転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4434話

「うおおおおおっ! 緑谷、早くしろぉっ!」

 

 峰田がモギモギを大量に俺に投げつけながら、そう叫ぶ。

 モギモギを大量に使いすぎると、峰田は頭から血が出て来る筈だ。

 そういう意味では、こうして大量に投擲するのではなく、狙い澄ましてモギモギの消費量を少なくする必要があるのだが……生憎と、峰田にはまだそういう事が出来ない。

 この辺りについては、峰田も訓練をしてはいるのだろうが、まだまだといったところだ。

 そんなモギモギを回避しながら、こちらに向かってくる緑谷の姿を確認する。

 

「スマッシュ!」

 

 放たれる拳は、以前までと比べると幾分か素早く、そして鋭くなっていた。

 だが、それでも俺の身体に命中する程ではない。

 拳の一撃を回避し、緑谷の手首を掴むと同時に、その力の流れを利用して投げ飛ばす。

 この手の柔術の技術は、エヴァから習った奴だが、この世界ではそれなりにかなり使える。

 まぁ、人を相手にする事が多い以上、当然ではあるが。

 これが人型機動兵器を使った戦闘のある世界であれば、この手の柔術は……軍人同士の生身の模擬戦で使ったり、生身で襲ってきた相手との戦い程度でしか使い道はないんだよな。

 ……いや、それでもそれなりに使う機会はあるのだが。

 そんな風に思いながら、俺は緑谷に向かって進む。

 投げ飛ばされた緑谷は空中で身体を捻って何とか地面に着地する。

 だが、そうして顔を上げた緑谷が見たのは、すぐ目の前にいる俺の姿。

 そんな俺に向け、緑谷は咄嗟にパンチを放ってくる。

 

「甘い」

 

 咄嗟の行動だった事もあってか、緑谷は個性を使わずにパンチを放ってきた。

 その一撃は、当然ながらそこまで威力のあるものでもない。

 再度手首を掴み、柔術によって緑谷の身体は再び空中を飛ぶ。

 着替えをする時に緑谷の身体を見る事があるが、その緑谷の身体はしっかりと鍛えられている。

 以前ちょっと聞いた話だと、緑谷は中学3年になるまではプロヒーローを目指していたにも関わらず、特に身体を鍛えたりはしなかったらしい。

 当時は無個性なので、身体を鍛えるくらいはした方が良かったんじゃないか?

 そうも思ったが、多分当時の緑谷はプロヒーローになりたいと口では言っても、本気では思ってなかったのだろう。

 しかし、そんな中で何があったのか……個性が発動出来るようになったからなのだと思うが、とにかくそれで身体を鍛え始め、今の緑谷はかなり筋肉質な身体になっている。

 ただ……身体に筋肉がついても、緑谷はそれを完全に使いこなせていない。

 筋肉があっても、その筋力による威力をしっかりと拳に乗せるには、身体の動かし方が……パンチを放つ時の姿勢が重要になってくる。

 これはしっかりと格闘技を習ったりすれば自然と教わるのだが、どうやら緑谷は格闘技を習ったりはしていないらしい。

 この辺も、それこそ小さい頃からプロヒーローになりたいと言っていたのなら、やっておいてもよかったと思うんだがな。

 

「うおおおおいっ! 何でそんなに簡単に投げられるんだよ!」

 

 絶叫しつつ、峰田がモギモギを更に投げつけてくる。

 投げ飛ばされた緑谷のフォローをする為なのだろうが、焦っているからだろう。

 そのコントロールは最初に比べると明らかに落ちている。

 峰田はこのテンパった時にコントロールが雑になるのが問題だよな。

 とはいえ、それでも緑谷が体勢を立て直す時間を稼ぐ事は出来たので、最低限の役目は果たしているのだが。

 必死に峰田が稼いだ時間を使い、再び緑谷は俺に向かって突っ込んで来る。

 

「スマアアアアッシュ!」

 

 それは、渾身の一撃。

 だが、それを見た瞬間、俺は自然と溜息を吐いていた。

 

「もっと工夫をしろ」

 

 そう言いつつ、緑谷の拳を受け流す。

 緑谷の個性によって強化されたその一撃が、緑谷に向かってそのまま返る。

 ドン、と。

 そんな音と共に緑谷は地面に叩き付けられた。

 

「げほっ!」

 

 叩き付ける瞬間に少し身体を持ち上げたので、それによってダメージはある程度軽減された。

 しかし、それでも今の一撃は緑谷にとっては痛かったらしく、叩き付けられた衝撃で何度も咳が出る。

 ……この程度ですんだのは、緑谷にしてはラッキーだったな。

 そんな緑谷から手を離し、峰田を見る。

 当然ながら、峰田にこの状況ではどうにも出来ない。

 峰田の個性のモギモギは、サポートとしては非常に重宝する能力を持っているものの、それはつまりサポートする相手がいなければどうにもならないという事を意味しているのだから。

 峰田のモギモギは、使いようによっては十分に1人でも戦えるだけの可能性を持ってはいると思うのだが。

 時々俺に仕掛けて来るように、モギモギを使った反発力はそのまま打撃力にも転化させられるのだから。

 

「くそぉっ! 来るんじゃねぇっ!」

 

 叫ぶ峰田だったが、既にモギモギの限界に近くなってきているのか、投擲される数も少ない。

 それだけではなく、混乱してモギモギを投擲するコントロールも乱れており……結果、俺はモギモギを全て回避、峰田の前まで到達する。

 

「う……うおおおおっ!」

 

 そこまで追い込まれた峰田は、もうどうしようもないと判断したのだろう。

 俺に向かって突っ込んでくる。

 

「せめて何か奥の手を隠し持て」

 

 突っ込んで来る峰田にそう言いつつ、俺はボールでも受け止めるように峰田を掴むと、これで模擬戦は終了となるのだった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、アクセル君。僕の行動、どこが駄目だったと思う?」

 

 模擬戦が終了して一段落しているところで、緑谷がそう聞いてくる。

 

「正直なところ全部……と言いたいところなんだが、緑谷が聞いてるのはそういうのじゃないよな?」

 

 全部と口にしたところで、緑谷がかなりショックを受けた様子を見せる。

 そんな緑谷だったが、すぐに俺が続けた言葉を聞くと頷き、期待を込めた視線を向けてくる。

 

「うーん……そうだな、緑谷の攻撃で気になったのは、基本的にパンチだけだよな? 何で蹴りとかは使わないんだ? この件については以前も言ったと思うが、未だに蹴りは使ってないよな?」

「え? ……あ……」

 

 蹴りを使わないというのは、緑谷にとっては完全に想定外のものだったらしい。

 

「まぁ、オールマイトのファンだからというのもあると思うけど」

「あ、あはは……」

 

 どうやら図星だったらしく、緑谷は困ったように、そして照れたように頭を掻く。

 緑谷がオールマイトのファン、それも軽いファンではなく重度のファンだというのは、既にクラスでも広く知られている事実だ。

 そしてオールマイトの個性も緑谷と同じく増強系――詳細は不明らしいが――である以上、緑谷が憧れのオールマイトの戦闘スタイルを真似るのは、おかしな話ではなかった。

 とはいえ、緑谷とオールマイトでは当然何から何まで違う。

 それこそ同じなのは性別と手足の数くらいではないかと思うくらいに。

 なら、オールマイトの模倣をするだけではなく、もっと自分に合った増強系の個性の使い方をした方がいいと俺には思えた。

 勿論これは、あくまでも俺の意見だ。

 緑谷が絶対にオールマイトと同じ戦闘スタイルでないと嫌だと言うのなら、それはそれで俺からは何も言えなくなるが。

 ただ、緑谷の様子を見る限りだと、オールマイトの模倣ではなく、自分に合った戦い方をしようと思っているらしい。

 

「緑谷がどんな選択をするのかはともかくとして、蹴りを使うという選択肢はそんなに悪くないと思うから、少し考えてみるんだな」

 

 体育祭での轟との戦いでも、緑谷は個性の反動で腕がもの凄い骨折をしていた。

 勿論、蹴りを使うようになれば腕に怪我をしないという訳ではないが、それでも蹴りを使うようになる分だけ、緑谷の腕に対する個性の負担は小さくなる。

 ……こうして見ると、改めて身体がしっかりと個性に耐えられるようになるまで個性が発動しなかったというのは、納得出来るよな。

 特例中の特例とか、そんな感じらしいが。

 普通は幼児の時に個性が使えるようになるらしいし。

 それが15歳になるまで個性が使えるようにならなかったというのだから、緑谷の中に眠っていた個性がどれだけの強力さなのか、考えるまでもない。

 とはいえ、その強力な個性が仇となり、緑谷はちょっと個性を使う際にも精密にコントロールしないと怪我をする訳で。

 だからこそ、個性の負担を腕に集中させるのではなく、足も使う事で負担は少なくなるのだ。

 元々、足の筋力は腕よりも多い。

 つまり、個性の負担は腕よりも多く耐えられるのだ。

 ……もっとも、緑谷の個性の強さを思えば、腕と足の筋力の違いは誤差でしかないような気もするが。

 それに、もし個性のコントロールをミスって足を怪我したら、非常に厄介な事になるのも事実だ。

 もし腕が個性で怪我をした場合であっても、攻撃はもう片方の腕で出来るし、何よりも移動は普通に出来る。

 だが、もし個性のコントロールをミスって足が怪我をした場合、動くことが出来ない……訳ではないが、それでもやっぱりかなり厳しい状況になるのは間違いなかった。

 そういう意味では、蹴りを攻撃に使うというのは、ある意味で賭けに近いかもしれない。

 

「その辺りの判断をするのは緑谷だから、自分で決めるしかないな」

 

 足を使う事に対するメリット、デメリットを説明し、そう緑谷に言う。

 

「……うん、分かった。ちょっと考えてみるよ。職場体験まで……は無理だけど、それが終わるまでにはどうするか考えてみる」

「分かった」

 

 緑谷の言葉に俺が頷くと、緑谷は離れた場所に向かう。

 緑谷は決して運動神経とかがいい訳ではないが、考えるのには向いている。

 何というか……今まで知り合った主人公達の中では、ネギに似てるか?

 もっとも、ネギは何だかんだと身体を動かすのもかなり得意だったけど。

 緑谷は考えるというか、検討するのが得意なんだよな。

 ……実際、今も誰もいない場所まで行くと、ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツといったように呟いているし。

 

「で、アクセル。オイラは?」

 

 峰田が期待の視線をこちらに向けてくる。

 

「あー……峰田はなぁ……」

 

 峰田の言葉に迷う。

 緑谷の場合は、戦闘センスはともかくとして、身体が鍛えられており、増強系という戦闘向けの個性、それも身体が出来上がるまで使えないという、極めて強力な個性を持ち、何よりも主人公だから今のようにアドバイスも出来る訳だが……峰田はなぁ。

 何しろ異形系かと思える程に小柄だ。

 勿論、小柄だからといってそれが決して悪い訳ではない。

 

「その小柄な身体を利用するのが一番分かりやすいだろうな」

「この身体を? どうやって?」

「具体的にその状態で低い場所を移動するようにする。峰田は小さいから、普通に相手に向かっていっただけでも、一般人ならレスリングとかのタックルに近い軌道になる」

 

 格闘技の多くには、レスリングのように地面すれすれを移動してくる相手に対する攻撃方法はない……訳ではないが、少ない。

 例えば膝蹴りとかか。

 あ、でも空手の類は瓦割りとかそういうので使う攻撃方法があるから、対処は可能らしいが。

 ともあれ、足下の低い位置というのは、やられた者にしてみればそう簡単に対処出来るようなものではない。

 普通の身体を持つ者ですらそうなのだから、小柄な峰田が同じようにすれば、やられる方にしてみればかなり……いや、非常に厄介だろう。

 ただ、これには問題もある。つまり……

 

「けど、それってもの凄く地味っていうか、格好悪くないか?」

 

 そう、峰田の言う通りだ。

 いや、その辺りの感覚は人によって違うのだが、峰田にしてみれば格好悪いという認識だったらしい。

 

「……アクセルさんの提案に何か不満でも?」

「ひぃっ!」

 

 いつの間にか伸びていた蔦が、峰田の足に絡む。

 そして茨の言葉が聞こえると、峰田の口から悲鳴が上がる。

 以前……体育祭の休日が終わった辺りでは、茨が俺と一緒に行動するようになって、それを峰田は妬んでいたが、茨が自主訓練に参加するようになって暫くすると、そこまで嫉妬されなくなった。

 ……あくまでもそこまで嫉妬がされなくなったのであって、今もそれなりに嫉妬はしているのだが。

 狂信というのは少し大袈裟かもしれないが、俺に仕えるという立場を取っている茨は、峰田から見ても色々と思うところがあるらしい。

 とはいえ、それを込みでも茨は美人だし、胸は……まぁ、巨乳という訳ではないが、貧乳でもない、平均的? いや、平均よりも少し大きめか?

 とにかくそんな感じで、外から見ている限りでは茨は十分に魅力的なのだ。

 ……そんな茨に、夜伽がどうこうといったような事を言われれば、もし峰田ならその場でいただきますをしてもおかしくはないが。

 もっとも、そうなればそうなったで茨の暴走がより激しくなったりしそうなので、迂闊に手を出す訳にもいかないのだろうが……峰田なら、そこに罠があると分かっていても突っ込みそうだよな。

 

「あー、茨、その辺で。それで、こうしてやって来たって事は、茨も何か俺に用事があるのか?」

「はい。私もアクセルさんに指導をして貰いたく。そうしたら、この不浄の者がアクセルさんに……」

「あがががが、アクセル、アクセル! 締まってる、締まってる!」

 

 そんなやり取りに、俺は大きく息を吐くのだった。

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