転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4440話

「ねえねえ、何でこんなにちっちゃいの? 歩きにくくない?」

「ちょっ、えっと……おい、アクセル!?」

 

 ねじれの勢いには、峰田もどう反応したらいいのか分からないらしい。

 まぁ……うん。外見は間違いなく美人だ。

 だが、その性格は外見とは違って天真爛漫といった様子だった。

 それを思えば、峰田がねじれの反応に戸惑ってもおかしくはない。

 もっとも、戸惑いながらもねじれのような美人と接する事が出来るのは嬉しそうだが。

 

「俺に言われてもな。折角美人と戯れる機会なんだ。思う存分相手をして貰え」

 

 ねじれは自分が疑問に思うようなことがあれば、それを徹底的に追及する。

 そういう意味では、相手をするのになかなか疲れるのだが……その辺は峰田に頑張って貰おう。

 もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、峰田がねじれの相手をしているうちに、お互いに愛が芽生えるといった可能性も……うん、まぁ、難しいけどないとは断言出来ないな。

 いわゆる微レ存って奴だが。

 

「それで、今日中に保須市に向かうんだろう? いつ出発する?」

 

 峰田とねじれについては放っておいて、そう龍子に尋ねる。

 

「こっちの準備が出来たら、すぐに出発するわ。……そうね、あと30分くらいかしら」

 

 そう言い、龍子は何らかの書類に目を通す。

 どうやら俺が思ったよりも出発するのは早くなるらしい。

 いやまぁ、峰田を少し休ませた方がいいだろうし、そういう意味では後30分の我慢だと思えば、その辺は問題ないだろう。

 

「分かった。なら、俺はその間時間を潰して……いや、この事務所に職場体験に来た以上、書類の整理とかそういうのを手伝った方がいいのか?」

 

 そう尋ねるが、龍子は首を横に振る。

 

「ううん、もう少し時間がある時ならともかく、30分だと時間がないわ。今は休んでおいてちょうだい。保須市に行けば、アクセルには頑張って貰う必要があるんでしょうし」

 

 そう言いながらも、龍子の表情には悔しそうな色がある。

 龍子にしてみれば、プロヒーローの自分だけではなく、まだ高校生の俺に頼らないといけないというのが、悔しいのだろう。

 もっとも、龍子は俺が異世界から来た存在だというのを知っている。

 であれば、そこまで悔しく思わなくてもいいと思うんだが。

 まぁ、それと同時に今の俺が雄英の学生だというのは間違いのない事実なのだが。

 

「分かった。じゃあ、俺は30分くらいゆっくりとしてるよ」

「そうしてちょうだい」

 

 俺の言葉に、龍子はそう返すと再び書類仕事に戻る。

 俺はそれを見ると、龍子の机から離れるのだった。

 

 

 

 

 

「で、お前は峰田の相手をねじれに任せておくだけでいいのか? 一応、峰田はお前の事務所に職場体験に来たんだろ?」

「ねじれが相手をしてくれるんだから、任せておいてもいいでしょ?」

 

 そう言う優は、ソファに座ってスマホを操作していた。

 ねじれが、何で峰田はそんなに小さいのとか興味津々で聞いているものの……それをねじれが相手をしているといったように言ってもいいのか?

 とはいえ、優も何も遊んでいるような様子ではなく、どうやら保須市についての情報を集めているらしい。

 

「保須市の様子はどうなっている?」

「何でも、私達以外にも結構なプロヒーローが入っているらしいわよ。保須市に住んでる人がネットに写真を上げたりしてるわ」

「そんなに多くか?」

「ええ。中には、もしかしたら私達みたいに公安からの依頼があって保須市に入っているプロヒーローもいるかもしれないわね」

「……俺達以外に公安が依頼するか?」

 

 ぶっちゃけ、公安が龍子と優に保須市の件で依頼をしたのは、俺という存在があってのものだろう。

 だというのに、他のプロヒーローには当然ながら俺はいないのだから、他のプロヒーローに保須市に行くように依頼をしたというのは、ちょっと疑問だ。

 もっとも、公安としては別に俺だけに限らず腕の立つプロヒーローがいて、それで依頼をしたという可能性はあるのかもしれないが。

 

「さぁ? あくまでもネットを見ていてそう思っただけだし。それに、公安の依頼がなくても単純に目立ちたいからそうしたいと思うプロヒーローもいるでしょうしね」

「……優のようにか?」

「ぐっ」

 

 俺の言葉は思いのほか効いたらしい。

 実際、優の個性を思えば事務所は街中ではなく田舎の方が間違いなくやりやすい筈だ。

 だというのに、優は目立ちたいからという理由で街中に事務所を構えている。

 ……とはいえ、その判断が間違っているのかと言われると、決してそんな事はないんだよな。

 実際、優が街中で行動して多くの者達に知られるようになり、ヒーロービルボードチャートでもベスト10は無理でも、間違いなく上位に入るらしいし。

 その代わり、保険でも対処出来ない金額の被害を周囲に与える事も多かったのだが。

 そう考えれば、優の判断も善し悪しといったころか。

 

「と……とにかく、公安からの依頼も抜きで、ヒーロー殺しを捕らえようとするプロヒーローは多い筈よ。勿論、目立ちたいからといった理由からだけじゃなくて、ヒーロー殺しをそのままにしておけないという正義感から来るプロヒーローもいるでしょうけど」

「優と違ってか?」

「あのね、誤解しているようだけど、私だって別に目立ちたいからってだけで動いてる訳じゃないのよ? ヒーロー殺しは、インゲニウムの件もあるし」

 

 インゲニウムというのは、飯田の兄のプロヒーローだ。

 保須市でヒーロー殺しにやられたのが、今回の一件の始まりだ。

 緑谷から貰った情報によると、ヒーロー殺しは一つの地域で数人のプロヒーローを襲撃するらしい。

 そして保須市で最初にヒーロー殺しに襲われたのがインゲニウムである以上、まだ数人は保須市でプロヒーローが襲われる可能性が高い訳で……

 公安から龍子に保須市に行くように依頼が来たり、あるいは依頼が来なくても自分がヒーロー殺しを倒して有名になりたいと考える連中も集まっている訳か。

 ヒーロービルボードチャートの順位発表まで、もうそんなに時間がいないしな。

 そう考えれば、最後の追い込みであったり、あるいは一発逆転であったりを狙う奴が多くてもおかしくはない。

 

「プロヒーローという職業の事を思えば、まず目立つ必要があるのは間違いないけどな」

 

 俺の認識だと、プロヒーローというのは一種の警備員だ。

 いや、警備員と警察と芸能人を足して3で割った感じか?

 とにかくどんなに実力があっても、それが飛び抜けた実力とかではない限り、ヒーロービルボードチャートで上位に行く事は出来ない。

 ……そもそも、プロヒーローをビルボードチャートでランキングを作るというのが、そもそも間違っているのかもしれないが。

 とはいえ、そうして競争心を煽ることによって、より自分を高めて上位を狙うといったように考えれば、それも決して悪い事ではないのかもしれないが。

 

「インゲニウムか。……飯田がちょっと問題だろうな」

「え? 何が?」

「俺達のクラスに、インゲニウムの弟がいるんだよ。体育祭の時にインゲニウムが襲われて、それからちょっと様子が変らしい」

「……そう」

 

 インゲニウムの弟という言葉に驚いた様子を見せた優だったが、やがてそれだけを言う。

 そうして俺は優とヒーロー殺しについての話をしていると……

 

「アクセル、ヘルプゥ……」

 

 そんな声が聞こえてくる。

 声のした方に視線を向けると、そこでは俺が優と話している間に一体何があったのか、峰田が思い切り疲労した様子でこっちに助けを求めていた。

 あれ? 峰田の性格を考えると、ここで助けを求めて来るというのはちょっと予想外だったな。

 性格的には無邪気というか、精神年齢が低いというか、とにかくそんな感じのねじれだったが、とにかく美人なのは間違いない。

 峰田であれば、そんなねじれと一緒にいる時間は、楽しい以外のなにものでもないと思ったんだが。

 

「あ、ねーねー、アクセル。聞いて聞いて。私、保須市に行くんだって。ヒーロー殺しって知ってる?」

 

 峰田に上手い具合にねじれの相手を任されたな。

 とはいえ、別に俺はそこまでねじれの相手をするのが面倒って訳でもないんだが。

 

「知ってる。というか、俺と峰田も保須市まで一緒に行くんだけどな」

「え? そうなの? でも、アクセルはいいかもしれないけど、あの子は危険だよ?」

 

 そう言い、峰田を見るねじれ。

 この辺りは、ビッグ3の1人として後輩を思っての言葉なのだろう。

 

「分かってる。実際、龍子や優にもそういう風に言われたしな。ただ、峰田なら大丈夫」

「お前のその、オイラに対する謎の信頼感は何なんだよぉっ!」

 

 俺とねじれの話が聞こえたのか、ダウンしていた峰田がそう叫んでくる。

そう言われると……なるほど、そうかも?

 これが、例えばクラスNo.2の爆豪や轟、あるいは委員長のヤオモモとか、原作主人公の緑谷であれば、こうした信頼を抱いてもおかしくはない。

 だが、峰田は……うん、極度の女好きということもあり、クラスではかなり目立つ存在ではあるが、実力という点ではどうしても他の候補と比べると一段……あるいはもっと劣る。

 それでも俺が峰田を買っているのは、本人にその自覚はあまりないが、やはりその個性が強力なのが大きいだろう。

 ヴィランを倒すといった主役級の個性ではないが、サポート向けの個性として考えると、かなり優秀なのは間違いない。

 その辺が、俺が買っているところなのは間違いないんだよな。

 

「峰田はやれば出来る。雄英に入学出来た事からも、才能はあるんだ。だから、後は途中で投げ出すような事がなければ、プロヒーローとしてもやっていけるだろうし、ヒーロービルボードチャートの中でもトップ10は無理でも、かなり上位になる事は出来ると思うぞ」

 

 言ってみれば、優の位置か。

 龍子のように次回のヒーロービルボードチャートでトップ10入りは間違いないと言われるような評価は貰えなくても、それでもかなりの上位に位置までには届くと思う。

 峰田は喋りさえしなければ……あるいは喋ってもそれなりに深く付き合うようなことがなければ、SD体型というか、小柄な体型といいうか、ぬいぐるみ的な可愛さで人気が出るだろうし。

 ……ただし、直接接して話したりすれば、即座にその本性を知られてしまうだろうが。

 ネットの存在するこの時代、そうなると情報が広まるのは一瞬だ。

 そう考えると、峰田の場合はもし一時的に人気が出ても、それこそ雄英時代の黒歴史が暴露され、一瞬にして人気を失ってしまいそうな気がするな。

 

「アクセルがそこまで言うなんて、凄いね」

「……あまり嬉しくないんですけど」

 

 ねじれが峰田に感心の視線を向けるものの、その視線を向けられた峰田は本当に微妙なそう表情になる。

 

「ほら、そこの子達、私の方は仕事や引き継ぎが一通り終わったから、そろそろ保須市に行くわよ。準備はいい?」

 

 優のいる辺りで色々とやっていると、龍子がそう声を掛けてくる。

 本人が言うように、やるべき仕事は既に終わったらしい。

 そんな訳で、俺達も準備をする。

 ……とはいえ、ホテルは公安が手配をしてくれているし、それ以外の諸々も公安の方で準備をしてくれているので、特にこっちで準備する必要はない。

 こっちで準備が必要なのは、最低限の身の回りの物と、後はヒーローコスチュームくらいだ。

 後はヒーロー殺しがいる保須市に行くという覚悟くらいか。

 この最後の覚悟で峰田は完全に納得した様子はなかったが、それでもねじれに引っ張られると逆らうことも出来ないのだった。

 

 

 

 

 

「うおっ、狭いな」

 

 龍子の車の後部座席に乗った俺は、以前優が不満を口にした理由を理解する。

 その狭さに手を動かすと、肘にふにゃりとした柔らかな感触があった。

 

「ちょっ、アクセル。どこを触ってるのよ!」

 

 悲鳴というか、責める言葉を優が口にする。

 どうやら優の双丘に肘で触れてしまったらしい。

 

「アクセルゥ……」

 

 そして優を挟んで反対側にいる峰田は、いつも通り血涙を流しながら俺を睨んでくる。

 龍子の車はいわゆるスポーツカータイプの車で、運転席と助手席は普通……というか、普通よりも広いが、その皺寄せのように後部座席は狭い。

 そして運転席は当然のように龍子で、助手席の座をめぐってじゃんけんをしたのだが……後部座席に優、俺、峰田の3人がいるのを思えば、じゃんけんの結果は考えるまでもないだろう。

 ましてやスポーツカータイプなので荷物を入れる場所も少なく、ヒーローコスチュームの入ったケースが3つ――龍子と優は既にヒーローコスチュームに着替えている――あるので、余計に狭くなっていた。

 

「不可抗力だろ」

「……なら、そこをオイラと代われ」

「無茶を言うな、無茶を」

 

 峰田の言葉にそう突っ込む。

 既にこの車は高速道路を走っている。

 そんな中で、峰田と俺の場所を入れ替えるのは……不可能とは言わないが、かなり面倒だ。

 それに峰田の性格を知っている身としては、優の隣に置くのはちょっとな。

 そんな訳で、俺は狭い車の中で我慢して保須市に向かうのだった。

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