転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4433話

「オイラはマウントレディ!」

 

 ヒーロー情報学の授業が終わった日から1週間。

 どの事務所に行きたいのかといった話題を放課後にしていたところ、峰田が俺を見ながらそう言ってくる。

 ……あれ? この前優が俺の部屋に来た時に峰田はまだいたけど、あの時の優は私服で、ヒーローコスチュームは着ていなかったよな?

 だとすれば、あれがマウントレディだとは峰田も思っていない筈だ。

 その代わり、俺の部屋に来る年上の美人なお姉さんといった扱いになってはいるのかもしれないけど。

 ともあれ、峰田がマウントレディの事務所に職場体験に行きたいと言ったのは……

 

「峰田ちゃん、やらしい事を考えてるわね」

 

 峰田の様子を見て、皆が思っていたことを梅雨ちゃんが言う。

 梅雨ちゃんのその言葉に峰田は違うと否定していたものの、A組の中にはそんな峰田の言葉を信じる者は誰もいない。

 ……ただ、優は外面はいいものの、かなりだらしない性格をしているんだよな。

 具体的には、俺の部屋のロボット掃除機に敵視されるくらいには。

 プロヒーローとして活動しているマウントレディしか見ていないのなら、プロヒーローじゃない優がどういう私生活をしてるのかは、まず分からないだろうけど。

 そういう意味では、峰田がマウントレディの事務所を希望するのは理解出来る。

 そんな中で少しだけ不安なのは、優が峰田を見た時、俺の部屋で会った相手だと言ってしまわないかだろう。

 峰田の外見はこう……異形系か? と思う程に小さく、それだけに印象に残りやすい。

 だからこそ、今の峰田を見た時に俺の部屋で会ったといったような事を言えば、それはつまり峰田もあの時に会った相手がマウントレディだと、つまり優だと分かるだろう。

 そうなると、どうなるか。

 当然ながら峰田にしてみれば俺が優と知り合い、それも優が俺の部屋に来るような関係だと思い、嫉妬してくる。

 いや、嫉妬して血涙を流すだけなら、俺もそこまでは気にしないが。

 ただ、それを峰田の心の中だけにしまっておいてくれるかとなると、また話が違ってくるのだ。

 教室で、俺とマウントレディの間に何か関係があるといったような事を言われたら、間違いなく面倒があるだろう。

 だからこそ、峰田には出来ればマウントレディ以外の事務所に行って欲しかった。

 

「もはや芸かよ」

 

 ふとそんな声が聞こえ、そちらに視線を向ける。

 するとそこでは、皆、麗日、峰田、上鳴がいて、引き攣った……もしくは引いた表情で緑谷を見ている。

 何だ? と緑谷を見ると……うん。ブツブツと呟き続けてるのが見えた。

 俺も色々と考える事多いんだが、緑谷の場合もそれは同じなんだよな。

 ただ、緑谷は頭の中で考えるといったような事はせず、ブツブツと口に出す。

 そんな様子に他の面々は引きながらも、1週間前の……ヒーローネームを決めた後の事を思い出す。

 相澤が言うには、指名が来た者はそのリストの中から選ぶのに対し、指名が来なかった者は雄英側が用意したリストの中から選ぶらしい。

 ……そんな中で峰田がマウントレディの事務所に行くと言ってるって事は、優が峰田を指名したのかもしれないな。

 何がどうなってそうなったのかは分からないが。

 あるいは、峰田が相澤に直訴してマウントレディの事務所に職場体験に行くようにしたのかもしれないが。

 指名が来た者はそのリストの中からって話だったが、どうしてもマウントレディの事務所に行きたい峰田としては、相澤に直訴したのかもしれない。

 普通ならそんなのを相澤が聞くとは思えないが……峰田、それも女絡みだしな。

 そう考えると、あの相澤であっても……いや、効率重視の相澤だからこそ、峰田はマウントレディに預けた方がいいと思ったのかもしれない。

 ともあれ、そんな訳でそれぞれがどの事務所に行くのかというのが、今のようにある程度時間のある休憩時間や昼休み、あるいは放課後によく話題になる訳だ。

 

「さて、じゃあそろそろ今日の自主訓練に行くぞ。麗日は緑谷を連れてきてくれ」

「ちょっ、なんでうち!?」

 

 麗日が俺の指名に驚きながら言ってくる。

 けど、何でって言われても……

 

「緑谷の担当は麗日だろ? 飯田がいれば飯田でもいいんだが、その飯田は今日はいないし」

 

 噂によると、飯田の兄がヴィランにやられて入院したらしい。

 その兄が入院している病院に行ってるのか、それとも自分だけで訓練をしてるのか。

 その辺りは生憎と俺にも分からなかったが、とにかく飯田は最近自主訓練には来ていない。

 そんな飯田が来なくなった代わりという訳でもないだろうが……

 

「アクセル、そろそろ行かないか?」

 

 轟がそう俺に声を掛けてくる。

 そう、轟が自主訓練に参加するようになったのだ。

 勿論毎日という訳ではなく、時間に余裕のある時だけに限るが。

 クラスのNo.2の片割れがこうして自主訓練に参加するようになったのは、参加している者達のとっても幸いだろう。

 ただ、No.2の片割れ、爆豪の方は相変わらず自主訓練に参加する様子はなかったが。

 爆豪の性格を考えれば、それはおかしな話ではなかったのだろうが。

 後は……

 

「アクセルさん、そろそろ自主訓練の時間と思い、迎えに来ました」

 

 塩崎……いや、茨がA組の教室を覗き込み、そう言ってくる。

 ……そう、茨の俺に対する態度は、あれからまだ直っていない。

 俺を敬うよう様子で、自分は俺の下僕であるとまで言う事もあるくらいだ。

 しかも、茨がそういう風に言った時、峰田と上鳴がそれを聞いていて、もの凄い目つきで睨まれたりもした。

 もっとも、睨みはしたが何かを言ったり、実際に行動を起こしたりはしなかったが。

 何しろ、既に何度か不敬と言われて茨の蔦によって縛り上げられているし。

 まぁ……うん。茨の性格はともかく、その個性がかなり強力なのは間違いないんだよな。

 実際、だからこそ茨は雄英に合格している訳だし。

 ただ、その性格がな。

 

「アクセル、今日もよろしく頼む。それと今日は1人、初めての奴を連れて来たから」

 

 茨の後ろから拳藤が顔を出し、そう言ってくる。

 そんな拳藤の更に後ろから、黒髪のボブカットの女が姿を現すと、こちらを見て小さく頭を下げてくる。

 

「小大唯だ。その……ちょっと内気で、意思疎通は難しいかもしれないが、よろしく頼む」

「ん」

 

 拳藤の言葉に、小大と言われた女が小さく呟く。

 ……ん、って。それで意思疎通をするのか?

 いや、今この場でならそれはいいけど、授業の時に当てられたらどうするんだろうな?

 その時も『ん』で答えるのか。

 その辺は俺にもちょっと分からないが……まぁ、その辺は俺が心配する事じゃないか。今はそれより……

 

「いやっほう! 峰田、見ろよ!」

「へへん。オイラ知ってるぞ。あの子は小大唯。中学の時はファンクラブまであった美少女だ!」

 

 うん、上鳴と峰田の2人をどうにかする方が先か。

 

「耳郎、頼む」

「任せて」

「ぎゃんっ!」

「びぃっ!」

 

 俺が頼んだ瞬間、耳郎のイヤホンが峰田と上鳴に突き刺さり、お仕置きがされる。

 何だか最近、この2人のお仕置き役は耳郎の役割になってきたな。

 三奈の場合は酸なので、ダメージがある濃度の酸はちょっと厳しい。

 服とかを溶かすだけとかなら出来そうだが、峰田や上鳴のそういうのを見てもな。

 葉隠の場合は……うん。USJの一件で男の弱点を理解……いや、理解は前からしてたのか。それを実感してしまったからな。

 さすがにそれは可哀想だ。

 ヤオモモは、任せるとプリプリして頑張るんだが、お嬢様だけにちょっとそういうのに向いていないんだよな。予想外の方向に走るとか。

 梅雨ちゃんはその舌を鞭のように使う事でお仕置き出来るが、今日は弟達の面倒を見ないといけないからと、いない。

 他の面々も色々と頼めそうではあるが……まぁ、性格が色々と攻撃的な耳郎がこの役目には一番向いてるんだよな。

 しかも大きなダメージを与える事なく、お仕置きをすることが出来るというのも大きいし。

 

「さて、お仕置きも終わった事だし……そろそろ行くか。ほら、峰田と上鳴は喜べ。今日もミッドナイト先生が監督をしてくれるぞ」

「……万歳」

「あの身体を……エロい身体を……耳郎の絶壁とは違う……うぎゃあああああああっ!」

 

 耳郎はともかく、上鳴が余計な事を口にした瞬間、再度イヤホンが飛んできて追加の一撃が放たれる。

 馬鹿な奴。

 耳郎が自分の身体の貧弱さを気にして……

 

「アクセル?」

「あ、いや。何でもない。取りあえずお仕置きが終わったら、自主訓練の準備をしておいてくれ。俺はミッドナイト先生を呼びに行ってくるから」

 

 俺の視線を胸に感じたのか、据わった目つきで言ってくる耳郎。

 そんな耳郎に慌てて俺は何でもないと首を横に振り、教室を出る。

 すると小大の紹介をしようというのだろう。

 拳藤が小大を連れて教室の中に入り、自主訓練に参加する者達と話しているのが分かった。

 ……そして、当然のように茨は俺の後をついてくる。

 

「茨、職員室に行くだけなんだし、別にわざわざ俺についてくる必要はないぞ?」

「いえ、アクセルさんの行く所、どこでも一緒に行かせて貰います。下僕ですから」

「……俺を敬うのはいいとして、その下僕というのは止めないか?」

「アクセルさんがそう仰るのであれば」

「あー……うん。じゃあ、止めてくれ」

 

 ホワイトスターにいるエルフ達と仲良くやれそうだよな。

 あるいはこの様子ならエルフ達と同じく魔法を使えるようになるかもしれない。

 もしそうなったら楽しみではあるが、同時にちょっと怖くもある。

 そんな風に考えながら歩いているとやがて職員室前に到着する。

 

『失礼します』

 

 俺と茨が声を揃えてそう言うと、職員室の中に入る。

 放課後という事もあって、職員室の中には教師が多くいた。

 それぞれが自分の仕事をしたり、あるいは少し休憩といった感じで話したりしている。

 そんな職員室の中を、俺は茨と共にミッドナイトのいる場所まで向かう。

 

「ミッドナイト先生、今日もお願い出来ますか?」

「あら、アクセル。そろそろ来る時間だと思ってたわ。放課後に仲間同士で切磋琢磨するその光景……青春ね」

 

 そう、これがミッドナイトが毎日のように俺達の自主訓練の監督を引き受けている理由だった。

 生徒側にしてみれば、峰田や上鳴、あるいはその2人程ではないにしろ、成熟した女の、しかもタイツだけで覆われたある意味でマニアックな女のボディラインを間近で見る事が出来る。

 女にとっても、ミッドナイトは面倒見がいいというのもあってか、相談しやすい頼れる女教師だ。

 また、純粋にプロヒーローとしての実力も高いので、もし何かがあった時に助けてくれる相手としても頼れる。

 

「青春かどうかは分かりませんけど、職場体験までもう時間もないですしね。そんな中で出来ることはやっておきたいと思う人が多いんだと思いますよ」

「それこそが青い春……青春なのよ」

 

 青春と言われるのはともかく、青い春と言われるのは何だかこう……うん。

 俺の気にしすぎというのもあるのかもしれないけど。

 

「じゃあ、ミッドナイト先生の準備がいいようなら行きましょう」

「ええ、そうね。場所はいつもの?」

 

 そう聞いてくるミッドナイトに、俺は頷きを返すのだった。

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ今日も元気に自主訓練をやる訳だが……俺は緑谷と峰田との模擬戦だな」

「ちょっ! アクセル! 何だかいつも俺と緑谷だけお前と模擬戦をしてないか!? もっと他の奴とも訓練させてくれって! なぁ、緑谷もそう思うよな!?」

「え? 僕はアクセル君との模擬戦は為になるからいいけど」

「駄目だぁっ! そういえばこいつ、こういう奴だったぁっ!」

 

 峰田の絶叫が周囲に響く。

 そんな様子は、この模擬戦に参加している者達にとっては既に見慣れたものだったので、特に気にしてはいなかったが。

 ただ、今日初めて自主訓練に参加する小大が、不思議そうな様子で峰田を見ていた。

 これについては……まぁ、うん。

 初めて見るのなら、こういう反応になってもおかしくはないか。

 

「ほら、峰田。そろそろ準備はいいか? 始めるぞ」

「ちょっ、待て、待ってくれ! せめて、少し作戦を考える時間をくれよ!」

 

 そう峰田が言ってきたので、取りあえず5分だけ時間をやる。

 プロヒーローとして活動するのなら、作戦を考える時間とかそういうのはまずないと思うんだが。

 いやまぁ、実際に遭遇する相手が分かっていれば、前もって作戦を考えたりも出来るかもしれないが、今は普通に遭遇した時のことを想定してのやり取りだ。

 俺達はまだプロヒーローじゃなくて、ヒーロー科の生徒なんだから、そのくらいは仕方がないかもしれないが。

 そんな訳で暇な5分の間を待ちながら周囲の様子を見ると、それぞれ自分の個性を使った戦い方を考えたり、もっと単純に筋力トレーニングをしたり、あるいは武術の構えらしきものをしている者もいた。

 俺は5分の間、そんな光景を眺め続けるのだった。

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