転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4460話

「おはよう、アクセル」

 

 職場体験が終わり、通常の学校生活に戻った日の朝。

 いつものように駅前に行くと、拳藤が俺を見つけて挨拶をしてくる。

 

「ああ、おはよう。……何だかこうして拳藤と一緒に学校に行くと、戻ってきたなって感じがするな」

「あはは、少し大袈裟だろ」

 

 俺の言葉を笑い飛ばす拳藤。

 とはいえ、これは別に大袈裟でも何でもない。

 素直に俺の正直な気持ちだ。

 

「別に大袈裟でも何でもないけどな。こうして拳藤と一緒にいるのが、俺にとっては平和な日常だし」

「……ばっ! 馬鹿……一体いきなり何を言ってるんだよ」

 

 最初は何かを叫ぼうとした拳藤だったが、すぐに頬を赤く染め、サイドポニーを弄りながら照れたように言う。

 あれ? 今ので照れるところがあったか?

 そう思ったが、人によってはその受け取り方が違ったりするので、拳藤にとっては今の言葉はそれだけ照れ臭いものだったらしい。

 とはいえ、その辺についてつっこむような事をしたら、それはそれで面倒な事になりそうなので、止めておく。

 

「電車の時間もあるし、そろそろ行くか」

「……そうだね」

 

 微妙に不満そうにしながらも、拳藤は俺と共に駅に入る。

 すると、ちょうど電車が到着したタイミングだったので、特に待つこともなく乗る。

 もっとも、朝という事もあってか座席は既に満員だったが。

 

「それにしても、CMが楽しみだな」

「ぶっ! ……ちょっ、アクセル。いきなり何を言うんだよ!」

 

 電車が動き出したタイミングでそう言うと、吹き出した拳藤が抗議するように言ってくる。

 

「いや、何って……LINで書いてただろ? そのCMだよ」

「……うー……書かなきゃよかった。いや、でもヤオモモなら普通にCMに出たとか言うだろうしな」

 

 緑谷ではないが、ぶつぶつと呟く拳藤。

 実際、ヤオモモはその辺に無頓着だろうから、拳藤の気持ちも分からないではない。

 

「まぁ……目立つという意味では、俺がもの凄く目立ったし」

「あー……うん。アクセルは目立ったな。というか、LINでは大丈夫って言ってたけど、本当に問題なかったのか?」

「ああ、ヒーロー殺しはそこまで強くなかったしな」

 

 俺だけでどうにか対処出来る相手だというのもあったが、緑谷達にボコボコにされた上での、ネットにアップされた映像だしな。

 また、単純にヒーロー殺しと俺との相性が悪すぎた……俺から見れば良すぎたというのも、気楽に言葉を返せる理由だった。

 

「そうなのか? だって、ヒーロー殺しは今まで何人ものプロヒーローを襲って、それで逃げおおせてきたんだろ?」

「そうだな。けど、それを考えた上でも俺との戦いは、純粋な実力差でどうにか出来る範囲だった訳だ」

 

 普通の……物理攻撃が効く者にとっては、ヒーロー殺しが奇襲をしてきた場合、それこそ掠り傷でも受けてしまえば、その時点でヒーロー殺しの個性によって動けなくなるので、詰みだ。

 だが、個性を何も使った訳ではない刃物の攻撃は、俺には無意味となる。

 寧ろ、轟の方が俺にしてみれば厄介な相手なんだよな。

 

「うわぁ……本当に、アクセルは私達にとって壁だな」

「体育祭の選手宣誓で口にしたように、俺は拳藤達にとっての壁だしな」

「……プロヒーローを何人も殺してきたヒーロー殺しを、純粋に実力で倒せるアクセルが壁って……それ、どうしようもないんじゃないか?」

 

 しみじみと拳藤が呟く。

 ……何だか周囲にいる他の雄英の生徒達が……いや、社会人達も拳藤の言葉を聞いて頷いてるように見えたが、これについては多分気のせいとかそんな感じだろう。

 実際に俺が壁としてヒーロー科の生徒の前に立ち塞がるのは間違いないしな。

 

「頑張って壁を越えるなり、叩き壊すなりしてくれ。俺は拳藤がそうしてくれるのを待ってるからな」

「……分かったよ」

 

 はぁ、と息を吐いてから拳藤がそう言い、それから俺達は雄英の最寄り駅に到着するまで話をするのだった。

 

 

 

 

 

「おはようございます、アクセルさん。久しぶりにアクセルさんにお会い出来て非常に嬉しいです。ヒーロー殺しを倒した映像は、何十回、何百回見ても満足することがありません。あのヒーロー殺しをあそこまで一方的に倒すというのは、さすがアクセルさんです」

「……お、おう」

 

 電車が駅に到着し、拳藤と共に駅から出ると、そこでは茨が俺を待っていた。

 もしかしたら……本当にもしかしたら、万が一、億が一の可能性ではあるものの、それでも職場体験が終わって、茨も何故か俺に心酔する気持ちが冷めているのではないかと思ったのだが、残念ながらそのような事はなかったらしい。

 正直なところ、未だに何故茨がここまで俺に心酔しているのかが分からない。

 いや、茨の性格を考えれば、あるいはそういうのも理解出来ない訳ではなかったりするのだが……ただ、それを込みで考えてもやっぱり何でそうなる? といったように思えてしまう。

 まぁ、茨が俺に心酔しても、俺にとって悪い事は……

 

「ぐぎぎぎぎ」

 

 少し離れた場所で、峰田が血涙を流しながら俺を睨み付けてくるのを見つける。

 ……うん、悪い事はないしな。

 取りあえず峰田の血涙についてはスルーしておく。

 

「茨の方は職場体験はどうだったんだ?」

「アクセルさんと会えないのは残念でしたが、良い経験をさせて貰いました」

 

 前半部分はともかく、茨にとっても職場体験は悪くない体験だったのは間違いないらしい。

 実際、ヒーロー科に入学してまだそんなに経っていない俺達だ。

 プロヒーローの事務所に行っても、純粋に戦力として見られるような事は少ないだろう。

 大抵が、お客様的な扱いになる筈だ。

 俺が行ったのは俺の事情を承知している龍子の事務所だったので、普通に戦力として期待されていたが。

 それに梅雨ちゃんも密入国しようとした奴を捕らえたりしていたしな。

 拳藤とヤオモモも……まぁ、CMに出たというのは、それなりに活躍したと言ってもいいだろう。

 

「そうか。なら、その経験を糧に出来ればいいな」

「はい。ですが、出来れば次に同じような事があったら、アクセルさんと一緒の事務所に行きたいと思います」

 

 グイグイと来るな。

 普通なら……例えば歩きながら血の涙を流し続けている峰田なら、ウェルカムといった具合でそのまま茨をいただきますしてもおかしくはない。

 おかしくはないのだが……何だかこう、今のところ俺はそういう気持ちになれないんだよな。

 慕ってくれるのは嬉しいんだが。

 

「あー……次の職場体験とかそういうのがある場合、要望を出してみてもいいんじゃないか? 多分その時も俺は龍……リューキュウの事務所に行くだろうし」

 

 おっと、危ない。

 いつもの癖で、龍子と名前で呼ぶところだった。

 

「マウントレディはいいの?」

 

 俺と茨の話を聞いていた拳藤が、そう聞いてくる。

 拳藤にとっては、龍子よりも優の方が親しい……親しい……えっと、まぁ、お漏らしの後始末とかもあったし、他にも体育祭の昼休みには一緒に昼食を食べたりしたしな。

 もっとも昼食の時は龍子も一緒にいたが。

 ちなみにマウントレディという名前を拳藤が口にした瞬間、少し離れた場所で血の涙を流しながら俺を睨んでいた峰田の歩く速度が少し速くなった気がする。

 ある程度一緒にいた事で、峰田のマウントレディ恐怖症はもう大分回復した筈なのだが。

 実際、昨夜の打ち上げの時にも峰田と優はそれなりに普通に話をしていたし。

 もしくは1晩経って、何か変わったのかもしれないな。

 

「マウントレディはリューキュウの後輩で、事務所もそこまで大きくないし、雄英の生徒を受け入れるにしても少数になるだろうな」

 

 まぁ、それでも俺が行くと言えば優なら受け入れてくれるとは思うけど。

 ただ、今の優は龍子とチームアップをしていて、一緒に行動する事が多い。

 つまり優の事務所に職場体験やインターンで行った場合、自然と龍子と一緒に行動する事になる訳だ。

 何なら、保須市の一件が終わった後、優と峰田は何だかんだと龍子の事務所で行動していたしな。

 その辺りの状況を考えると、何だかんだと龍子と優のどちらの事務所に行くにしろ、同じ事になりそうな気がする。

 とはいえ、他のプロヒーローは……いやまぁ、行こうと思えば行けるとは思うし、向こうも余程の事がない限りは俺を受け入れてくれるとは思う。

 何しろ、受験は首席で、USJの一件で活躍し、体育祭では優勝し、更には今回のヒーロー殺しの一件もある。

 まさに雄英ヒーロー科1年の出世頭……あれ? まだ別に出世はしてないんだから、この表現は違うか?

 ともあれ、A組B組含めてヒーロー科の1年のトップなのは間違いない。

 もっとも今がトップだからといって油断する訳にはいかないが。

 実際、ねじれから聞いた話によると、ビッグ3のうちの1人、それもその3人の中でトップの実力を持っている人物は、1年や2年の時はそこまで優秀ではなかったらしいし。

 それでも2年の半ばから後半に掛けて強くなり、今はビッグ3のトップに位置する訳だ。

 そういう訳で、今は俺がトップだからといって、研鑽を怠れば後ろから来ている者達に追い抜かれる可能性がある。

 特に爆豪、轟といった具合にA組だけでも強い連中はいるしな。

 ……緑谷も圧倒的なまでの威力を持つ増強系の個性をしっかりと使いこなせるようになっているし。

 取りあえず俺が見た限りだと、ヒーロー殺しとの戦いで指の骨を折るとかそういうのをしていなかった。

 つまり、緑谷は強力極まりない自分の個性を使いこなせるようになっているのだ。

 もっとも俺が見た限り、個性を完全に使いこなすというか、緑谷の持つ個性の少しだけを使いこなしているといったように見えたが。

 

「ふーん。……じゃあ、私も次に職場体験とかがあったら、リューキュウの事務所を希望してみようかな」

「あ、ずるいですよ」

 

 拳藤の言葉に茨が不満そうな様子で言う。

 そんなやり取りをしつつ歩いていると……視線を感じるな。

 いや、その理由については分かっている。

 ヒーロー殺しを倒した映像が広まっている件だろう。

 マンションから駅に、あるいは駅で電車に乗っている時も、それなりに視線を向けられていた。

 それ以前に龍子の事務所で行動している時も、多くの者達から視線を向けられていたのだから。

 だが、こうして学校に向かう中で向けられる視線の数は明らかに増している。

 まぁ、無理もない。

 今まで俺に視線を向けていた者の殆どが一般人だったのに対し、今ここで俺に向けられている視線の多くは雄英の生徒達なのだから。

 ヒーロー科以外の生徒達でも、やはり雄英といえばヒーロー科といった認識の者は多く、それだけヒーロー科に所属する俺がヒーロー殺しを倒した映像がネットに流れた事で、多くの者達が視線を向けてくるのだろう。

 だからこそ、俺に視線が向けられているのだろう。

 ……当初はヒーローコスチュームを着ていたので、ヒーロー殺しを倒したのが俺だというのはそこまで知られていなかったのだが、あの映像がネットにアップされてからそれなりに時間が経っているので、あれが俺であるというのは既にかなり広まっていた。

 特に雄英の生徒なら、その辺の情報は入手しやすいだろうし。

 

「まぁ、その辺は俺がどうこうと言うべきことじゃないしな。リューキュウが許可を出したら、問題ないんじゃないか?」

 

 拳藤も茨も、龍子にしてみれば結構気に入りそうだしな。

 ……あ、でも茨の俺に対する態度を見れば、遠慮するかもしれないな。

 理由はともあれ、茨は俺に心酔している。……というか心酔しすぎている。

 龍子の目から見ると、茨は問題のある人物だと思われる可能性は十分にあった。

 

「本当だな? 言質は取ったぞ」

「……何でそこまでリューキュウに拘るんだ? えっと、拳藤とヤオモモが行った職場体験……ウワバミだったか? あそこはどうなんだ?」

 

 ウワバミは、龍子や優とは別ベクトルの美人だ。

 龍子が凜々しい系の、優が一般的な美人だとすると、ウワバミは夜の女といった感じの美人となる。

 勿論、実際にはウワバミが水商売の類をいしている訳ではないが、そういう系統の美人なのは間違いない。

 ちょっと調べた限りだと、実際にウワバミは半ば芸能人的な活動とかもしているらしいし。

 ヤオモモや拳藤と一緒にCMに出たのも、その辺が大きく関係しての事なのかもしれない。

 ただ……

 

「別にウワバミが悪いって訳じゃないけど、何というかこう……私が思っていたヒーロー活動とは違ったんだよな。で、そう思っているところで保須市の件があって……」

「それでリューキュウに、か」

 

 まぁ、分からないではない。

 姐御系美人の拳藤にしてみれば、凜々しい系美人のリューキュウと、お水系美人のウワバミのどちらが向いているのかとなると、やはり前者だろうし。

 美人云々は抜きにして、性格的な奴でもそんな風に思えるだろう。

 そんな風に思いつつ、俺は拳藤と茨の2人と……そして血涙を流しながら睨み付けつつ、離れた場所を歩く峰田と共に、雄英に向かうのだった。

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