転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1829 / 2196
4468話

「あ、それ知ってる」

 

 今日の授業が終わり、自主訓練をやる前に適当に話していたところで、緑谷が拳藤から聞いたと期末試験における演習試験の内容を教えてくれたが、俺はそう返す。

 内容としては、予想通り入試のロボを相手にするといったものだったので、そういう意味でも俺にとっては既知の内容だった。

 

「ちょっ、その事を知ってたら教えてくれよな!」

 

 上鳴がそう不満を口にするが、そう言いながらもその口には笑みが浮かんでいる。

 ……無理もないか。

 ロボ……つまり精密機械の類は、上鳴にとって非常に得意な相手だ。

 中間試験で最下位だった上鳴にしてみれば、まさに一発逆転のチャンスだろう。

 他にも葉隠や峰田といったように、ロボを相手にしてならその能力を発揮して好成績になれる生徒達は嬉しそうな顔だ。

 もっとも、峰田はともかく葉隠の場合は……もしロボに温度で相手を認識する、いわゆるサーモセンサー的なのがあった場合、一気にピンチになるのだが。

 そういうのがない……相手に見つからない状態であれば、透明の葉隠は関節部分であったり、動力炉であったりを攻撃してどうにか出来るが、もしサーモセンサーの類あった場合、それは生身での戦いと変わらなくなってしまう。

 その辺がどうなるかで、葉隠の試験内容の難易度が変わってくるが……どうだろうな。

 ロボにその手の機能というのは、普通にあってもおかしくはないと思うし。

 

「お前達の個性は、人に向けて使うとなると調整が難しいからな」

 

 障子のその言葉に、上鳴と三奈は嬉しそうに笑う。

 成績の問題を思えば、この2人にとって大歓迎といったところなのだろう。

 とはいえ……拳藤から聞いた時に思っていたが、本当に演習の内容がロボなのかどうかなんだよな。

 相澤がいて、去年、あるいは一昨年の1学期の期末試験と同じ内容になるかと言われれば……うん。正直なところ無理だろとしか思えない。

 とはいえ、何らかの確証がある訳でもない以上、その辺について言ったも出来ないしな。

 

「アクセル、お前もだぞ」

「ん? どうした?」

 

 相澤が用意するだろう演習試験について考えていると、不意に名前が呼ばれる。

 そちらに視線を向けると、そこでは思い切り俺を睨んでいる爆豪の姿があった。

 あれ? 俺が考えている間に何か話が進んでいたらしいな。

 

「てめえ……俺なんかもう相手じゃねえってのか?」

 

 どうやらいつものように緑谷に絡み、期末試験では絶対に負けねえと宣言し、そのついで……というか、多分これが本命なんだろうが、体育祭で負けたリベンジとして俺にも挑んできたが、そこで俺は考え事をしていて上の空だったと。

 今にも襲い掛かって来そうな、それこそヒーロー科の生徒よりもヴィランと言った方がいいだろう爆豪の形相に、どう反応すればいいのか考え……なら、丁度いいと口を開く。

 

「いや、別にそういう訳じゃない。ちょっと考え事をしていただけだ。実際、体育祭のトーナメントの決勝で爆豪と戦った時もその成長ぶりに驚いたし」

 

 これはお世辞でも何でもない事実だ。

 爆豪もそれが分かったのか、一瞬……本当に一瞬だったが笑みを浮かべる。

 もっとも、すぐにその笑みは消えて俺を睨み付けていたが。

 

「考え事? ……何を考えてたんだ? 言ってみろ」

 

 珍しい。

 普段の爆豪なら、この話の流れからすると、俺が何を考えていたのかといった件には気にせず、そのまま教室を出ていくだろう。

 なのに、こうして何を考えていたのかといったようなことを聞いてくるのだから、これに驚くなと思いながら、この話の流れは俺にとっても悪くないので、素直に考えていた内容を口にする。

 

「緑谷が言っていた通り、例年なら期末試験の演習はロボとの戦いになるんだと思う。……あくまでも例年ならの話だが」

「つまり違うってのか?」

 

 緑谷の名前が出たのが面白くなかったのか、睨むように緑谷を一瞥してから、爆豪がそう聞いてくる。

 ふと気が付けば、教室に残っていた生徒達……俺達から離れた場所で何か別の話をしていた者達の視線もこちらに集まっていた。

 無理もないか。

 期末試験の成績はそれだけ大きいのだから。

 ましてや今回はそれにプラスして、赤点だったら夏休みに行われる林間合宿に参加出来ないという事を意味している。

 相澤が合宿と言うのだから、遊び気分ではどうしようもないような内容なのは間違いないだろう。

 だが、学生生活として考えれば、これもまた思い出だ。

 そしてA組の生徒には、そういう学校生活を大事にする者が多く揃っている。

 だからこそ、赤点になるかどうかの瀬戸際である演習の内容には興味津々なのだろう。

 ……もっとも、演習の方でいい点数を取っても、筆記の方で赤点を取ったら意味がないのだが。

 

「俺はそう思っている」

「おおおおおい、アクセル。冗談は止めてくれよ!」

 

 上鳴がそう叫ぶ。

 上鳴にしてみれば、ロボが相手なら演習で良い点数を取れると思っていたのに、実はロボが相手ではないかもしれないと俺が言い出したのだから、それが不満だったのだろう。

 もっとも、俺がどうこう言ってもその通りになるかどうかは分からないのだが。

 もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、期末試験の演習はロボのままという可能性もあるのだから。

 ただ、俺がどちらに掛けるかと言われれば……

 

「俺達の担任は相澤だぞ? 今まで担任としての相澤を見て来て、どう思う? 例年通りの演習をそのままやると思うか?」

 

 そう言うと、教室の中が静寂に包まれる。

 俺と話していた爆豪も、そしてロボを期待している上鳴も、俺が口にした言葉の説得力に黙り込む。

 俺達と相澤の付き合いは、そこまで長いものではない。

 それこそまだ数ヶ月といったところだが、それでも相澤であったらPlus Ultraとして、より厳しい試験を用意するだろうというのが予想出来た。

 後、これは説明しようにも出来ないが、この世界が原作のある世界である以上、主人公である緑谷にとっては既に敵ではないロボを演習の敵として出してくるとは思えないというのもある。

 

「なるほどな。そうなると、楽なロボじゃなくて、もっと手応えのある奴と戦えそうだな」

 

 やがてその静寂を破り、爆豪が獰猛な笑みを浮かべて言う。

 こういうのを見ると、やっぱり爆豪ってヴィラン向きだよな。

 

「あくまでも俺の考えだが、相澤の事を思えば、そういう可能性になる可能性は高いと思わないか?」

「けっ」

 

 俺の言葉が気に食わなかったのか、爆豪はそう鼻を鳴らして教室から出ていく。

 ……ただし、教室を出る前に俺を睨み付けていくのは忘れなかったが。

 

「全く、爆豪らしいよな、今のやり取り」

 

 そう切島が言う。

 切島にしてみれば、爆豪のフォローをするつもりで言ったのだろう。

 爆豪はああいう性格だし、峰田と並んでA組のアレな奴として多くの者達に知られているだけに、何だかんだと仲が良い……というか、面倒を見ている感じの切島にしてみれば、クラスで浮かないようにしようと思っているのだろう。

 

「まぁ、爆豪の性格を考えるとあんな風に言うのは納得出来ないでもないけどな」

「……あまり怒っていないみたいだな」

 

 切島にとって俺が爆豪の態度に面白く思っていないというのは意外だったのか、そんな風に言ってくる。

 

「何だかんだと、爆豪との付き合いもそれなりだしな」

 

 爆豪は問題児なのは間違いないが、同時に非常に優秀なヒーロー科の生徒でもある。

 寧ろ俺……というか、俺に壁になるように依頼をしてきた公安にしてみれば、クラスNo.2の立ち位置で、No.1の俺に何度でも挑んでくるといった爆豪の評価は高い筈だ。

 それも、ただ闇雲に俺に挑んでくるのではなく、それが出来るかどうかは別として、何らかの勝ち目を見つけてから俺に挑んで来るのだから、ポイントが高いのも納得出来る。

 

「へぇ……」

「何だよ?」

 

 何故か感心した様子の切島に、そんな風に尋ねる。

 

「いや、何でもねえよ。ただ、アクセルが爆豪を理解しているのが嬉しく思っただけだ。漢だな」

「……何でそこで漢ってのが出てくる?」

 

 切島が漢……そう、男ではなく漢に拘っているのは知っているが、それを俺に当て嵌められても困る。

 

「言っておくけど、爆豪についてはある程度理解しているが、だからといって俺が爆豪係になるつもりないからな。爆豪係は切島で頼む」

「ちょっ、待てよ!? 勝手に俺を変な係にするなよな!?」

 

 そう叫ぶ切島だったが、教室に残っていた面々の多くは今更何を言ってるんだ? といった視線を向けていた。

 どうやら俺を含めて多くの者にとって、切島が爆豪係だというのは既に決まっているらしい。

 ……まぁ、今はこうして微妙な感じの切島だったが、いざとなれば普通に爆豪の面倒を見る……というか、フォローをするしな。

 実際、爆豪もそれなりに切島に気を許しているように思えるし。

 

「さて、切島が爆豪係に改めて決まったところで、そろそろ自主訓練に行くか。ここで話していると、自主訓練をやる時間もなくなるしな」

「うん、僕も頑張るよ、アクセル君」

 

 俺の言葉を聞いた緑谷が、やる気満々といった様子でそう言ってくる。

 爆豪とのやり取りで緑谷にも火が点いたのだろう。

 実際、この前やったヒーロー基礎学のレースで緑谷は爆豪の動きに似た……というか、明らかに参考にして動いていたしな。

 爆豪にしてみれば、あの動きはそれだけ気になる……もしくは気に障るものだったのだろう。

 爆豪の性格を考えれば、それは仕方がないのかもしれないが。

 ともあれ、そんな訳で俺達はいつものように自主訓練に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「スマッシュ!」

 

 そう叫びつつ、パンチを放ってくる緑谷。

 蹴りを多用するスタイルになった緑谷だったが、だからといって拳を使わない訳ではない。

 ……正直なところ、緑谷の性格を思えば柔道とかそういうのの方が向いているような気がしないでもないんだけどな。

 特に、寝技なんかは緑谷向きだろう。

 格闘技の中でも、打撃であったり、柔道の立ち技とかそういうのは、才能……センスと言ってもいいかもしれないが、とにかく努力だけで何とかなるものではない。

 それに対して、寝技には……勿論才能とかセンスとかそういうのも必要だが、それ以上に単純に練習量が強さに直結する。

 そして緑谷は、増強系の個性のお陰で高い身体能力を持ってはいるが、ぶっちゃけ格闘技の才能という意味では……ない訳ではないが、そこまででもない。

 だが、緑谷は才能はそこまでなくても、努力家という意味では間違いない。

 だからこそ柔道の寝技が向いているのだが……残念ながら、柔道の寝技はプロヒーローとして活動する上で、弱点も多い。

 ヴィランが1人なら、寝技があれば問題ないだろう。

 だが、複数のヴィランがいる中で1人を寝技で押さえつけたとしても、そうなると他のヴィランによる攻撃で大きなダメージを受けてしまう。

 サイドキックがいれば話は別だが……いや、サイドキックがいても、そこで緑谷のフォローをさせるよりは、普通に別々で戦った方が強いか。

 ともあれそんな訳で、緑谷には柔道の寝技が向いてはいるのだろうが、プロヒーローとしては……全く使えないといった訳でもないだろうが、やはり打撃系の格闘技の方が向いているんだよな。

 緑谷の場合はキックボクシングとかムエタイとか、そういう感じか?

 

「うおおおおっ!」

 

 緑谷の次に突っ込んで来たのは、切島。

 身体を硬化させたまま、こちらに向かって突っ込んでくる。

 当たれば大きなダメージを受けるのは間違いないだろう。

 だが……

 

「それはあくまでも当たれば、だけどな」

 

 突っ込んで来た切島の攻撃を回避しつつ、足を引っ掛ける。

 切島の個性である硬化は、高い防御力を持つ。

 言ってみれば、頑強な鎧を装備しているのと同じだ。

 また、もしこれが鎧であれば動きにも影響が出るものの、硬化は個性によるものなのか、動きに影響が出ない。

 いや、全く出ないという訳ではないんだろうが、それでも普通に鎧を着るのと比べると、明らかに硬化を使った状態の方が動きは素早い。

 ……まぁ、ぶっちゃけ、それでも俺の身体能力なら硬化をぶち抜けるのだが、そういう事をすると、切島に大怪我をさせてしまうしな。

 なので、今のように足を引っ掛ける程度にしておくのだが……そのような一撃であっても、切島の動きを妨害するには十分ではある。

 

「ぐおおおおっ!」

 

 勢いよく突っ込んで来ただけに、足を引っ掛けられるとその動きは止まらない。

 そのまま勢いよく地面を滑る……というか、転がっていく。

 そんな切島の様子を見ていると、三奈が地面を滑りながらこちらとの間合いを詰めてくる。

 また、その三奈の援護をするように、口田によって操られた……というか、指示された? 頼まれた? とにかく雀や鴉が俺の視界を遮るように大量に飛んで来る。

 ここで雀や鴉を攻撃してもいいのだが、そうなると口田が悲しむんだよな。

 なので、今はそのまま相手の行動を許し……下の方から近付いてくるイヤホンを目にし、相手の攻撃を予想しながら、模擬戦を続けるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。