転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4459話

 職場体験については、結局保須市の一件以外では特に何か大きな騒動もないまま、最終日が終わる。

 ……まぁ、保須市での騒動が色々な意味で大きくなったのは間違いないし……良い意味でも、悪い意味でも俺の顔と名前が売れたのも事実だ。

 保須市の一件が終わってから龍子の事務所に戻ってきたのだが……見回りを行ったところ、俺がヒーロー殺しを倒す映像を見た者達から握手やサインを求められる事が多くなった。

 サインとかは特に考えていなかったので最初はしなかったのだが、龍子や優からファンサービスは重要だという事で、急遽龍子が……というか、龍子の事務所が契約している、サインを考えてくれるデザイナーに頼んでサインを作って貰った。

 ぶっちゃけ『ラグナロクヒーロー、アークエネミー』とそのまま書けばサインになるんじゃ? と思ったのだが、どうやら駄目だったらしい。

 いや、正確には駄目ではないのだが、どうせならきちんとしたサインを作っておいた方が喜ばれると言われ、サインを作った形だ。

 俺はサインを貰うといったような事はないから、あまり実感はないのだが……それでも色紙にサインを貰った時、普通に名前を書かれただけの色紙と、サイン風というか、崩した感じ? で書かれていた場合、どちらの方がありがたみがあるかと言われれば……うん。まぁ、やっぱりどうせなら崩れた感じで書かれていた方がありがたみはあるよな。

 そんな訳で、無事俺にもサインが出来た訳だ。

 ちなみに峰田も同じようにサインを作って貰っていたが、ネットの掲示板やSNSで体育祭のやらかし……梅雨ちゃんに密着していたとか、チアリーディングの件とか、それ以外にも普段から他の学科に行っては女漁りとかセクハラとかをしているというのを知らされた。

 結果として、峰田……というか、グレープジュースは一見すると愛らしいものの、その中身は性欲モンスターだというのを知られてしまい、サインを求める者は……いたにはいたが、それこそ性欲? 何それ美味しいの? といったような子供達くらいだった。

 それで子供の……いわゆる幼女に性欲が向けられれば色々と危険だったのだが、幸いにも峰田はロリでもペドでもなかったらしい。

 

「じゃあ……アクセルと峰田が無事に職場体験を終えた事に……乾杯!」

『乾杯!』

 

 龍子の乾杯の音頭と共に、俺、ねじれ、優、峰田がそれぞれ手にしたコップを掲げ、近くにいる相手とコップをぶつける。

 現在俺達がいる……打ち上げを行っているのは、龍子の事務所の近くにある中華料理店の個室。

 普通にテーブル席とかだと、どうしても目立ってしまい、中には身内で宴会をやっているのに有名人と会えたという事で、サインを求めてきたり一緒に写真を撮ろうとしたりと、面倒な事になりかねないのだ。

 俺や峰田もヒーロー殺しの件で有名になってしまったしな。

 そんな訳で、俺達は個室のある中華料理店で打ち上げを行っていた。

 個室があるという事で、この店はちょっとした高級店なのだが、龍子にしてみればこのくらいなら全く問題ないくらいには稼いでいるらしい。

 

「美味っ!」

 

 峰田が海鮮あんかけ焼きそばを食べ、驚きの声を上げる。

 ちなみに、小柄な峰田の為に、椅子の上に更に子供用の椅子を置き、それでようやく峰田も普通に食べる事が出来ている。

 小柄な……それこそ異形系かと思しき感じの峰田だけに、こういう椅子に座って食事をするのって何気に大変だよな。

 雄英の学食なら、峰田以外にも小柄な者がいるので、そのような者達用に特製の椅子があったりするのだが。

 ともあれ、峰田が絶賛する海鮮あんかけ焼きそばが気になり、俺もそれを皿に取る。

 ちなみに中華料理によくある、テーブルの上の料理が回転して自分の前まで持ってくることが出来るタイプのテーブルなので、俺の前まで大皿を持ってくる事は簡単だった。

 そして海鮮あんかけ焼きそばを食べると……

 

「あ、本気で美味いな」

 

 イカ、エビ、ホタテ、タコ、カニといったシーフードと、キクラゲ、タケノコ、ニンジン……後は何だこれ? ちょっと分からないが青い葉野菜。それと意外だったのが、斜め切りにした長ネギが入っていた事だろう。

 普通この手の料理だと、タマネギが入っていたりするけど、長ネギというのは珍しい。

 ただ、炒めすぎていないのもあって、長ネギの食感もしっかりと残っていて美味い。

 そうして料理を食べながら、職場体験についての感想を口にする。

 この頃になると、峰田も優とある程度まともに話せるようになっていた。

 ……まぁ、声を掛けられると、一瞬ビクリとしたりするようだが。

 それでも当初の、女怖い状態から復帰したのは……うーん、良い事なんだろうか?

 それとも不味い事か?

 

「それにしても、今回の職場体験で一番大きかったのは、やっぱり保須市の一件でしょうね」

 

 龍子がしみじみと言った様子で言いながら、俺に視線を向けてくる。

 その視線の中に若干……本当に若干ではあったが、呆れの視線があるのは俺の気のせいではないだろう。

 

「大変だったよね。脳無を初めて見たけど、変な姿をしてたの」

 

 ねじれが、しみじみと呟く。

 まぁ……うん。実際脳無というのは脳みそを剥き出しにしていて、それを見る限りだと変という表現は決して間違ってはいない。

 

「ちなみに、3年の活動で脳無と遭遇したりした事はないのか?」

「ないよ」

 

 一応、念の為にという事で尋ねてみるが、ねじれから返ってきたのはそんな言葉だった。

 脳無はヴィラン連合の……グラントリノとの会話を思い浮かべると、AFOとやらの手の者の可能性が高い。

 そしてAFOというのは原作主人公における、緑谷が戦うべき相手だろう。

 であれば、俺達の所属する1年A組に襲撃してくるのは分からないでもなかったが、それ以外……例えば3年とかになると、脳無による襲撃はないらしい。

 3年ともなれば、それこそ人によってはそこらのプロヒーローよりも強いので、場合によっては脳無に対処出来たりするんだろうが。

 あるいはAFOやシラタキはその辺について理解しているからこそ、脳無を雄英のヒーロー科の3年に仕掛けたりはしないのか?

 あるいは単純に、脳無はそこまで数がいないとか?

 とはいえ、それだと保須市でかなりの数の脳無を出してきたのか……いや、待てよ? 保須市で脳無を出す予定があったから、3年のヒーロー科にはちょっかいを出さず、貯め込んでいたとか。

 あくまでも可能性なので、それが絶対に正しいとは思わない。

 だが、それでももしかしたら……とは思わないでもなかった。

 

「脳無が出たら、ねじれを始めとしたビッグ3で対処する事になりそうだな」

「えへへ、私も頑張るね。脳無にも少しは興味があるし。……可愛くはないけど」

 

 どうやらねじれにとっては、脳無も興味の範囲内だったらしい。

 ねじれの好奇心は、素直に凄いと思う。

 もっとも、だからといって脳無を相手にその好奇心を発揮するのは危険だと思わないでもなかったが。

 その辺については、俺がどうこう考える事じゃないか。

 俺はまだ遭遇していないものの、残り2人のビッグ3がどうにかしてくれるだろう。

 

「そういえば、アクセルや峰田の同級生達は、今回の職場体験でどういう感じだったのかしら?」

「うーん……梅雨ちゃんは密輸だったか、不法入国者だかを捕らえたとかあったな」

「そうそう、オイラそれを聞いた時はびっくりしたよ」

 

 これは保須市での一件が終わって病院に一泊した時にLINに梅雨ちゃんが書いた内容だったか?

 そんなやり取りをしつつ、中華料理を食べていく。

 

「これが……フカヒレ……」

 

 峰田が店の持ってきたフカヒレスープを見て、しみじみといった様子で呟く。

 峰田にしてみれば、まさかこういう高級食材を自分が食べられるとは思っていなかったのだろう。

 俺としては、あっちの壺に入ったスープも気になるけど。

 このスープは、開けると寺の坊主ですら飛び込んでくるとか何とか、そんな感じの由来の料理だ。

 ぶっちゃけ、フカヒレよりも値段の高い料理だったりする。

 何しろ材料の中にはフカヒレとか、それに並ぶ高級食材も多数使われている筈だ。

 

「あ、それとヤオモモと拳藤がCMに出るって話だったな」

「え? 本当か!? オイラ、それ知らないんだけど」

 

 フカヒレを味わっていた峰田が、俺の言葉に驚きの言葉を口にする。

 

「まぁ、クラスのグループじゃなくて、別のグループで書き込んでいたしな」

 

 ヤオモモと拳藤の2人が揃ってCMに出たらしいので、実際に放映されるのが楽しみだな。

 あるいはこの手のCMはTVで流されるだけではなく、ネットとかも見る事が出来たりするし、動画配信サイトにアップされたりすることもある。

 そんな元々について考えると、近いうちに見る事が出来る可能性は十分にあった。

 

「羨ましい……」

「いや、別にそこまで羨ましがる必要もないだろ? そのうち、普通に見られるんだし」「CMかぁ。私も何度か出たことがあるわね」

 

 俺と峰田の会話を聞いていた優が、そう言ってくる。

 まぁ……うん。だろうな。優は実際に接すれば性格的に色々と問題があるというのは分かるが、それを知らなければ美人のプロヒーローなのだから。

 

「そういえば、ソースのCMはどうなったんだ?」

 

 優とCMということで少し思いつく事があり、そう聞いてみる。

 以前、優がソースのCMがどうこうといったような事を言っていたのを思い出したのだ。

 そんな俺の言葉に、優は微妙な表情になり……

 

「話は進んでるわ」

 

 そう言う。

 

「へぇ、本当に話が進んでいたんだな。これはちょっと意外だった」

「あのね、アクセルは私を何だと思っているのかしら?」

「……言ってもいいのか?」

「ぐ……聞きたい気持ちと、聞かない方がいいと思うような、そんな気持ちがあるんだけど」

 

 そう言い、結局優は俺がどのように思っているのかを聞かないようにしたらしい。

 俺にしてみれば、もし聞いたのなら普通に教えてやろうと思っていたのだが。

 まぁ、その辺りは本人がいらないと言ってる以上、話すつもりはなかったが。

 なのでその件については取りあえず置いておくとして、ソースのCMの話題に戻る。

 

「ソースって一言で言っても何種類もあるし、それこそお好み焼き、たこ焼き、焼きそば用のソースもあると思うけど、どんなソースのCMに出るんだ?」

「とんかつソースとウスターソース、中濃ソースね。……もっとも、味見をしてみたけど粘度の違いくらいしか分からなかったけど」

「あー、それは分かる。とんかつソースとかとちょっと違うけど、以前何かでお好み焼き、たこ焼き、焼きそばのソースをそれぞれ味見してみたけど、違いはあまりないように思えたし」

 

 実際にはソースによってその料理に合うように調整はされているのだろう。

 具体的には、お好み焼き用のソースはお好み焼きに、たこ焼き用のソースはたこ焼きに、焼きそば用のソースは焼きそばに……といった具合に。

 ただ、お好み焼き用のソースを焼きそばに使っても違和感はないし、焼きそば用のソースをたこ焼きに使っても違和感はない。

 いや、勿論実際には色々と違うところもあったりするのかもしれないが……ただ、以前何かの拍子でそういう事になった時、特に問題はなかったし。

 それに自主訓練が終わった後で寄る事があるお好み焼き屋……以前俺がチャレンジメニューに挑戦して食い切ったあの店でも、焼きそばを頼むとお好み焼き用のソースで味付けしているし、モダン焼きの場合の焼きそばもお好み焼き用のソースで作っている。

 そう考えると、味覚の鋭い者ならともかく、俺くらいの味覚であれば、その辺の差異はあまり感じないのだろう。

 

「ええ、オイラは結構違うと思うけどな」

 

 そこで予想外な事に、峰田がそう言ってくる。

 

「違うか?」

「ああ。たこ焼きのソースはお好み焼きよりも甘めだし、焼きそばのソースは香辛料を強めにしているだろ?」

 

 お好み焼きのソースをベースにしての説明だったが……なるほど、言われてみればそうかもしれないな。

 

「リューキュウ先輩にもCMとかはないんですか?」

「あ、私もリューキュウのCM見たい! 見たい! 見たい!」

 

 優が龍子に話を振ると、一体何がどうなったのか、今まで青椒肉絲を食べていたねじれが、不意にそう言う。

 どうやらねじれにとっては、それだけ龍子のCMを見たいのだろう。

 ……いやまぁ、実際龍子のCMなら俺も見たいけど。

 

「龍子のCMか。一体どういうCMが似合うんだろうな」

「ソースじゃないの?」

「優と一緒にするな」

「ちょっ、それは一体どういう意味よ! ソースを貶めるつもり!?」

 

 俺の言葉に納得出来ないといった様子で叫ぶ優。

 

「別にソースを貶めているとか、そういうつもりはないぞ。単純にソースは優の方が似合うと思っただけで」

「え? ……もう、そんなに褒めたって何も出ないわよ?」

 

 俺の言葉に何故か優は嬉しそうにそう言う。

 こうして、職場体験の打ち上げを楽しむのだった。

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