転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4439話

 俺と龍子、優の話し合いはまだ続いていた。

 

「それで峰田君だったわよね。……アクセルとしては、どうしたいの?」

 

 龍子は先程の優の失言については取りあえずスルーしたらしく、そう俺に聞いてくる。

 峰田をどうするのかと聞かれれば……

 

「勿論保須市に連れていく」

「……アクセル、一応聞いておくけど、本気で言ってるのよね?」

 

 龍子が真剣な表情でそう聞いてくる。

 龍子にしてみれば、俺の特殊性は理解しているので俺が保須市に行くのは納得出来るのだろう。

 だが、そこで何故峰田を連れていこうとしているのか、龍子には分からないのだろう。

 ……実際、この世界が原作のある世界であると知っている俺だからこそ、峰田を連れていこうという考えを抱いているのだ。

 原作主人公である緑谷と同じクラスの、峰田。

 そうなると、峰田も当然ながら原作の騒動……ヴィラン連合との戦いに巻き込まれる可能性がある。

 であれば、緑谷が戦闘に参加しない今回のイベントにおいて、峰田に実戦経験を積ませるというのは決して悪くはないだろう。

 

「ああ、本気だ。ヴィラン連合の件は知ってるだろう?」

「……また、ヴィラン連合が攻撃を仕掛けて来ると思うの?」

「あくまでも可能性だけどな。寧ろ今回のヒーロー殺しの件も、裏にヴィラン連合がいるかもしれないと思っているくらいだ」

「何でそう思うの?」

「これについては、あくまでも俺の勘でしかないけどな」

 

 ただ、原作の流れを考えれば決して有り得ない事ではないだろう。

 とはいえ、それを言ったりすることは出来ないのだが。

 

「勘、ね。アクセルの勘だと考えれば無視は出来ないわよね」

 

 龍子の言葉に、優が頷いている。

 俺の勘についてはどういう風に認識してるのかは分からないが、それでも俺という存在の特殊性を思えば、この2人の態度は理解出来ない訳でもない。

 

「ああ、ヴィランとの戦いを思えば、峰田にも出来るだけ早く、そして多く実戦を経験させた方がいい。そういう意味では、ヒーロー殺しというのは相手として決して悪くはない」

「悪くはないって……相手はヒーロー殺し、今までに何人ものプロヒーローを手に掛けてきた相手よ? 雄英のヒーロー科の生徒とはいえ、まだ入学してそんなに時間が経っていないのに、本当にどうにか出来るの? アクセルだけならまだ納得も出来るんだけど」

「峰田の個性は、自分が主役となるのには向いていないが、フォロー役としては最適だぞ。それに峰田は緑谷と同じく俺の自主訓練には毎日欠かさず参加しているし」

 

 ……まぁ、実際には自主訓練については強制的に連行しているのであって、峰田が積極的に自分から参加している訳ではないのだが。

 とはいえ、もし本当に自主訓練に参加するのが嫌なら、それこそ自主訓練中に逃げ出すとかしてもおかしくはないが、そのような事は今まで一度もない。

 つまりこれは、峰田が口では嫌だと言っても、自分が強くなっているという実感があるから自主訓練に参加しているのだろう。

 もっとも、実際には自主練の監督をしているミッドナイト目当ての可能性が大なのだが。

 実際、ミッドナイトを間近で見る事が出来るというのは、高校生の男にしてみればそれだけでご褒美だろうし。

 

「……アクセルがそう言うのなら、これ以上は私からは何も言わないけど。彼は承知するの?」

「どうだろうな。話してみて、それでも絶対に嫌だというのなら、この事務所に残して俺達だけで保須市に向かってもいいし」

 

 そう言うが、俺としては峰田を連れていく気満々だった。

 峰田の性格を知っている身としては、それこそ最初は間違いなく嫌だというだろう。

 素の峰田の場合、その性格は決して勇猛とかではないのだから。

 だが……それはあくまでも素の性格であった場合の話だ。

 そこに女が絡めば、峰田を思い通りに動かすのは難しくない。

 

「……ちなみに、ねじれはどうしたんだ?」

 

 ここでねじれがいるのかどうかを聞いたのは、やはり峰田を動かすには龍子や優といった年上の美人のお姉さんもいいが、同じ学校の先輩というのが峰田的には大きいだろうと判断した為だ。

 

「ねじれ? ねじれなら今日はちょっと学校の用事で遅れるって話だったわね。ただ、そのうち来ると思うけど」

「そうか。ねじれがいれば、かなり楽だったんだけどな。まぁ、いないのならいないで構わない。この会議が終わったら、保須市に行く件については俺から峰田に話しておく。それで峰田が嫌だと言って、絶対に保須市には行かないと言ったら、諦める。それでいいよな?」

 

 念の為にそう聞いておくと、龍子が頷く。

 

「あのー……先輩? アクセルもだけど、あの峰田って子は私の事務所に職場体験に来たのよね? なのに、何だか私抜きで話が進んでるなって思うんだけど」

 

 龍子が頷いて話が決まったところで、優がそう口を挟む。

 ああ、そうだったな。

 

「そうだな。優の言う事にも一理ある。それで? そうして言ってきたって事は、何か不満があるってことだよな?」

「え?」

 

 優の様子から、何か不満があって今のように言ってきたのだろうと思ったが、改めてそう聞くと、本人は意表を突かれたような表情を浮かべる。

 

「あれ? 何か不満があって今のように言ってきたんじゃないのか?」

「いや、その……ただ、何となくスルーされてるのが気になっただけで」

 

 そう言い、照れ笑いしてくる。

 やってる事は駄目なのに、美人だからという理由でそれなりに誤魔化せる……のだろう、普通は。

 

「ふーん」

「あ、先輩。その目は止めて」

 

 男を……特に峰田のような相手であればともかく、同じ女の龍子には通用しない。

 

「優だしな」

 

 そして、美人な恋人が20人以上もいる俺にも、そういうのはあまり効果がない。

 もっとも、俺がこのヒロアカ世界に来て既に半年以上。

 その恋人達も会えていないのだが。

 

「まぁ、優の件は取りあえず置いておくとして。それで保須市の件だけど……具体的にいつ行く? 今日これからすぐか、それとも明日からか」

 

 これ以上優を苛めても意味がないので、話題を変える……というか、戻す。

 そんな俺の言葉に、優は露骨に助かったといった表情を浮かべ、龍子は仕方がないなと息を吐いてから口を開く。

 

「今日、これから保須市に向かうつもりよ。ヒーロー殺しが捕らえられるか、それとも職場体験の期間が終わるまでの間は保須市にいるわ」

「俺としては峰田を鍛えるという目的が果たしやすくなるからいいけど、龍子や優は問題ないのか?」

 

 龍子と優が揃って保須市に行けば、この事務所のある場所が手薄になる。

 そう思ったのだが、龍子はそんな俺の言葉にあっさりと問題ないと言う。

 

「その辺はしっかりと対策してあるわ。公安の方で何人かプロヒーローをこっちに回してくれるそうよ」

 

 ……それなら、別に俺達が保須市にいかなくても、その動かせるプロヒーローを保須市に向かわせたらいいのでは?

 そう思ったが、多分だけど公安としてはその動かせるプロヒーローの実力はそこまで信じてはいないのだろう。

 いや、勿論龍子の事務所のある辺りに派遣してくるのだから、ある程度の実力があるのは間違いないけど、ヒーロー殺しを相手に出来る程じゃないって事か。

 もっとも、俺としては峰田の戦闘経験的な意味を考えても、保須市に行きたいところなので、その辺に文句はないけどな。

 なので、龍子の言葉に突っ込むようなことはしなかった。

 

「泊まり掛けの仕事になるから」

「……着替えとかそういうのは持ってきてないんだが?」

「その辺については公安の方で用意してくれるから、安心してもいいわ。それに泊まる場所も最高級ホテルとまではいかないけど、結構良いホテルだから」

「ふふん」

 

 龍子の言葉に、何故か自慢げな優。

 この様子を見ると、多分公安との交渉でホテルの件を引き出したのは優なんだろうな。

 何気に優のナイスプレイと言ってもいいのかもしれない。

 

「まぁ、泊まり掛けなのは分かったけど……それ、峰田の分もあるよな?」

 

 龍子や優と話をした限りだと、保須市に行くのは俺と龍子、優、後はねじれもか?

 とにかくそんな感じだった筈だ。

 そこに峰田がきたら……ホテルの部屋がもう取ってある場合、峰田の分の部屋はないのではないか。

 そう思ったのか、優は首を横に振る。

 

「大丈夫よ。何かあった時の予備に、1部屋余分に取ってあるから」

「それはまた……随分と都合がいいな」

「褒めてくれてもいいのよ?」

「そうだな。なら、今日は気配を感じる訓練を3割増しでやってやるか」

「ちょっと、それ褒めてない! 寧ろお仕置きでしょ!?」

 

 俺の言葉に不満があったのか、優がそう叫ぶ。

 いやまぁ、その気持ちも分からないではないけどな。

 ただ、何だかんだと俺の殺気を受ける訓練を一番多くやっているのは優な訳で、そろそろ何らかの効果が出てもいい頃なんじゃないかとか、そんな風に思っているんだが。

 

「じゃあ、アクセル。ねじれが来たらすぐに出発するから、峰田君の説得はそれまでにしておいてね」

 

 龍子は優の絶叫をスルーし、そう言ってくる。

 

「分かった。なら、これからすぐに峰田を説得するよ」

 

 俺もまた、龍子に続いて優の絶叫を無視するのだった。

 

 

 

 

 

「はぁっ!? ちょっ、アクセル本気で言ってるのかよ!?」

 

 龍子の事務所の隅、そこで俺は事務員から書類仕事を教えて貰っていた峰田を連れて来て、保須市についての話をした。

 ちなみに事務員曰く、峰田は書類仕事の才能がかなりあるらしい。

 プロヒーローじゃなくて、事務員として欲しいくらいだと言っていたのだから、峰田の書類仕事の才能はかなりのものなのだろう。

 峰田……見掛けによらない才能を持っているよな。

 

「不満か?」

「これで不満じゃない奴がいるかよ!? ヒーロー殺しだぞ、ヒーロー殺し! 今まで何人もプロヒーローを殺している奴がいるところに俺達が行って、どうするんだよ!? いや、アクセルはまだいい。アクセルの実力があれば、あるいはどうにかなるかもしれないけど、オイラが行っても死ぬだけだろ!?」

 

 峰田が必死の表情で言う。

 峰田は自分には才能がないと、そう思っているのがちょっとな。

 競争率300倍の受験を合格した時点で、しっかりと才能はあると認識されていてもおかしくはないのだが。

 また、以前USJの件でA組の前に人が集まった時に言ったように、ヒーロー科を受けて落ちた結果、普通科、サポート科、経営科といった他の科に在籍する事になった生徒達よりも、峰田は評価が高いのだ。

 それにモギモギの汎用性を考えても、峰田はかなり才能のある人物だと思うんだが。

 峰田にとって運が悪かったのは、爆豪、轟、ヤオモモといったような能力の高い者が多数同じクラスにいたことだろう。

 主人公の緑谷がいるクラスだから優秀な人材が集まったと……いやまぁ、B組だって拳藤を始めとして、有能な人材は集まっているのだが。

 ともあれ、優秀な人材の中でも突出して優秀な人材が揃っているので、峰田は自分に自信がないのだろう。

 だが……そんな峰田も、上手く説得出来れば話は違ってくる。

 

「いいのか?」

「な……何がだよ」

「もし保須市でヒーロー殺しを倒す……そこまでいかなくても、倒すのに協力したら、間違いなく名前と顔が売れるぞ? その上でヒーロー殺しを倒したという実績もあるんだから、女にモテる事は間違いなしだ」

「っしゃおらぁっ! アクセル、何をしてるんだ。早く保須市に行くぞ!」

 

 女にモテると言った途端、峰田のやる気が一気に限界突破した。

 これだよなぁ……うん。峰田はこれがあるから使いやすい。

 極端に女好き――俺が言うのもなんだが――なのはともかく、サポートという点ではかなり有効なモギモギがあるので、こうして少し挑発すればすぐやる気になるんだよな。

 それに、多分だけどこれは体育祭の騎馬戦で脱落したので、体育祭で活躍して女にモテるというのが出来なかったのも、今のこの峰田の状態に影響してるんだろうな。

 もっとも騎馬戦で脱落はしたが、A組女子をチアガールにするとか、別の意味ではっちゃけたりしていたが。

 ともあれ、当初峰田が体育祭でやる気を見せた最大の理由は、目立って女にモテるというものだった。

 だが、それが無理だったので、ヒーロー殺しの一件で目立てばモテると、そちらに話を持っていく事が出来たのはラッキーだったな。

 

「じゃあ、峰田も保須市に行くという事でいいんだな? ちなみに追加情報だが、保須市には龍子と優以外に、雄英の3年でインターンでこの事務所に来ているねじれという美人も行くらしいぞ」

 

 そう言うと、峰田の表情は先程よりも更にやる気に満ちていく。

 ……うん、これで峰田がやる気になってくれたら、俺としても不満はない。

 ねじれはいわゆる、不思議ちゃんといった感じで、精神年齢もかなり低いように思えるが、外見は間違いなく美人だしな。

 以前龍子からちょっと聞いた話によれば、学園祭のミスコンで準グランプリになったくらいだと言えば、その辺は分かりやすいだろう。

 とにかく、峰田をその気にさせた俺は、龍子に報告に行くのだった。

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