転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4442話

 リューキュウとネジレちゃんと一緒に、保須市を歩く。

 現在の時間は、夕方から夜に掛けての時間……まさに黄昏時といったところだ。

 晩春や初夏といった頃合いなので、それなりに日が落ちるのは遅くなっている。

 そんな、仕事帰りや学校帰りといった者達が多い時間帯なので、街中の人通りは多いのだが……

 

「見るからにプロヒーローって感じの奴が多いな」

 

 道を歩く者達を見て、そう思う。

 ちなみにプロヒーローと一般人を見分けるは簡単だ。

 プロヒーローならヒーローコスチュームを着ており、一般人は着ていない。

 ……まぁ、中にはコスプレとしてプロヒーローの格好をした者達が混ざっている可能性も否定は出来ないが。

 

「来る前にも言ったでしょ? 現在保須市はヒーロー殺しを求めて多くのプロヒーローが集まってるって」

 

 俺の呟きを聞き取ったリューキュウが、そう言ってくる。

 そう言えば、そういう風に言ってたな。

 とはいえ、ここまで露骨に集まってきているとは思わなかったけど。

 今はプロヒーローがかなり多くなっているというのは聞いていたが、今まで俺がいたのはリューキュウの事務所や、雄英の周辺、後は俺の住んでいるところだ。

 リューキュウの事務所は、優秀なリューキュウがいるという事で、他のプロヒーローの数はあまり多くはないし、雄英はそれこそNo.1ヒーローのオールマイトを始めとして他にも多数のプロヒーローがいるので、ヴィラン連合のような例外ではない限り、近付いて来ない。

 そうなると、俺の住んでいるマンション付近が一番プロヒーローが多くてもいいんだが……それだって、雄英からそこまで極端に離れてる訳じゃないしな。

 日曜とかも基本的には部屋から出なかったり、出てもあくまでもマンションの周辺で遊んでいるだけで、電車に乗ってどこかに出掛けるといった事はなかったしな。

 もう少し今の生活に慣れれば、電車に乗って誰かの部屋に遊びに行ったりとか、どこかに遊びに行ったりとかするかもしれないけど。

 ともあれそんな訳で、こうして大量にプロヒーローがいる状況というのは俺にとって珍しかった。

 また、単純にそれが珍しいだけではなく、今の俺は職場体験という事でヒーローコスチュームを着ている。

 つまり、アクセル・アルマーだと、体育祭で優勝した人物と、気が付かない者も多い。

 もっとも、完全に顔を隠している訳ではないので、ちょっと注意深い相手には俺がアクセルだと見抜かれてしまうが。

 だが、逆に注意深くない者には俺だと気が付かれない。

 そして現在保須市に来ている者の多くはヒーロー殺しの一件に関わって知名度を上げたい者、つまり実力的に問題がある……それでもプロヒーローになれているのが不思議だ。ヒーロー飽和社会とは一体誰の言葉だったか。

 とにかく、そんな訳で実力の足りない者達の目には俺の姿はヴィランにしか見えない訳で……

 

「ちょっと、そこの君。少し話を聞いてもいいかな?」

 

 身体中に竹……竹? うん、間違いなく竹だ。

 そんな竹で出来た鎧っぽいのを身に付けている男が、俺に声を掛けてくる。

 

「前もって言っておくが、ヴィランじゃないヒーローだ。雄英の生徒で現在リューキュウの職場体験中だ」

 

 向こうが何を怪しんでいるのかは分かっているので、何かを言われるよりも前にそう言う。

 

「ええ、この子の言ってる事は間違いありません。私の事務所に来ているので、それを保証します」

「リュ……リューキュウ!? し、失礼しました!?」

 

 竹のプロヒーローは、どうやらヴィランっぽい……というか、大魔王っぽい今の俺の姿だけを見ていて、俺と一緒にいたリューキュウやネジレちゃんの姿には気が付いていなかったらしい。

 多分だけど、プロヒーローとしていまいち活躍出来てないんだろうな。

 リューキュウの姿に気が付くと、即座に頭を下げると立ち去った。

 

「アクセルのヒーローコスチューム……今更だけど、もう少し違うのにした方がよかったかもね。いえ、今はヒーロー活動中なんだから、アクセルじゃなくて、アークエネミーだったかしら? ……名前もヴィランっぽいのよね」

 

 龍子が困ったように言う。

 今の俺は大魔王風のヒーローコスチュームだしな。

 防弾、防刃……それ以外にも様々な耐性を持つマントに、それを止める肩パッド。

 この肩パッドは素材はかなり頑強だが、それよりも見た目の威圧感を重視して作られている。

 そして仮面。これは目の周囲だけを覆っている、マウントレディやミッドナイトの仮面に近い。

 あれよりはもっとしっかりと目の周りを覆っているが。

 一番分かりやすいのは、仮面パーティとかで使われるような、そんなタイプの目の周囲を覆う仮面。

 で、ヒーローネームがアークエネミー。それも分類? として、ラグナロクヒーロー。

 分類の方はともかく、ヒーローコスチュームとヒーローネームを知れば、ヴィランだと見間違えてもおかしくはないんだよな。

 

「今はまだこの姿と名前が知られてないから仕方がないけど、そのうち俺の情報も広まるだろ。自分で言うのも何だけど、体育祭の優勝者だし。いっそ、体育祭もヒーローコスチュームを着て出られれば、この姿の俺が一気に広まったんだろうけど」

「体育祭はヒーローコスチュームは駄目なんだよ」

 

 俺の呟きを聞き取ったのか、ネジレちゃんがそう言ってくる。

 

「あー、うん。知ってる。誰から聞いたのかは忘れたけど、ヒーロー科がヒーローコスチュームを着ると、有利になりすぎるからって事らしいな」

「そうなんだよ。私も初めて聞いた時はえーって思ったんだけど、納得したんだ」

「だろうな」

 

 実際、ヒーローコスチュームには多くの仕掛けがしてある。

 俺の奴はマントにそのコストの多くを使ったが、例えば肩パットだって防具としても十分な性能があり、他の生徒の個性攻撃を防いだり出来るし、仮面も通信機やらモニタやらといった複合効果を持つので、それを使えば相手の、あるいはその地形の詳細なデータを確保出来たりする。

 ただでさえ、ヒーロー科は競争率300倍の中を勝ち抜いた者達だ。

 そのような者達がヒーローコスチュームを着て体育祭に参加すれば、他の科の者達はどうしようもない。

 何しろヒーローコスチュームがなくても、結局最終種目のトーナメントに残ったのは普通科1人、サポート科1人で、その2人もトーナメントの1回戦で姿を消したし。

 ……もっとも、心操はともかくサポート科の生徒は飯田を使って自分のサポートアイテムのアピールを散々した後で自分から舞台から下りてギブアップしたのだが。

 もしこれでヒーローコスチュームを着て参加が可能だったら、最終種目に参加してたのは全員ヒーロー科だったとしてもおかしくはない。

 そういう意味では、ネジレちゃんが納得したのも分からない訳ではなかった。

 

「そんな訳で、アクセルは私かマウントレディと一緒に行動する事。いいわね?」

 

 リューキュウにそう念を押されると、俺としても頷くしかなかった。

 実際、今の俺の状況を考えると、そうするのが最善なのは間違いないし。

 これで下手に大魔王風のヒーローコスチュームを着て、1人で街中を歩き回っていたら、それこそ手柄を求めている他のプロヒーローに職質とか、最悪の場合は捕獲されたりするだろう。

 そうなれば当然のようにリューキュウはそちらの対応をする事になる。

 リューキュウはあくまでもヒーロー殺しを捕らえる為に保須市に来たのだから、俺の問題で時間を使わせるのはどうかと思うし。

 

「分かった。そうしよう。……ちなみに、ネジレちゃんと一緒にいるのも駄目なのか?」

「ねじれはインターンだから、判断は難しいところね。念には念をと考えれば、やっぱり止めておいた方がいいと思うわ」

「えー」

 

 いや、なんでネジレちゃんが不満な様子なんだよ。

 自分が頼りにならないと思われているのが不満なのか?

 まぁ……うん。それならそれで納得出来ないでもないけど。

 

「ほら、今はまず保須市の様子をしっかりと見ておくのよ。ヒーロー殺しがいつどこに出てくるのか分からないんだから」

 

 気分を切り替えるようにリューキュウがそう言い、俺とネジレちゃんは周囲の様子を確認していく。

 

「これだけプロヒーローが集まっているとなると、下手なヴィランは活動したり出来ないよな。そういう意味では安全なんだろうけど……ヒーロー殺しがどこかにいるかと思うと、そこまで安心出来ないよな」

「そうね。そうなると、保須市の人達は安心して暮らせるかどうかは微妙なところだと思うわ」

「何だかお祭りみたいだね」

「……ねじれ、もっとしっかりと周囲の様子を確認しなさい。さっきも言ったけど、ヒーロー殺しが出た時、この辺りの地形を確認してあるかどうかは重要な要素になるんだから」

「はーい」

「全く……アクセルも職場体験中であっても、戦力として期待してるんだから、しっかりとお願いね」

 

 こっちにも飛び火してきたな。

 とはいえ、俺の場合は公安から個性……正確には個性ではないのだが、とにかく力を使うのを許可されている。

 そうである以上、もしヒーロー殺しと接触してもどうとでも出来る自信があった。

 もっとも、俺としては今回のヒーロー殺しには緑谷が関わってこない以上、峰田の戦闘経験を上げる為に利用してやろうと思っているのだが。

 こうして考えていると、噂をすれば何とやらでマウントレディや峰田の方にヒーロー殺しが出たりしないよな?

 

「なぁ、リューキュウ。一応聞いておくけど、もしマウントレディ達がヒーロー殺しと接触したりしたら、俺達にその辺の情報がすぐに伝わったりするのか?」

「え? うーん、どうしかしら。スマホを使って連絡をしてくるとかすれば分かると思うけど。後は、それこそマウントレディがヒーロー殺しと接触すれば個性を使うから、そうなれば遠くにいてもすぐに分かると思うわ」

 

 そう言われれば、すぐに納得出来るところがあるのも事実だった。

 この保須市でいきなりマウントレディが巨大化すれば、それこそ何かがあったというのはすぐに分かる。

 そう考えると、マウントレディがいるのはかなり便利なんだな。

 ……もっとも、マウントレディが街中で巨大化すれば、当然ながら周辺には大きな被害が出る。

 そうなると……あ、でも今回の依頼は公安からのものである以上、多少の損害があっても公安の方で金をだしてくれるかもしれないな。

 

「マウントレディがいれば、分かりやすいな」

「だよね、だよね。私も初めてマウントレディが個性を使ったのを見た時、凄く驚いたもん!」

 

 ネジレちゃんが俺の言葉に反応してくる。

 好奇心旺盛なネジレちゃんだ。

 マウントレディのように巨大化の個性というのは大好物だろう。

 恐らく、何で何でと、何度も繰り返し聞いてマウントレディを辟易させたりしたような気がする。

 実際にはどういう風になったのかは、ちょっと分からないが。

 

「ネジレちゃん的には、マウントレディが個性を使うのは歓迎なのか?」

「うん、うん。また見たいな」

「……2人とも、その辺にしておきなさい。マウントレディの話をしたのは私だけど、今はまず保須市がどういう場所なのかをしっかりと覚えておきなさい」

 

 改めてリューキュウにそう注意されると、ネジレちゃんも今はまずしっかりと仕事する必要があると判断したのか、周囲の様子をしっかりと確認していく。

 そうなると俺だけが適当にしている訳にもいかないので、俺もまた周囲の様子を見て回る。

 この保須市というのは、それなりに栄えている場所ではあるが、あくまでもそれなりだ。

 例えば東京とかそういう繁華街と比べると、やはり数段落ちてしまう。

 それなりに栄えている地方都市といったところか。

 程々に栄えていて、程々に田舎。

 何気にこういう場所は暮らしやすいと人気の場所なんだよな。

 ……まぁ、今はヒーロー殺しの件もあって一般人は普段よりも少ないのだろうが。

 ただ、俺が調べたり聞いたりした限りだと、ヒーロー殺しというのはその名称通り、あくまでもプロヒーローを狙う。

 一般人が狙われるような事は……取りあえず俺が調べた限りでは見つからなかった。

 勿論、これは俺が調べた範囲での事なので、実際には一般人が普通に巻き込まれているといった可能性もないではない。

 けど、マスゴミの性格を考えれば、ちょっとでも一般人に被害が出ていれば、それこそ鬼の首を取ったかのように嬉々として報道するだろう。

 また、警察もその辺を大きく取り扱って放送してもおかしくはない。

 だが、今のところそのようなことはない。

 つまり、やはり一般人はヒーロー殺しに巻き込まれてはいないのだろう。

 中には自分から関わってヒーロー殺しに巻き込まれるとか、そういう奴がいてもおかしくはないと思うんだが。

 

「リューキュウはヒーロー殺しが動くとすれば、いつくらいになると思う?」

「え? そうねぇ。それこそインゲニウムが襲撃されてからもうそれなりに経っているし、今日や明日に動いてもおかしくないと思うわ」

 

 そんな会話をしつつ、俺達は保須市を見て回るのだった。

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