転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4462話

「はい、私が来た」

 

 午後の授業のヒーロー基礎学では、オールマイトがそう言いながら姿を現す。

 ……今更だけど、原作の流れがあるからとはいえ、何十年もNo.1ヒーローをやっているオールマイトが教師をやっていて、それでいてこうして授業をしているというのは凄いよな。

 実際、オールマイトのファンの緑谷なんかはオールマイトと接する事が多いのに、ヒーロー基礎学の授業で毎回のように喜んでいるしな。

 もっとも、オールマイトはプロヒーローとしては文句なしのNo.1ではあるが、教師としては新米でしかない。

 最近でこそアンチョコがなくても普通に話せるようになったけど、それでも教師としては色々と未熟なところがあるのは間違いないよな。

 ぶっちゃけ、教師としての未熟さをオールマイトの知名度とかで補っている感じだ。

 そんな事を考えている間に、オールマイトの登場パターンが尽きたとか、尽きてない無限だとか、そんなやり取りがされていたが……まぁ、うん。その辺については俺が特に気にする必要もないことだしな。

 

「職場体験直後って事で、今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!」

 

 オールマイトの説明に、何人かが嬉しそうに、何人かががっかりした様子を見せる。

 ……ちなみに、がっかりした様子を見せている者の中には今日模擬戦だったら恐らくは俺に挑戦する気満々だった爆豪の姿もあった。

 昼休みに学食で模擬戦じゃないかといった話をしたのだが、どうやら予想が外れたらしい。

 まぁ、職場体験が終わったばかりだから遊び要素を入れるというオールマイトの考えも分からなくはない。

 それにただのレースではなく、救助訓練も兼ねている。

 つまり、何かあった時に少しでも早く助ける相手のいるべき場所に辿り着くまでを競うレースな訳だ。

 

「救助訓練なら、USJでやるべきではないのですか!?」

 

 飯田が手を挙げ、オールマイトに尋ねる。

 そんな飯田の様子を見る限りだと、どうやらインゲニウムやヒーロー殺しの件は吹っ切った……とまではいかないものの、態度には出さないようになったらしい。

 実際、学食でちょっと見掛けた時もいつも通り緑谷や麗日と仲良く食事をしていたように見えたしな。

 

「あそこは災害時の訓練になるからな。私は何て言ったかな? そう、レース!」

 

 オールマイトがそう言うと、ルールの説明を始める。

 俺達のいる場所……迷路のように複雑に入り組んだ細道が続く、密集工業地帯。運動場γ。ここで5人4組になって、1組ずつ訓練を行うらしい。

 オールマイトがこの運動場γのどこかから救難信号を出すと、運動場γの周囲にいた5人が一斉にスタートし、最初にオールマイトのいる場所に到達した者が1位となる。

 勿論、これはプロヒーローになる為の訓練である以上、建物を壊すのは減点となる。

 ……最後の件で爆豪が指さされていたのは……まぁ、うん。そういう事だろう。

 

「先生、それだと1人余ると思うんですけど、どうするのでしょう? どこか1組は6人でやるのでしょうか?」

 

 ヤオモモがオールマイトにそう尋ねる。

 ……そう、5人1組で4組となると、それに必要なのは5×4で20人。

 だが、A組は21人な訳で。

 もっとも、その余る1人が誰なのかは、考えるまでもなく明らかだったが。

 

「八百万少女、いい質問だ」

 

 ニカリといった擬音が相応しいような男臭い笑みを浮かべるオールマイト。

 これ、オールマイトだからそこまで嫌がられたりしないけど、何も知らないような相手がこんな笑みを浮かべたら、逃げる奴が出てきてもおかしくないよな。

 そんな風に思っていると、オールマイトの視線が俺に向けられる。

 

「最後の1人……アクセル少年は、他の4レースの勝者4人とアクセル少年1人の合計5人でやって貰う。アクセル少年の実力は皆も知っての通り頭1つ抜けている。ヒーロー殺しの一件からも明らかだしね」

 

 教師がそういう風に1人を表現してもいいのか? と思わないでもなかったが、不満の声は出ない。

 実際、これまで俺は多くの場面で実力を見せつけてきたのもあって、俺がクラスNo.1であるというのに異論はないのだろう。

 ……爆豪は不満らしく、俺を睨み付けていたが。

 ただ、不満はあるものの、彼我の実力差を認められない程ではないらしく、何も口には出さない。

 多分だけど、自分が参加したレースで勝利して、俺に挑もうと考えているのだろう。

 こうして考えてみると、他のレースが予選で、俺の参加するレースが本戦とか決勝とか、そんな感じに思えるな。

 

「さて、それじゃあまず第1戦だ!」

 

 そうオールマイトが宣言し、最初のレースに参加する者達が選ばれる。

 緑谷、尾白、飯田、三奈、瀬呂。

 

「クラスでも機動力の高い奴が集まったな」

 

 そう言ったのは上鳴。

 実際、飯田はエンジンの個性で地上を移動するには向いているし、三奈も地面を滑るように移動出来るので早い。尾白はその尻尾を第3の手として使えば、この運動場γのような場所ならかなり便利だろう。瀬呂は言うに及ばず。

 ……そして主人公の緑谷は、増強系をそれなりに上手く使えるようになっているしな。

 

「俺、瀬呂が1位」

「うーん、尾白もあるぞ」

「オイラは芦戸。あいつ運動神経凄いぞ」

「デクが最下位」

 

 切島、上鳴、峰田、爆豪の順番にそうトップを予想していく。

 

「この面子なら飯田君の気がするな」

 

 麗日がそう言うと、隣で梅雨ちゃんが何度も頷いていた。

 

「なら、俺は緑谷だな」

 

 そう言った瞬間、ギロリと爆豪に睨まれた。

 爆豪にしてみれば緑谷が最下位と予想していた中で俺が緑谷がトップと予想したのが面白くなかったのだろう。

 にしても、爆豪……未だに緑谷の扱いが邪険なんだよな。

 ライバル心……というより、後ろから追われる立場になって、焦っているといった感じか?

 もっとも、爆豪がそれを認めるような事はないだろうが。

 

『スタート!』

 

 オールマイトが救難信号を上げ、同時に大声でスタートと叫ぶ。

 運動場全体に広がるその声は、さすがNo.1ヒーローといったところか。

 そして生徒達の待機場所に、どうやってかは分からないが、それぞれの生徒達の姿が映し出される。

 飯田は予想通りに地面を走っているが……速度はそこまでではない。

 飯田は速度という点ではA組どころかB組も合わせて上位にくるが、それはあくまでも真っ直ぐ進む時のものだけで、小回りはそこまでではない。

 分かりやすく表現するのなら、機動性は高いけど運動性は低いといったところだ。

 だからこそ、細い道が入り組んでいるこの運動場γのような場所では、飯田の個性であるエンジンを全開には出来ない。

 もっとも、それでもその辺のヒーローが走るよりも速度は出せるが。

 三奈の方は……あれ? てっきり体育祭のトーナメントで俺と戦った時のように酸を使った高速移動をするのかと思いきや、何故か普通に建物を登っている。

 それも外側を……ロッククライミング的な感じで。

 尾白は尻尾を上手く使って伸びている配管とかに巻き付けながら移動している。

 瀬呂は当然のようにテープを使い、上空を移動し……

 

「やっぱりな」

 

 そんな瀬呂を、緑谷はあっさりと追い抜いていった。

 個性を使ってるのは、身体の周囲にこう……電気的なエネルギーがビリビリしているのを見れば分かる。

 やっぱり個性を使いこなせるようになると、緑谷はクラスの中でも1歩抜け出るな。

 爆豪や轟と並ぶ、クラスのNo.2……3人目のクラスNo.2といったころか。

 No.2なのに2人どころか3人もいるというのは、意味が分からないが。

 ただ、緑谷のあの動き……

 

「デクの野郎」

 

 ギリッと歯を噛み締めながら、爆豪は言葉を吐き出す。

 まぁ……うん、爆豪にしてみれば、緑谷が他の生徒達に称賛されているのが面白くないだろうし、何よりも今の緑谷の動きは間違いなく爆豪の動きを参考にしている動きだ。

 爆豪にしてみれば、自分を追ってくる緑谷が職場体験の短い時間で信じられないくらいに伸びたのだから、面白い筈もない。

 まぁ、緑谷はオールマイトの戦友なのだろうグラントリノに訓練をつけられ、その上でヒーロー殺し……ヴィランネームはステインらしいが、そのステインとの実戦も行った。

 古強者のベテランにしっかりと訓練をつけられ、ネームドのヴィランであるステインとの実戦も経験し、後はもしかしたら主人公補正とかそういうのもあって、緑谷は一気に伸びた。

 それが、今の映像モニタに映し出されている光景だったのだが……

 

「あ」

 

 映像モニタに表示された光景、緑谷が配管を踏もうとした時、しっかりと足の裏でその配管を踏む事が出来ず、滑ったのを見てそんな声が俺の口から出る。

 足を踏み外し、緑谷はそのまま落ちて行く。

 

「きゃああああ、デク君!?」

 

 それなりの高度を飛んで……いや、跳んでいたので、それを見た麗日が悲鳴を上げるものの、幸いここは密集した工場の区域だ。

 ……それはつまり、下手をすれば配管とかそういう場所に身体を叩きつけられたりもするのだろうが、幸い緑谷は空中で体勢を立て直して近くの配管に掴まり、地面に落ちたり、あるいは他の配管にぶつかったりするのを回避する。

 ただし、当然ながらそうして何とか落ち着いた時には瀬呂に抜かされており、そのまま瀬呂がトップでゴールする。

 あるいはこのチームに瀬呂がいなければ、まだ緑谷がここから勝利する可能性もあったかもしれないが、生憎と瀬呂がいた以上はどうしようもない。

 そうして1組目が終わると、他のグループもどんどんとスタートしていく。

 ちなみに2組で勝利したのは爆豪。緑谷の動きの完成形……というのは少し大袈裟かもしれないが、とにかくそんな感じで空中を跳びはねて勝利した。

 3組目で勝利したのは、轟。

 氷を使った橋……というか通路を作り、一直線にオールマイトのいる場所に到着した。

 4組目で勝利したのは、常闇。

 ダークシャドウを上手く使い……こう、尻尾を使って器用に移動していた尾白の上位互換的な感じで移動し、最初にオールマイトのいる場所まで到着した。

 こうして、俺を含めて最後のレースの出場者が決まった訳だ。

 

「まぁ……決まるべくして決まったって感じだよな」

 

 上鳴がそう言う。

 ちなみに上鳴は機動力の高い面子といった訳でもないので、あっさりと負けている。

 雷を操る……というか、帯電という個性なので、それを使えば個性によって雷を纏い、身体能力を上げるといったことが出来れば、あるいは上鳴も最終レースに参加出来たかもしれないな。

 

「って、ちょっと待てよ。その面子に俺が混ざるのか!?」

 

 瀬呂が叫ぶが……

 

「あのな、最初にそういう風に言われていただろ。そこで勝ったんだから、瀬呂が最終レースに参加するのは当然だろ」

「……アクセルと戦うって……」

「あのな、今回やるのは模擬戦じゃなくて、レースだろ? 別に俺と正面から戦う必要はないんだから、そこまで気にする必要はないだろ」

「あ、ああ。……言われてみれば、そうだな。それにレースが開始するのは全員別の位置からのスタートだし、それを思えば、もしかしたら俺にも勝ち目が……勝ち目が……これ、どう考えても無理じゃないか?」

「頑張れよ、瀬呂! オイラはお前を応援するぞ!」

 

 瀬呂に対し、峰田が応援の言葉を口にする。

 ちなみに峰田は個性のモギモギを使って反発しながら移動して結構いいところまでいったのだが、それでも結局負けてしまった形だ。

 ……その峰田が瀬呂を応援しているのは、やっぱり俺に対する嫉妬からなんだろうな。

 今朝、拳藤と茨の2人と一緒に通学していたのを、血の涙を流して見ていたし。

 もっとも峰田の事だから、既にその辺りについては忘れていて、単純に瀬呂を応援しているだけなのかもしれないが。

 

「我が闇の力を見せよう」

 

 瀬呂とは違い、常闇はかなりやる気だ。

 実際、常闇の個性のダークシャドウはこういうのが得意だったりするしな。

 常闇が参加してレースで常闇が勝利したのが、それを証明している。

 個人的には、常闇のグループにいた麗日が個性を使って飛んで移動して勝利するのかもしれないと思っていたんだけどな。

 ただ、麗日の個性はあくまでも対象を無重力状態にするだけだ。

 それが自分であっても、戦っている相手であっても違わない。

 結果として、浮かぶことは出来たが……それまでだ。

 あるいはヒーローコスチュームにそちら方面でのサポートアイテムでも付ければ空中を移動出来るのかもしれないが、麗日のヒーローコスチュームにはその手のサポートアイテムはついていない。

 もっとも、今日の一件で麗日もそれを理解したので、サポート科に頼むかもしれないけど。

 ともあれ、今日は麗日はその辺りが理由で常闇に負けた訳だ。

 

「では、最終戦に出る者達はそれぞればらけてくれ。今までと同じく、私が合図をしたらスタートとなる」

 

 オールマイトがそう言い、俺達は前もって決められていた自分の場所に向かうのだった。

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