転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4452話

 デクがグラントリノと、そしてショートがエンデヴァーの応援要請によって駆けつけたプロヒーロー達と話していると、不意にテンヤが深々と頭を下げ、謝罪する。

 

「皆、僕のせいで全員に傷を負わせてしまった。本当にすまなかった!」

 

 ポタ、ポタと涙が地面に落ちる。

 

「何も……何も見えなくなってしまっていた」

 

 そんなテンヤに、デク、ショート、グレープジュースがそれぞれ慰めの声を掛ける。

 俺も何かを言った方がいいのかもしれないと思ったが……俺がやった事は、テンヤにしてみれば決して許せるような事ではないだろう。

 何しろ、俺1人でヒーロー殺しに勝てる状態だったというのに、デク達に実戦経験を積ませるという目的で、戦いを任せたのだから。

 勿論、もし致命的な何かがあった場合、俺が対処をするつもりではいた。

 だが……実際に戦っていた者達、そしてヒーロー殺しの個性によって動けなくなっていたテンヤにしてみれば、俺が戦えば他の面々が怪我はしなかったと、そう思ってもおかしくはないのだから。

 俺はその辺りについては、全て承知の上でデク達をヒーロー殺しと戦わせた。

 俺が雄英にいるのは、壁として生徒達の前に立ち塞がり、そして生徒達をより強くする為だ。

 ……今回の一件は、俺が壁になるとかそういうのはあまり関係ないことだったが。

 とにかくそういう理由で戦わせた以上、俺はこの後面倒臭い事になるだろう。

 いっそ、今のうちに公安に連絡をしておいた方がいいかもしれないな。

 そう思い、青春をしているデク達を見ていると……

 

「うん?」

 

 ふと、こちらに近付いてくる気配に気が付く。

 これがもし地面を歩いてこっちに近付いて来ているのなら、俺もそこまで気にするような事はなかっただろう。

 だが、空を飛んでこっちに向かってくるとなると、話は違ってくる。

 勿論、世の中に空を飛べるヒーローがいない訳じゃない。

 虚空瞬動……というか、それを使わなくても実は普通に空を飛べる俺は例外としても、リューキュウはドラゴンに変身して空を飛べるし、爆豪なんかは飛ぶではなく跳ぶだが、空中移動出来る。

 また、それ以外にも普通に空を飛べるようなプロヒーローはいるし、あるいはそういう個性を持つプロヒーローが保須市に来ている可能性も否定は出来ない。

 出来ないが……俺達のいる場所に向かって一直線に飛んでくるとなれば、話は別だ。

 

「おい、アクセルだったか? 一体どこを……んなぁっ!?」

 

 デクと話していたグラントリノが、空を見上げる俺を訝しげに思ったのか、そう聞いてくる。

 だが、次の瞬間には驚きの声を上げた。

 空を飛ぶ脳無が、こっちに……というか、俺に真っ直ぐ向かって来ているのを見たのだから、それも当然だろう。

 

「伏せろ!」

「ああ、心配するな。あの脳無が狙ってるのは多分俺だ」

 

 咄嗟に叫ぶグラントリノに、そう言う。

 そう断言するには、幾つか理由がある。

 まず第1に、あれが脳無だというのが大きい。

 脳無はヴィラン連合の手勢だ。

 そして俺とヴィラン連合は、USJの件で因縁がある。

 ……この脳無を放ったのは、ヒーロー殺しが行動しやすくする為の陽動だろう。

 そして多数の脳無が同時に現れた事を思えば、黒霧が保須市にいる可能性が高い。

 USJでの一件を思えば、黒霧はシラタキの側近に近い関係だったのは明らかだ。

 つまり、黒霧がいる以上、シラタキがいる可能性も高い。

 あるいは最初……脳無を保須市に解き放った時は俺がいるというのは分からなかったかもしれないが、その後の行動で……俺が何匹か脳無を倒したり、あるいはヒーロー殺しと絡んだのを見て、シラタキが俺の存在に気が付いた可能性は十分にあった。

 であれば、USJの一件で俺にボコボコにされた上で捕まったシラタキだ。

 仲間に助けられたようだが、俺に対する恨みは根深いだろう。

 例えば、まだ生き残っている脳無に俺を狙うように命令するくらいには。

 そして第2に……これは第1にも関わってくるのだが、空を飛んでこちらに向かってくる脳無の狙い……殺気は、これ見よがしに俺に向けられていた。

 これは殺気を感じる能力を持つ俺だからこそ、空を飛ぶ脳無の狙いがはっきりと分かったのだ。

 

「おい、坊主!?」

 

 グラントリノが俺の言葉を聞き、咄嗟になのだろうがそう言ってくる。

 にしても、坊主か。

 いやまぁ、10代半ばの今の俺の姿を見れば、そう言ってもおかしくはないが。

 とにかく、俺は地面を蹴り、そのまま虚空瞬動で空中を蹴って、俺に向かって降下してくる脳無に向かう。

 脳無は一瞬戸惑ったような様子を見せる。

 空中を移動出来るのは自分だけで、俺がこうして空中を移動出来るとは、思っていなかったのかもしれないな。

 ただ、脳無の戸惑いは本当に一瞬。

 ……そのまま空中を跳んだ俺に向かって羽根を使って微妙に方向転換をし、突っ込んで来る。

 飛行速度はなかなか……ただ、微妙に飛ぶ方向を変えたせいもあってか、少し速度が落ちた。

 元々その姿を捉えていた中で、そうして更に速度を落とすような事をすれば、どうなるか。

 それは考えるまでもないだろう。

 こちらに向け、鋭く伸びた手の爪を振るう脳無。

 あるいは空を飛ぶ以外に持っているのだろう他の個性は、その爪に何かあるのかもしれないな。

 そんな風に思いながらも……

 

「スマッシュ!」

 

 脳無の爪による攻撃を回避しつつ、カウンターの一撃を叩き込む。

 メキョ、と。

 脳無の肋骨が数本折れる感触が伝わってくるのと同時に、そのまま地面に落ちていく。

 俺もまた、脳無をこうして倒した以上は空にいる必要はないので、地面に落下していく。

 

「おめぇ……」

 

 地面に着地した俺を、グラントリノが信じられないといった様子でそう口に出す。

 エンデヴァーの応援要請で来た者達は、信じられない光景を見たといった様子でこっちを見ている。

 俺にしてみれば、別にそこまで深く考えるようなものではないと思ったのだが、グラントリノを含む他のプロヒーローにしてみれば、違ったらしい。

 ……それとは裏腹に、デクを始めとした雄英組はそこまで驚いている様子はない。

 俺の行動には慣れているという事なのだろう。

 

「取りあえず、その脳無は捕らえた方がよくないか? 脳無の能力を考えれば、今の一撃を食らっても、まだ動けるだろうし」

 

 そう俺が言えるのは、俺のイメージとして、脳無というのは量産型Wの下位互換、あるいは劣化版といったものだからだ。

 勿論、純粋な生身での戦闘能力として考えれば、脳無は量産型Wを相手に勝てるかもしれない。

 とはいえ、金ぴかの細胞を培養されて量産型Wの素材として使われているし、凛の協力によってガンド程度だが魔術も使えるようになっている。

 また、ネギま世界の魔法や気を使った戦闘が出来たりもするので……えっと、あれ? 脳無、量産型Wに勝てるか、これ?

 もっとも、脳無はUSJで出て来た個体や俺が今倒した個体、あるいは保須市で戦った個体もそうだが、個々によって強さは大きく異なる。

 勿論、外見も。

 例えばUSJにいた脳無は対オールマイト用という事で、恐らく脳無の中でもトップクラスの強さを持っていただろう。

 だが、保須市に放たれた脳無は……取りあえず俺が戦った限りだと、USJの脳無と比べても明らかに弱い。

 それでもその辺のプロヒーローが1人でどうにか出来るような相手ではないが。

 それこそエンデヴァーやリューキュウのような精鋭なら、1人でどうにかなるかもしれないけど。

 マウントレディは……うん。取りあえず周囲に被害が出てもいいのなら、どうにか出来ると思う。

 そんな風に思っていると、エンデヴァーの応援要請で来たプロヒーロー達が脳無を取り押さえに行く。

 取りあえず、1人じゃなくてあれだけの人数がいるなら大丈夫か。

 ただ、応援要請で来た中でも女のプロヒーローはヒーロー殺しを受け取っているので、そちらには向かっていなかったが。

 

「さて、取りあえずこれで今日の騒動も終わったと思っていいのか?」

「うーん、どうだろう。脳無とヒーロー殺しの騒動は終わったかもしれないけど、警察とかに怒られるのは……」

「は? 怒られる? 何でだ?」

 

 デクの言葉に疑問を抱く。

 俺達がやったのは、ヒーロー殺しを倒して捕らえ、ついで脳無も倒して捕らえている。

 それで怒られるような事は……あ、いや。俺は心配があったな。

 デク達に実戦経験を積ませる為に、俺が1人でヒーロー殺しを倒せたのに、敢えて倒さずにデク達に戦わせた。

 これは俺にとってはデク達を育てる為という理由があってのものだが、それで警察や……あるいは相澤を含めた雄英の教師が納得するかどうかは微妙なところだろう。

 そうなると、当然ながらその件で怒られる可能性は十分にあった。

 そう思ったのだが……

 

「え? いや、だって……ほら、僕達はあくまでも職場体験でヒーロー事務所に来てるのであって、個性の使用については公共の場で使っちゃ駄目だし」

「……え? あれ? お前達、許可を貰ってないのか? 俺はリューキュウから普通に許可を貰ってるけど」

「ちょっ、待てよ! オイラは許可を貰う前にアクセルに強引に連れ去られたんだが!?」

 

 グレープジュースがそう叫ぶ。

 いやまぁ……うん。それについては申し訳ないと思う。

 

「グレープジュースはそれでいいとして、デクは今のを見た限り許可を貰ってないんだよな? ……ショートとテンヤの2人は?」

 

 そう聞くと、テンヤは困った様子を見せ、ショートの方は何を言われているのかよく理解出来ないといった様子を見せる。

 ……うん、どうやらこの様子を見る限り、俺以外の面々は個性の使用許可を貰っていなかったみたいだな。

 

「えっと……その辺は後でどうにか……おい!?」

 

 俺達の会話に意識を取られていた、エンデヴァーの応援要請で来た面々。

 ヒーローとして国内トップクラスのヒーロー科のやりとりという事で、あるいはヒーロー殺しを倒した俺達の事で興味津々だったのかもしれないが、だからといってこちらにばかり意識を集中し、捕らえた脳無に対する扱いを無下にするのは呆れるしかない。

 ロープで縛られていた筈の脳無は、そのロープをあっさりと引き千切ると、こちらに向かって……あれ? 違うな。デク達のいる方に向かって突っ込む。

 正確にはデク達と脳無の間には、ヒーロー殺しを捕らえている女のプロヒーローがいたのだが、脳無はその女のプロヒーローに体当たりをして強引に抜けると、一番近くにいたデクを手に、翼を羽ばたかせる。

 なるほど、俺を相手にしても勝ち目がないと判断して、誰かを人質にしてこの場から一度逃げる事を選択したのだろう。

 脳無にそこまで考える思考能力があるのかどうか、俺には分からない。

 あるいは脳無は最初からそういう風に命令されていたのかもしれないが。

 とにかく、デクが捕まったのは俺にとって都合が悪い。

 その為、俺は虚空瞬動でこの場から遠ざかろうとする脳無を追おうとして……あれ?

 次の瞬間、不意に脳無の動きが止まり、そのまま地上まで落下してくる。

 何だ? さっき俺が放った骨を折る一撃が今頃になって効果を発揮したのか?

 そうも思ったが、すぐそれが違うのを理解する。

 地上にいる者達をよく見れば、いつの間にか意識を取り戻していたヒーロー殺しが、女の頬を舐めていたのだ。

 ……それだけを聞けば、痴漢のようにしか思えない。

 だが、それをやったのがヒーロー殺しで、女のプロヒーローの顔には血が……先程、脳無がぶつかった時に、付着していた血がついているとなれば、話は違ってくる。

 正直なところ、ヒーロー殺しが何故デクを助けたのか、俺は分からない。

 ただ、戦っている時にデクを認めたような発言をしていたのを思えば、その辺りが理由なのかもしれないが。

 

「偽物が蔓延るこの社会も……いたずらに力を振りまく犯罪者も……はぁ、はぁ……粛正対象だ……」

 

 地面に落ちてきた脳無の、剥き出しの脳みそを短剣で突き刺し、ヒーロー殺しはそう言う。

 あそこまでボコボコにされたのに、まだ動けるというのはちょっと驚きだな。

 

「全ては……正しき、社会の為に」

 

 荒く呼吸しながら、そう呟くヒーロー殺し。

 まさに精神が肉体を凌駕した状態だからこそ、出来る事なんだろう。

 そうした中で、再びこちらに現れる気配が1つ。

 脳無を逃がしたプロヒーロー達が、助けた? 人質に取った? とかそんな風に言ってるものの、それを言うのならお前達もしっかりと脳無を捕らえておけばよかっただろうに。

 ……まぁ、そうして賑やかしの如き者達だからこそ、十把一絡げの扱いになってるのかもしれないが。

 

「そっちに1人、逃げた筈だが!?」

 

 先程の脳無を追ってきたのだろう、エンデヴァーがそう叫ぶ。

 ……それでいながら、ショートがいるのに気が付くと驚き、そして次に俺に目を止め、複雑な表情を浮かべるのだった。

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