締め切りは4月1日の午後6時となりますので、気になる方は活動報告を見て下さい。
転生とらぶる、面白いと思ったら評価をよろしくお願いします。
「あれ? 夕食はレストランでって話じゃなかったか?」
少し遅めの夕食……午後8時ちょっと前くらいに俺が龍子達に連れられてやってきたのは、ホテルに幾つかあるレストラン……ではなく、ホテルでやっている食べ放題、いわゆるビュッフェだった。
ホテルの料理らしく洋食が主だが、寿司の類もある。
ただ、高級ホテルだからか、匂いの強いカレーの類は置いていない。
「あはは、本当はレストランに行く予定だったんだけど……ねじれが、仲良くなったホテルのスタッフから、ビュッフェのスイーツはお勧めだって聞いたらしくて」
少し困った様子で龍子が言う。
当然ながら、俺達は今はもうヒーローコスチュームではなく、私服となっている。
もっとも、龍子や優は私服でも顔を隠したりしていないのでリューキュウやマウントレディだと一目で分かるし、俺にいたってはヒーローコスチュームを着ていないので、雄英の体育祭で優勝した1年だというのが余計に分かりやすかったりするが。
ねじれもねじれで、3年のビッグ3として有名だし、当然ながら体育祭でもかなり活躍をしているので……また、その美貌もあって名前を知られている。
そもそもねじれはその性格から、他人と仲良くなるのが上手い。
ホテルのスタッフと仲良くなって、このビュッフェがお勧めだと聞いたのも、そのコミュニケーション能力の高さからだろう。
……もっとも、本人は別にその辺まで詳しく考えてのものではなく、本能というか自然な態度でやっているのだろうが。
ともあれそんな訳で峰田以外……いや、峰田も一応体育祭では騎馬戦まで残ったんだし、一度見れば忘れられない外見をしているので、知ってる者も多いかもしれないが。
ともあれ、俺達は全員私服だからこそ、注目を浴びてしまう。
ただ、このホテルが保須市でもトップクラスの高級ホテルだというのが影響してか、俺達が誰なのか分かっても、好奇心剥き出し、あるいは欲望全開で話し掛けてくる者はいない。
この辺は俺にとっても幸運ではあったな。
とはいえ、高級ホテルとは言ってもあくまでも保須市という地方都市の中での高級ホテルだ。
東京とかそういう場所の高級ホテルとは比べるのもどうかと思うくらいだ。
そういう意味では、泊まっている者も常識的ではない者がいてもおかしくはないのだが。
あるいは、公安が何か手を回したのか。
ともあれ、ビュッフェの席で俺達は視線は向けられるものの、声を掛けられたりする事もないまま、食事を楽しむ事になる。
「このビーフシチュー……美味いな。噛み応えのある肉があるのもいい」
普通、ホテルで出されるビーフシチューというのは、肉を長時間煮込む事によって歯茎で潰せるといったような表現になるまで柔らかくなる事が多い。
俺もそういうビーフシチューは嫌いという訳ではないが、しっかりと噛み応えのある牛肉が入ったビーフシチューも好みだ。
このビュッフェで出されているビーフシチューは、肉を柔らかくなるまで煮込んだ上で、追加の牛肉を加え、噛み応えも満足出来るようになっていた。
勿論、普通のビーフシチューがいいという者の為に、普通のビーフシチューも用意されている。
「このパンも美味いぜ。焼きたてのパンってこんなに美味いんだなぁ……」
俺の隣に座っている峰田が、しみじみと言う。
……それでいながら、決して優の方を見ないのは……うん。取りあえず女怖い状態から回復したのはいいが、まだ全快といった訳ではないのだろう。
とはいえ、これで明日の見回りとか出来るのか? と疑問に思う。
かといって、峰田は優の事務所に職場体験に行くと希望して受理されたので、俺と入れ替えるといった訳にもいかないしな。
その辺は峰田に頑張って貰うとしよう。
「あら、これ美味しいわね」
龍子が感心しているのは、ピザだ。
それも、クワットロピザとかいう、4種類のチーズを使ったピザ。
そのピザも焼きたてらしく、ピザの上で溶けている4種類のチーズが美味そうだ。
ピザというのは、やっぱり焼きたてが一番美味い……というか、冷めると……うん。
そういう意味では龍子が見つけてきた焼きたてのピザは当たりなのだろう。
「ふぅ、美味かった。次は……寿司でも食べるか。いや、その前に口直しで何かサラダも必要だな」
濃厚なビーフシチューのすぐ後に寿司を食べても、どうしても味の濃厚さで寿司が負けてしまう。
そうならないようにするには、寿司を食べるまでにサラダか何かで口直しをすればいい。
そんな訳で、席を立ち……10種類以上あるサラダの中から、オニオンサラダを選び、和風ドレッシングを掛ける。
このドレッシングも、店によっては市販のドレッシングがそのまま置かれていたりするのだが、この高級ホテルではそういう事はない。
ビュッフェの料理を作っている料理人の手作りらしく、どういう材料を使ってどういう風に作ったのかといった事が、細かく書かれていた。
そんな訳でサラダを確保し、次に寿司を選ぶ。
これで食通なら食べる順番とかそういうのにも拘るのだろうが、俺は別に食通でも何でもない。
……いや、シャドウミラーの代表として、色々と美味い料理を食べているし、四葉の作る絶品の料理も好んで食べている。
それを考えれば、あるいは食通と呼んでもいいのかもしれないが……取りあえず俺自身にそういう自覚はない。
そんな訳で、素直に食べたい寿司を選んでいく。
大トロ、中トロ、赤身、漬け、ネギトロ、頭肉の鉄火巻き。
ハマチ、鯛、炙りサーモン、赤貝、ツブ貝、サザエ。
ウニとイクラの軍艦巻き。
……まぁ、取りあえずはこんなものか。
ビュッフェだから、これを食べきったらまた取りにくればいいしな。
そんな訳で、寿司を持ってテーブルに戻ると……
「あれ、もうデザートか?」
龍子、優、ねじれの3人は、ケーキを始めとしたデザート……スイーツを食べていた。
まぁ、元々このビュッフェに来たのは、スイーツが美味いからという理由だったんだし、そう考えれば早速スイーツを食べるのもおかしくはないか。
「美味しいわよ?」
「……だろうな」
優のその言葉にそう返し、俺は自分の席に座ってサラダを食べ始める。
あれ? 峰田がいないな。
そう思ったが、どうやら峰田も料理を取りに行っているらしい。
あるいは俺がいない状況で優が間近にいるのに耐えられなかったのか。
その辺りは俺にもちょっと分からないが……うん。取りあえず分かるのは、峰田がいないというだけだろう。
サラダを食べ終わると、寿司を食べる。
うーん……どれも美味いな。
さっきちょっと他の客が話しているのを聞いたんだが、タイミングがよければ本マグロの解体ショーとかをやって、その場で寿司を握ったりしてくれるらしいな。
今日は残念ながらそういうのはなかったが。
……ただ、以前美鶴からちょっと聞いた話によると、寿司で使うマグロというのは、新鮮なものではなく熟成して寝かせて旨みを増してから出すのが普通らしい。
そういう意味では解体ショーでそのまま食べるというのは、本当の意味でマグロを味わうという訳にはいかないらしいな。
とはいえ、解体ショーで盛り上がっている中、マグロを食べるというのは、その雰囲気で美味いと思えるのかもしれないが。
そうして俺は、ビュッフェの夕食を堪能するのだった。
翌日、朝食をしっかりと楽しみ、ヒーローコスチュームに身を包んで、アクセル・アルマーではなく、ラグナロクヒーロー、アークエネミーとしてリューキュウやネジレちゃんと共に街中のパトロールを行う。
「今日辺り、ヒーロー殺しが出てくれると嬉しいんだけどな」
道を歩きながら、そう言う。
「あのね、出て来て欲しいからといってそう簡単に出てくるのなら、私達も苦労しないわよ」
「……だろうな。まぁ、その気持ちは分からないでもない」
「えー、でもでも、出て来て欲しいなと思ったところで出て来てくれたら凄く便利だよ?」
ネジレちゃんが、興味津々といった様子でそんな風に言ってくる。
もっとも、そのように思ったからといって実際に出来る訳ではない。
「そうだな。そう出来たら便利だけど……ちなみに、そういう探索に便利な個性の持ち主っていないのか? それこそ、そのものずばりな、探索という個性とか」
ぶっちゃけ、個性というのはかなり自由度が高い。
13号のように、ブラックホールとかのとんでもない個性を持っている者もいるのだから。
そう考えれば、探索といった便利な個性を持っている者がいてもおかしくはない。
「どうかしらね。もしかしたらいるかもしれないけど、私が知ってる限りだとそういう個性の持ち主はいないわ。それに……いたとしても、何かもっと重要な仕事に駆り出されてるんじゃない?」
「ヒーロー殺しの件は、重要じゃないと?」
「私にしてみれば重要だとは思うけど、世の中ではヒーロー殺し以上の重要な事件が起きていても不思議じゃないでしょ?」
そう言われた俺が思い浮かべたのは、緑谷だった。
この世界の原作主人公である緑谷が、ヒーロー殺しのいる保須市にはいない。
昨日クラスの面々とLINを使って情報交換をしたんだが、緑谷は特訓をしているらしい。
つまり、そういう探索とかの個性の持ち主が必要な大きな……ヒーロー殺しよりも大きな騒動は、緑谷のいる場所で起きるのかもしれないな。
それが具体的にどのようなものなのかは、生憎と俺にも今の時点では分からないが。
あるいは緑谷から応援の要望があれば……いや、そうなればそうなったで、緑谷の戦闘経験が再び奪われる事を意味している。
自主訓練で戦闘経験を詰ませてはいるが、やはり模擬戦と実戦では大きく違う。
そんな風に思っていると……ふと、怒声が聞こえてくる。
「ん?」
「アークエネミー、どうしたの?」
「いや、向こうから怒声が聞こえた……ああ、あれか」
リューキュウと話しながら怒声の聞こえた方に視線を向けると、そこでは鳥型のマスクを身につけたプロヒーローと思しき存在が、逃げているヴィランと思しき相手を追っていた。
「あら」
「どうする……ああ、いや。俺達が何をする必要もなかったな」
話の途中で、ヴィランが逃げている方向にいたプロヒーローなのだろう男が、ヴィランを捕らえていた。
それはいいのだが……追っていたプロヒーローと、捕らえたプロヒーローの間で言い争いが起きる。
無理もないか。
プロヒーローの仕事はヴィランをどれだけ捕まえたかによって、収入が変わってくる。
いわゆる出来高払いに近いシステムな訳で……そうなると、当然ながらプロヒーローはヴィランを捕らえたいと思うだろう。
勿論、捕まえた奴が総取りという訳ではなく、貢献度によってその辺は大きく変わってくる。
変わってくるのだが、それでも当然ながら自分だけで捕らえた方が収入は大きい。
なので、ああいう風な……いわゆる横殴りといったようなことをされると、自分の収入が減るので許容出来ないのだろう。
「止めなくていいのか?」
「私が出ると、それはそれで面倒な事になるでしょうしね」
「そういうものか? ……そういうものか」
ヒーロービルボードチャート次期トップ10入り確実なリューキュウが出れば、向こうも引くに引けなくなってもおかしくはない。
あるいは変な考え……ここでいいところを見せて、リューキュウとお近づきになろうと考える者がいても、おかしくはないのだ。
「それに、ほら。この場合私が出なくても……」
リューキュウの言葉に、改めて言い争いをしていたプロヒーローに視線を向けると、そこでは他のプロヒーローが仲裁に入っていた。
「これだけプロヒーローがいるんだから、何かあったら止めようと思う人も多いのよ」
「……なるほど」
そう言われれば、俺にも納得は出来ないでもなかった。
とはいえ、だからといって全てのプロヒーローが善良な者なのかと言われれば、それは違うだろう。
そうなった時は……まぁ、それこそこれだけ多くのプロヒーローがいるのだから、どうとでもなるかもしれないが。
「ほら、アークエネミー。保須市の見回りを続けるわよ。いつヒーロー殺しが現れるか、分からないんだから」
そうリューキュウに促され、俺は歩き出す。
「それにしても……出来ればヒーロー殺しには早いところ出て欲しいんだけどな」
「そう思っている人は多いでしょうね」
「私もそう思うけど、こうして大勢のプロヒーローを見ているのは嬉しいよ」
俺とリューキュウの会話に、ネジレちゃんがそう口を挟む。
好奇心旺盛なネジレちゃんにしてみれば、こうして多くのプロヒーローを見る機会があるのは嬉しいのだろう。
……まぁ、1人ずつ違う外見のプロヒーローをこうして見ることが出来るのは、俺にとってもそれなりに嬉しいけどな。
そんな風に思いながら見回りを続けるが……結局この日もヒーロー殺しが姿を現すことはなかったのだった。