転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4446話

「ほら、この書式だとこっちの方を書き忘れしやすくなるから、まずはこっちから埋めていく方がいいわ」

「私、前に書き忘れてリューキュウに怒られたよね」

「……公安に提出する書類なんだから、当然でしょ」

 

 夕食が終わり、俺は龍子から書類の書き方について教わっていた。

 ちなみに結局食事はレストランではなく、ホテルのビュッフェとなった。

 決めては、やはりスイーツが充実していた事だろう。

 昨夜ビュッフェを選んだのもスイーツが理由だったので、2日連続でスイーツ天国となった訳だ。

 とはいえ、ビュッフェで出るスイーツは……いや、他の料理もだけど、昨日と全くおなじという訳ではない。

 勿論全てが完全に違うといった訳ではなかったが、それでも昨日と違う料理やスイーツも多く、昨日ビュッフェを利用した者でも十分に楽しめるようになっていた。

 俺も昨日は寿司をメインに食べたが、今日はピザを楽しんだ。

 ピザはピザでも、アメリカ風のピザじゃなくて、本場イタリアの薄い生地のピザ……いわゆる。ピッツァだな。

 アメリカ風とイタリア風は、同じピザでも実際には全く別物の料理に近い。

 世の中には目玉焼きに何を掛けるか、唐揚げにレモン、焼き鳥を串から外す、キノコタケノコ、広島焼きとお好み焼き……といった具合に色々な論争があるが、アメリカ風とイタリア風のピザもまたそれに近い論争というか、派閥がある。

 俺にしてみれば、どっちも好きなので問題ないんだが……世の中には、自分が好きなだけに他は認められないって者も結構多いんだよな。

 ともあれ、色々なピザを楽しみ、食後のデザートとして色々なスイーツも楽しんだ。

 特に美味いと思ったのは、イタリアから輸入した栗を使ったモンブラン。

 ……とはいえ、イタリアの栗って今の季節なのか?

 あるいは旬の時期に採ったのを冷凍保存なりなんなりしておいたのか。

 とにかくそうした夕食を楽しんだ後、今はこうして書類仕事を教わっていた。

 

「あ、ミスった。……これ、ミスったらどうすればいいんだ? 横線二本でいいのか? それとも修正液を使ってもいいのか?」

「うーん……書き直しが一番いいんだけど、無理なら二本線で」

 

 龍子の指示に従い、間違った文字を二本線で消して、きちんと書類を書いていく。

 とはいえ、俺は別にプロヒーローになるつもりはないんだから、こういう書類仕事は覚えなくてもいい筈なんだけどな。

 ただ、龍子も親切心から教えてくれてる以上、断るのは悪い。

 それに……今は使う予定がなくても、このヒロアカ世界で色々と活動する上で必要になる可能性は十分にある。

 なので、今は大人しく龍子に……後はついでにねじれに付き合い、そうして夜はすぎていくのだった。

 

 

 

 

 

「さて、今日は3日目ね。そろそろ動きがあってもいいと思うんだけど」

 

 ヒーローコスチュームに身を包んだリューキュウが、そう言う。

 

「そうだね。見回りだけだと退屈だし」

 

 ネジレちゃんも、そんなリューキュウの言葉に同意していた。

 まぁ、その気持ちも分からないではない。

 元からこの保須市はそれなりに発展している事もあってか、ヒーロー事務所も結構ある。

 また、俺達のようにヒーロー殺しを目当てに多くのプロヒーローが集まってもいる。

 結果として、プロヒーローが多くなっているのでヴィランも活動しにくい。

 ……とはいえ、昨日のようにヴィランの中にはそんなのは関係ないと騒動を起こす奴もいるが、プロヒーローが多数いるので、こちらもまた昨日のようにあっさりと鎮圧される。

 寧ろ、そのヴィランを捕らえたのは自分だとか、そういう感じでプロヒーロー同士が揉めたりするくらいだ。

 そんな訳で、こうして見回りをしていても特に何かが起きたりといった事はまずない訳だ。

 

「まぁ、俺の場合はこうして気楽に歩き回れるのは嫌じゃないけどな」

 

 目元を覆う仮面のおかげで、俺をアクセルだとはそう簡単には分からない。

 ……いやまぁ、この仮面はあくまでも目元を隠す効果しかないので、顔全体を見れば髪の毛の色とか顔の形とかそういうので、俺がアクセル・アルマーだと、体育祭で優勝した生徒だというのは、分かるような気がしないでもないんだが。

 ただ、不思議な事に殆ど正体を見破られたりはしない。

 あるいは俺がこうして大魔王系のヒーローコスチュームを着ているとは、到底思わないとか?

 いや、けど体育祭の選手宣誓の時とかの事を考えれば、俺が真っ当なヒーロー科の生徒じゃないというのは分かると思うんだが。

 まぁ、キャーキャー言われないだけ楽なのは間違いないけどな。

 プロヒーローには人気も大事だ。

 優……マウントレディなんかも、人気を得る為に自分の個性に不向きな街中に事務所を構えているくらいだし。

 だが……それはあくまでもプロヒーローならの話であって、俺はプロヒーローになるつもりはない。

 そんな風に考えていると、視線の先に珍しい存在を見つける。

 

「エンデヴァー?」

「え? ……あら、本当ね」

 

 俺の呟きを聞いた龍子が俺の視線を追うと、そこにはエンデヴァーの姿が。

 エンデヴァーの近くには轟の姿もある。

 すると、エンデヴァーが視線でも感じたのか、不意にこちらを向く。

 最初に龍子に視線を向け、つぎにねじれ。そして最後に俺に視線を向け……一瞬、頬がヒクつく。

 あ、あれは多分ヒーローコスチュームを着ていても俺を俺だと……アクセルだと認識したな。

 体育祭の時、エンデヴァーは俺に接触してきたが、その時のやり取りで俺を恨んで……というのは少し違うな、憎んでというのもちょっと違うか。

 取りあえず、エンデヴァーが俺を嫌っているのは間違いない事実だった。

 その為、エンデヴァーがここで俺を見つけて今のような反応をするのは分からないでもない。

 だが、そんなエンデヴァーと一緒にいた轟は、俺の姿に気が付くと軽く手を挙げてくる。

 体育祭が終わって、轟は人当たりが良くなったよな。

 多分、これが原作主人公の緑谷の影響なんだろうけど。

 体育祭が終わった後、放課後に行っている自主訓練にもそれなりに顔を出すようになっていたし。

 これでA組の中で自主訓練に参加していないのは爆豪だけだ。

 勿論、自主訓練には毎日全員出るといった訳ではない。

 自主訓練はあくまでも自主訓練なので、出られる者が出ればいいだけで、絶対に出ないといけない訳ではない。

 リューキュウは、エンデヴァーに向けて小さく頭を下げる。

 エンデヴァーもそれに対して頷く。

 これはちょっと意外だった。

 俺が知っているエンデヴァーの性格を思えば、リューキュウが頭を下げても無視するだろうとばかり思っていたのだが。

 あるいはこれで、リューキュウが実力のないプロヒーローなら、そうしたかもしれない。

 次のヒーロービルボードチャートでトップ10入りは確実と言われているリューキュウだからこそ、No.2ヒーローのエンデヴァーも頷いたのかもしれないな。

 

「それにしても、No.2ヒーローのエンデヴァーも保須市に来たか。ヒーロー殺しは人気者だな」

「それは嬉しい人気なのかどうか、微妙なところね」

 

 リューキュウの言葉にだろうなと俺も頷く。

 俺にとっては、体育祭の件もあってエンデヴァーは決して好ましい存在ではない。

 ただ、それはあくまでも性格についてであって、本人の能力という点では間違いなく日本でもトップクラスなのは間違いないだろう。

 エンデヴァーがNo.2ヒーローになったのは、最近ではない。

 ここ数年……いや、もっと前からか? とにかくずっとNo.2ヒーローとしてやってきたエンデヴァーだけに、その実力は間違いない。

 体育祭の時は……うん。エンデヴァーの個性が炎で、俺が混沌精霊であり、その中でも特に炎に相性が良いのが影響してのものだしな。

 もしオールマイトがいなければ、エンデヴァーがNo.1ヒーローとして君臨していただろう。

 ……もっとも、エンデヴァーは実力や人気で及ばないからオールマイトに次ぐNo.2ヒーローなのだと考えれば、もしオールマイトがいなくてエンデヴァーがNo.1ヒーローになっていた場合、助けることが出来なかった、あるいは解決出来なかった……といった事件があった可能性は十分にある。

 実力は間違いなくあるが、No.1にはなれない男。

 それがエンデヴァーなのだから。

 

「で、どうするの? エンデヴァーと一緒に行く?」

「止めておきましょう」

 

 ネジレちゃんが尋ねると、リューキュウはあっさりとそう言ってくる。

 そんなリューキュウの言葉に、不満そうな様子を見せるネジレちゃん。

 

「俺もリューキュウの意見には賛成だな」

「えー……アークエネミーまで何を言ってるの?」

 

 不満そうな様子でネジレちゃんが言ってくる。

 どうやらネジレちゃんにとっては、ここで俺も反対するとは思ってもいなかったらしい。

 

「ちょっとエンデヴァーと話した事があるけど、冗談が通じるような奴じゃなかったぞ」

「……アークエネミー? 一体いつエンデヴァーと話したのかしら?」

「ん? 言ってなかったか? 体育祭の時にだな」

「何も問題はなかった?」

「多分」

 

 ちょっとしたやり取りはあったが、言ってみればそれだけだ。

 エンデヴァーも特に何か言ってきたりはしなかったし、体育祭の後も特に問題らしい問題は起きていないのを考えると、取りあえずあの一件については問題がないと思ってもいいだろう。

 

「本当に大丈夫なんでしょうね?」

「まぁ、エンデヴァーの子供ともそれなりに仲良くしてるから、何かあってもそっちの方で止めてくれると思うぞ」

「ちょっと、それは何かをしたのが前提になってるでしょ。本当に大丈夫なんでしょうね?」

「エンデヴァーが俺を見ても特に何か反応しなかった事から考えても、問題ないんじゃないか?」

 

 まぁ、もしかしたら俺には関わらないようにして、裏では何か動いている可能性がないとも言えないが……それでも普通に考えれば、多分大丈夫だとは思う。

 ……思っておきたい。

 

「言われてみればそうね。もし本当にエンデヴァーが何か動いていたら、公安から連絡が入ってもおかしくはないでしょうし」

 

 なるほど、公安にしてみれば俺の存在には触れて欲しくないだろうしな。

 だからこそ、やりすぎない限り……そう、例えば俺を庇えなくなるような事でもない限り、俺に注意をしたりはしてこないだろう。

 という事は、今まで公安のクレジットカードを結構使ったけど、それでも文句を言ってこないんだから、その辺は公安も織り込み済みといったところか。

 少し無理があるような気がしないでもないが、実際に公安から注意されていない事を考えると、その辺はやはり問題がないのだろう。

 

「ほら、アークエネミー、行くわよ。エンデヴァーも行ったし、いつまでもここにいても意味がないでしょ」

 

 リューキュウの言葉にエンデヴァーのいた方を見てみると、なるほど。その姿は既に消えていた。

 エンデヴァーと一緒にいた轟の姿もそこにはない。

 どうやらヒーロー殺しを捜しに既にこの場から立ち去ったらしい。

 

「それで、俺達はどうするんだ? そろそろ昼に近いし、どこかで何か食べてから、またヒーロー殺しを捜すのか? それとも一度ホテルに戻るか」

「……もう少し見回りをしてから、昼食にしましょう」

「やっぱりあんパンと牛乳か?」

「あのね、妙なTVドラマの影響を受けてない?」

「まぁ、それは否定しない」

 

 授業が終わって自主訓練も終わり、家に帰ってきて食事やら何やらを終えると、後はもう自由時間だ。

 そうなると、特に何かやる事もないのでスマホを使って色々見たりする。

 その中にそれなりに視聴率の高い刑事ドラマもあったりして、その中では主人公が張り込みをする時にはあんパンと牛乳がいつも用意されていた。

 ……もっとも、他の刑事になるとピザとコーラだったり、ハンバーガーとオレンジジュースだったり、中にはショートケーキを持って張り込みをしているような刑事もいたが。

 ショートケーキを犯人に投擲するのは、凄かったな。

 

「あのね……まぁ、いいわ。ほら、行くわよ。ずっとここにいても、時間を浪費するだけだし」

 

 リューキュウとネジレちゃんの2人と共に保須市の見回りを再開する。

 そうしてある程度歩いていると……

 

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

「キタコレ」

 

 おう。

 何だかカメラを持った……いわゆる、大きなお友達と呼ぶべき者達の集団と遭遇する。

 

「どうやら向こうにマウントレディがいるみたいね」

 

 そんな集団を見ても、リューキュウは特に驚いた様子はない。

 

「リューキュウ?」

「ほら、アークエネミーも聞いた事ない? マウントレディにはキタコレ族っていうファン達がいるのよ。マウントレディがヒーロービルボードチャートで上位に入る事が出来るのも、キタコレ族のお陰って話よ」

 

 リューキュウの様子を見ると、どうやらこのキタコレ族? とかいうのについては知っていたらしい。

 にしても……なるほど、これがキタコレ族か。

 そう思いながら、俺はキタコレ族を眺めるのだった。

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