「は? えっと……それ、マジか?」
「ええ、本当よ。ターミナル経由で入った情報だから間違いないわ」
シャドウミラーの戦力を宇宙に移す……そんな風に考えていたところ、不意にマリュー……この世界のマリューからの情報を聞き、唖然とする。
この世界のマリューは俺の恋人のマリューとの関係もあって、俺を若干苦手としていた。
しかし、今はそのような事をしている状況ではないと判断したのだろう。
偶然にもこの世界のマリューが俺に一番早く知らせる事が出来たので、こうして知らせに来たのだ。
つまり、それ程までの事態。それが……
「プラントで反乱……何でこの時期に」
「元々、現在の国防委員長のハリ・ジャガンナートはいわゆるザラ派なの」
「あー……つまり、コーディネイターは人の進化した種であると考えている奴な訳か」
「ええ」
コーディネイターは人の進化した種。
それはある意味では間違っていない。
だが、遺伝子を弄り回した結果、コーディネイター同士の間で子供が生まれる確率はかなり低くなった。
それこそ、婚姻統制をしないといけない程に。
それを見れば、とてもではないがコーディネイターが人の進化した種とは思えない。
寧ろ、亜人というか、人としての種族の1つといった認識の方が正しいと思う。
あくまでもこれは俺がそのように思っているだけで、正しいのかどうかは分からないが。
ただ、そうした思想を持っているハリとかいう奴にしてみれば、ファウンデーションの存在は正しいと思ったのだろう。
デスティニープランとザラ派というのは、そこまで相性が良いようには思えないんだが……まぁ、その辺については俺がどうこう考えても意味はない。
ただ、言えるのは……
「何だってプラントは、そんなザラ派の思想を持つ奴を国防委員長なんて重職につけたんだ?」
そう、それこそが俺にとっては疑問だった。
ザラ派の思想と国防委員長の地位というのは、もの凄く相性が悪い……ザラ派の立場にすればもの凄く相性が良いと認識してもおかしくはないと思うのだが。
だというのに、何故そのハリとかいうザラ派の男を国防委員長にしたのか。
「それは私にも分からないわ。アクセルの介入した世界では、その辺りはどうだったの?」
「量産型Wやコバッタを派遣しているから、特に問題は起こっていないな」
シャドウミラーにとって……そしてオーブにとって重要人物、あるいは危険人物にはもれなく量産型Wとコバッタが派遣されている。
この量産型Wとコバッタは、何も後ろ暗いところがない者であれば、圧倒的な戦力を持つ護衛として、あるいは秘書代わりとしても大きな働きを見せる。
だが……派遣された相手に尽くす存在ではあるが、それは同時に監視者でもある。
もし派遣された者が何らかの後ろ暗い行為……ブルーコスモスの残党と接触したり、あるいは何らかの違法行為を働いたりした場合、今度は即座にその相手を捕らえる。
あるいは抵抗しようとした場合、最悪殺す事にもなる。
……この政策が始まった当初は反発も多かったのだが、実際にそれによって汚職がなくなり、最終的に市民の生活が楽になったのもあって、不満の声は殆ど上がらなくなった。
もっとも、殆どというように不満の声が皆無という訳ではない。
世の中には何がどうなっても気に食わない者というのは出てくるので、SEED世界においても量産型Wとコバッタの存在が気に食わないと不満を漏らす者は一定数いる。
その辺は仕方がないし、そういうのも禁止するような厳しい言論統制をすれば、結果的にマイナスになるので、その辺は敢えて緩くしているらしい。
その辺りについて説明すると、この世界のマリューは羨ましそうに言う。
「そっちの世界……SEED世界だったかしら? 本当に羨ましいわね」
「まぁ、この騒動が終わったら、お前達も俺達が介入した世界に遊びに来ればいい。まぁ、それはそれで混乱が起きるかもしれないけど」
SEED世界のオーブにおいては、マリューは俺の恋人として知られているし、ムウもシャドウミラーに所属しているという事で広く知られている。
他にもこの世界の中で重要人物は、その大半がSEED世界でも重要人物になっている訳で……そうなると、当然ながら色々と混乱が起きそうなのは間違いなかった。
「とにかく、反乱が起きたのは……」
「アクセル! 俺をプラントに行かせろ!」
俺の言葉を遮るように姿を現したのは、イザーク。
そのイザークの側には恋人のオウカの姿もあり、俺に向かって頭を下げていた。
いやまぁ……うん。
イザークは今でこそシャドウミラーに所属しているものの、それはプラントやザフトを見限ったからではない。
今でもプラントやザフトには思い入れがある。
実際、ザフトに戻ったディアッカと今も色々とやり取りはしているらしいしな。
だからこそ、この原作の世界においてプラントで反乱が起こったと聞き、いてもたってもいられなくなって俺のところに来たのだろう。
「まぁ、行かせる余裕があるかどうかと言われれば、それはあるんだが」
何しろ、シャドウミラーがこの世界に持ってきた戦力は、冗談でも何でもなくこの世界そのものと戦っても互角……どころか、一方的に蹂躙出来るような、そんな戦力だ。
そのような状況で、戦う敵はファウンデーションだけ。
いや、あるいはタイミング的に今問題になっているプラントで反乱を起こした者達もファウンデーションに合流するつもりなのかもしれないが、とにかくシャドウミラーの戦力からイザークを含めた一部がいなくなっても、全く問題はない。
ないのだが……
「けど、イザークは忘れているのか、それとも気にしていないのか、どっちかは分からないが……この世界にもイザークはいるんだぞ?」
アスランから聞いた話によれば、この世界のイザークは俺がSEED世界で介入した戦争の後で、ザフトに残ったらしい。
そしてそのままザフトで、あるいはプラントでキャリアを積み、今となってはプラントの中でも有力者の1人となっているとか。
で、そんなイザークの側には当然のようにディアッカがいる訳だ。
この世界のイザークの性格は知らないが、それでもイザークであるというのを考えると、反乱を起こした相手を鎮圧しようと動いているのはほぼ間違いない。
そこにシャドウミラーのイザークが介入すれば、どうなるか。
間違いなくこちらの世界のイザークは混乱するだろうし、場合によってはシャドウミラーのイザークを反乱軍の手の者と認識し、攻撃してこないとも限らない。
「構わん! そうなったらそうなったで、この世界の俺を殴り飛ばしてでも理解させてやる!」
「……分かった」
「ちょっと、いいの!?」
まさか俺がイザークの要望を受け入れるとは思わなかったのか、この世界のマリューは驚きと共に聞いてくる。
マリューにしてみれば、イザーク程の戦力をわざわざプラントに向けるのは不味いと判断したのだろう。
「まぁ、こっちはコンパスの戦力もあるし」
オーブに保管されていた、ストライクフリーダムやデスティニー、インパルス……当然ながらそれはそのまま保管されていた訳ではなく、ある程度の改修も行われていた。
何よりも大きいのは、ブラックナイツの操縦するMSはビームを無効化する装甲を持ってるが、それが分かっていれば実弾兵器を用意出来るという事だろう。
俺が介入した時の戦いのような不意打ちの類ではなく、敵の能力が分かった上で正面から戦うのなら、対処のしようはある。
それに……コンパスで開発していた、ストライクフリーダム用の新兵器もある。
実際にはこれはストライクフリーダムではなく、俺が破壊したキラの操縦していたMS用の物だったらしいんだが……うん。
まぁ、それについてはキラが錯乱状態だった訳で、それを止めるにはああするしかなかったのだから仕方がない。
ちょっとした改良でストライクフリーダムに使えるように出来たらしいし。
実際に完成までもう少し掛かる予定だった筈だが、その辺はレモンやマリュー……シャドウミラーの技術班2人がいた事もあり、何気にあっさりと完成してしまった。
当然ながらレモンとマリューがその新兵器の完成を手伝った以上、その技術については既にこちらで確保しているらしい。
まぁ、俺達が協力する為の報酬という事になっているしな。
そんな新兵器を持つ、この世界で最強のパイロットのキラがいて、アスランやシン、ルナマリア、ムウといった面々もいる。
それを考えれば、イザークが何人か引き連れてプラントに向かっても構わないだろう。
「ちなみに、コーネリアは何て言ってる?」
シャドウミラーのトップは俺だが、実働班のトップはコーネリアだ。
であれば、そのコーネリアが許可を出したのなら問題はないが、もしコーネリアが反対をした上で俺に話を持ってきたのなら、結果も少し違ってくる。
「その辺は大丈夫です。私の方でコーネリアさんに話を通しておきましたので」
オウカがイザークの代わりに答える。
こういう、イザークをフォローするところは本当に上手いよな。
さすがイザークの恋人だけの事はある。
「そうか。コーネリアが許可を出しているのなら問題はない。戦力は?」
「私とイザーク、それと五飛とスレイさんですね。後はメギロートとシャドウを何機か」
「……五飛やスレイも行くのか。いやまぁ、戦力としては申し分ないけど」
プラントで起こった反乱は、この時期だけに出来るだけ早く鎮圧したいというのは分かる。
だが、それでもイザークとオウカ以外に、五飛やスレイまで連れていくというのは、戦力過剰ではないかと思う。
実際、メギロートはともかく、シャドウとそれを操縦する量産型Wというだけで、かなりの戦力になるのは間違いないのだから。
いや、寧ろ反乱軍の戦力がどういうものかは分からないが、場合によってはメギロートでも十分な戦力となるだろう。
まぁ、それだけの戦力を送っても、ファウンデーションを相手に勝ちは揺るがないのだが。
「分かった。じゃあ、プラントの方は任せた」
そう言うと、イザークの表情に少しだけ笑みが浮かぶ。
あれ? 今のこの状況で笑みを浮かべる理由が何かあったか?
そんな疑問を抱くが、イザークの事なのでここで何か言っても拗ねるだけだろう。
なので、それ以上は何も言わないでおく。
その後、イザーク達はプラントに向かい……
「は? アルテミスが?」
それから少しして入ってきた情報は、再び俺を驚かせるには十分だった。
何と、ダイダロス基地を占拠していたファウンデーションが、アルテミスを占拠し、自分達の拠点としているという報告が入ったのだ。
「そうらしい。向こうさん、何を考えてるのかね? やっぱり前線基地として欲しかったって感じか?」
アルテミスの件を持ってきたムウが、呆れ……とはちょっと違うな。
何とも言いがたい微妙な感じでそう言ってくる。
「普通に考えればそうだろうな。ダイダロス基地はファウンデーションにとっては最大の武器ではあるが、中継点がなければ役に立たない。ファウンデーションの戦力でそれを維持するのは不可能だと判断したといったところか」
元々ファウンデーションはブラックナイツのような精鋭はいるが、決して数は多くない。
また、その数が多くないブラックナイツも、地上の戦いで既に何人か死んでいる。
そうなると、やはりレクイエムの中継点をしっかりと確保するのは難しいと判断したのだろう。
だからこそ、ダイダロス基地ではなくある程度は自由に移動出来るアルテミスを占拠したといったところか。
アルテミスには傘がある。
一度展開すれば内部からの攻撃は出来ないものの、外からの攻撃も完全に防ぐ、最強の盾。
もっとも、この世界ではミラージュコロイドを使ったブリッツによって大きなダメージを受けたらしいが。
その辺については、幸いなことに既に修復が完了しているらしい。
とはいえ……アルテミスの傘も本当の意味で無敵という訳ではない。
例えば、システムXNを使って直接傘の内部に転移する。
もしくは、精神コマンドの直撃を使って傘の発生装置を破壊する。
他にも強力なバリアであるとはいえ、それ以上の負荷を掛ければ、パリンと割れはしないだろうが、それでも破壊突破出来る。
……あれ? バリアがパリンと割れるってのは何が元ネタだったか。
「それで、どうすればいいと思う?」
「別に難しい事じゃないだろ。敵がアルテミスにいるのなら、アルテミスを攻めればいいだけだ」
こちらの戦力が少ないのなら、相手の行動に合わせる必要がある。
だが、こちらの戦力は圧倒的なのだ。
であれば、わざわざ奇策を使ったりするような事はせず、純粋に正面からどうとでも対処すればいい。
「気を付けるのは、レクイエムだろうな。中継点の確保……というか、破壊はしっかりとやった方がいい」
そう言う俺の言葉に、ムウは難しい表情を浮かべつつも頷くのだった。