転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4476話

「じゃあ、すいませんけどスナイプ先生は暫くここで待っていて下さい」

「分かったよ。それにしても、どういう運動神経をしてるんだ?」

「伊達に入試でトップだったり、体育祭の優勝者って訳じゃないんですよ」

 

 そう言い、手錠を嵌められたスナイプをその場に残して虚空瞬動を使い、プレゼント・マイクと校長のいる方に向かう。

 校長は鉄球の工事車両にいるのでどこにいるのか分かるんだが、プレゼント・マイクはどこだ?

 さっきプレゼント・マイクがいた場所には、既にその姿はない。

 俺がスナイプのいる場所に向かったのを見て、さっきの場所にいたままでは不味いと判断したのだろう。

 実際、さっきまでと同じ場所にいたままなら、俺は即座にプレゼント・マイクのいる場所に向かって倒していただろう。

 具体的には手錠を嵌めるという意味で。

 だが、プレゼント・マイクが消えたという事は、どこに隠れているのか見つける必要がある。

 となると、まずは分かりやすい校長からか。

 そう思うと、ちょうどそのタイミングで鉄球がこちらに向かって振るわれる。

 とはいえ、工場ならともかく、俺を相手に攻撃するのは無理があるだろう。

 こちらに向かってくる攻撃を回避しつつ、工事車両の操縦席に向かうが……

 

「うわ、こう来たか」

 

 操縦席に突っ込んだ俺が見たのは、校長の姿……ではなく、自動操縦装置が設置された操縦席だった。

 最初からこの自動操縦装置だったのか、それとも俺がスナイプのいる場所に向かったのを見て自動操縦装置を使ったのか。

 それはどうなのか分からないが……とにかく、プレゼント・マイクと校長を逃がしてしまったのは間違いない。

 となると、一体どうすればいい?

 疑問を抱いていると……ピ、ピ、ピ。

 そんな音が聞こえてくる。

 音の聞こえてくる方に視線を向けると、そこには露骨に時限爆弾と思しき物のタイマーがあった。

 残り時間30秒。

 勿論、これは本物の爆弾ではないだろう。

 恐らくは音と光だけのダミーの爆弾の筈だ。

 ……もっとも、この工事車両が使っている鉄球は本物の鉄球だ。

 そうなるとこの爆弾も本物といった可能性は……さすがにそれはないか。

 ともあれ、俺は虚空瞬動を使ってその工事車両の操縦席から退避する。

 

「いた」

 

 空中で周囲を見回すと、建物に隠れながら走っている校長の姿を発見する。

 この鉄球の工事車両から、そう離れていない。

 いやまぁ、それは当然か。

 俺がスナイプのいる場所に向かった時に操縦席から下りた……それも自動操縦装置を設置するといった手間もある。

 そう考えると、そう遠くに逃げられる筈もない。

 だからこそ、こうしてまだ近くにいたのだろう。

 プレゼント・マイクについては置いておき、校長を追う。

 何故なら、校長を捕らえるのが何気に難しい為だ。

 普通のネズミとかよりもかなり大きな校長だが、それでも人と同じくらいの大きさという訳ではない。

 それは、他の生徒達の演習試験が始まる前に、相澤のマフラーに擬態していたのを見れば明らかだろう。

 そのような小柄な校長だけに、この運動場γでは隠れる場所は幾らでもある。

 ……勿論、絶対に校長を捕らえないといけない訳ではないのだが、それでも捕らえられるのなら捕らえて、演習試験の点数を少しでも上げておきたい。

 もっとも、手錠の大きさと校長の大きさの違いを考えると、もし校長を見つけても普通に手錠を嵌められるとは限らないが……まぁ、その辺りは校長も考えているだろう。

 最悪、本当に最悪の場合、校長を連れたままプレゼント・マイクを捕らえたり、最後の関門であるオールマイトと戦ったりすればいいだろうし。

 もっとも、今更……本当に今更の話なんだが、こうして2人から3人ずつに別れて、オールマイトもゴールの側で待機しているだけで、協力して俺に襲い掛かってこないのは……まぁ、これが演習試験だからというのもあるんだろうな。

 実戦での事を考えるとどうかと思うが、これが1年の……それも1学期の期末テストの演習試験だと思えば、これでも厳しいのかもしれないな。

 それでいながら、俺という存在の特別性を考えてしっかりと難易度も調整している辺り、素直に凄いとは思うけど。

 

「その辺、どうなんです?」

「……それだけを聞かれても、分からないのさ」

 

 胴体を鷲掴みにされた校長が、そんな風に言ってくる。

 とはいえ、それもおかしな話ではないか。

 俺は別に口に出して考えていた訳ではなく、いきなりどう思うのかと聞かれたのだから。

 これで校長が的確に何かを言えたら、その時の方が驚きだろう。

 

「ともあれ、校長はこれでいいとして……ああ、やっぱり手錠は大きいですね。どうせなら、校長用の手錠も用意して欲しかったところですけど」

「手錠というのは人聞きが悪いので、ハンドカフスと言って欲しいのさ! とにかく、捕まった以上はハンドカフスを使われたという事にしてくれて構わないよ」

「……そう言いつつ、実は後で違ってましたとか、そういう風に言わないですよね?」

 

 今の校長はヴィラン役としてここにいる。

 であれば、口では上手い事を言いながらこの場から逃げ、後で実は捕まっていませんでしたとか、そういう風に言うのもありじゃないかとは思う。

 ヴィランの小賢しさを演出する的な意味で。

 

「おっと、疑り深いね。けど、心配いらないのさ。さすがに校長として、そこまで意地の悪い事はしないしね。だから私に手錠を渡してくれないか?」

 

 校長がそこまで言うのならという事で、取りあえず校長の手錠を渡しておく。

 

「これで、私は捕まった事になるのさ。じゃあ、ここにいると危険だから失礼するよ」

 

 そう言い、手錠を持った校長はこの場から走り去る。

 いや、ここで待っていなくてもいいのか?

 そうも思ったのだが、校長は頭はいいのかもしれないが、身体は普通……いや、普通よりもかなり大きいものの、とにかくそんな訳で身体は強くない。

 そして残っているのは、オールマイトとプレゼント・マイク。

 オールマイトはゴールの前で待っているだろうけど、プレゼント・マイクはまだこの辺のどこかに隠れている。

 広範囲攻撃が得意なプレゼント・マイクだけに、校長がいると被害を受けかねない。

 ああ、いや。でも、そうだな。

 校長がいると思わせれば、それはそれで悪くないかも?

 もっとも、それがヒーローのやるような行為なのかと言われて、減点になる可能性もあったが。

 そんな風に思いつつ跳躍し、虚空瞬動を使って工場の屋上に立つ。

 狙撃が可能なスナイプはもう捕まったので、気配遮断を使わずに空を自由に移動しても、もう攻撃される心配はないんだよな。

 工場の屋上に着地すると、マスクの機能を使ってプレゼント・マイクのいそうな場所を探索する。

 俺のヒーローコスチュームの中で、このマスクとマントはどれもかなりのコストが掛かっている。

 そのマスクの機能を使えば、プレゼント・マイクのいそうな場所は……お、きた。候補は5つか。

 何をどういう風に判断してそういう結果が出たのかは、分からない。

 ただ、それでもプレゼント・マイクのいる可能性の高い場所をこうして絞り込めたのだから、ありがたいのは間違いなかった。

 そんな訳で、候補の中で一番可能性の高い場所に向かい、虚空瞬動を使って向かうと……

 

『YEAAAAHHHHHHHHH!』

 

 俺の向かっていた場所から不意に姿を現したプレゼント・マイクが、絶叫する。

 マスクの示した場所が、どうやら当たりだったらしい。

 工場の壁の裏から姿を現したプレゼント・マイクのその叫びに、虚空瞬動を使って一度大きくその場を離れる。

 プレゼント・マイクの厄介なところは、声が届けば攻撃範囲内であるという事だろう。

 ましてや、声を通しての攻撃だけに、具体的にどこからどこまでが攻撃範囲内なのか、分からないのも痛い。

 とはいえ、それでもこうして大きく跳べば攻撃範囲から退避出来るのだが。

 今のように。

 そうして十分に距離を取ったところで、プレゼント・マイクの声が工場を破壊しているのを見つつ……再度空中を蹴る。

 

「んなっ!?」

 

 プレゼント・マイクにしてみれば、俺の行動は予想外だったのか、そんな声を上げ、逃げようとする。

 プレゼント・マイクもプロヒーローである以上は、近接攻撃の技量はそれなりにあってもおかしくはない。

 おかしくはないのだが、それでも自分の持つ近接戦闘の技量では俺に勝てないと判断したのだろう。

 個性を使って迎撃するといった選択肢もあると思うのだが……いや、さっきの回避で、個性の声を使った攻撃は俺に効果がないと判断したのか?

 その辺りの理由はともあれ、今は逃げようとしているプレゼント・マイクを追う。

 スナイプを先に倒しておいてよかったな。

 勿論、スナイプの狙撃があってもそれを止める事は出来る。

 出来るが、それでも面倒なのは間違いないのだから。

 その辺りを気にしなくてもいいというのは気楽であり……

 

「ぐぅ……さすがリスナーだ」

 

 結局逃げ切れず、捕まって手錠をされたプレゼント・マイクが悔しさと感心を込めて、そう言ってくる。

 リスナーね。

 そう言えば、プレゼント・マイクは副業というか、趣味としてラジオのパーソナリティーもやってるんだったか。

 その辺もあってか、生徒をリスナー呼びしているのだろう。

 あるいは単純にキャラ付けかもしれないけど。

 ともあれ、プレゼント・マイクも無事捕らえたので、これで残るのはオールマイト1人。

 ……いや、手錠の数を考えると、もしかしたらまだ1人、未知の存在がいる可能性もあるのだが、それについては今は考えないようにしておく。

 そもそもいるかどうか分からない相手を警戒するよりも、確実に存在する……それでいて、No.1ヒーローのオールマイトと戦う方が優先なのだから。

 ぶっちゃけ、俺にしてみればオールマイトと戦える機会があっただけで、この演習試験を受けた甲斐はある。

 俺と戦うよりも前に、緑谷と爆豪と戦ったらしいけど……そっちがどうなったのか、少し気になる。

 とはいえ、オールマイトにその辺について聞いても話すとは思わないが。

 とにかく最後の1人である、オールマイトとこれから戦えるのだ。

 俺は別に戦闘狂やバトルジャンキーといった訳ではないが、それでもやはりオールマイトと戦えるのは嬉しいと思う。

 素直に、このヒロアカ世界の日本のNo.1ヒーローとのオールマイトと本気で戦えるのが嬉しい。

 もっとも、そのオールマイトも他の教師達と同じく重りをしているので、本当の意味で全力という訳ではないのだが。

 ともあれ、オールマイトのいる方に向かって歩き出す……前に、例によって例の如く、建物の陰に入ってから気配遮断を使う。

 これ……恐らくは見ているだろうA組の面々にとっては、意味分からないよな。

 カメラを通してなら気配遮断の効果もないので、A組の面々……いや、もしかしたら他の教師達もか? とにかくそういう者達にしてみれば、俺はただ歩いているだけにしか見えないのだから。

 だが実際には、生身の目で見ている者、あるいは眼鏡やサングラスを掛けている者にとっては、俺の姿は全く見えない。

 この世界……というか、人型機動兵器とかのない、生身での戦いの世界においては、気配遮断ってかなり便利だよな。

 そんな風に思っていると、やがてゴールが見えてくる。

 この運動場γは密集工業地帯で、実際に多くの工場が密集している。

 だが、オールマイトのいる場所、ゴールのある場所は、その外側……工場といったような、戦闘をする上で邪魔になるような建物はなにもない場所に用意されていた。

 これはつまり、オールマイトと俺が戦う際に邪魔にならないようにと考えてのものだろう。

 そういう気遣いは素直にありがたいよな。

 そう思いつつ、俺は堂々とゴールに向かう。

 ゴールの前に立ち塞がっているオールマイトの姿は見えるが、向こうは俺に気が付いた様子はない。

 これ……もしかしたら、俺がその気になればオールマイトを無視してゴールに到着出来るんじゃないか?

 今回の目的はあくまでもオールマイトと戦う事なのでゴールに向かうつもりはない。

 ないのだが、それでもやろうと思えば出来るというのは、大きな意味がある。

 出来るけどやらないのと、出来ないからやれない。

 この2つは、似てはいるものの、実際には大きく違うのだから。

 そのような状況だけに、俺としては満足しながら……さて、どうするかと考える。

 オールマイトと戦うのは間違いない。

 重りのせいで相手が全力を出せないというのは思うところがあるが、それでも戦える機会を逃す筈もない。

 ただ、出来ればこう……うーん、いっそ見えない状態からオールマイトに奇襲を仕掛けるとか?

 攻撃をした瞬間に気配遮断の効果は切れるが、そもそもこれからオールマイトと戦うのだから、その辺に気にしても仕方がない……ん?

 考えていると、不意にオールマイトが動く。

 こちらに向かい、拳を振り……

 

「マジか!?」

 

 振るわれたその拳を、俺は気配遮断を解いて回避するのだった。

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