転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4448話

 本来であれば、スマホに着信……LINのメッセージが投稿されたからといって、この状況……保須市に多くの脳無が現れた中で、それを確認しているような暇はない。

 この状況で俺がやるべき事は、脳無に襲われている一般人を助ける、あるいは脳無と戦っていてピンチのプロヒーローを助けるといった事だろう。

 だが……それでも、何故か俺は今のスマホの着信音が気になった。

 何があったのかは分からないし、ここでスマホを見るのは馬鹿でしかないと思う。

 思うのだが、それでも俺はスマホが気になり……その場から他の面々の邪魔にならないよう、近くの建物の屋根の上に跳び、スマホを確認する。

 すると、着信音で分かっていたが、やはりLINによるメッセージ。

 しかもそのメッセージを発したのが緑谷となると、俺の勘も捨てたものじゃないな。

 これも、あるいは念動力の効果か?

 その辺りの理由はともあれ、俺は緑谷のメッセージを確認する。

 そこに書かれているのは、位置情報。

 つまり、緑谷のスマホがある場所。

 場所……って、おい、マジか?

 あれ? これってもしかして……保須市じゃないか?

 他には何も書かれていない。

 クラスのグループのメッセージなので、他の面々……特に麗日が何度もどういう事かと緑谷に呼び掛けていた。

 多分、保須市で脳無が暴れているのは、TVやらSNSやらで情報は伝わっているだろう。

 だからこそ、麗日が心配しているらしい。

 そんな中、轟がLINにちょっと行ってみると書き込む。

 この辺も轟が以前とは違ったところだよな。

 俺も顔を出してみる、と書き込み……虚空瞬動を使いながら緑谷のいるだろう場所に向かう。

 

「ん?」

 

 その途中、マウントレディとグレープジュースの姿を見つける。

 案の定と言うべきか、マウントレディは周囲に多数の建物があるのも影響してか、個性を使うことは出来ない。

 それでも逃げている一般人の避難誘導をしている辺り、自分のやれるべき事をしっかりとやっているといった感じか。

 そんなマウントレディの側では、グレープジュースもまた避難誘導をしていたが……人並みの背を持つマウントレディと違い、小柄な……それこそぬいぐるみとかと同じ大きさのグレープジュースは、ぶっちゃけ役に立ってはいない。

 となると……緑谷が来ている以上、恐らくこれは原作の展開なのだろう。

 多分、俺達と同じく職場体験に行った先のプロヒーローが、保須市に来たといったところか。

 ……まぁ、うん。これだけ脳無がいる時点で原作の展開だろうとは思っていたけどな。

 ヒーロー殺しの件もあるし。

 そんな訳で、緑谷に経験を積ませるというのは既定路線だが、それにグレープジュースも連れていこうと思う。

 緑谷が戦っている以上、グレープジュースの戦闘経験にはならないだろうが、戦いを……模擬戦ではなく実戦の空気を吸うだけでも、それは貴重な体験となる。

 そんな訳で、俺は虚空瞬動を使いながら地上に向かって降下していき……

 

「おわぁっ!」

「ちょっ、グレープジュース!? アクセル!?」

 

 地上にいたグレープジュースを掴み、その場から移動する。

 俺を見たマウントレディが叫んでいたが、悪いけど今はスルー。

 

「悪いけど、借りていくぞ!」

 

 それでも一応そう声は掛けておいたが。

 

「お、おい、アクセル。一体何なんだよ!?」

 

 連れ去ったのが俺だと気が付いたらしいグレープジュースが、俺を見てそう言ってくる。

 破れかぶれでモギモギを使わなかったのは、俺にとってラッキーだったな。

 

「スマホの着信音、聞いたか?」

「え? 何がだ? 着信音? 保須市がパニックになってて、それどころじゃなかったんだって!」

 

 そう叫ぶグレープジュースに、なるほどと納得する。

 実際にはグレープジュースは避難誘導にあまり役立っていなかったが、それでもそちらに集中していた為に、スマホの着信音に気が付かなかったらしい。

 

「さっきLINのクラスグループで、緑谷が投稿したんだよ」

 

 俺の言葉に、一体何を言っているのかといった様子のグレープジュース。

 いやまぁ、今の話だけを聞けばそうなってもおかしくはないか。

 

「その内容、スマホの現在位置。それも保須市」

「……マジか……」

 

 グレープジュースにとっても、緑谷が保須市にいるというのは予想外だったのだろう。

 昨日のLINでのやり取りでも、別に保須市に行くとかそういう事は言ってなかったし。

 であれば、グレープジュースにとってもいきなりの展開なのは間違いない。

 

「多分、緑谷が職場体験に行った先のプロヒーローがヒーロー殺し目当てで保須市に来たんだろうな。で、そんな中で緑谷が自分の現在位置だけを書き込んだとなると……予想出来ないか?」

「脳無?」

「……か、ヒーロー殺しのどっちかだな」

「うわ。……ってちょっと待った。もしかしてアクセルがオイラを連れて向かってるのって……」

「正解。緑谷のいる場所だ。轟もLINで行ってみるって書いてたしな」

「轟!? 轟も保須市に来てるのかよ!?」

 

 グレープジュースにとっては予想外だったらしく、そう叫ぶ。

 ……あ、今更だけど、峰田をグレープジュースとヒーローネームで呼んでるんだから、そうなると轟や緑谷もヒーローネームのショートやデクって呼んだ方がいいのか。

 

「ああ、エンデヴァーと一緒に保須市を見回ってる時に遭遇した。……後、散々轟って言ってたけど、ヒーローとして活動中である以上、ヒーローネームのショートだな。緑谷はデクで」

「細かいところに拘るな」

「職場体験中とはいえ、ヒーローとして活動するんだ。その辺はしっかりと認識しておかないと、相澤に知られたら怒られるぞ」

「うげ……分かったよ。それで、場所は?」

 

 こうして話している間にも、俺は虚空瞬動で空中を蹴って進んでいた。

 そんな訳で、グレープジュースの言葉にとある場所を見る、

 建物の隙間。

 緑谷のスマホはあそこにある。

 

「相手がヒーロー殺しにしろ、脳無にしろ、グレープジュースは援護に徹しろ」

 

 グレープジュースのモギモギは、1人で相手を倒すといった強力な個性ではない。

 だが、援護役として考えれば、かなり強力な個性なのは間違いなかった。

 それこそヒーロー殺しだろうが、脳無だろうが、対処出来るのは間違いないと思える程に。

 

「オイラが!?」

 

 援護をしろという俺の言葉に、グレープジュースは焦ったように声を上げる。

 グレープジュースにしてみれば、まさか脳無やヒーロー殺しとの戦いに自分が介入する事になるとは思っていなかったのだろう。

 もっとも、グレープジュースの性格を考えると、前もってこうして説明するよりも、いきなりその現場に投げ込んだ方がきちんと働くような気がしないでもないが。

 

「よし、行くぞ」

「お……おう!」

 

 俺の言葉にグレープジュースは少し震えながらも、そう叫んでくる。

 本人にしてみれば、やる気はあってもヒーロー殺しや脳無と戦うのは、フォローであっても怖いのだろう。

 とはいえ、だからといって今の状況を思えばまさか峰田を放り出す訳にもいかないし。

 ……半ば無理矢理連れてきた俺が何を言っても意味はないような気がするが。

 そんな峰田を連れて、デクのスマホのある場所に向かうと……

 

「どうやら、俺達よりもショートの方が早かったようだな」

 

 建物の隙間から炎と氷が同時に放たれたのを見て、そう言う。

 以前は戦闘に氷しか使わなかったショートだったが、体育祭が終わってからは炎も使うようになっていた。

 

「うう……」

 

 グレープジュースがその様子に怯えた声を上げる。

 もっとも、だからといってそれを止めようとは思わなかったが。

 とん、と。

 建物の隙間……戦闘の現場に着地する。

 

「アクセル?」

「久しぶりだな、ショート。ちなみに俺はアークエネミーな」

「あ、ああ。……それより、ここに来たって事は……」

「デクの位置情報を見てな。ついでにこいつも連れてきた」

「連れて来たって、掻っ攫ってきたんだろ」

 

 グレープジュースがそう言う。

 手を放すと地面に下りたグレープジュースは、前方を……ショートの氷と炎によって攻撃された方を見る。

 俺もそちらに視線を向けると……前方にはデクと飯田……いや、テンヤか。その2人と、初めて見るプロヒーローが倒れている。

 ……倒れている?

 気絶して倒れているのなら、俺にも納得は出来ただろう。

 だが、見た感じだとデクとテンヤは普通に動けているように思える。

 何で動けない?

 

「アクセル君、轟君、ヒーロー殺しの個性は血を舐めると、その相手を動けなくするんだ!」

 

 倒れたまま、デクが叫ぶ。

 グレープジュースの名前が入っていないのは、もしかしたら小さくて見えなかったからか?

 だが……なるほど。血を舐めた相手を動けなくする。それがヒーロー殺しの個性か。

 脳無じゃなくてヒーロー殺しがいたのは少し予想外だったが……俺にとっては、もの凄い相性のいいヴィランだな。

 混沌精霊の俺は、物理攻撃はそれこそ核爆弾の類であっても効果はない。

 ただ、このヒロアカ世界に存在する個性は俺にとって物理攻撃とは認識されないらしく、普通にダメージを与える事も出来たりする。

 ……もっとも、心操の個性のように何故か通用しない個性があったりもするが。

 ともあれ、この世界なら個性を使えば俺にダメージを与えられる……かもしれない訳だ。

 だが、それはあくまでも個性を使っての事。

 そしてヒーロー殺しは、手にした日本刀やナイフといった刃物を使い、相手を斬り裂く事によって刃に付着した血を舐め、個性を発動する。

 それはつまり……相手を斬り裂くまでは、個性でも何でもなく自力でやらないといけないという事か。

 

「はぁ」

「……お前、随分と余裕だな」

 

 大きく息を這いた俺に、日本刀を手にしたヒーロー殺しが不思議そうに……そして若干の苛立ちと共にそう聞いてくる。

 

「そうだな。お前がどれくらい強いのかは……まぁ、デクとテンヤが倒れているのを見れば分かる。だが……」

 

 あるいは血を舐めるという初見殺しの個性にやられた結果かもしれないが。

 普通に……そう、普通に考えた場合、ヒーロー殺しの個性はかなり強力なのだろう。

 相手を一度傷つけ、血を舐めないといけないという条件はあるが、一度血を舐めれば動けなく出来る。

 戦闘の中では数秒動けないだけで致命的なのに、ヒーロー殺しの個性は数秒どころではない時間、動けなくする効果を持つ。

 それは普通に考えると、極めて強力だろう。

 それこそ、戦い方によてはオールマイトであろうとも殺せる可能性がある個性だ。

 ……まぁ、オールマイトの増強系は常識外れなくらいに強力なので、もしかしたら日本刀やナイフでも傷を付けられない可能性もあるが。

 そんなヒーロー殺しの個性だが、俺の血を奪うことが、そもそも難しい。

 個性を使わず、日本刀やナイフで俺を攻撃しても、ダメージを与える事はまず不可能なのだから。

 何より、もし万が一……本当に万が一だが、俺の血を奪ったとして、それをヒーロー殺しが飲んだらどうなるか。

 召喚魔法の契約を結んだ相手ですら、俺の血に含まれる魔力によって、生きるか死ぬかといった状態になるのだ。

 一滴の血ですらその状態な訳で……召喚魔法の契約も何もしていないヒーロー殺しが、一滴どころではない俺の血をベロリと舐めたら……うん。その時点で頭が、あるいは身体がパァン、と破裂してしまってもおかしくはない。

 そういう意味では、俺という存在はヒーロー殺しにとって天敵なのだろう。

 

「だが、何だ?」

「単純な強さだけでもお前は俺に劣る。その上、お前の個性と俺との間では相性的にもどうしようもない程に最悪だ」

「何だと?」

 

 へぇ、ちょっと意外だったな。

 俺の言葉に若干ではあるが苛立たしさを表情に出した、ヒーロー殺し。

 この様子を見ると、どうやらヒーロー殺しは自分の個性とは別に、単純な強さ……技量についてもかなり大きな自信を持っているらしい。

 これは俺にとっても悪い話じゃないな。

 戦う上で、技量の差を見せつければヒーロー殺しの心を折る事が出来るかもしれない。

 勿論、実際には折れないといった可能性も十分にあるのだが。

 ただ、ヒーロー殺しの個性を把握した時点で、このヒーロー殺しは俺にとって強敵とは到底言えないような存在となったのは間違いなかった。

 

「ああ、だからか?」

「……何の事だ?」

「いや、だからお前がヴィラン連合と組んで、保須市に脳無を解き放ったのは、俺と……いや、俺のように自分がまともに戦って勝てる相手としか戦わないようにする為の陽動だったんだろう? つまり、お前はヴィラン連合の手先な訳だ。……違うのか?」

 

 ギリッ、と。

 俺の言葉にヒーロー殺しが歯を噛み締める音が周囲に響く。

 どうやら、ヒーロー殺しにとって今の俺の言葉は到底受け入れられるものではなかったらしい。

 とはいえ、今の状況を思えばそのように言われても仕方がないと思うのだが?

 

「どうした、ヴィラン連合の犬」

「がぁっ!」

 

 その言葉を聞いた途端、ヒーロー殺しは俺に向かって突っ込んで来るのだった。

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