転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4414話

 スタジアムの中を移動する事、10分程……階段の陰となっている場所に、ヤオモモの姿はあった。

 

「ヤオモモ」

 

 そう声を掛けると、階段の陰で壁に寄りかかりながら体育座りをして、顔を膝……というか、胸? に押し付けていたヤオモモがビクリとする。

 そして、恐る恐ると顔を上げ……俺と目が合う。

 目があった瞬間、再びヤオモモは膝か胸かは分からないが、とにかく頭を下げる。

 いやまぁ、無理もないか。

 常闇との試合、ヤオモモは何故か最初に盾を……それも機動隊とかが使っているようなタイプの盾を作ったのだが、それを含めて殆どヤオモモに創造の個性を使わせず、ダークシャドウに速攻で倒されてしまった。

 創造の個性は非常に強力だが、それでも作るのに多少は意識の集中が必要だし、同時に実際に作り出されるまでにも少しは時間が掛かる。

 また、ヒーローコスチュームの問題もある。

 この体育祭ではヒーローコスチュームの使用は禁止になっており、唯一サポート科のみが自分の作ったサポートアイテムの使用が許可されている。

 そういう意味では、ヒーローコスチュームを使わないのはヤオモモも常闇も同じなのだが……ヤオモモの場合、創造で生み出せるのは自分の肌からだ。

 だからこそ、ヤオモモのヒーローコスチュームは露出度が高く、峰田や上鳴を喜ばせるようなものなのだから。

 それに対して、常闇はヒーローコスチュームがあってもなくても、個性のダークシャドウを使うのに何の問題もない。

 同じくヒーローコスチュームが禁止であっても、個性を使った戦闘となると、ヤオモモは体操服であるという時点では不利だ。

 常闇に負けたのは、その辺も理由にあるのだろう。

 後は……

 

「創造する物をミスったな」

 

 ピクリと、俺の言葉にヤオモモが反応する。

 ヤオモモも、自分で自分のミスについては理解していたのだろう。

 

「多分、盾でダークシャドウの攻撃を防いでから、何かで常闇を攻撃するつもりだったんだろうが」

「……そうですわ。なのに、私は盾で数度の攻撃を防ぎはしましたが、そこからは反撃に出るまでもなく、一方的にやられてしまいました」

 

 膝を抱えたまま、そう言うヤオモモ。

 元々創造というのは直接戦闘をするというよりも、後方で環境を整えるとか、そういうのに向いている個性だ。

 それと比べると、常闇のダークシャドウは直接攻撃に向いている。

 そういう意味では、やはりヤオモモはかなり不利だったのは間違いない。

 また、創造出来るのは試合が開始されてからというのも、ヤオモモにとって不利な条件だろう。

 ただ……そういうのを全てひっくるめての、トーナメントだ。

 ヤオモモもそれは分かっているので、それでどうこうといったような事を思っていない。

 ただ、自分の行動が上手く出来なかった。為す術もなく常闇に……ダークシャドウに負けてしまったのが、悔しかったのだろう。

 

「もし……もしアクセルさんが私でしたら、どうしていましたか?」

 

 顔を上げず、そう尋ねてくるヤオモモ。

 俺がヤオモモだったらか。

 難しいな。

 そもそも、俺もヤオモモの個性の全てを完全に理解している訳ではない。

 何が作れて、何が作れないのか。

 その辺りは、それこそ実際にヤオモモでなければ分からない事だろう。

 また、俺の個性という事になっている混沌精霊は、今のところ増強系と見せているので、そういう意味でもヤオモモの個性と俺の個性では戦い方が違いすぎる。

 ただ……俺の知ってる限りだと……

 

「そうだな。もし俺がヤオモモだったら、ダークシャドウじゃなくて、常闇を直接狙うな」

 

 そう、常闇はA組でも爆豪や轟に次ぐと言ってもいい程の実力を持つのは間違いないが、それはあくまでも個性のダークシャドウがあっての事だ。

 自我を持つ個性という、何とも珍しい存在のダークシャドウだからか、常闇と戦う時はどうしてもまずダークシャドウを倒そうと考えるが……ダークシャドウは、あくまでも個性でしかなく、その個性を使っているのは常闇なのだ。

 であれば、倒すのはダークシャドウではなく常闇。

 そして常闇は、戦闘スキルを個性に、ダークシャドウに全振りしている。

 自主訓練をした時、個性を使わないで模擬戦をやってみた事があったが、その時に常闇はダントツで最下位だった。

 ……まぁ、実際のところ、常闇の気持ちも分からないではないが。

 常闇の個性であるダークシャドウというのは、それだけ強力なのだから。

 だからこそ、常闇は自分を鍛えるよりも個性を重視したのだろう。

 とはいえ、それは別におかしな話ではない。

 個性と個人としての戦闘能力のどちらを重視するかと言われれば、このヒロアカ世界の住人であれば、個性と答える者の方が多いだろうし。

 勿論、個性にもよるから、その辺はどちらが正しいといった訳ではない。

 ただ……それを込みで考えても、常闇は個性を使わないとかなり弱いのは間違いなかった

 

「例えば拳銃。勿論実弾じゃなくてゴム弾とかそういうのだな。もしくは、拳銃型のスタンガンとか。そういうのを使って、ダークシャドウは無視して、直接常闇を狙うとか」

「……でも、そうなるとこちらが攻撃をした時に、その隙を突かれてダークシャドウに攻撃されてしまいますわ」

「どうだろうな。ダークシャドウの性格を考えれば、常闇が攻撃されたらそっちのフォローに回ると思うけど」

 

 ダークシャドウは自我を持つ個性だが、常闇を非常に大事に思っている。

 それが単純に自分の主と言うべき存在だからなのか、そのような事は関係なく常闇が好きなのか。

 その辺は分からないが、とにかく俺が知ってる限りだとダークシャドウなら常闇が攻撃されればすぐに守りに行った筈だ。

 つまり、ヤオモモは防御に回るのではなく、最初から常闇を狙って攻撃するべきだった。

 

「……言われてみればそうかもしれませんわね。そうなると、私の判断ミスですか」

「そうなるな」

 

 ヤオモモの言葉に、そう同意する。

 ここで下手な慰めをするのは簡単だ。

 だが、今この状況で重要なのは、しっかりとどのようにすればよかったのかというのを話す事だ。

 

「ふふっ、アクセルさんは厳しいですね」

「ヤオモモの性格を考えれば、ここは下手に慰めるんじゃなくて、しっかりと指摘した方がいいだろう?」

「ありがとうございます。……さて、アクセルさんの言葉で自分の悪かったところも分かりましたし、いつまでもここで落ち込んでいても意味がありません。では、そろそろ応援席に戻りましょうか」

 

 そう言い、立ち上がるヤオモモ。

 どうやら完全に復活したといった訳ではないが、それでも今は応援席に戻って他の生徒の応援をするつもりになったらしい。

 俺はその言葉に頷き、ヤオモモと一緒に応援席に戻るのだった。

 

 

 

 

 

「うわ、何だあれ」

「……凄いですわね」

 

 応援席に戻ってきた俺とヤオモモが見たのは、空中に浮かんでいる大量の瓦礫。

 それが一斉に、地上にいる爆豪に向かって降り注ぐ。

 ……それを素早い身のこなしで回避しながら、爆豪は麗日との距離を詰めていく。

 何でもうこの試合が……それも最後に近い状況になっているんだ?

 常闇とヤオモモの試合の後は、飯田と発目の試合、それが終わったら鉄哲と切島の試合があった筈なんだが。

 その2組の試合の後で、爆豪と麗日の試合が行われている筈だったんだが……

 

「あ、ほらアクセル。ヤオモモもこっちこっち。皆で応援しよう!」

 

 三奈が俺とヤオモモの姿を見つけると、そう声を掛けて手招きをする。

 俺とヤオモモは、取りあえず事情を聞こうとそちらに近付いていく。

 それと同時に、爆豪は全ての瓦礫を回避しながら麗日との間合いを詰めると、麗日が最後の足掻きといった様子で伸ばしてきた手を回避し、胴体に拳の一撃を叩き込み、その一撃で麗日は気絶して舞台に倒れ込んだ。

 それが決め手の一撃となり、麗日はそのまま気絶するのだった。

 

「あー……応援するよりも前に、勝負が決まってしまったな」

「もう、アクセルが戻ってくるのが遅かったから」

「すいません、私のせいで……」

 

 三奈が俺に不満を言うと、それに謝ったのはヤオモモだった。

 まさかヤオモモに謝られるとは思っていなかったのか、三奈は慌てて両手を横に振る。

 

「ちょっ、別にヤオモモが謝る必要はないってば。悪いのはアクセルなんだから!」

「俺が悪いのか?」

「そうよ。全く、弱った女に付け込むなんて……」

「いや、そもそもヤオモモを捜しに行けと言った中には三奈もいたと思うんだが」

 

 捜しに行けと言われて捜してきたのに、今度は捜したことを責められるってのは、正直どうなんだ?

 そう思ったが、三奈の様子を見るとこれ以上何も言わない方がいいと判断し、黙っておく。

 そんな中、戻ってきた俺と入れ替わるように緑谷が応援席から出ていくのが見えた。

 緑谷にしてみれば、仲の良い麗日が負けたのだ。

 ここは慰めたいと思っても不思議ではない。

 それに……緑谷の性格云々の話ではなく、原作的にも恐らくはここで主人公の緑谷がヒロインなのだろう麗日を励まして、絆を一段と深めるイベント的な感じなのだろうし。

 

「う……ほら、それよりも次は透の試合だから、応援するわよ! ここに座って!」

 

 三奈に促され、俺は自然と三奈の隣に座る。

 ちなみにヤオモモは三奈とは反対側の俺の隣に座っていた。

 

「葉隠か。……そう言えばいなかったな。次の試合だし、それも当然か」

「……どうなると思う?」

「難しいだろうな」

 

 三奈の言葉にそう返す。

 葉隠は自主訓練の時には格闘技を主に習っていた。

 透明になる個性の本領を発揮するには全裸にならなくてはならず、全国放送の体育祭でそんな事は出来ない。

 その上、サポート科でもないのでヒーローコスチュームとかサポートアイテムの類も持ち込めない。

 つまり、葉隠は透明という個性を持つのにどこにいるのか丸分かりといった状態のままで上鳴と戦わなければならない訳だ。

 ましてや、電気系の個性というのはそれだけで勝ち組と言われる程に恵まれている個性だ。

 客観的に見て、葉隠が勝利するのはかなり難しい。

 

「難しいけど……可能性はゼロじゃない」

「本当っ!?」

 

 最初に難しいと口にした時は残念そうな様子を見せた三奈だったが、俺の言葉を改めて聞くと、真剣な視線をこちらに向けてくる。

 

「ああ。かなり低いけど。……ヤオモモも、常闇が相手じゃなくて上鳴が相手なら楽に勝てたんだけどな。相性的に」

「私がですの?」

 

 ヤオモモの言葉に頷く。

 

「上鳴は雷を使いすぎればウェイるだろ? なら、ヤオモモが放電させるようなアイテムを作って一気にウェイウェイさせるとか、もしくは絶縁体……ゴムの類で防御するとか。ぱっと考えるだけで、思いつくのはこれだけある」

 

 そういう意味では、本当に相性というのは重要だよな。

 もっとも、もしヤオモモが相手なら、上鳴も何かを創造されるよりも前に一気に勝負を掛けるといった方法で対処しようとするだろうが。

 そうなると、重要なのはヤオモモがどれだけ素早く創造出来るかだろう。

 

『さて、次が1回戦最後の戦いだ。そのチャラさとは裏腹に、A組では相応の実力者である上鳴電気VS透明という個性はこの場では不利か、葉隠透!』

 

 プレゼント・マイクの言葉がスタジアムに響き、上鳴と葉隠が姿を現す。

 上鳴は……見た感じ、特に緊張とかはしていないな。

 葉隠は透明なので、ちょっとその辺は分からないが。

 

「頑張れ、透ーっ!」

 

 三奈が思い切り叫んで葉隠を応援している。

 他のA組の面々も、大半は葉隠を応援していた。

 

「あ」

 

 それに気が付いた上鳴が、露骨に落ち込んだ様子を見せた。

 クラスの大半が葉隠を応援しているのを見て、ショックを受けたのだろう。

 もっとも、峰田は自分の相棒というか親友というか、同志である上鳴を応援していたが。

 

「いけーっ! 上鳴、葉隠の衣装を破くんだ! けど、戦いのドサクサに紛れて触ったりしたら許さないぞ!」

 

 そう叫ぶ峰田に、三奈やヤオモモ、耳郎、梅雨ちゃんといった面々が冷たい視線を向けている。

 ……いや、梅雨ちゃんだけは冷たい視線ではなく、しょうがないなといったやんちゃ者を見るような視線だったが。

 これは梅雨ちゃんの峰田に対する好感度が高いのか、それとも手の掛かる相手の面倒を見る事に慣れているのか。

 その辺りは俺には分からないが、とにかくA組の女の中で梅雨ちゃんだけが峰田を冷たい視線以外で見ているのは明らかだった。

 

「頑張れ、葉隠!」

 

 俺も三奈に釣られるように葉隠の応援をするが……それが聞こえたのか、上鳴は恨めしげな視線を俺に向けてくる。

 正直なところ、その気持ちは分からないでもない。

 A組の男の中で一番親しいのは、瀬呂だ。

 だが、その次となると……多分、話す事が多い、上鳴や峰田だろう。

 だというのに、俺が上鳴ではなく葉隠の応援をしてるので、上鳴はそれがショックだったのだろう。

 それでも試合が始まるのは止めることが出来ず、プレゼント・マイクの言葉により、試合が開始されるのだった。

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