転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4418話

 試合開始と共に、まず轟はこちらに向かって氷の一撃を放ってくる。

 てっきり瀬呂にやったように氷で一瞬にして俺を固めてしまうのかと思ったが、どうやら違うらしい。

 それが開幕ブッパをやるだけの余裕が轟にないからか、それとも俺にそのような攻撃をしても通用しないと判断したからか。

 ともあれ、牽制として放たれたのは大きめの氷柱……もしくは、氷の矢か槍といったような表現が相応しい一撃。

 だが、それはあくまでも牽制の一撃なのは理解していたので、俺はそれに特に驚いた様子も見せず、あっさりと回避しながら轟との間合いを詰める。

 轟にしてみれば、今の一撃は牽制であると同時に、あくまでも俺を近づけさせない為の一撃だろう。

 だが……それはつまり、轟にしてみれば俺に近付かれるのを嫌っての行動なのだ。

 だからこそ、俺は轟との間合いを詰める。

 ……いやまぁ、現在の俺の個性という事になっている混沌精霊は強力な増強系の個性という扱いになっているので、そうである以上俺が轟を攻撃するにはどうしても間合いを詰める必要があるのは間違いなかった。

 今までのヒーロー基礎学で、轟が個性一辺倒という訳ではなく、近接戦闘もそれなりに出来るのは理解している。

 A組の中では尾白がきちんとした格闘技を習っているが、轟もまたそれなりにしっかりとした格闘技を習っているのは確認出来た。

 とはいえ……それでもあくまでも一般人以上、プロの格闘家以下。

 いわばセミプロ程度の技量であり、純粋な格闘技での戦いとなれば、轟に勝ち目はない。

 だからこそ、轟は俺を近づけたくなかったのだろう。

 

「くっ!」

 

 牽制の氷柱を回避しながら前に出る俺に対し、轟は大きく手を振るう。

 その動きに合わせるように、俺と轟の間に氷の盾……いや、氷の壁が生み出された。

 なるほど、以前模擬戦をやった時と比べても氷の壁は厚くなっているな。

 体育祭が始まるまでの間、自主訓練には参加しなかった轟だが、別に遊んでいた訳ではなく、きちんと訓練はしていたのだろう。

 とはいえ……

 

「スマッシュ!」

 

 その言葉と共に、俺の拳が轟の作った氷の壁をあっさりと破壊した。

 

「くそっ!」

 

 その言葉と共に轟が放ってきたのか、先程の氷柱とは違い、指先程度の氷の塊。

 ただし、氷の大きさが小さいだけに、一度に放たれた氷の塊の数は多い。

 面射撃とでも呼ぶべき攻撃。

 横に大きく跳び、氷の塊の攻撃を回避する。

 そんな俺に対し、追撃を放つように今度は巨大な……直径三mはあるのではないかと思われる氷の玉が放たれた。

 

「甘い!」

 

 氷の玉に向かって拳を放つ。

 その一撃で、氷の玉は即座に砕かれ……それだけではなく、砕かれた氷の玉の破片が轟に向かう。

 

「っ!? ……くっ!」

 

 轟は一瞬何かをしようした行動が止まり、その後で氷の盾を作って俺の弾いた氷の玉の破片を防ぐが……

 バギン、と。

 次の瞬間には氷の破片を防いだ氷の盾はあっさりと破壊される。

 それだけではなく、そのまま拳を振り切り、氷の盾の破片を破壊され、その破片が轟に襲い掛かる。

 氷の玉に続いて氷の盾もまた破片にされて、自分を攻撃する武器にされるとは、轟も思っていなかったらしい。

 自分に向かってくる氷の破片に向け、手を振るおうとし……また、その動きが止まる。

 先程もそうだったが、轟が何をしようとしたのかは、俺にも十分に理解出来た。

 多分、炎を使って氷の破片を溶かそうとしたのだろう。

 だが結局、その一撃を放つことは出来なかったらしい。

 そして今度は先程と違って咄嗟に氷の盾を作るような事も出来ず、轟の全身が氷の破片に打たれる。

 

「焦凍ぉっ!」

 

 そんな轟の様子に、観客席から恐らくはエンデヴァーのものだろうと思われる雄叫びが聞こえてきたが……俺はそれを無視し、一瞬にして轟との間合いを詰めると拳を振るう。

 どん、と。

 そんな身体を殴ったり、肉を殴ったりしたとは思えない音が周囲に響き……次の瞬間、轟は白目を剥き、舞台に崩れ落ちる。

 

「試合終了、勝者アクセル!」

 

 ミッドナイトがろくに轟の様子を確認もせず、そう宣言する。

 俺の拳が轟を殴った音が、ミッドナイトの即座の試合終了の判断の理由だろう。

 ……うん、分からないでもない。

 何しろ今の一撃は自分も少し力が入りすぎたか? と思った一撃だったし。

 それでも拳が命中する直前に力を抜いたので、内臓破裂とか、肋骨が内臓に突き刺さってるとか、そこまでの酷い状態にはなっていない筈だった。

 

『勝利、アクセル・アルマーの勝利! 試合時間1分少々で、アクセルがまたその強さを見せつけたぞ! 準決勝なのに、こんなに早く終わるのはありなのか? っていうか、轟は大丈夫なのか!? なんだか、もの凄い音がしたぞ!』

 

 プレゼント・マイクのその言葉に、俺を含めて会場中の視線が舞台に倒れている轟に集まる。

 すると小さなロボットが姿を現し、轟をタンカに乗せてこの場から去っていった。

 どこに行ったのかは、考えるまでもない。

 リカバリーガールのいる保健室に連れていったのだろう。

 ……いや、それもそうだけど、ああいうロボットがいるのなら、前の試合で俺が三奈をお姫様抱っこで保健室まで連れていく必要はなかったんじゃないか?

 

「うおおおおおおおおおおおっ! 焦凍ぉっ!」

 

 エンデヴァーの号泣が聞こえてくる。

 俺と話した時のエンデヴァーの様子からすると、炎を使える……使うようになった轟は俺に勝利し、決勝でも勝利し、体育祭を優勝すると思っていたっぽいしな。

 あるいは、俺がいなければ……つまり、原作ならそうなったかもしれない。

 いやまぁ、俺との戦いでも轟は炎を使おうとして動きを止めていたので、それを思えば優勝出来たかどうかは微妙なところだが。

 そんなエンデヴァーの悲痛な声を聞きつつ、これからどうするか迷う。

 保健室に運ばれた轟の見舞いは……いや、別に俺はそこまで轟と親しい訳じゃないし、手応えからも骨を折ったり、あるいはその骨が内臓を傷つけたりといったような事はないので、その辺については気にしなくてもいい。

 なので、轟については保健室にいるリカバリーガールに任せておけば、それで問題ないだろう。

 となると、応援席で次の準決勝……常闇と爆豪の試合を見るか、あるいは控え室で待っているか。

 迷うまでもなく前者だな。

 俺はそのまま応援席の下まで行くと、軽く跳躍をして虚空瞬動を使い、応援席のある場所まで移動する。

 

「アクセルさん、勝利おめでとうございます」

 

 ヤオモモが真っ先にそう声を掛けてくる。

 そこには素直に俺を応援する表情があるが、それだけではなく自分がトーナメントの1回戦で常闇にあっさりと負けたのを悔しく思っているのも見て分かった。

 

「ああ、ありがとな」

「こちらに戻ってきたという事は、次の試合を見るのですか?」

「そのつもりだ。決勝の相手が決まる試合だし。常闇が爆豪を相手にどこまで粘れるか……それを見たいし」

「その言い方からすると、アクセルさんはもうどちらが勝つのか分かっているのですか?」

「分かっているというか、予想しているだけだけどな」

 

 爆豪は性格はともかく、才能という点では間違いなくトップクラスだ。

 常闇もまたかなりの強個性なのは間違いないが……爆豪を相手にするとなると、相性が悪い。

 

「……そうですか」

 

 俺の言葉にそう返してくるヤオモモが少しだけ悔しそうなのはやっぱり自分が常闇に負けたからか。

 そんな風に考えていると、舞台の上にあった氷……言うまでもなく轟が個性で出した氷だが、その氷の片付けが終わって次の準決勝が始まる。

 

『さて、次は準決勝第2試合だぜ。ダークシャドウという強力な個性を持つ、常闇踏陰VSこちらも個性の強力さでは負けていない。ただ、性格にちょっと問題があるか? 爆豪勝己!』

「うわ、爆豪の奴、プレゼント・マイクにも性格に問題あるとか言われてるぜ」

 

 切島の言葉に、それを聞いていたA組の面々はだろうなと寧ろ納得していた。

 爆豪の性格の悪さは、A組に所属している者なら誰でも知っている。

 それこそプロヒーローではなく、ヴィランの方が向いているのではないかと思うくらいには。

 そんな訳で、爆豪が今のように性格に問題ありといったように言われるのは、納得出来る。

 ……もっとも、他の者達、特に爆豪について特に詳しい訳でもなかったりした場合、プレゼント・マイクの言葉に不満を抱く者がいてもおかしくはないが。

 実際、俺が塩崎と戦った時も、塩崎を刺客呼ばわりした事で本人に注意されたりしていたし。

 そう考えると、プレゼント・マイクはもう少し言葉に気を付けた方がいいのかもしれないな。

 とはいえ、別にプレゼントマイクがこうして司会とかそういうのをやるのは、これが初めてという訳ではない。

 それでもこうしてずっと司会を続けているのを思えば、恐らく……いや、ほぼ確実に今までも同じように言われた事はあるのだろう。

 今度スマホで『プレゼント・マイク 謝罪』とかで調べてみてもいいかもしれないなと思っていると、プレゼント・マイクのアナウンスに従って常闇と爆豪が姿を現す。

 

「そう言えば、緑谷はまだ保健室か?」

「はい、まだ戻ってきておりませんわね」

 

 周囲を見てからヤオモモに尋ねると、ヤオモモはあっさりとそう言ってくる。

 緑谷は爆豪に邪険にされても、何故か慕っている。

 それこそMなのではないかと思えるくらいに。

 原作的には、恐らく緑谷のライバル的な存在とか、そういう感じだと思うんだが。

 

「試合、開始!」

 

 プレゼント・マイクではなく、ミッドナイトの声がスタジアムに響く。

 それと同時に、爆豪は一気に前に出る。

 常闇の個性であるダークシャドウはかなり強力だが、常闇本人は決して強くはない。……いや、寧ろかなり貧弱であるというのは、どうやら爆豪にとっても理解出来ていたらしい。

 それに対し、常闇も当然ながら自分の事だけに爆豪を相手に近接攻撃をされればどうしようもないというのを理解しており、ダークシャドウを爆豪に向かわせ、自分は急いで後ろに下がって爆豪と距離を置こうとするが……

 

「それは正直すぎるだろ。手が足りないな」

 

 常闇の行動を見て、そう告げる。

 もっとこう……奇をてらった動き? そんなのを使えば、爆豪も多少は常闇を警戒するだろうが、ただダークシャドウを盾代わりにするだけなら、爆豪にしてみれば予想の範囲内でしかない。

 いや、爆豪の才能を思えば、もし常闇が何らかの奥の手があっても即興でそれに対抗するような気はするけど。

 とにかく、爆豪は襲ってきたダークシャドウの攻撃を掌の爆発で空中を動いて回避しつつ、ダークシャドウをその場に残して常闇に向かう。

 そんな爆豪を見た常闇は何とか距離を開けようとするが、その動きは爆豪の速度と比べるとかなり遅く……

 

「そこまで! 勝者、爆豪!」

 

 殴られた常闇が舞台に倒れ、そこに爆豪が掌を向けたところでミッドナイトが試合の終了を宣言する。

 この状況になってしまえば、常闇がダークシャドウを戻して何かをするよりも、爆豪の爆破が常闇に使われる方が早いと……そして、それが決定打となると判断したのだろう。

 実際、俺の目から見てもそれは間違いなく、そういう意味ではミッドナイトが試合を止めたのはナイス判断だった。

 

『試合終了! 爆豪の勝利! ダークシャドウを全く相手にせず、操っている本人を狙うのは、シビィーぜ! そんな訳で、残りは決勝だが、爆豪の試合があった事を考えて、30分後に開始する。アクセルも、決勝くらいは控え室で待っていてくれよな』

 

 プレゼント・マイクの言葉に、手を軽く振る。

 実際、もしプレゼント・マイクが何も言わなければ、俺は恐らく控え室には行かず、応援席で話をしながら待っていただろう。

 何しろ控え室は、控え室というだけあって特に何もないし。

 なら、この応援席で話をしながら待っている方がいい。

 そんな風に思っていると、舞台を下りる直前、爆豪が俺を睨み付けてくる。

 体育祭の最後の最後で俺と戦うというのは、爆豪にとってこれ以上ない程、やる気に満ちた舞台なのだろう。

 

「アクセル、決勝応援してるから頑張ってね」

「勿論、私もアクセル君を応援するよ!」

「そうですわね。やはりここは私もアクセルさんを応援させて貰います」

「あー……女子だけってのも何だし、一応俺もアクセルを応援してるから」

 

 三奈、葉隠、ヤオモモ、瀬呂といういつもの面子がそう言ってくる。

 

「じゃあ、皆も応援してる事だし、私もアクセルを応援しようかな」

 

 ついでに耳郎も俺の応援をしてくれるらしい。

 

「爆豪ぉぉぉっ! 才能マンな実力を見せつけろぉっ! お前が優勝するんだぁっ!」

 

 峰田が力の限り……いや、血涙を流しながら爆豪を応援する声が聞こえてくる。

 舞台の上にいた爆豪は、いきなりの応援に俺を睨み付けていた目をキョトンとし、峰田を見ている。

 うん、いや……まぁ、峰田の性格を考えると何となくこうなるとは思っていたけどな。

 控え室に向かうべく、椅子から立ち上がりながらそう思うのだった。

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