キブツ達が来た日の翌日、俺はマーベルと共にキッス家に与えられた屋敷にやって来ていた。
キブツの部下から、すぐに応接室と思しき場所――調度品の類は殆どないが――に通され、すぐにキブツが姿を現すと、頭を下げてくる。
「これは、アクセル王。ようこそいらっしゃいました、まだ屋敷の方はしっかりと片付いてはいないのですが……」
俺とマーベルの姿を見たキブツは、そう言ってくる。
それはお世辞でも何でもなく、純粋な意味で今はまだ屋敷に人を迎える準備は出来ていないのだろう。
一応、持ち運び出来ないような家具の大半は前の持ち主が残していったので、暮らすのに不自由はないだろうが……それでも生理的に、誰が使っていたのか分からない布団をそのまま使うといったような事は、難しいだろう。
少なくても俺はやりたくない。
キブツ達も、昨日はそうするしかなかったのだろうから、そのままではあるのだろうが……それでも、出来るだけ早くどうにかしたいと、そのように思ってもおかしくはない。
とはいえ、色々と買い揃えるにも当然のように金が必要となる。
その金をどうするかといった問題もある訳で……
勿論、キブツ達も一切金を持っていないといった訳ではなく、それなりの資金は持ち歩いている筈だった。
それを思えば、今の状況で家具を購入するといったような真似をしても、おかしくはなかった。
……とはいえ、当然だがその金には限りがあるから、出来るだけ早く恐獣狩りやガロウ・ランの盗賊団を倒せるようにする必要があった。
「その辺に関しては気にするな。昨日の今日で屋敷が何の問題もなくなっているなんて事は考えてないからな。それより、今日はマーベルを紹介しにきた。とはいえ、フラオンと一緒にいたのなら、マーベルの事も知ってるだろうが」
フラオンは、元々俺とマーベルを捕らえる為に指名手配をしたのだ。
そんな俺とマーベルをドレイクが匿っているというのが、フラオンがドレイクに攻撃を仕掛けた理由だった。
だとすれば、当然ながら俺とマーベルの存在をフラオンに知らせたギブン家に仕えていたキッス家が知らない筈はない。
また、その件がなくなったとしても、マーベルは始まりの聖戦士として知られている。
バイストン・ウェルにおける聖戦士という言葉の意味を考えれば、ある意味では俺よりもマーベルの方が名前を知られていても、おかしくはなかった。
そのような事情もあり、当然のようにキブツはマーベルを見て、頷く。
「はい。お噂はかねがね。話に聞いていたよりもお美しい方で驚きましたが」
「あら、お上手ですね」
キブツの言葉に、マーベルは笑みを浮かべてそう返す。
マーベルにしてみれば、やはり美しいと言われて悪い気はしないのだろう。
普通なら、そんなやり取りはお世辞だと感じてもおかしくはないのだが……キブツの様子を見る限り、それはお世辞でも何でもなく、本気で言ってるのは間違いなかった。
「知ってるようなら、話は早い。基本的に俺の国……シャドウミラーとは現在連絡が出来なくなっている以上、キブツが来るまでシャドウミラーの所属となるのは、俺とマーベルだけだった。つまり、マーベルは現状ではシャドウミラーのNo.2となる。それに不満はあるか?」
「いえ、始まりの聖戦士と呼ばれるマーベル殿がそのような地位にいるのは、シャドウミラーとして問題もないかと」
「あら、マーベルでいいわよ。アクセルはともかく、私はそこまで偉い訳でもないんだし」
「それでも、始まりの聖戦士と呼ばれる方を呼び捨てになど……」
マーベル殿ではなく、呼び捨てでいいと言うマーベル。
そんなマーベルに対し、キブツは始まりの聖戦士に対して呼び捨てには出来ないと、少しの間言い争っていたのだが……結果として、立場が上のマーベルが勝つ事になる。
マーベルとしても、他の相手ならともかく、自分と同じ勢力に所属して、一緒に行動する事になる相手からマーベル殿と呼ばれるのは避けたかったのだろう。
俺の場合は、アクセル王と呼ばれるのにはもう慣れたから問題ないけど。
「ともあれ、これでシャドウミラー内での順列に関しては問題ないな?」
確認の為に尋ねる俺に、マーベルもキブツもそれぞれ頷く。
「さて、そうなると……キブツからは色々と情報を聞きたい。いや、正確には俺がじゃなくて、ドレイクが話を聞きたいと思うが、構わないか?」
「それがアクセル王の命令であれば」
そう言うキブツ。
この様子からすると、キブツ本人はやはりドレイクに対して思うところはあるのだろう。
だが、今は俺に従っている以上、その命令があればドレイクに情報提供をするしかないといったところか。
ドレイクにしてみれば、ラウの国の情報は是非欲しいだろうし。
ラウの国はミの国と国交断絶をしていたし、そのミの国が現在ではアの国に併合されてしまっている以上、情報を入手するのは難しい。
ガロウ・ラン辺りをラウの国に忍び込ませて情報を入手すればいいだろうが、向こうだってその辺は当然分かっているだろうから、防諜に関してはドレイクのようにガロウ・ランを使っていてもおかしくはない。
とはいえ、ラウの国は古い考えの持ち主だ。
だとすれば、ガロウ・ランを雇うなどといった真似はしない可能性も十分にあった。
……その辺を向こうがどう考えるかだな。
こうして考えてみると、ガロウ・ランってのは忍者に近い性質を持っているよな。
昔の忍者というのは、アニメや漫画とかで出て来る忍者とは違って、かなり酷い扱いだったらしい。
それこそ下賤の者といったような扱いで、雇い主からも蔑まれていたとか何とか。
そんな忍者がいなければ重要な情報だったり、もしくは破壊工作だったり出来なかったと思うんだが……まぁ、その辺はその時代によって常識が変わってくるんだろうから、無理もないが。
「分かった。キブツにも色々と思うところはあるだろうが、今はこっちの指示に従ってくれ。ドレイクがラウの国に負ければ、こっちとしては困るしな」
「は!」
キブツが俺の言葉を聞き、素直に返事をする。
鵬法璽で俺を裏切らないようになっているからこそ、こういう態度なのか、それとも俺に仕えると決めたから、鵬法璽は関係なしにこんな風なのか。
その辺は俺にも少し分からなかったが、こうして素直に返事をして貰えるのは助かる。
「俺はドレイク城に向かうけど、マーベルはどうする? 午後からはガラリアと約束があったんだよな?」
昨日聞いた話によると、ガラリアとオーラバトラーを使った模擬戦をやるという話だった。
それを考えれば、まだ少し時間に余裕はあるが……マーベルが別にドレイク城には行きたくないと言うのなら、それはそれで構わないと思っての問いに、マーベルは首を横に振る。
「私は止めておくわ。キッス家の人達と一緒に行動しておくから。多分、今だと私の方が王都に関しては詳しいだろうし」
「あー……まぁ、それはな」
以前の王都であれば、あるいはキッス家の方が詳しかったかもしれない。
まぁ、ギブン家に仕えていたキッス家の面々が王都にやってくる機会がそうあったとは思えなかったが。
ただ、前に王都にやって来た者がいたとしても、正直なところ今の王都は以前までと比べると大きく変わっている。
フラオンが国王をしていた時は、その税金の高さから王都でも重税に困っていた。
それに比べると、現在の国王たるドレイクは税金を下げ、多くの者に積極的に金を使わせる事で、結果として収入を増やしてすらいた。
この辺りの感覚はドレイクが自分でどうにかしたのか、それともショットやゼット辺りがアドバイスしたのか。
地上とバイストン・ウェルでは色々と違うところも多いのだが、上手い具合に流用出来る場所もある……のかもしれないな。
「そうか。なら、任せる。家具とかを買うにも、マーベルがいた方がいいだろうし」
バイストン・ウェルにおいて定価というのはあまり意味がない。
いや、これは地球でも同じようなものか。
日本のように定価がきちんと表記されており、しかもその値段はいわゆるぼったくり価格ではなく、正規の値段であるというのは、世界的に見てもそれなりに珍しかったりする。
国によっては、それこそ値段が全く書かかれておらず、店主と交渉して値段を決めるといったような事も珍しくはないのだから。
そういう意味では買い物は面倒臭いのだが、マーベルのような始まりの聖戦士として有名な人物がいれば、印象をよくして貰おうとかなり安く売ってくれる店も多い。
逆に、有名人のマーベルだから金を持ってるだろうと判断して、高値で売りつけてくるような奴もいるかもしれないしな、その辺は店だったり商人だったりを見る目が必要だろう。
「分かった。なら、そっちは任せる。……キブツ、行くぞ」
「はい。すぐに馬車を……」
「ああ、いらない。馬車で移動すると、色々と面倒だしな。俺の魔法で一気に移動する。お前は、部下にこれからドレイク城に行ってくると伝えてこい」
「は? はぁ、分かりましたが……」
魔法で移動という言葉に、キブツは不思議そうな表情を浮かべる。
魔法についてはそれなりに見せたりはしたが、影のゲートはキブツにとっても驚くだろう。
……影に沈む感覚は、人によって好き嫌いが分かれるので、キブツがその辺どうなのかは少し興味深いが。
ともあれ、キブツは部下にドレイク城に向かうと伝え……俺と共に、影のゲートでドレイク城に向かうのだった。
「これは……また……」
影のゲートでドレイク城に出た瞬間、キブツは微妙な表情を浮かべる。
その様子からすると、キブツにとって影のゲートに沈む感触はあまり好みではなかったのだろう。
いやまぁ、殆どの者はあの感触は好きになれないって奴が多いけど。
それでも何度も使っていれば、次第に影のゲートに沈む感触にも慣れてくるんだが、キブツの場合は今日が初めてだったしな。
そうである以上、まだその辺に慣れないというのはしょうがない事なのかもしれないな。
とはいえ、俺の部下として活動するとなると、影のゲートを使う機会も多くなるので、そう考えると慣れて貰うしかないというのが正直なところなのだが。
「行くぞ。ドレイクにはもう約束をしてある」
本来なら、ドレイクが仕事をしている執務室に直接出てもよかったのだが、そうなればそうなったで色々と問題が起きそうな気がしたんだよな。
それに執務室に護衛がいた場合、下手をすれば俺達に攻撃してこないとも限らないし。
「分かりました」
キブツは俺の言葉に素直に頷き、そしてドレイク城の中を進む。
ちなみに俺が姿を現したのは、ドレイク城に用意されている俺の部屋だ。
以前泊まったあの部屋、正式に俺やマーベルの部屋という事になってるんだよな。
だからこそ、影のゲートで出るには丁度いい。
あるいは、ドレイクもそれを承知の上であの部屋を俺達専用にしたのかもしれないが。
キブツを連れて部屋から出ると、ドレイクが仕事をしている執務室に向かう。
途中で何人かの文官や騎士、兵士といった者達と遭遇するが、俺とキブツの姿を見ると、驚きつつも道を譲ったり頭を下げたりといったようにしてくる。
ドレイクからその辺についてはしっかりと言われているのだろう。
何人かは俺達がどこに行くのか、よければ案内をしようかとも言ってきたものの、ドレイクが使っている執務室は、俺にしてみれば既に何度も行ってる場所だ。
そんな相手に対しては、何も問題ないと言って通路を進み……やがて、目的の場所に到着する。
当然だが、執務室の扉の前には護衛が立っている。
ドレイクが国王である以上、護衛が必要なのは当然だろう。
ましてや、ドレイクはただの国王ではない。
フラオンを追い出し、国王の座を簒奪したのだ。
その上、ギブン領も攻略し、更にはミの国までも攻略し……現在はラウの国との戦端を開くべく準備を行っていた。
そんなドレイクだけに、その命を奪いたいと思っている者は幾らでもいるだろう。
そんな護衛も、俺の姿を見るとすぐに執務室の中に声を掛け、ドレイクからの許可を貰って執務室に通す。
「アクセル王、待っておったぞ」
「そうか? そんなに待たせたつもりはなかったんだがな。……まぁ、いい。取りあえずキブツは連れてきた。何を聞く?」
執務机で書類を片付けていたドレイクは、俺とキブツに部屋にあったソファに座るように勧め、ドレイクもまた読んでいた書類を片付けると俺とキブツの前に座る。
「そうだな、ではまずはこれから聞こう。ミの国を脱出したピネガン王達はどうした? やはりラウの国にいるのか?」
フラオンがラウの国にいるのかといったような事は、既にキブツがボゾンを持ってきた以上、そこにいるのは決まっている。
であれば、フラオンについては聞く必要はなく、ミの国を追い出されたピネガン達がラウの国にいるのかどうかというのを気にするのは当然だろう。
「はい、ピネガン王達も現在はラウの国にいます。ですが、その扱いはフラオン王よりも数段下かと」
その言葉に納得しつつ、ドレイクからの質問は続くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680