転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4473話

 相澤と一緒にバスに乗ると、すぐにバスは出発する。

 当然ながら、俺がバスに乗って出発するのを見送るような相手はいなかった。

 もしかしたらA組の生徒の誰かが来るかもと思ったのだが……いや、俺に情報を与えない為に隔離していたのを考えると、既に他の生徒の試験が終わっていても、俺の見送りに来るといった事はないか。

 

「さて、じゃあこれから試験の内容を説明する」

 

 バスが出発して数分が経ったところで、相澤がそう言ってくる。

 こうしてバスの中で試験内容の説明をするのは、効率を重視する相澤らしいと言えばらしいな。

 他の面々の場合は前もってコンビを組む相手と教師が決まっていたので、バスで移動中にどういう風に戦うのかといった事を相談したんだろうけど。……とはいえ、それが無理な者達もいるだろうけど。

 具体的には、緑谷と爆豪とか。

 水と油……というのとは少し違うな。

 緑谷は爆豪に一種憧れの感情を持っているものの、爆豪は緑谷を少し前まで無個性で馬鹿にしていたのに、今では自分のすぐ後ろまで追ってきている者という認識がある。

 原作ではその辺がどうだったのかは分からないが……緑谷と爆豪の関係は決して良好とは言えない。

 とはいえ、同時に爆豪の敵愾心……いや、対抗心は俺に向けられているので、その分だけ緑谷に対する当たりは強くない。

 もっとも、緑谷は何だかんだと爆豪に話し掛けており、それによって邪険に扱われてはいるが。

 

「まず、これから行く場所は運動場γだ。覚えているか?」

「運動場γ……ああ、工業地帯の」

 

 以前、職場体験が終わった後で、レースをやった場所だな。

 緑谷が爆豪っぽい動きをしてみせたのが印象深い。

 ……あれで、また余計に爆豪は緑谷を気に食わなくなったんだろうな。

 

「そうだ。お前はその中央部分からスタートし、こちらの指定したゴールを目指して貰う」

「……え? それだけでいいんですか?」

「最後まで聞け。当然ながらゴールに到着するのを邪魔する者もいる」

「相澤先生とかですか?」

「どこで誰が、そして何人が妨害をするのかは秘密だ」

「……なるほど」

 

 妨害をするのは教師が1人という事はまずないだろう。ただ、それが具体的に何人なのか言わないのは上手いな。

 これで具体的に何人と言われれば、こっちも対策を立てやすくなる。

 だが、何人いるのか分からなければ、対策のたてようがない……訳ではないが、非常に手間だ。

 

「ちなみに、教師はサポート科の作った重りを付けているから、全力は出せない。……まぁ、アクセルの場合は重りがなくても問題ないような気がするが、その辺はこちらの都合だから我慢してくれ」

 

 こちらの都合というのは、つまり教師として何かがあるということなのだろう。

 それが具体的に何なのかはちょっと分からないが……こっちとしては問題ない。

 とはいえ、出来れば何の縛りもないオールマイトと正面から戦ってみたいという気持ちがあるのは事実だが。

 ……ただ、オールマイト……うん、何だか映像とかで見るよりもかなり弱まっているような気がするんだよな。

 

「分かりました。それで、俺はゴールすればそれで合格ですか?」

「いや、違う。……ああ、いや。勿論ゴール出来ればそれで赤点といった事はまずないし、十分な点数にはなる。だが、それとは別にポイントを追加する要素もある」

 

 そう言い、相澤は俺に手錠……いや、この世界ではハンドカフスだったか? とにかくそれを見せ……渡してくる。

 それも一個ではなく、10個も。

 当然ながら、ハンドカフス……言いにくいな、やっぱり俺の中では手錠呼びの方がいいか。

 手錠だけに、1個だけならともかく10個ともなれば重量はともかく、その量で邪魔になる。

 

「ヴィラン役の教師にこのハンドカフスを嵌めると無効化したという事になり、演習試験の点数に加点される」

「……なるほど。けど、それだと俺だけちょっと他の生徒よりも難易度が高くないですか? 話の流れからすると、恐らく他の生徒も教師と戦うか、俺のようにゴールを目指すとかなんでしょうけど、その時は1人だったんでしょうし」

 

 勿論俺の演習試験の内容と他の面々の内容が同じだとは限らない。

 限らないのだが……それでも恐らくそう違いはないだろうというのが俺の予想だった。

 

「それだけ、お前の実力が突出しているという事だ。……冗談でも何でもなく、お前は今の時点でプロヒーローとしてやっていけるだけの実力はある。まぁ、免許もなしに行動すればヴィジランテになるだろうしな。特にアクセルの場合は下手に実力があるだけ、あいつよりも……いや、止めておこう」

 

 ヴィジランテについては、この世界に来て龍子の事務所でヒーローについて調べた時、その中にあったな。

 元々自警団とかそういう意味の言葉なんだが、このヒロアカ世界においてはプロヒーローの免許を持っていないにも関わらず、ヒーロー活動をする者の事だ。

 勿論プロヒーローの免許がないので、例えヒーロー活動をしていても、プロヒーローに見つかれば逮捕……というか、捕縛されて警察に引き渡される。

 プロヒーローというのは、あくまでも免許があってやっているものなのに、力があるからといって免許もなしにヒーロー活動をすれば、捕まるのは当然だ。

 分かりやすい例が車だろう。

 車の免許を持っているから車を運転しても問題はないが、誰に習ったとかどうやって覚えたのかはともかくとして、車を運転出来るけど免許がない奴が無免許で車を運転したら、警察に捕まる。

 それと同じようなものだ。

 もっとも、それでもヴィジランテとして活動する者は後を絶たないらしいが。

 何しろこのヒロアカ世界は、ヒーローこそがスターだ。

 それに憧れる者は多数いるし、実際中学校の進学先もその大半がヒーロー科らしいし。

 とはいえ、当然ながら全員がヒーロー科に入れる訳でもなく、試験に落ちて別の学科に入る事になるというのは……雄英の例を見れば分かりやすいだろう。

 そうした者達が、それでもヒーローになる夢を諦められず、ヴィジランテとして活動する者が多いらしい。

 勿論、それが全てという訳ではなく、中にはそれ以外の何らかの理由でヴィジランテとして活動する者もいるらしいが。

 相澤もプロヒーローとして活動している一面があるだけに、そういうヴィジランテの知り合いがいてもおかしくはないか。

 

「とにかく、今回の演習試験はアクセルの実力を認めたからこそのものだと言ってもいい。それに……お前が体育祭の開会式で口にした、壁になるという言葉。それを考えれば、他の生徒達よりも難しい試験を受けて、その上でクラスの1位になるのは……悪くないんじゃないか?」

 

 なるほど、そういう事か。

 実際、俺の役目として自認している、他の生徒達に対する壁として考えた場合、他の生徒達よりも難易度の高い……それも少しだけではなく、とんでもなく難易度の高い今回の試験は、俺が壁として他の生徒達の前に立ち塞がるという事を示すには十分だろう。

 それに、相澤にその気があるのかどうかは分からないが、ヒントを与えてもいる。

 それが、俺に渡した10個の手錠だ。

 これはつまり、俺の演習試験に参加する教師の数は最大でも10人という事を意味している。

 そして最初に演習試験の説明をする時に集まった教師の数は相澤を入れると9人なので、恐らくあの場にいた教師は全員が俺の演習試験に参加すると考えても間違いないだろう。

 その場合、1つ手錠が余る事になるが……これは予備と考えるべきか、それとも実はまだ他に1人いるのか、その辺りは分からないが。

 とはいえ、その辺りは実際にやってみないと何とも言えないな。

 

「分かりました。それで問題ありません」

 

 そう俺が言うと、少し……本当に少しだけだが、相澤が驚いた様子を見せる。

 まさか俺がこの提案を一切躊躇する事なく受け入れるとは思わなかったのだろう。

 

「……では、そのようになる。他に質問はあるか?」

「そうですね。……これは生意気だと思われるかもしれませんけど、俺が教師を捕らえる時に多少なりとも怪我をさせてしまった場合、問題にはなりませんか?」

 

 この言葉に、相澤が一瞬動きが止まる。

 まさか、俺の口からそのような言葉が出るとは思っていなかったのだろう。

 だが、すぐに口を開く。

 

「意図的に怪我をさせるといった事をした場合、問題になるのは分かっているな?」

「勿論、そんな事をするつもりはないですけど、場合によっては怪我をするかもしれないのは、俺の個性を考えると当然でしょうし」

「……まぁ、リカバリーガールがいるから、重傷でなければ問題はない」

 

 そう言う相澤だったが、他の教師はともかく、オールマイトを相手にする場合、どうしても重傷になる可能性もある。

 もっとも、それを言えばオールマイトの実力を知っている者にしてみれば、それは不可能だろうと言ってもおかしくはないと思う。

 何しろ、オールマイトは何十年もの間、No.1として君臨し続けたのだから。

 

「分かりました。質問は他にはありません」

 

 そう言うと、相澤もそれ以上は何も言わず……そのまま黙って、俺は運動場γに登場するまで黙って待つのだった。

 

 

 

 

 

 運動場γに到着すると、相澤の指示した場所に向かう。

 俺がその場所に行ってから少し余裕を持って、演習試験がスタートする手筈となっている。

 俺が準備をしている間に、教師達も俺を待ち受ける為にどこかに隠れるようになる筈だ。

 もっとも、個性というのが最優先された結果として、気配を察知するとかそういう能力が知られていないこのヒロアカ世界においては、そういう能力を持つ俺を相手に隠れて奇襲を仕掛けるというのは無理があるが。

 それでも、俺を相手にした場合、教師達は殺気を放って攻撃する訳ではないから、そちらで察知するのは難しいが。

 ……ほらな。

 歩いていると、少し離れた場所に気配を感じる。

 ただ、これが具体的に誰の気配かはちょっと分からない。

 相澤やオールマイト、ミッドナイトといったように、それなりに接する機会の多い相手なら気配を覚えたりもしているが、この気配はその3人ではない。

 それはつまり、逆説的に演習試験に参加している教師のうちの残り6人……もしくは手錠が10個あるのを考えると、俺の演習試験の為に追加されたかもしれない1人の教師といった可能性もあるのだが。

 とにかく、本人としては上手く隠れているつもりなのだが、俺からは丸見えだ。

 いや、見えるんじゃなくて感じているんだから、丸見えって表現はおかしいか。

 取りあえず1人目の確保はこの気配でいいかもしれないな。

 ちなみにこの演習試験の中で俺が警戒している相手は当然オールマイトだが、その次に厄介な存在と感じているのが、スナイプだ。

 その最大の理由は、スナイプというヒーローネームから分かるように、狙撃を得意としているプロヒーローだからというのがある。

 別に狙撃が怖いという訳ではない。

 それこそ混沌精霊の俺なら、撃たれた弾丸を指で摘まんで止めるといった事も出来るだろうし。

 ダメージは……単純な物理攻撃なら俺には効果がないのだが、スナイプの場合は銃弾をホーミングという個性で操るらしいので、弾丸に個性が宿っていたりした場合、もしかしたら俺にダメージを与えられるかもしれない。

 ただ、俺が厄介だと思っているのはその個性ではなく、狙撃という攻撃方法に必須の狙撃銃に付属している、スコープだ。

 そう、この演習試験において、俺は気配遮断を使うつもりだ。

 この気配遮断は個性じゃなくて技術という事で、既に知らせているしな。

 というか、USJの一件で相澤と戦っていた――というか押さえ込んでいた――脳無を相手に使ったので、隠しようがなかったというのが正直なところなのだが。

 だが、この気配遮断……あくまでも見えなく出来るのは生身の目だけで、双眼鏡とかカメラとか、そういうのを通すと、気配遮断の効果を発揮せずに丸見えになってしまう。

 狙撃銃のスコープも、同様にだ。

 つまり、俺が気配遮断を使ってもスコープ越しにならスナイプにしっかりと見られる事を意味している。

 もっとも、そう考えれば密集工業地帯であるこの運動場γは、スナイプにとってもスコープで俺を見つけるのは、建物の陰になって難しいという事を意味しているのだが。

 この辺、もしかしたら相澤が……あるいは校長か?

 とにかく、俺が一方的に不利だというだけではなく、それなりに有利になるように試験会場を選んだのかもしれないな。

 とはいえ、あくまでも不利になるのはスナイプだけで、他の面々は別に不利という訳ではない。

 寧ろ体臭で相手を眠らせるミッドナイトにしてみれば、隠れながら攻撃出来たりもする訳で、かなり有利な場所だろう。

 そんな風に考えつつ歩き続け……やがて、相澤に指示された目的地に到着する。

 後は演習試験の開始の合図を待つだけだった。

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