転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4412話

 俺が拳藤と話をしていて、それが終わった後で耳郎から逃げ回っている間に、心操と緑谷、轟と瀬呂の戦いは終わってしまった。

 ヤオモモから話を聞いた限りだと、どうやら俺が予想したように心操の個性は洗脳だったらしい。

 試合が始まって心操と緑谷が何かを話したと思ったら、緑谷は洗脳されてしまったが……何をどうやったのか、あるいはこれこそ主人公の力なのかという事なのか、とにかく緑谷は洗脳を破って、個性を使わず素の力だけで心操を場外に出した。

 ちなみにこのトーナメントは相手を気絶させるか、セメントスが用意したリングから出して地面に触れるか、あるいは審判のミッドナイトが戦闘不能と判断したら勝敗が決まる。

 で、2回戦では轟と瀬呂の試合だったが……うん、こっちは戦いが始まった瞬間に轟が大技を使い、それで瀬呂は氷に閉じ込められ、負け。

 そのあまりの負けっぷりに、スタジアムにはドンマイコールが響き渡っていた。

 そんな訳で、次は俺の試合なのだが……俺はまだ、スタジアムにある、生徒用の応援席にいた。

 現在リングの上には轟が作った巨大な氷があり、その後片付けが行われている。

 そんな訳で、俺は何とか耳郎を落ち着かせ、こうして応援席でヤオモモから色々と話を聞いていた訳だ。

 

「なるほど、情報助かった。……それにしても、轟が開幕ブッパをするとはな」

「開幕ブッパ……ですの?」

 

 俺の言葉に不思議そうにヤオモモが言ってくる。

 まぁ、ヤオモモはゲームとかそういうのをしそうに思えないし。

 そういう意味では、開幕ブッパとかそういうのは分からないだろう。

 ……ちなみに俺が開幕ブッパについて知っているのは、ゲームではなく実際にニーズヘッグとかを使って戦闘をする時、よく使う手だからな。

 戦いが開始された直後というのは、多くの者が緊張している。

 そんな敵陣の中にシステムXNを使って転移し、あるいはミラージュコロイドとかを使って見えない状態で侵入し、緊張が解けていない中でいきなりニーズヘッグの強力な兵器を多数使う。

 これが、戦いの時には恐ろしく有効だったりする。

 まぁ、何度も通じるような手段ではない、一種の初見殺し的な攻撃方法ではあるが。

 

「ああ、試合開始直後に最大級の攻撃をするといった戦術だ。……いや、これを戦術と呼んでもいいのかどうかは分からないが」

「まぁ、そのような方法が……」

「今回、轟の攻撃は上手く嵌まった形だな」

 

 とはいえ、あそこまで大規模な攻撃をしたのだ。

 そうなると、轟の消耗もそれなりにあると思う。

 次の緑谷との試合までに瀬呂との戦いの消耗を回復出来るかどうか、見物だな。

 そんな風にヤオモモと話をしていると、やがて轟の氷の排除が終わる。

 

『さて、次の試合だぜ。……って、おや? アクセル、試合だぞ試合! いつまで応援席にいるんだよ!』

 

 プレゼントマイクの言葉にスタジアム中の視線が俺に集まる。

 

「呼ばれたし、ちょっと行ってくる」

「はい、お気を付けて」

 

 ヤオモモと軽く言葉を交わし、そのまま応援席からリングのある場所に向かって飛び降りる。

 

「きゃああああああああっ!」

 

 それを見た観客の何人かが悲鳴を上げるが……

 トン、と。

 俺はあっさりと地面に着地する。

 虚空瞬動を使ってもよかったのだが、塩崎は虚空瞬動について知らない筈だ。

 いや、あるいは拳藤とかから話を聞いてるかもしれないか?

 まぁ、それでも何も知らない相手がいる以上、わざわざ虚空瞬動を使えるといったことを教える必要もないだろう。

 もっとも、トーナメントの試合の中で恐らくその辺についてはお披露目する事になるだろうが。

 

『アクセル、応援席から飛び降りた!? 大丈夫かお前!?』

 

 プレゼントマイクが聞いてくるが、教師には虚空瞬動だったり、俺の身体能力については情報が行き渡ってる筈だ。

 それでもこうして聞いてくるのは、自分が聞く事で観客達を安心させる為だろう。

 

『大丈夫だろ、アクセルなら』

 

 そんな相澤の声が正しいと証明するかのように、俺はトーナメントの舞台となる……前の試合で轟が作った巨大な氷が排除され、舞台に広がっていた氷も完全に乾いた状態になっている舞台に上がる。

 その舞台の上には、既に塩崎が待っていた。

 

『B組からの刺客! 綺麗なアレには棘がある! 塩崎茨! VS受験においては首席にして、ヒーロー科A組最強の男、選手宣誓では最強の自分が他の生徒との壁になると宣言した、実力と態度が見合ってる男、アクセル・アルマー!』

 

 観客を煽るようにプレゼント・マイクが言う。

 格闘技の試合とかでもこういう感じなのを考えると、そういう意味ではこういうのは間違っていないのだろう。

 ……とはいえ、そう思ったのは俺だけで、塩崎は違ったらしく……

 

「申し立て、失礼いたします。刺客とはどういう事でしょう? 私はただ勝利を目指し、ここまで来ただけであり……」

『ご、ごめん!』

 

 塩崎の言葉に、プレゼント・マイクが思わずといった様子で謝る。

 プレゼント・マイクにしても、まさか塩崎がこのような反応をするとは思ってもいなかったのだろう。

 俺も塩崎についてはそこまで親しい訳じゃないし、詳しくもない。以前、学食で拳藤と一緒になった時、塩崎が一緒にいて、それで少し会話をしただけだ。

 それでも分かるのは……

 

「一手、よろしくお願いします」

 

 そう言い、一礼してくる塩崎。

 こういう風に礼儀正しいというか、優等生的な性格をしている事と……

 

「ああ、よろしく」

『えっと、その……準備はもういいよな? スタート!』

 

 プレゼント・マイクの合図と同時に塩崎の髪の毛となっている蔦が伸びて一気に俺に向かってくる。

 そう、異形系……と言ってもいいのかどうかは分からないが、塩崎茨という名称から想像出来るように、頭部から伸びている蔦……それもただの蔦ではなく、名前の通り茨の蔦を自由に動かせるといった個性を持つ事だ。

 こちらに向かって真っ直ぐに突っ込んで来る蔦。

 これが俺でなければ、蔦の海……というのは少し大袈裟かもしれないが、とにかく何も出来ず蔦に飲み込まれてもおかしくはない。

 だが、その蔦の波はそこまで速くはない。

 いや、他の連中にしてみれば速いのかもしれないが、俺にしてみれば欠伸が出るような速度でしかなかった。

 瞬動を使わず、普通に石畳……コンクリート畳? まぁ、言いやすさ的に石畳でいいか。

 とにかくその石畳を蹴って蔦の波を回避すると、塩崎から距離を取る。

 今の一連の動きで塩崎を倒してもよかったのだが、緑谷が言っていたように雄英の体育祭というのは、プロヒーローに見て貰える場だ。

 であれば、塩崎もこの最終種目まで生き残ったんだから、試合開始即座に勝負ありというのは、避けた方がいいだろう。

 

「やりますね。さすが、壁になると宣言するだけのことはあります」

 

 自分の先制攻撃があっさりと回避されたのに気が付いた塩崎が、俺を見てそう言ってくる。

 そうして俺に声を掛けながらも、髪の毛を構成する蔦……いや、こっちも面倒だから茨でいいか。その茨をいつでも俺に向けて放てるように準備していた。

 

「だろう? とはいえ、だ。壁となると宣言した以上、ここで負ける訳にはいかないんでな。もう少し付き合って貰ったら、負けて貰うぞ」

「……そのように、思い通りになるとでも?」

「俺は自分の実力を理解している。その上で俺が勝つのは間違いないと判断した。それが悔しかったら、俺の判断を覆してみせるんだな」

「では、そのようにさせて貰います」

 

 その言葉と共に、再び塩崎の放った茨が俺に向かってやってくる。

 だが、先程と全く同じなのかというと、それは否だ。

 7割ほどの茨は真っ直ぐ俺に向かって来ているが、残り3割は左右から俺を包囲するかのように分けて移動させている。

 自分の髪とはいえ、それなりに自由に使えるのはさすがと言うべきか。

 もっとも、この舞台の上で動かしている以上、俺の目から隠して行うといった事は不可能なのだが。

 トン、と。

 石畳を蹴って、その場から横に跳ぶ。

 すると大半の茨は俺を追ってくる。

 また、横に跳んだという事は俺を包囲させるような動きをしていた茨も、近付いてきた俺に向けて茨を放つ。

 左右からの挟撃といった形での一撃。

 だが……トン、と。

 空中にいる状態で虚空瞬動を使い、茨の包囲網から脱出する。

 

『おおっとぉ、茨の攻撃をアクセル、空中を蹴って回避した!? 一体何なんだあれはぁっ!』

 

 プレゼント・マイクの声が聞こえてくる。

 虚空瞬動については普通に使っているので教師達にも情報は伝わっている筈だ。

 魔力や気を使う瞬動の1段階上の技術。

 個性がなくても、修行次第で使えるようになる技術という事で、教師陣にもかなり興味を持たれているのは間違いない。

 だが、それでもこうしてプレゼント・マイクがわざわざ驚いた様子で言うのは、観客達の疑問を自分が代表して口にしているのだろう。

 相澤もそんなプレゼント・マイクの考えは理解しているのか、きちんと解説をする。

 

『あれは虚空瞬動という……アクセル曰く、個性ではなく技術だそうだ』

 

 俺が石畳に着地したのと同時に相澤がそう言い、それを聞いた観客席の観客達……特にプロヒーローによるものなのだろうが、ざわめきが起きる。

 あー、うん。個性じゃなくて技術である以上、それはつまり誰もが習得出来るかもしれないという事なのだろうから、当然か。

 もっとも、魔力や気を使えるようになるのが前提としてのものなので、技術ではあってもそう簡単に使えるようになる訳ではないのだが。

 

「技術……それが、ですか」

 

 プレゼント・マイクと相澤の会話を聞いていたのだろう塩崎も、一時追撃を中断して、そう聞いてくる。

 だが……塩崎は拳藤と仲が良い筈で、そして拳藤は俺が虚空瞬動を使えるのは知っている。

 であれば、俺と戦う塩崎に虚空瞬動の情報を教えていてもおかしくはないと思うんだが……この様子を見ると、どうやら教えて貰ってはいないらしい。

 

「ああ、技術だ。とはいえ……今はそれよりも俺とお前、2人だけの時間だろう?」

「……そうですね。では行きます!」

 

 その言葉と共に再び茨が俺に向かってくる。

 とはいえ、回避を続けるだけってのもどうかと思うので、こちらに向かってくる茨の波に向かって拳を放つ。

 

「スマッシュ!」

 

 俺が放った一撃は、一瞬にして茨の波を吹き飛ばす。

 

「くっ!」

 

 茨が吹き飛ばされれば、当然ながらその茨が生えている塩崎の身体もまた吹き飛ぶが……咄嗟に茨を石畳に押し付ける事で塩崎の身体が吹き飛ばされるのを耐える。

 だが……塩崎がそうして今の一撃に耐えて顔を上げた時、既に俺の姿は塩崎の目の前にあった。

 

「くっ!」

 

 一瞬前と同じ言葉を口にする塩崎は、茨を盾……というか、壁のように自分と俺の間に作る。

 だが、今度は特にスマッシュと口にすることなく蹴りを放ち、茨の壁を伐採し……

 

「っと、なるほど。こういう事も出来るのか」

 

 背後から飛んできた茨の一撃を拳で叩き付けながらそう言う。

 今、俺に向かって来た茨は、塩崎の頭から生えている茨ではない。

 今までの攻防によって、途中で切断……いや、千切れた茨だ。

 だが、どうやら塩崎は自分と直接繋がっていない茨であっても、思うように動かせるらしい。

 それがずっと切断した茨を動かせるのか、それともある程度の時間だけなのか。

 それは分からないが、戦っている方としては厄介なのは間違いなかった。

 

「さて、そろそろ勝負を決めるとするか。このまま時間を掛けると、そっちが有利になるだけみたいだしな」

 

 そう言う俺の視線の先には、先程よりも俺から距離を取った塩崎の姿。

 壁で俺の視界を遮った瞬間、距離を取ったのだろう。

 塩崎の個性は髪の毛の蔦を伸ばして自由に操るといったもので、中距離型だ。

 A組だと耳郎の個性と近い。

 だが……そうして頭部から伸びる茨を自由に使うという事は、近接戦闘には向いていないということを意味してもいた。

 それに対して、俺の個性である混沌精霊は増強系で近接戦闘向きだ。

 ……いやまぁ、実際には色々な意味で違うのだが、向こうが知っている情報だけを考えると、そういう風になる。

 そんな訳で、塩崎は俺が有利となる近接戦闘を避けて中距離から茨を使って攻撃しようと思ったんだろうが……

 

「甘い」

 

 普通に移動するのではなく、瞬動を使う。

 次の瞬間には俺の姿は塩崎の前にあり……

 

「なっ!」

 

 それでも諦めることはなく、茨を防具代わりにしてこちらの攻撃を防ごうとする塩崎だったが……そんな防御で俺の攻撃を封じられる筈もない。

 次の瞬間には茨の盾ごと俺の拳が振り抜かれ……塩崎はそのまま吹き飛んでいく。

 先程のように茨で舞台を掴んで何とか耐えようとする塩崎だったが、俺の放った一撃が、その程度で防げる筈もない。

 結局塩崎はそのまま舞台から落ちて、俺の勝利となるのだった。

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