「……次は私の番ね」
マリューがそう言い、俺を見てくる。
実際にはメイリンもいるんだが……まぁ、その辺についてはルナマリアと一緒の扱いでいいだろう。
実際、深く関わったキラとかはともかく、SEED世界に関与している時に関わる機会がそれなりにあったシン達も、今はどうなっているのか分からないのだ。
であれば、それこそ一度会っただけのルナマリアやメイリンがどうなっているのかは、分かったものではない。
とはいえ、この世界……恐らく原作の世界においてはシンと付き合っているルナマリアだが、俺が関与した世界ではシンとルナマリアが会う機会はない訳で……うん。
取りあえずシンとルナマリアが付き合うという事はないと思う。
もっとも、こうしてルナマリアを見ればかなりの美人なのは間違いない。
元々コーディネイターは顔立ちが整っている者達が多いが、ルナマリアはその中でもかなり上位だろう。
身体付きもかなり女らしいし。
そんなルナマリアだけに、俺の介入した世界ではシンと付き合っていなくても、他に言い寄ってくる男は幾らでもいる筈だ。
まぁ、それで幸せになれるかどうかは、また別の話だが。
「マリュー……の前に、アスランについてはまだ説明してなかったよな?」
「ああ。とはいえ、もうお腹一杯ってところだが」
アスランが俺の言葉に大きく息を吐く。
無理もないか。
アスランにとっては戦友にしてライバルであるイザークが、何故かシャドウミラーに所属しており、スティング、アウル、ステラが義弟、義妹になっていると、そんな話を聞かされたのだから。
「なら、安心しろ。お前はウズミの後継者となるカガリの護衛兼婚約者……あれ? もう結婚したんだったか? とにかくそんな感じの立ち位置だ」
「……そうか」
喜んでいいのか、悲しんでいいのか、そんな微妙な表情のアスラン。
ちなみにそんなアスランに対し、メイリンが労るような視線を向けていた。
……あれ? もしかしてこれって。
俺の介入した世界ではキラがフレイとラクスでハーレムを作っていたが、原作の世界ではアスランがカガリとメイリンでハーレムを作っていたりするのか?
「アスランの件はそれでいいとして、マリューだが……」
アスランについては手早く話を終え、マリューに視線を向ける。
そのマリューは、緊張した様子で……それでいながらどこか好奇心が浮かぶ目を俺に向けている。
「まずは、そうだな。シャドウミラーというのは転移装置を使って色々な異世界に行って、その技術を収集するのが目的だ。そんな訳で、技術班というのが非常に大きな意味を持つ。マリューはその技術班で2番目に偉い地位にいるな」
「……そうなの?」
少しだけ意外そうな様子でマリューが呟く。
マリューにしてみれば、まさか自分がそのような立場になるとは思っていなかったのだろう。
もっとも、本人に自覚があるのかどうかは分からないが、マリューは色々な面でかなりの能力を持っている。
PS装甲を開発したチームの一員にして、ストライクを始めとしたG兵器の開発にも関与し、艦長としては若干甘いものの、それでも優れた能力を発揮し、生身での戦闘となればコーディネイターにも勝利する。
ぶっちゃけ、コーディネイターであると言われても納得出来る。
だが、実際にマリューはナチュラルなんだよな。
「ああ。シャドウミラーの中でも皆に頼られてるよ」
これは事実だ。
能力は非常に高いものの、いわゆる常識人枠なのがマリューなのだから。
「ふふっ、それは嬉しいわね。それで……その、アクセルさんの世界で私は誰と付き合ったり結婚してるの?」
「俺」
「……え?」
「だから、俺だ。マリューは俺の恋人の1人だ」
「……ちょっと待ってちょうだい」
静かに……それでいながら視線を逸らせなくなるように、強い視線をこちらに向けてくるマリュー。
「何が言いたいのかは分かるけど……まぁ、うん。さっきキラにも言った通り、シャドウミラーにおいて一夫多妻は問題ないんだよ」
「だからって……」
「取りあえずマリュー……判断しにくいな。この世界のマリューは納得出来ないかもしれないが、俺の介入した世界のマリューは恋人が20人以上いるという今の状況に納得してるぞ」
「え? ……20人? ……本当なの?」
もっと責められるのかと思ったんだが、予想を超えた恋人の数にマリューは唖然とした様子でそう言ってくる。
「ああ、20人くらい恋人がいる。その上で、よくあるように空気が悪くなったりはしていない。皆仲良く暮らしているよ。もっとも、俺と同棲してるんじゃなくて、自分の世界で暮らしながら俺の家に泊まりに来るとか、そういう恋人もいるけど」
「……もう、いいわ。そっちの私と私は、名前とか性格とか外見とかは同じでも、別人。そう思っておくから」
「そうか? まぁ、マリューがそれでいいのなら、俺もどうこう言わないけど」
実際、人といいうのは環境であったり体験であったりで、その性格は大きく変わる。
そういう意味では、俺が介入した結果のSEED世界のマリューと、俺が介入していない原作の世界なのであろうこの世界のマリューは、その性格が違っていてもおかしくはない。
とはいえ、このマリューには、夜の件とかそういうのについては言わない方がいいっぽいな。
「とにかく、ざっと説明した感じではこんなところだ」
この件についてはこれで終わりと、そう言う。
マリューの様子を見ても、恐らくその方がいいだろうと……
「ちょっと待ってくれ。話が終わる前に1つだけ教えてくれ」
俺とマリューのやり取りを見ていたシンが、そう聞いてくる。
「どうした?」
「その……デュランダル議長はどうなったんだ?」
何でシンがデュランダルに……いや、ルナマリアと同じくレイについての話をした時に激しく反応していたし、オーブが連合に侵略された後、プラントに行ってザフトに所属していたんだろう。
そうなると、同年代のレイと親しくなっていてもおかしくはない。
それにデュランダルの件については別に隠す必要もないので、素直に答える。
「デスティニープラン、知ってるか?」
そう聞くと、シンだけではなく他の面々も表情を引き締める。
どうやらデスティニープランで何かあったらしいな。
「もしかして、アクセルの世界ではデスティニープランが採用されたのか?」
緊張した様子で尋ねてくるムウだったが、俺はそれに対し首を横に振る。
「世界そのものにデスティニープランが採用されたのかというのであれば、否だ」
その言葉に聞いてきたムウが、そして他の面々も安堵した様子で息を吐く。
「安心してるところ悪いけど、デスティニープランが完全になくなった訳じゃないぞ。今、デュランダルは会社を経営している」
「……え? デュランダル議長が会社を?」
余程意外だったらしく、シンが間の抜けた声で聞いてくる。
「ああ。それこそデスティニープランを使って、自分にはどんな職業が向いているか、どんな才能があるのかを解析するといった会社だ。結構……いや、かなり儲かっているらしいぞ?」
これは事実だ。
それこそSEED世界は勿論、他の世界からもデスティニープランで自分が何に向いているのかを調べる為にやって来る者も多いらしい。
とはいえ、世界が異なっている場合であっても遺伝子が同じなのかどうかは分からないし、あるいは人間以外の者はデスティニープランを使えないという問題もあったりするらしいのだが。
「そんな会社が……」
キラが唖然とした様子で呟く声が聞こえてくる。
個人的には、デスティニープランについては俺の知っているデュランダルのやり方が最善だと思うんだけどな。
強制すれば反発する奴もいるだろうが、希望者だけが遺伝子を調べて自分の才能を調べて貰うのが一番だろうし。
実際、それで成功しているのは間違いない。
デュランダルが、自分の提唱したデスティニープランを絶対に全人類が使わなければならないとか、そんな風に思い込めば話は別だっただろうが。
幸いなことに、俺が介入した世界においてはそのようなことは起こらなかった。
「そうだ。妻とも上手くやってるらしいしな」
タリア・グラディスだったか。
元々はデュランダルの恋人だったが、コーディネイターの欠点として2人の間に子供は出来ず、タリアはどうしても子供が欲しくて、付き合っていたデュランダルと別れて子供が出来る遺伝子を持った相手と結婚した。
……だが、その辺りの問題はシャドウミラーにとっては容易に解決出来る事だった。
量産型Wは勿論、Wナンバーズとかを生み出したレモンにしてみれば、その上で今までシャドウミラーが関与してきた様々な世界での事を思えば、その辺を治療するのは問題ではない。
結果として、今となってはデュランダルとタリアの間には数人の子供が生まれているらしい。
タリアと前の夫との離婚も問題なく解決してるので、まさに最高の結果だろう。
もっとも、デュランダルに一種の寝取られが……いやまぁ、うん。今は夫婦仲も良好なのだから、その辺については考えなくてもいいだろう。
「……そうか」
シンは俺の言葉に納得した、していないような、複雑な表情を浮かべる。
この様子からすると、シンとデュランダルの間にも何かあったのだろう。
でなければ、そもそもそういう事を聞いてきたりはしないだろうし。
「……さて、もっと色々と話のネタはあったりするんだが、今はまずそれよりも優先すべき事があるだろう?」
個人的にはまだ話をしたいのだが、忘れてはいけないのはターミナルという組織の拠点であるここは、いつ敵に見つかってもおかしくはない場所だということだろう。
ファウンデーションが何を企んで今回のようにコンパスを攻撃しようとしたのかは、俺には分からない。
分からないが、それでもこうした事をしてきた以上は何か大きな作戦の1つである可能性が高い。
なら、ここで休憩代わりだったり、未知の存在である俺についての事情聴取をいつまでも続ける訳にはいかないだろう。
もっとも、そのファウンデーションも核ミサイルによって国そのものがなくなったと考えれば、まだこの基地は安全なのかもしれないが。
「そうだな。まずは……」
「ラクスを取り戻さないと」
ムウの言葉に被せるように、キラがそう言う。
そういえば、ラクスも行方不明だったか。
いや、正確には行方不明じゃなくて、ファウンデーションに連れ去られたってのが正解なんだろうけど。
とにかく、キラはラクスを助けるべきだと主張していた。
それは単純に自分の恋人を助けるといったような事ではない。
いやまぁ、勿論そういう気持ちもない訳ではないのだが、今のラクスはコンパスという、この世界に置ける……なんだろうな。外部武装勢力? 中立勢力? 外部部隊? とにかくそんな感じの組織を率いる身だ。
そんな組織のトップが連れ去られている状況は、組織として不味いのは間違いないだろう。
この基地で最初に見た時はキラもかなり興奮というか、自暴自棄になってるっぽい感じがあったが、こうして俺の話を聞いた影響か、大分落ち着いたな。
単純にキラではあっても理解出来ない、理解しにくい話を聞いたからそうなったのか、それとも俺が関与した世界ではフレイとラクスの2人と同時に付き合っていると聞いたからなのか。
何だか微妙に後者っぽいな。
「ラクスがいるのは、恐らくファウンデーションを脱出したブラックナイツや他の戦力のいる場所となるだろう。であれば、そう遠くないうちに自分達からその居場所については発表する筈だ」
アスランの言葉に、皆が頷く。
俺はファウンデーションについてはブラックナイツの連中しか知らないし、そのブラックナイツも何人か殺して、しかも精神干渉をしてきた奴が発狂していたくらいしか分からない。
「ともあれ、いつまでもここにいる訳にもいかないだろ。俺もゲートを設置するとなると、出来ればもっと別の場所がいいし」
「え? ゲートって、何かしら?」
俺の言葉を聞きつけたマリューが、そう聞いてくる。
別世界の自分と俺の関係に色々と思うところがあった様子のマリューだったが、どうやら技術者としての一面は強いらしい。
まぁ、艦長だったり、生身でかなりの強さを誇ったりしても、結局のところマリューは技術者だ。
シャドウミラーにおいて、技術班でレモンに次ぐ地位にいるのは伊達ではない。
「ゲートは、この世界とホワイトスター……シャドウミラーの本拠地と繋げる装置だ。それを使えば、ホワイトスターからも援軍を呼べるしな」
「え? ……協力してくれるの?」
まさかそこまでしてくれるとは思わなかったといった様子で、マリューが聞いてくる。
いや、マリューだけではない。他の面々も同じような感じだ。
「あのな、お前達にしてみれば俺は初対面かもしれないけど、俺にとってお前達は仲間なんだよ。それに、ギャンを始めとして未知のMSや技術があるだろうから、報酬としてはその辺りの未知の技術の提供になると思うが、構わないか?」
そう言う俺の言葉に、マリューとムウ、キラ、アスランといった面々は頷くのだった。