がチアガールの衣装を着ていたのは事実だ。
「あれは耳郎って言うんだけど、自分が女らしくないと思っていて、チアガールの衣装を着ている時もかなり恥ずかしがっていたけど……拳藤は耳郎がチアガールの衣装を着ているのを見て、どう思った?」
「それは……可愛いと思ったけど……」
ピクリ、と。
今の拳藤の言葉を聞いて、耳郎が反応した。
多分、イヤホンでこっちの会話を聞いてるんだろうな。
ふむ、なら……A組女子のチアガール姿という珍しい光景を見せてくれた峰田と上鳴を、多少フォローするのもありかもしれないな。
「だろう? 俺もそう思う」
ピクリと、俺の言葉にまた耳郎が反応する。
だが、俺はそれに気が付いていないように見せ掛け、言葉を続ける。
「けど、耳郎も自分の女らしさに自信がないらしく、自分にチアガールのコスチュームは似合わないと思っていた。けど、拳藤から見たら十分に可愛かったんだろう?」
「……ああ、私から見たら、全員が凄く似合ってるように思えたよ」
「だろう? ……耳郎は自分が似合わないと思っているけど、他人から見たら似合っていた。なら、拳藤もまた自分では似合わないと思っているのかもしれないけど、チアガールが似合ってるって可能性もあるんじゃないか?」
「……え? そ、それは……」
完全に予想外だったといった様子の拳藤。
まさか、今のように言われるとは思っていなかったのだろう。
ただ、実際にきてみたら似合うと思うんだけどな。
拳藤にしてみれば、普段はあまりしないような系統の服装だから、照れ臭いというのもあるのかもしれないけど。
「耳郎も似合ってたんだし、拳藤も……おわっ!」
言葉の途中でこっちにイヤホンが飛んでくるのを見て、回避する。
「……」
そのイヤホンの飛んできた方向……耳郎に視線を向けると、そこには顔を真っ赤に染めた耳郎が俺を睨んでいた。
あー……うん。峰田や上鳴を援護するつもりで耳郎を褒めたんだが、どうやらやりすぎてしまったらしい。
とはいえ、別に耳郎にチアガールの姿が似合わなかったのを無理に似合ってるといった訳ではない。
俺から見ても、普通に似合っていたし。
そういう意味では、多少大袈裟に表現をしたかもしれないが、真実しか口にはしていない訳だ。
三白眼に近い目をしている耳郎だけに、その目で睨み付けられると少し思うところがあるな。
「えっと……それで、結局拳藤がここに来たのは、一体何が理由なんだ?」
「ああ、そうだったな。……けど、向こうはいいのか?」
まだ顔を赤くして俺を睨んでいる耳郎に戸惑った様子を見せながら拳藤が言う。
「取りあえず今は置いておくとしよう。時間が経てば落ち着くだろうし。……それで、用件は?」
「あー……うん。アクセルもそうだし、ヤオモモ、三奈、透、瀬呂もそうだけど、トーナメントでB組の面子と遭遇したら、私はB組を応援する。個人的には仲の良いアクセル達を応援したい気持ちもあるけど、やっぱりB組の学級委員長としてはな」
「なるほど……って、わざわざそれを言いに来たのか? 律儀だな」
拳藤の立場を考えれば、B組を応援するというのは分かる。
分かるのだが、だからといってわざわざそれを言いにくるというのは、どうかと思う。
……拳藤らしいと言えば、らしいのだが。
「別に律儀って程でもないと思うけどな。……それで、どうだ?」
「どうだと言われても、分かったとしか。それに……俺はともかく、他の面子はどう言えばいいのか分からない感じだしな」
具体的には、瀬呂は1回戦の相手が轟だ。
爆豪と並んでクラスNo.2であるのを考えると、俺の自主訓練に毎日参加して、以前と比べても明らかに強くなった瀬呂でも、勝つのは難しいだろう。
で、ヤオモモは常闇と、三奈は青山とだが、これはどっちも恐らく良い勝負になるとは思う。
葉隠は上鳴と。こちらも……上鳴の個性は広範囲に攻撃も出来るので、葉隠が勝つのはかなり難しい。……瀬呂程ではないにしろ。
つまり、いつもの面子の中でB組と戦うのは俺だけな訳だ。
勿論これはあくまでも1回戦での話であって、勝ち進めばB組の相手と戦う可能性もあるんだが。
「あー……特に三奈は悲惨だよな」
拳藤が少し離れた場所でぼけっとしている……唖然としているといった表現の方が正しいのかもしれないが、とにかくそんな三奈を見て言う。
ちなみにそんな三奈の側では、トーナメントに出ない梅雨ちゃんが三奈を励ましていた。
うん、俺が言うのもなんだけど、三奈が青山との戦いで勝利しても、次に戦うのは俺だしな。
選手宣誓の件もあるし、トーナメントでわざと負けるといったような事をするつもりはない。
場合によっては、今まで使っていなかった能力を使うことになるかもしれないが……まぁ、今のところその予定はない。
とはいえ、トーナメントの俺の場所は何気に結構厄介な場所なんだよな。
塩崎との戦いに勝利し、三奈との戦いに勝利をしても、次に戦うのは緑谷か轟だ。
物語的に考えた場合は、やっぱり主人公の緑谷が上がってきそうだけど、クラスNo.2の片割れである轟もそれなりの強さを持っている。
とにかく、緑谷と轟のどちらかに勝利すれば……反対の山から上がってくる相手、恐らくは爆豪との決勝戦となる。
ちなみに俺達の山、トーナメントの左側と反対の右側だと右側の方が人数の関係で微妙に試合数が多かったりする。
それなら鉄哲と塩崎以外の2人もトーナメントに参加しても問題なかったのでは? とも思ったが、試合時間というか、試合数を考えるとこれが精一杯だったらしい。
「三奈も自主訓練に参加した事で強くなっているし……うん」
だからといって俺に勝てるのかとなれば、それはやはり否だ。
あるいは三奈が実は強大な存在の血を引く末裔で、俺との戦いの時に力を覚醒させるといった可能性も……うん。こういうのがいわゆる微レ存って奴なんだろうな。
それに、三奈が俺と戦えると決まった訳でもない。
青山は最近何故か妙に俺に友好的になっていて、その関係で体育祭が始まるまでの間、自主訓練に参加していた。
その結果として、青山も以前よりも強くなっている訳で……それに、青山の個性のビームは、使い続けると腹が痛くなるという欠点はあるが、それでもビームとしてそれなりに強い。
ただ、三奈はダンスをしているだけあって運動神経はクラスでもトップクラスだ。
もし青山がビームを使っても、あっさりと回避しそうな気がするんだよな。
総合的に見て、やはり青山の方が分が悪いのは間違いなかった。
「まぁ、とにかく……頑張りなよ」
「あれ? 応援はしないんじゃなかったのか?」
「試合中に応援はしないけど、今はまだ試合が始まる前だ。なら、少しくらいは応援をしてもいいと思ってね。じゃあ、私はそろそろクラスに戻るから。向こうも向こうで大変そうだし」
そう口にした拳藤の視線の先では、物間が取蔭に鎮圧されている光景だった。
B組代表のアレな奴の物間だったが、取蔭には負けてしまったらしい。
そんなB組に向かう拳藤の背を見送り……さて、と俺は拳藤がいなくなったのを察知し、イヤホンで威嚇するように動かしながら近付いてくる耳郎をどうするべきかと考えるのだった。