転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4453話

 こちらを見て複雑な表情を浮かべたエンデヴァーだったが、少し離れた場所……具体的には、ヒーロー殺しが脳無を殺し、その脳無に連れ去られようとしたデクが暴れているのを見る。

 即座にそれがヒーロー殺しだというのに気が付き、攻撃しようとするのはNo.2ヒーローのエンデヴァーらしいと言えばらしいのだろう。

 

「待て、轟!」

 

 そんなエンデヴァーに対し、グラントリノが叫ぶ。

 轟? と一瞬だけ轟……ショートの方に視線を向けようとするが、グラントリノが口にした轟というのは、当然ながら父親の方、エンデヴァーだと判断する。

 それにしても、一体何故エンデヴァーを止めたのかと思ったが……ヒーロー殺しを見て、納得する。

 デク達にボコボコにされ、縛られていたヒーロー殺しだが、それはつまり自分が動かなくても運ばれる……つまり、身体を休めるには十分な時間だったという事になる。

 それによって、脳無を殺すといった事も出来たのだろうが……精神が肉体を凌駕した状態は、まだ終わっていなかった。

 

「偽物」

 

 決して大きな声ではない。

 だが、精神が肉体を凌駕した状態で発せられた声は、不思議な程の迫力を……聞いている者の足を止める、圧倒的な何かがあった。

 

「正さねば……誰かが血に染まらねば! 英雄を……本当の意味でのヒーローを取り戻さなければ!」

 

 そう言い、1歩踏み出すヒーロー殺し。

 エンデヴァーは自分でも気が付かない様子で数歩後退っている。

 先程ヒーロー殺しを捕まえていた女のヒーローは、腰が抜けて地面に座り込み、とてもではないが立てる様子ではない。

 その女のヒーローと一緒に来た他のヒーローも、一切身動き出来ず……そして、ショート、テンヤ、グレープジュースの3人もまたそれは同様だった。

 意外だったのが、グラントリノだ。

 ヒーローコスチュームを着ているのもあって、しっかりとした年齢は分からない。

 だが、言葉遣いやマスクで隠れている目元以外の顔を見れば、年寄りなのは明らかだろう。

 それこそ老人と呼んでも間違いではないくらいの年齢だろうに、ヒーロー殺しの持つ圧倒的な気迫を前にしても決して怯む様子はない。

 No.2ヒーローのエンデヴァーですら、数歩後退っているというのに。

 

「来い! 来てみろ、偽物ども! 俺を殺していいのは、本物の英雄……オールマイトだけだ!」

 

 1歩、また1歩と進みながらそう口にするヒーロー殺し。

 エンデヴァーを含めた他の面々は、そのヒーロー殺しの放つ迫力に何も出来ない。

 ……ここまで、か。

 デク達もこのヒーロー殺しの気迫を受けたので、実戦経験としては悪くない結末だろう。

 瞬動を使い、一瞬にしてヒーロー殺しの前に立つ。

 

「きさ……」

「寝ろ」

 

 その一言と共に鳩尾に拳を叩き込み……次の瞬間、ヒーロー殺しは白目を剥いて気絶し、地面に倒れ込む。

 元々が精神が肉体を凌駕した状態で……それだけでなく、一層強い気迫を発し、それが半ば物理的な圧力に近い状態になって、他の者達を動かせなかった。

 そこまでやったのだから……まぁ、うん。ぶっちゃけ俺の一撃がなくても、恐らくはすぐにでも気絶はしていたと思う。

 しん、と。

 ヒーロー殺しが倒れた状態で周囲を見るが、誰も彼もが……それこそ俺から一番近い場所にいるデクですら、信じられないといった視線を俺に向けていた。

 まぁ、無理もないだろうけど。

 これについては、潜ってきた修羅場が違う。

 それこそNo.2ヒーローのエンデヴァーであろうと……いや、オールマイトであろうとも、潜ってきた修羅場という意味では俺には敵わないだろう。

 何しろ、俺は文字通りの意味で神ですら殺している。

 あるいは銀河を行き来するような宇宙生物のバジュラとも戦っている。

 他にも数え切れない程の強敵と戦ってきたのだ。

 そんな俺にしてみれば、今のヒーロー殺しの放っていた気迫はそれなりに凄いとは思うが、あくまでもそれなりだ。

 ぶっちゃけ、シャドウミラーの実働班……いや、実働班以外の者達であっても、このような気迫によって動きを止めるような者はいないと思う。

 ああ、非戦闘員の四葉とかそういう連中は別だけど。

 ……あ、でも四葉なら、何気に今のヒーロー殺しの迫力を食らっても特に気にした様子もなく、立ち向かいそうな気がするな。

 背後にコアラのオーラを背負って。

 ともあれ、ヒロアカ世界1つしか知らず、しかもその中でも1つの国の中で活動してるエンデヴァー達と、比喩でも何でもなく、文字通りの意味で様々な世界で活動しているシャドウミラー。

 潜ってきた修羅場の数を思えば、今のヒーロー殺しの気迫くらいは全く問題ない。

 とはいえ、それはあくまでも俺の事情があってこその事。

 他の者達にしてみれば、それこそエンデヴァーですら竦んだヒーロー殺しの気迫に、真っ向から立ち向かった……いや、それどころか、全く関係ないといった様子で一瞬にして近づき、一撃で意識を奪ったのだ。

 それを思えば、奇異の視線……というより、畏怖の視線? そんな感じの視線を向けられてもおかしくはなかった。

 とはいえ、俺にしてみればそれこそが普通だったりしたので、そんな視線を向けられても困惑するのだが。

 

「で? このヒーロー殺しはどうすればいいんだ? このままにするのか? それともロープで縛るのか? 今は気絶してるだけだが、いつまた気が付くか分からないぞ」

 

 そう言うと、その言葉でようやくエンデヴァーとグラントリノが動く。

 素早くこちらに近付いてくると、気絶したヒーロー殺しをロープで縛り上げる。

 そして集まっていたプロヒーロー……エンデヴァーの応援要請で来た者達に決して目を離さないようにと言う。

 そこまでやってようやく安心したのか、エンデヴァーとグラントリノがこちらを見て来た。

 

「坊主、お前……何者だ?」

 

 最初に口を開いたのは、グラントリノ。

 まぁ、エンデヴァーは体育祭で俺と多少なりとも話し、俺の持つ異常性をそれなりに認識しているだろうしな。

 

「何者だと言われても、デク……緑谷の同級生としか言いようがないな。もしくは受験において首席だったとか? それとも体育祭で優勝したとか?」

「……そういう意味じゃねえ。お前……いや、まさか、そんな筈はねえ。俺はしっかりと奴から聞いている。なら、偶然? だが……」

 

 何だか俺との会話中に何かを考え込むように、呟く。

 話の途中でいきなり独り言を口にされても困るんだけどな。

 

「ともあれ、脳無はあれが最後の1匹だったって事でいいんだな?」

「……うむ」

 

 念の為に俺が尋ねると、エンデヴァーが数秒の沈黙の後で頷く。

 仮にもNo.2ヒーローが脳無を逃がすなよと思わないでもなかったが、あの脳無は空を飛ぶ……それも結構な速度で飛ぶタイプだったしな。

 そう考えると、エンデヴァーが逃がしてしまってもおかしくはないのかもしれない。

 それに脳無は結構な数がいたし。

 

「そうか。じゃあ、俺はそろそろ戻るけど、構わないか? 何か用事があるのなら、リューキュウを通して連絡をするか、あるいは雄英に連絡してくれ」

 

 そう言うと、俺はいつの間にかテンヤ達の方に移動していたデク達の側まで移動する。

 

「さて、取りあえず今日の騒動もこれで終わったようだし……怪我は?」

『……』

 

 怪我について聞くものの、返ってきたのは無言の視線。

 

「どうした?」

「いや、どうしたじゃねえって! 何でアクセルはあの状況で動けたんだよ! オイラなんか、ちびってしまうかと思ったぞ!?」

 

 グレープジュースが半ば八つ当たりのように叫ぶ。

 ……その目に薄らと涙が浮かんでいるのは……うん、まぁ、取りあえず気にしないようにしておこう。

 

「忘れたのか? 俺は壁だ。次代のヒーローであるお前達の前に立ち塞がる壁。そんな実力者の俺が、あの程度の気迫でどうにかなる訳がないだろ」

 

 ちょっと無理があるような気がしないでもなかったが、他に理由を考えるのは難しいしな。

 まさか、俺が異世界で多くの修羅場を潜ってきたとか、そんな理由は話せる筈はない。

 ……あるいは、将来的に俺がどういう存在なのかが判明したら、その時は何故俺がヒーロー殺しの気迫に怯まなかったのかを話してもいいかもしれないが……今はまだ無理だ。

 なので、理由としては少し……いや、かなり無理があるだろうが、取りあえずそういう事にしておく。

 

「いや、親父も動けなかったんだが……」

「グラントリノも……」

 

 ショートとデクがそれぞれそう言ってくる。

 ショートにしてみれば、エンデヴァーは父親として決して尊敬すべき相手ではない。

 だが、職場体験にエンデヴァーの事務所を選んだという事は、父親としてはともかく、ヒーローとしては認めているのだろう。

 まぁ、仮にもNo.2なのだからエンデヴァーはオールマイトには及ばずとも、実力のあるプロヒーローなのは間違いないだろう。

 グラントリノは……まぁ、実力のあるプロヒーローなのは分かる。

 実際、ヒーロー殺しの気迫を受けてエンデヴァーが後退ったのに、グラントリノはその場から動かなかったのだから。

 勿論これによって全てが決まる訳ではないが、それでも胆力という点ではエンデヴァーを上回っているのは間違いない。

 あるいは、老人という事でヒーロー殺し以上のヴィランと遭遇した経験でもあったのか。

 

「まぁ、色々とあるんだよ、色々と。……それより、怪我の方は問題ないか?」

 

 ヒーロー殺しとの戦いにおいて、デク達は大なり小なり怪我をしている。

 不幸中の幸いなのは、それが軽い切り傷や打撲といった程度で、骨折のような重傷を負っている者はいない事だろう。

 ……これ、原作ではどうだったんだろう。

 その辺が少し気になるものの、俺が介入したこの世界においては、その辺りについては今更の話か。

 今回の一件は、ある意味でUSJの時よりも大きな騒動だ。

 USJの時は何だかんだとUSJの中だけだったし、怪我をした者も軽傷だった。

 それと比べると、今回は保須市のかなり広い地域が騒動の舞台となってしまっている。

 それだけではなく、脳無によって怪我をした者、あるいは死んだ者すらいるかもしれない。

 また、建物も結構な数壊れているのを、グレープジュースを拾ってここに移動してくる途中に見たし。

 そう考えると、やはり今回の一件は非常に大きな騒動となったのは間違いない。

 多分これ、ヒーローが叩かれたりするんだろうな。

 まぁ、プロヒーローがこれだけいて騒動を防げなかったのも事実だし、叩かれるのは仕方がないかもしれないが。

 ヒーロー殺しを捕らえたのも、結局はプロヒーローじゃなくて俺達だしな。

 

「……あー、そういえば、個性の使用許可の件、まだ解決してなかったよな」

 

 ヒーロー殺しを倒した一件を思い出し、この件についても問題があったのを思い出す。

 俺はリューキュウの許可を貰っているので問題はないが、さっき……脳無の一件が起きるまでに話を聞いたところによると、俺以外の面々は職場体験に行っているプロヒーローから許可は貰っていないという事だった。

 ……グレープジュースについては、俺が虚空瞬動を使いながら強引に連れてきたから仕方がないのかもしれないが、デク、ショート、テンヤの3人は……うん。

 とはいえ、今のこの状況を考えれば、プロヒーローから許可を貰っていては、ヒーロー殺しとの戦いに間に合わなかった可能性も否定は出来ない。

 

「それは……」

 

 デクが俺の言葉に何とも言えない表情になる。

 無理もないか。

 話を聞いた限りだと、デクとグラントリノが乗っていた電車が脳無に襲われた感じっぽいし。

 そこからは半ば流れの中で行動をしていた感じらしいのだから。

 グラントリノも脳無の相手で忙しかった様子だし、デクに個性の使用許可を出せるような状況ではなかったし、デクはデクでそのままの流れでヒーロー殺しと遭遇していた。

 ……まぁ、個性の使用許可を出すとはいえ、それについては別に公安とかに何らかの書類を提出して許可を貰うといった事をする必要はない。

 言ってみれば、ここで個性の使用許可を出していたという事にして口裏を合わせれば、それで問題がなかったりするんだが……プロヒーローというのは、良い意味でも悪い意味でも頭が固い者が多い。

 中にはマウントレディのように、臨機応変に行動出来る……いや、マウントレディの場合は行き当たりばったりって表現の方が正しいか?

 とにかくそんな感じなので、プロヒーロー全員がそういう奴って訳ではない。

 

「まぁ、その辺をどうするのかは、デク、ショート、テンヤが職場体験に行っているプロヒーローと相談するんだな」

「ちょっ、オイラは!?」

「……グレープジュースの場合は……うん、まぁ、頑張れ」

「アクセルゥゥウゥウゥッ!」

 

 絶叫するグレープジュースから、そっと視線を逸らす。

 とはいえ、マウントレディの性格を考えれば、ある程度はどうにかなるような気がしないでもない。

 その辺は、それこそグレープジュースが交渉して上手くやるのを願うしかなかった。

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