転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4432話

 スカウトが来たリストを見て、多くの生徒達が話している。

 その中でも不満そうなのは、当然のように爆豪だった。

 うん、まぁ……爆豪は体育祭準優勝といった成績を残しているにも関わらず、常闇には勝利したものの、表彰台に上がる事がなかった轟には負けたしな。

 あれは多分、表彰式での一件が大きく影響してるんだろう。

 何しろ後ろ手に縛られ、猿轡までされていた爆豪だ。

 プロヒーローにとって、扱いにくい存在だと思われてもおかしくはなかった。

 もっとも、それでも1500件以上もスカウトが来ているのは、性格がアレでも能力はしっかりしていると認められたのだろう。

 他にもそれぞれが近くの席にいる者達と話をしている。

 

「ほら、いいか。話を進めるぞ。この指名の有無は関係なく、いわゆる職場体験に行って貰う。お前らは一足先に体験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りのある訓練をしようって事だ」

「それでヒーロー名か!」

「俄然楽しみになってきたぁっ!」

 

 相澤の説明を聞き、教室の中にそんな声が漏れる。

 

「まぁ、仮ではあるが、適当なものをつけたら……」

「付けたら地獄を見ちゃうわよ!」

 

 相澤の言葉に被せるように声が響く。

 それが誰の声なのかは、考えるまでもなく明らかだった。

 

「この時の名が! 世に認知されてそのままヒーローネームになっている人も多いからね!」

 

 そう言いながら姿を現したのは、ヒーロースーツとは名ばかりの成熟した女の優雅な曲線をこれでもかと見せつけんばかりにタイツでその身体を覆った、ミッドナイト。

 俺はともかく、そういうのにあまり耐性がない、あるいは女に強い興味を持つ者にしてみれば、朝から見るには少し刺激の強すぎる格好だった。

 

『ミッドナイト!』

 

 クラスの生徒達が、ミッドナイトの名前を呼ぶ。

 峰田や上鳴の目が血走ってるように見えるのは……まぁ、うん。気のせいではないんだろうな。

 

「まぁ、そういう事だ。俺はそういうのが得意じゃないから、その辺のセンスをミッドナイトさんにして貰う」

 

 相澤の言葉に、なるほどと思う。

 相澤は決してその手の事が得意そうには思えない。

 なら、自分よりもその手のものが得意なミッドナイトに任せようというのは、効率を重視する相澤らしい行動だろう。

 

「将来自分がどうなるのか、名を付ける事でイメージが固まり、そこに近付いていく。それが名は体を表すって事だ。オールマイトなんてのが、お前達にとっては分かりやすいだろう?」

 

 話している内容は為になるものだし、それだけを聞いていれば感銘を受ける者もいるだろう。

 だが、話をしながら寝袋の準備をしているのを見ると、尊敬や感銘も急速に萎んでいく。

 まぁ、それが相澤らしいと言えばらしいのだが。

 ともあれ、相澤は教室の隅で寝袋に包まって眠り、俺達はミッドナイトから……何だ? フリップ? よくTVのクイズ番組とかで答えを書くのに使ったりする、大きめの紙を渡される。

 そして取りあえず15分の間自分でヒーローネームを考えておくようにとミッドナイトから指示が出される。

 ちなみに自分のヒーローネーム以外にも、何々ヒーローといったキャッチコピー的なのも考える必要がある。

 とはいえ……ぶっちゃけ、俺は雄英を卒業してもプロヒーローになるつもりはないんだよな。

 雄英の生徒になったのも、あくまでも公安からの依頼があってのものだし。

 それに今はまだこうして雄英の生徒として活動しているが、公安がゲートを設置する土地を用意したら、当然ながら俺はシャドウミラー代表のアクセル・アルマーとして行動する事になる。

 いやまぁ、緑谷を主人公としたこの世界の原作についても一段落するまでは雄英の生徒でいるつもりではあるのだが。

 ただ、問題なのは原作が終わるのがいつかって事なんだよな。

 USJの件もあったし、もう原作は始まってるって事でいいんだよな?

 というか、雄英の入学前後から原作は始まってるんだろうし。

 入試の実技試験で緑谷が0Pを倒したんだから、間違いなく原作が始まっている筈。

 だとすれば、原作の終わり……いわゆる最終回は、いつになるのか。

 1年で終わるのか、それとも高校を卒業するまで話が続くのか。

 あるいは、1年、2年、3年とタイトルが微妙に変わって続くのか。

 その辺りについては、俺もちょっと分からないが……出来れば1年で終わって欲しいとは思う。

 いや、そっちの件はともかく、今はヒーローネームだったな。

 プロヒーローになるつもりがない以上、さっきミッドナイトが言ったようにプロヒーローになった時の事を心配しなくてもいいというのは大きいな。

 適当な名前を付けてもいい。

 エンデュミオンヒーロー、ムウ・ラ・フラガとか……駄目だな。

 というか、さっきから何度もミッドナイトの視線が俺に向けられているんだが。

 多分これ、昨日の20代の俺と会ったのが影響してるよな?

 そんな中で、ムウ・ラ・フラガなんてヒーローネームにしたら、それこそ昨日の一件を怪しんで下さいと言ってるようなものだし。

 だとすれば……ツンデレヒーロー、イザーク・ジュール?

 うん、イザークに知られたら間違いなく激昂しそうなので止めておこう。

 冗談はこの辺にして、そろそろ真面目に考えるか。

 

「三奈、どういう風に考える?」

「え? うーん……やっぱり個性とかそっち系じゃないの? アクセルの場合なら、その身体能力とか」

「個性か」

 

 混沌精霊ヒーローとか? いや、それだとちょっとゴロが悪いし、エレメントヒーロー? ああ、これはちょっといいかもしれないな。

 もっとも、今のところ俺が見せている能力のどこをどう見ればエレメント、精霊の要素があるのかと疑問に思われても仕方がないが。

 

「後は……うーん……あ、ヒーローコスチュームとかは?」

「……なるほど、それはありかもしれないな」

 

 俺のコスチュームは、魔王や大魔王……いや、大魔王の方がいいか。とにかくそれをモチーフにしている。

 となると、大魔王ヒーロー? ……微妙だな。

 大魔王は普通は敵な訳で、そうなるとこの世界だと敵=ヴィランな訳で、ヴィランヒーロー? これもまたちょっと合わない気がする。

 取りあえずそれよりもヒーローネームの方を先に考えるか。

 アクセル? いや、それは名前そのままだから、最後の最後だろう。

 そうなると、他に思いつくのは……ああ、大魔王がモチーフのヒーローコスチュームを着ているのを思えば……アークエネミーはどうだ?

 このアークエネミーというのは、俺がFate世界で凛のサーヴァントをしていた時のクラス名だ。

 本来なら聖杯戦争に参加するサーヴァントは、セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、バーサーカー、アサシン、キャスターの中から割り当てられるのだが、俺の場合は異世界から来た為か、それとも能力的な問題のせいか、その7つのクラスではなく、俗にイレギュラークラスとされる、7つのクラス以外のクラスとして、アークエネミーというクラスになった。

 それをここでヒーローネームとして使うのはどうかと思ったが、大魔王がモチーフのヒーローコスチュームである以上、アークエネミー……大敵というのはそう悪くない気がする。

 それにこっちはあくまでもついでだが、俺がアークエネミーというヒーローネームにすれば、何故か俺に心酔している塩崎の目を覚ます事が出来るかもしれないし。

 塩崎は宗教に傾倒している一面があるので、そんな塩崎が俺のアークエネミーというヒーローネームを聞けば……うん。やっぱりそんなに悪くない気がする。

 まぁ、それでも俺を慕うというのなら少し見直すが。

 ともあれ、そんな理由からだが俺のヒーローネームはアークエネミーに決まる。

 そうなると次に必要なのは、キャッチコピーの方だな。

 こっちがまた難しい。

 少し考え……俺のキャッチコピーは何だ? キャッチコピー、つまり特徴。

 すぐに思い当たるのは、俺の相棒というか、もう1つの半身とも言うべきニーズヘッグだろう。

 そしてニーズヘッグというのは、北欧神話に出てくるドラゴンだ。

 北欧神話、北欧神話か……そこまで考え、ふと思い当たる。

 ラグナロク。

 北欧神話において、神々の黄昏と呼ばれる一種の最終戦争だ。

 俺という存在について思えば、ラグナロクというのは決して間違っていないと思う。

 それに、俺の相棒のニーズヘッグの最強の攻撃も、ラグナロクだしな。

 ラグナロクヒーロー、アークエネミー。

 不思議としっくりとくる感覚があるので、これで決まりだな。

 そんな風に考えていると、やがて15分が経過し……何故か教壇での発表となる。

 青山の英文風のヒーローネームや、三奈のエイリアンクィーンといったヒーローネームが却下される。

 ……というか、このヒロアカ世界にもエイリアンという映画はあったんだな。

 ネギま世界かペルソナ世界で見た覚えがある映画だが、結構古い映画だった覚えがある。

 個性の存在が確認された混乱期があったこのヒロアカ世界でも、まだ普通に見られている。

 もしくは、そのリメイク作品だったりするのかもしれないな。

 他にもこのヒロアカ世界ではエイリアン……より正確にはエイリアン2は実はここ数年で作られたといった可能性もあるが。

 ともあれ、この2人の影響で大喜利っぽい感じになってしまう。

 そんな中、空気を変えたのは梅雨ちゃんだった。

 

「小学生から決めてたの。フロッピー」

 

 梅雨ちゃんが教壇の上に置いたフリップには、梅雨入りヒーローFROPPY、フロッピーの文字が。

 これには青山と三奈のヒーローネームで微妙な感じになっていた教室内が、可愛いと一気に盛り上がる。

 ミッドナイトからも皆から愛されるお手本のようなネーミングと絶賛されていた。

 そうして、梅雨ちゃんを皮切りに切島、耳郎、障子、瀬呂、尾白、砂糖、2回目の三奈、上鳴、葉隠……といった具合にどんどんと発表され、何となく発表する雰囲気を逃した俺と緑谷、飯田、爆豪の4人となる。

 ちなみに爆豪は爆殺王といったヒーローネームを発表し、ミッドナイトに却下されていた。

 ……え? あれ? 爆豪の爆殺王が駄目なら、俺のアークエネミーは……いや、爆殺とか露骨なのはないので、そういう意味では俺の奴は悪くない筈。

 そう思いながら、俺は前に出る。

 

「俺のヒーローネームは、これだ」

 

 そう言い、フリップを皆に見せる。

 ラグナロクヒーロー、アークエネミー。

 ……いかにも厨二っぽい感じだが別にこのヒーローネームはずっと使う訳じゃない。

 

「どうです、ミッドナイト先生」

「うーん……世の中にはちょっとどう? と思う人がいるかもしれないけど、私は悪くないと思うわよ」

 

 よし、ミッドナイトもどう判断するのか迷ったらしいが、取りあえずアークエネミーは問題ないらいし。

 ……常闇がもの凄くキラキラとした視線を向けてきているのがちょっと気になるが。

 まぁ、ラグナロクとかアークエネミーとか、常闇にしてみれば大好物な分類だろうから、仕方がない。

 そんな訳で、無事にヒーローネームが決まった俺は自分の席に戻る。

 

「ふーん、アークエネミーね、格好いいんじゃない?」

 

 すると三奈が俺にそう言ってくる。

 三奈の様子を見る限りだと、別にからかっている訳ではなく、本気で言ってるのは明らかだ。

 

「ピンキーも三奈に合っていると思うぞ。……まぁ、エイリアンクィーンも俺としては悪くないと思ったが」

「あ……あはは。アクセルにそう言って貰えると嬉しいけど、今となってはピンキーの方がよかったと思ってるわ」

 

 そう言う三奈の表情は、少しだけ困った様子を見せる。

 もしかして、エイリアンクィーンというのは本気じゃなくて、受け狙いだったりしたのか?

 実際、青山の奴と三奈の一件でああいう流れになったしな。

 

「他の面々も、結構いいヒーローネームだよな」

「そうね。……今頃、B組でも同じようにヒーローネームを考えているのかしら?」

「俺達はヒーロー情報学の授業でこうしてヒーローネームを決めているんだから、それを思えば今は違っても今日か……遅くても明日か数日中には決まるんじゃないか?」

 

 拳藤、取蔭、塩崎といった俺と親しい相手のヒーローネームがどのようになるのか、少し気になってはいる。

 他にも、B組のアレな奴代表たる物間や鉄哲といった者達がどのようなヒーローネームを付けるのかというのも、俺にとっては気になっている。

 

「僕は……これです」

 

 飯田のフリップに書かれているのは、自分の名前。

 轟も自分の名前をヒーローネームにしていたが、焦凍とショートとしていたのに対し、飯田は漢字の本名だった。

 なるほど、名前そのままにしてもいいのかもしれないな。

 アークエネミーではなく、アクセルにしてもよかったと思う。

 ただ、飯田の様子を見る限りだと、本人的には複雑な表情を浮かべている。

 自分の本名をつけるのは飯田にとっても本位ではなかったのかもしれないな。

 ……他にも、緑谷が自分のヒーロー名をデクとして驚いたりもしたが、無事に爆豪以外全員のヒーローネームが決まったのだった。

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