転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4451話

「えっと……勝った……んだよね? その、気絶してるっぽいし」

 

 デクの言葉が周囲に……激しい戦場となった場所に響く。

 ただ、それでもまだデクが完全に安心した様子を見せている訳ではないのは、今までヒーロー殺しが何度も攻撃を食らっても、精神が肉体を凌駕し、倒れなかったからだろう。

 だからこそ、今この場でこうして気絶しているヒーロー殺しを見ても、本当にもう大丈夫なのかと、そのように思ってしまうのは仕方がない。

 

「ああ、安心しろ。もう気絶している」

 

 そう断言すると、そこでようやくその場にいた者達が大きく安堵の息を吐く。

 

「ぶはぁっ……おい、アクセル。何でオイラ達にヒーロー殺しなんて凶悪な奴の相手させたんだよ!」

 

 グレープジュースが理解出来ないといった様子で俺にそう言ってくる。

 

「戦いの前にも言っただろう? お前達には実戦経験が足りない。それを対処する為に必要だと思ったからやったまでだ」

「……オイラ達が勝ったからよかったものの、もし負けていたらどうするつもりだったんだよ」

「デク、ショート、グレープジュース……そして最終的にはテンヤも戦力に加わったんだ。そう考えれば、負ける筈はないだろ。それに……本当にどうしようもなかったら、それこそ俺が出るつもりだったし」

「それはそうだけどよぉ……」

 

 俺の言葉に、完全には納得出来ないといった様子でグレープジュースが言う。

 とはいえ、その辺りについては戦いに参加していた者達も知っていたので、本人にそのような意識があったかどうかはともかく、いざとなれば俺が戦いに参加するので、最終的に自分達が負けるといったように、無意識で思っていた可能性は否定出来ない。

 その為に、俺が思っていたよりも実戦経験がないのはどうかと思わないでもないが。

 

「とにかく、ヒーロー殺しを倒したんだ。結果は全てに優先する……とまでは言わないが、それでも大きな結果をもたらしたのは間違いないだろ。特にグレープジュースは、あのヒーロー殺しを倒したんだから、女にモテるんじゃないか?」

「マジか!? へっへぇ、オイラの実力があってこそのものだしな」

「峰田君……それはちょっと……その……」

 

 デクがグレープジュースを……峰田と本名で呼びながら、呆れたように言う。

 今のグレープジュースの言葉は、デクにとっても真剣に受け入れるようなことは出来なかったのだろう。

 俺にしてみれば、寧ろあの死闘――と呼ぶにはちょっと生温いが――を潜り抜けた中で、いきなりそんな事を言えるだけの胆力は凄いと思うけど。

 これは峰田が生粋の女好きだからこそ、出来た事だろう。

 ……女好きもここまでくれば、褒められてもいいのかもしれないな。

 あるいはここに誰か女がいれば、もう少しこう……違ったのかもしれないが、生憎とこの場にいるのは全員が男だ。

 今のグレープジュースの言葉を聞いても、驚きはするがそれだけで終わりだろう。

 

「まぁ、グレープジュースの女好きの件はとにかく、まずは気絶したヒーロー殺しを縛っておかないか? いつ目が覚めて、ここから逃げ出そうとするか分からないし」

 

 そう提案する。

 今のヒーロー殺しは峰田のモギモギと轟の氷によって、身動きが出来ないままで気絶している。

 だが、あれだけ精神が肉体を凌駕していた奴だ。

 それこそ、いつ復活しないとも限らない。

 ……寧ろ、精神が肉体を凌駕した状態で倒され、気絶させられているのだから、それこそ目を覚ますまではかなりの時間が掛かってもおかしくはないのだが。

 ただ、それはあくまでも俺の予想というか可能性の話で、もしかしたらあっさりと復活するような事になってもおかしくはなかった。

 なら、復活した時の為にロープで縛って身動き出来ないようにしておいた方がいいだろう。

 

「けど……ロープはないぞ」

 

 轟の言葉に、皆がそういえば……といった表情を浮かべた。

 俺の場合は空間倉庫にロープがあるのだが、今はまだ空間倉庫についてはリューキュウを始めとした一部の者達にしか知られてないしな。

 となると、空間倉庫から出して、実は持ってましたと見せ掛けるか?

 そう思ったんだが……

 

「ロ、ロープなら持ってるからこれを使ってくれ」

 

 そう言ったのは、俺がここに来た時には既にヒーロー殺しによって戦闘不能にされていた、プロヒーローだった。

 ……今更だけど、プロヒーローが全く役に立たず、ヒーロー科の生徒達だけでヒーロー殺しと戦うというのはどうなんだろな。

 いやまぁ、原作の流れを考えると主人公の見せ場である以上、仕方がないのかもしれないが。

 それに、こうして誰も持っていなかったロープを持っているし。

 

「助かるよ。最悪、グレープジュースのモギモギを使って手足を拘束するしかないかと思っていたし」

「え? ……その、オイラもう結構限界なんだけど。血が出て来たし」

 

 俺の言葉に、グレープジュースがそう言ってくる。

 そういえば、モギモギは使いすぎると血が出るんだったか。

 ヒーロー殺しとの戦いの時、結構な量を投げていたしな。

 そろそろ限界だった訳か。

 ……もっとも、そういう意味ではモギモギが使えなくなる前にヒーロー殺しを倒せたのは幸運だったな。

 ともあれそんな訳で、ヒーロー殺しをロープで縛ることになったんだが……

 

「えっと、どうしよう?」

 

 デクが困ったように言う。

 その視線が向けられているのは、ヒーロー殺しの足。

 既にロープで縛り、足を固めていた氷も轟の炎によって溶かされている。

 だが、もう片方の足……モギモギで地面とくっつけた方は、モギモギがによって取れない。

 

「地面を壊すか? デクもそうだが、俺の身体能力でもそれくらいは出来るだろうし」

 

 地面……というか、アスファルトを破壊するだけなら、そう難しい事ではない。

 これが大通りとかなら、アスファルトを破壊すると通行の邪魔になるだろうが、幸いここは建物の間で、誰も通らない……訳ではないが、ここを通る者はそう多くはない。

 であれば、取りあえずアスファルトを壊してしまえばいいんじゃないかと思ったんだが……

 

「あ、その……オイラのモギモギ、燃えやすいんだ。轟の炎を使えば取れると思う」

 

 そう、グレープジュースが言ってくる。

 何だかヒーローネームと本名が入り交じってるが、俺もいっそ本名で呼んだ方がいいのか?

 そうも思ったが、今はそれよりも重要な事がある。

 

「え? モギモギって燃えるの!?」

 

 俺と同じ疑問を抱いたのだろうデクが、驚きの声を上げる。

 うん、これだ。

 モギモギが燃えるというのは、俺にとっても完全に予想外だった。

 というか、モギモギはグレープジュースの髪の毛……正確には髪の毛が変化した存在なのだが、とにかく髪の毛の性質を持っていてもおかしくはなく、そうなると燃えてもおかしくはいないのか。

 多分、これ……グレープジュース的にはあまり言いたくなかったんだろうな。

 何しろ、エンデヴァーや轟を始めとして、炎の個性を持つ者はそれなりに多い。

 俺のような存在は例外としても、炎で無効化出来るとなると……グレープジュースの個性の有用性がぐっと下がってもおかしくはない。

 先程の説明からすると、炎以外の個性にはそれなりに強いのだろうが、その辺りを込みで考えても、やはりモギモギの有用性は下がってしまう。

 個性というのは成長するらしいので、あるいはモギモギが成長して耐熱性とかそういうのを手に入れる可能性もないではないが……髪の毛の性質を持っているとなると、そう簡単にどうにか出来るようなものではないんだよな。

 

「じゃあ、取りあえずモギモギを燃やせばいいんだな?」

 

 ショートの言葉にグレープジュースが頷くと、小さな炎を生み出してモギモギを燃やす。

 グレープジュースが言っていたのだから、燃えるのは間違いないだろうと思ってはいたのだが……思っていた以上にあっさりと燃えてしまったな。

 

「よし、じゃあ表通りに出るか。……もう殆ど騒動が聞こえてこないのを考えると、脳無も全員倒されだろうし」

「あ、そうだ。脳無!? アクセル君、本当に大丈夫なの!?」

 

 デクが俺の口にした脳無という単語に反応し、そう聞いてくる。

 

「こうしている限り、もう戦闘音は聞こえてこないし……多分、大丈夫なんじゃないか?」

 

 これは大袈裟でも何でもなく、既に戦闘音は聞こえてこない。

 エンデヴァーやリューキュウ、マウントレディが脳無と戦っていれば、派手な戦闘音が聞こえてもおかしくはないし、あるいはこの建物の隙間から少しだけ見える上空にリューキュウ達を見ることが出来てもおかしくはない。

 そうなると、もう脳無との戦いが終わったのは間違いないのだろう。

 

「まさか、ヒーロー殺しがヴィラン連合と手を組んでいるとは思わなかったな」

 

 ショートが小さく呟く。

 それは俺も同様だったが、実際に脳無が多数出没し、それに紛れるようにヒーロー殺しが活動したのを考えれば、ヒーロー殺しとヴィラン連合の間に何らかの繋がりがあるのはほぼ間違いないだろう。

 それが具体的にどのような繋がりなのかまでは、俺にも分からなかったが。

 普通に考えれば、手を組んだといったところだろう。

 シラタキや黒霧は強力な個性を持つ。

 ヒーロー殺しの個性は……決して侮っていいものではないが、シラタキや黒霧と比べれば数段劣るのも事実。

 だが、ヒーロー殺しの持ち味は個性の強力さではなく、素の状態での身体能力だ。

 そういう意味では、ヴィラン連合がヒーロー殺しを幹部として受け入れても不思議ではない。

 ……もっとも、この場の戦いでこうして捕まってしまった以上、既にヴィラン連合の戦力として使うのは不可能なのだが。

 

「じゃあ、表に行こう。皆、心配してるだろうし」

 

 デクの言葉に全員が頷き、表通りに出る。

 とはいえ、それでも多数の脳無とヒーロー殺しが活動していた事から、本当に安心とは限らない。

 なので、俺が最初に出て周囲の様子を確認する。

 テンヤは自分で動けるようになったので、ヒーロー殺しによって怪我を負ったプロヒーローを背負って出てくる。

 デクとショートとグレープジュースは縛ったヒーロー殺しを運ぶ。

 

「問題ない」

 

 大通りに出ると、脳無が暴れた影響によるものか、人通りは決して多くはない。

 ゼロという訳ではないが、

 とにかく問題はないので、そう皆を呼ぶ。

 他の面々がやって来ると、ちょうどそのタイミングに合わせるように、道の先から1人の男……というか、老人が姿を現す。

 

「む!? んな……何故お前がここに!」

 

 その老人は、こちらを見て驚きの声を発する。

 そのヒーローコスチュームから、あの老人はプロヒーローだろう。

 もしかしたらヴィラン……といった可能性もない訳ではなかったが、そんな相手に対して俺が何かを言うよりも前に、ヒーロー殺しを運んでいるデクが口を開く。

 

「グラントリノ!?」

 

 どうやら、あの老人はデクの知り合いらしい。

 その老人……グラントリノと呼ばれたプロヒーローは、デクの前までやってくると、その顔面に蹴りを放つ。

 それだけを見れば、あのグラントリノというのはヴィランではないかと思えるが、デクはそんなグラントリノに対して、敵意や警戒心を持っていない。

 ……顔面に蹴りを食らいつつ、それでも敵意や警戒心を抱かないのは、それはそれでどうかと思うが。

 とはいえ、デクの性格を思えばそうおかしな事ではないのかもしれないが。

 

「まぁ、取りあえず……無事で良かった」

「グラントリノ……ありがとうございます」

 

 こうして和やかにやり取りをしているのを思えば、さっきの蹴りはいわゆる愛の鞭といったものだったのだろう。

 だからといって、顔面に蹴りを放つのはどうかと思うが。

 

「細道……ここか? あれ?」

 

 デクとグラントリノのやり取りを見ていると、新たにプロヒーローと思しき者達が姿を現す。

 

「エンデヴァーさんから応援要請を受けた……んだが……えっと、子供?」

 

 6、7人のプロヒーローがこちらに近付きながら、そう言ってくる。

 子供? と驚いてるのは、無理もないか。

 一応プロヒーローもいるが、テンヤに背負われていて、それ以外は全員が雄英の生徒だしな。

 もっとも、それはそれで色々と思うところがない訳ではないが……今のこの状況を考えると、やっぱりプロヒーローが不思議に思ってもおかしくはない。

 

「アクセル、ここは俺が、どうやら親父が応援要請をしたらしいからな」

 

 デクはグラントリノとやり取りをしているので、ヒーロー殺しはこうして引っ張って移動していく。

 グレープジュースは、自分だけではヒーロー殺しを持つのは無理だと判断したのか、既にヒーロー殺しは地面に置かれていた。

 

「ああ、頼む」

 

 エンデヴァーの応援要請で来たのなら、相手をするのはエンデヴァーの息子で、職場体験でもエンデヴァーの事務所に行っているショートがやるのが当然だろう。

 そんな訳で、俺はその件についてはショートに任せるのだった。

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