転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4445話

「う゛ぁー……」

「うわぁ……」

 

 2日目の保須市の見回りを続け、夕方になったのでホテルに戻ってきたのだが……部屋では、昨日よりも更に酷い状態、それこそ半死半生と表現した方がいいような状態の峰田の姿があった。

 まぁ、昨日は数時間程度の見回りだったのに対し、今日は1日の見回りだもんな。

 それを考えれば、峰田が昨日よりも酷い状態になってもおかしくはない……のか?

 具体的に何をどうしてこうなったのかは分からないが。

 いやまぁ、予想は出来るけど。

 多分、昨日と同じくセクハラをしたんだろうな。

 そう考える確信が何かあった訳ではない。

 あった訳ではないが、峰田の性格……極度の、度を超した女好きというのを考えれば、昨日のような出来事があったとしても、そこに女が……それもとびきりの美人がいれば、手を出さない筈がない。

 あれだ、焚き火をしていると燃えつきるのを分かっていても虫が炎に集まってくる……飛んで火に入る夏の虫?

 正確にはちょっと違うかもしれないが、個人的にはそんなに間違っていないように思う。

 それに峰田の様子を考えると、その表現はこれ以上ない程に合っているだろうし。

 

「大丈夫か?」

「……犯人はヤス……」

「おい?」

 

 俺を見た峰田がいきなりそんな事を呟く。

 いや、犯人って何の犯人だよ。

 というか、ヤスって誰だ?

 

「……」

 

 俺の言葉に無言のまま、峰田は再び何もする気がないような感じになる。

 それを見ていた俺の目には、もしかしたらこのまま息を引き取るのではないかと思ったが、それは考えすぎか。

 取りあえず峰田はこのまま休ませておくとして、俺はヒーローコスチュームから制服に着替えると、ホテルの中を見て回る。

 高級ホテルだけに、このホテルにはそれなりにゆっくりと楽しめる場所もあるらしい。

 それこそ喫茶店とか、美術館とか、映画館とか……あるいはトレーニングルームの類もあるんだとか。

 そんな中で俺が興味を持ったのは、美術館。

 ……いや、俺にそういう高尚な趣味がないのは間違いないが、それでもどうせならこのヒロアカ世界の名画とかそういうのを見てみたいと思ったのだ。

 そんな訳で美術館……という程に大袈裟ではないが、それでも美術品を展示しているスペースに向かう。

 

「あら? アクセル?」

 

 そう俺に声を掛けてきたのは、リューキュウ……いや、今は仕事の時間ではないので、龍子か。

 

「龍子も美術品を見に?」

「ええ、結構な名画が飾られているという話だし、少し興味があってね」

 

 そう言う龍子は、知的な美貌を持つだけあって、慣れた様子を見せていた。

 本人の言葉を聞く限りでは、別に美術品の鑑賞が趣味とか、そういう訳ではないらしいが。

 

「アクセルもこういうのに興味があるの?」

 

 龍子も今は仕事の時間ではないからか、ヒーローネームのアークエネミーではなく、アクセルと呼んで来る。

 

「俺もそこまで強い興味がある訳じゃないけど、暇潰しにな」

 

 本来なら夕食の時間まではまだもう少し時間があるので、部屋で休んでいてもいい筈だった。

 今日の見回りについての報告書については、夕食の後で書く事になっている。

 もっとも、職場体験の俺は報告書を書く必要もないのだが、プロヒーローとしてやっていく上でそういう書類仕事についても覚えておく必要があるだろうと、書き方を教えて貰う事になっていたが。

 ……ただ、俺が雄英に通っているのは、あくまでも生徒達を強くする為に立ち塞がる壁としてであって、俺自身は別にプロヒーローになろうとは全く思っていないんだよな。

 その辺りは龍子も分かっていると思うんだけど。

 それでも職場体験として引き受けた以上は、そういうのを教えておかないといけないと思っているのかもしれないな。

 

「そうなの? じゃあ、一緒に見て回りましょうか」

 

 そう誘われれば、俺としても断るつもりはない。

 別にどうしても1人で見たいとか、そういう感じじゃなかったしな。

 そんな訳で、俺は龍子と2人で美術館……というか、ブース? とにかく飾られている美術品を見ていく。

 

「うわ、これは凄いな……」

 

 とある絵の前で足を止める。

 龍子も足を止め、その絵をマジマジと見ていた。

 絵の内容は秋の赤くなった葉の紅葉だ。

 だが……その紅葉の赤く染まった葉が絵の中で落ちるとなれば、話は違ってくる。

 一瞬絵ではなく映像ではないかと思ったのだが、しっかりと見てもそこにあるのはやはり絵で、その絵の中では紅葉の葉が地面に舞い落ちていく。

 一体どうなってるんだ?

 そう思って絵の説明を見ると……

 

「やっぱり個性か」

 

 その説明には、画家の個性によって絵が動くようになっているとある。

 具体的にどのような個性なのかは分からないが、こうして絵の中が動くというのは画家として成功するに十分な個性だったのだろう。

 

「凄いわね」

 

 龍子も最初は驚いたものの、絵が個性の産物であると知れば、素直に絵を楽しむ。

 俺がヒロアカ世界の絵画に詳しくはないが……それでも、この紅葉の絵が結構な価値があるというのは理解出来る。

 うーん……この絵とはいかないが、同じ作者が描いた絵が欲しいな。

 ホワイトスターのどこかに飾っておけば、名物になるだろう。

 いやまぁ、ヒロアカ世界の住人がホワイトスターに来てその絵を見れば、すぐにそれが個性によって描かれたものだと理解するだろうが。

 

「ああ、凄いな。……この作者の絵ってやっぱりそれなりに高いのか?」

「高いでしょうね。ちょっとお金持ちといった程度じゃ、とてもではないけど買えないと思うわ」

 

 そう言われると、余計に欲しくなる。

 いっそ、公安にこの作者の絵を何枚か用意するように頼むか?

 さすがにこの絵は、公安のクレジットカードで買うといった事は……そういえば、俺が持っているクレジットカードって限度額って幾らなんだろうな?

 ブラックカードだけに、あるいは限度額がないのかもしれないが。

 とはいえ、それでもやっぱりクレジットカードで絵を購入するのは不味いだろうしな。

 

「なるほど、じゃあ諦めるか。俺の部屋に飾ったりしたら面白いかもしれないと思ったんだけどな」

「ああ、アクセルの部屋になら合うかもしれないわね」

 

 俺の部屋はそれなりに広いが、飾り気というものは殆どない。

 だからこそ、こういう絵画を飾るのも悪くないと思ったんだが。

 

「ほら、次の絵を見にいきましょ」

 

 もう少しこの絵画を見ていたかったものの、龍子にそう言われるといつまでもここにいる訳にもいかない。

 いやまぁ、他の絵も興味深いものがあったのは間違いないが。

 ただ、視覚的な驚きという意味で、最初の絵画には及ばない。

 ……そう考えると、このブースに並べられている絵の順番はちょっとミスったんじゃないか?

 どうせなら、あの一番驚く絵をブースの一番最後に持ってくればいいと思うんだが。

 そんな風に思ったが、俺のはあくまでも素人考えでしかない。

 このブースを作った者には何らかのしっかりとした考えがあり、それによってこうして今のような作品順にしてるのだろう。

 であれば、ここで俺がどうこうといったように思っても意味はないし、そもそも俺がここで何かを思ったからといって、それがどうにかなる筈もない。

 

「アクセル、この絵……いいと思わない?」

 

 見て回った絵の中で龍子が気に入ったのは、富士山……それも夕日によって赤く染まっている富士山の絵だった。

 なるほど、これは凄い。

 最初に見た絵のように、動くといったことはないが、見た者の視線を惹き付けるかのような絵は、素直に素晴らしいと思う。

 

「うん、この絵はいいな」

「でしょ? こういうのを見ると、絵というのは凄いと思うのよね」

 

 しみじみと呟く龍子。

 龍子の言ってる意味は、分かるようで分からない。

 いや、この絵がいいと思ったのは嘘でも何でもなく、心からのものだ。

 だが、だからといって絵が凄いかと言われると……どうなんだろうな。

 残念ながら、俺はそこまで素直に絵を凄いとは思えない。

 まぁ、この辺はそれこそ人によって違うのだろうが。

 ……とはいえ、だからといってここで龍子の言葉を否定する訳にもいかないので、頷いておく。

 

「そうだな」

 

 そんな俺の言葉に満足したのか、龍子は満足そうな様子で絵画を見て回るのだった。

 

 

 

 

 

「まだ駄目か」

「うぃー……」

 

 龍子と一緒に絵画を見終わった後、部屋に戻ってきたのだが……残念ながら峰田はまだ回復していなかった。

 いや、最初に見た時と比べると、ある程度回復してきているのか?

 ただ、それでもまだ全快には程遠いといったところらしい。

 

「それにしても、昨日の件で懲りてるのかと思ったら……」

 

 昨日、優にセクハラをした結果、結構厳しい……いや、結構どころではなく厳しいお仕置きをされた峰田。

 今朝になって何とか復活していたが、それでも今日もまた優にセクハラをして、昨日と同じようにお仕置きされたのだろう。

 峰田らしいと言えば、峰田らしいのだが。

 考えようによっては不屈の精神を持っているかの如きだしな。

 ものは言いようだが。

 

「もう少ししたら夕食の時間だけど、大丈夫か?」

「あー……オイラなら問題ない」

 

 お? 普通に受け答え出来るようになったな。

 これなら安心かと思い、スマホを使って峰田の写真を撮り、クラスのグループにアップする。

 すると、それを見た他の面々から一体何があったといったようなメッセージが次から次に来るのだが、優に……マウントレディにセクハラをしてお仕置きをされたと書くと、すぐにいつもの奴かと納得する。

 ……特に女達の反応が……うん。

 とはいえ、男の方で峰田を心配している奴がいるのかとなると……まぁ、口田辺りが心配そうな様子を見せている。

 峰田の相棒の上鳴は、心配というよりもよくやったと褒めてすらいた。

 うーん、クラスで峰田がどういう扱いをされているのか、よく分かるな。

 

「アクセル? どうした?」

 

 俺がスマホを見ていると、峰田からそんな声が聞こえてくる。

 どうやらLINで峰田の件で盛り上がっている事に気が付いた……いや、見た感じそうでもないのか?

 

「いや、何でもない。……あ、梅雨ちゃんが職場体験で密航してきた連中を捕まえたらしいぞ」

「マジか」

 

 LINで梅雨ちゃんが書いたメッセージを話すと、峰田がぴょんっと跳ね上がって驚く。

 峰田にしても、今の俺の言葉はそれだけ驚きだったらしい。

 

「ああ。他の連中も驚いている」

 

 峰田の疲れ切った写真が話題になっていたのだが、梅雨ちゃんの一件が書き込まれると、今度は一気にその話題になる。

 

「そういえば、飯田は……反応がないな」

 

 飯田も保須市のプロヒーローの事務所に職場体験に来ていた筈だ。

 つまり、俺や峰田と同じ場所にいる筈なんだが。

 とはいえ、同じ場所と一口に言っても、俺や峰田が泊まっているのは高級ホテルなので、事務所にいる飯田とはホテルの中で会ったりは出来ない。

 街中を歩いている時になら遭遇するかもしれないが……昨日、今日と保須市を見て回ったが、未だに飯田は見つけていない。

 

「峰田、見回りをしている時に飯田と遭遇したか?」

「えー? オイラは会ってないぞ」

 

 梅雨ちゃんの一件が気付け役代わりになったのか、峰田は普通に言葉を返してくる。

 いざとなったらエロ本とかそういうのを使って峰田を復活させようかと考えていたのだが、どうやらその心配はいらなかったらしい。

 

「そうか。飯田も保須市に来てる筈なんだけど」

「……明日は注意深く見てみるよ」

 

 峰田も少しだけ真面目な表情になり、そう言ってくる。

 色々な意味で問題児の峰田だが、同時に仲間思いの一面もある。

 もしそういうのがないただの問題児なら、それこそクラスの面々からも完全に見放されたりしてもおかしくはないだろう。

 ……まぁ、三奈を始めるとする女達からは、要注意人物と認識されてるっぽいが。

 

「そうしてくれ。それで復活したのを見る限りだと、もう普通に行動出来るな? もう少ししたら夕食の時間だけど」

「うぃー」

 

 俺の問いに返ってきたのは、先程の動けない状態での言葉。

 

「おい」

「冗談だよ、冗談。それにこのホテルの食事は美味いしな」

 

 昨日のビュッフェのようにこのホテルで特に金を払うこともなく食べられる食事だが、それでもかなり美味かった。

 勿論もっと上のランクの食事をしようと思えば、専門の店とかもあるからそっちを使ってもいいのだが。

 ただ、俺にしてみればどうせなら今日もビュッフェに行きたいところだけど。

 

「オイラ、何だか今日はオムライスとか食べたいんだけど」

「……夕食がビュッフェなのか、あるいは他のレストランなのかは分からないけど、オムライスがあるのを期待したらいいんじゃないか?」

 

 とはいえ、高級ホテルにあるレストランと考えると、オムライスのようなのは寧ろ置いてない可能性もある。

 もしどうしてもオムライスを食べたいのなら……そうだな、別にこのホテルに拘る必要はない。

 保須市は田舎の都会といったような感じの場所なので、ファミレスやコンビニも普通にあるので、そこでならオムライスを食べられる筈だった。

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