転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4484話

「ふぅ……打ち上げの後だと、こうして静かな部屋に1人でいると寂しさが……」

『そうすると、このヴィランは自分の趣味を満足させる為だけに今回の事件を引き起こしたと?』

『そうなりますね。ただ、このヴィランを捕縛したプロヒーローが、少しやりすぎです』

「何よ、あそこで行動するのが遅くなったら周囲に被害が及んだのは間違いないんだから、間違ってないでしょ」

「寂しさが……」

『続いて次は天気予報となります。明日の静岡は晴天に恵まれ、夏らしい晴れ間が広がるでしょう』

「えー……日焼け止めとか塗らないといけないじゃない。紫外線きらーい」

「寂し……」

「痛っ! ちょっとあんた、今なんでぶつかってきたのよ!? 今日は何も散らかしたりしてないでしょ!?」

「って、いい加減にしろ!」

 

 打ち上げが終わって部屋に帰ってくると、そこではいつものように優がソファに寝そべりながら、ニュースを見て、ロボット掃除機に体当たりされては文句を言っていた。

 

「あら、おかえりアクセル。今日は遅かったわね」

 

 ソファで横になりつつ、体当たりしようとするロボット掃除機を押さえながら、優がそう言ってくる。

 

「演習試験……期末テストが終わったから、打ち上げをしていたんでな。……それで優は何でここにいるんだ?」

「何でって、殺気を感じる訓練をしに来たんだけど?」

 

 自分がここにいて当然といった様子でそう言ってくる優。

 それに呆れつつも、反論するのは止めておく。

 実際、テストが始まる少し前からは気を遣って部屋に来るような事はなかった。

 今日でテストが終わったので、それでこうして久しぶりに訓練に来たと言われれば、俺としても責めることは出来ない。

 

「来るにしても、前もって連絡くらいはしてもいいんじゃないか?」

「サプライズよ、サプライズ」

 

 そう言いながら、優はクッキーを食べつつTVを見る。

 ……そのクッキーの破片が床に落ちて、それを即座にロボット掃除機が綺麗にしていく。

 優はそういう事をするから、ロボット掃除機に敵として認識されるんだと思うんだが。

 

「随分とやる気のないサプライズだな。……まぁ、それはいいけど、今日は優だけか? 龍子はどうした?」

「先輩はちょっとウワバミと打ち合わせがあるから、今日は来られないって」

「ウワバミと?」

 

 優の口から出たのは、俺にとってもかなり意外な内容だった。

 龍子とウワバミというのは、かなり珍しい組み合わせだ。

 どちらも美人なプロヒーローという点では同じだが、その方向性は随分と違う。

 凜々しい系の美人の龍子と、お水系の美人のウワバミ。

 どちらも美人という事で人気はあるが、ウワバミの人気はどちらかといえば男に多く突き刺さるタイプで、寧ろ龍子より優の方が似ているだろう。

 ただ、お水系の美人という事もあって、優よりも更に突き刺さる者達は狭いだろうけど。

 

「ええ、何でも今度CMに一緒に出るらしいわ」

「ふーん。……龍子はCMに出るのに、優はソファで寝転がってお菓子を食べているのか」

「ぐ……そ、それは……その、しょうがないじゃない。私は呼ばれなかったんだから。……痛っ! ちょっ、いい加減にしなさいよ!?」

 

 俺の言葉に図星を突かれたのか、優の足がソファから出て床についたところで、機会を見逃さずにロボット掃除機が突撃し、優の口から悲鳴が上がる。

 あの2人……というか、1人と1台は相変わらずだな。

 

「今度優も、ソースのCMに出るって言ってなかったっけ?」

「そうよ。それは悪くないし、オファーを出してきた企業には感謝してるけど、私も女のプロヒーローなんだから、先輩みたいに化粧品とかそういうののCMに出たいのよね」

「色物なんだから、無理だろ」

「……ちょっと? 誰が色物ですって?」

 

 色物といった表現が不満だったのか、優は俺をジト目で見てくる。

 まぁ、うん。優は外見は間違いなく美人だし、実際にその美貌で次のヒーロービルボードチャートでもトップ10は無理でも上位に入るのは間違いないと言われている。

 ただ、優を知っている俺にしてみれば、色物……というのは少し大袈裟かもしれないが、それでも龍子やウワバミのようなタイプとは違うように思える。

 こう……隙の多い近所の美人なお姉さん的な?

 あ、でもこれだけと色物にはならないか。

 

「優は自分のこれまでの行動を振り返った方がいいと思うぞ。取りあえず俺はちょっと用事をすませてくるから、優はもう少しここで待っていてくれ」

 

 そう言うと、優は不満そうな様子をしたままではあったが、黙り込む。

 優をリビングに置いて、寝室に入ると、制服を脱いで部屋着に着替え、荷物も机の上に置き……ああ、そうだ。そう言えばあの件についてもどうにかしておかないとな。

 空間倉庫から2枚のチケットを取り出す。

 それは、I・アイランド行きのチケットだ。

 体育祭優勝の賞品として相澤から貰った奴。

 1枚は俺が使うが、もう1枚は別の奴が使うという事になっている。

 いるのだが、問題なのはそれを誰にするかという事だった。

 なので、いつもの面子にLINでI・アイランドのチケットが1枚余っていると書き込むと……

 

「予想以上にあっさりと決まったな」

 

 5分もしないうちに話が決まり、少し驚く。

 正直なところ、誰が行くのかでもう少し時間が掛かると思っていたんだが。

 とはいえ、これはある意味で仕方がない……いや、この表現はちょっと違うか。とにかく成り行きでそういう感じになった訳だ。

 最初にこの件をLINに書いたところ、ヤオモモと拳藤以外の全員が行きたいと主張した。

 ……ヤオモモはともかく、拳藤が何で行きたいと言わなかったのかは分からない。

 自分がB組だからというのを気にしていたのかもしれないが。

 ともあれそんな風に大勢が立候補したのだが、ヤオモモがチケットを人数分用意出来ると言うと、全員が立候補するのを止めた。

 とはいえ、俺が賞品として貰ったチケットを無駄にするのもどうかという事で……結果、何がどうなったのかは俺にも分からないが、結局俺のチケットは拳藤が使う事になったらしい。

 拳藤は最初に立候補しておらず、多分本人も最初は行くつもりはなかった。

 なかった筈なのだが、何がどうなったのか分からないが、俺と一緒に行くのは拳藤になったらしい。

 拳藤はかなり戸惑っていたようだったが、元々I・アイランドについてはかなり興味があったらしく、最終的には俺と一緒に行く事に賛成した。

 したのだが……普通こういう時って、女じゃなくて男の瀬呂が俺と一緒に行くんじゃないのか?

 そうも思ったが、演習試験の件で受けた精神的なダメージから、俺と一緒に行くのは遠慮された。

 いや、それは意味が分からないんだが?

 打ち上げの時もカラオケで全力で歌っていたし……あ、多分あれは嫌な事を忘れる為の逃避行動だったのかもしれないな。

 とはいえ、それならなんで最初に立候補した? と疑問に思う。

 ともあれ、そんな諸々が決まったところで……

 

『ちょっと、アクセル。まだなの?』

 

 我慢の限界に来たらしい優が、部屋の外からそう声を掛けてくる。

 セーフ、ギリギリセーフ。

 LINを使ってのやり取りで、電話とかTV電話とかそういうのじゃなかったので、優の声が他の面々に聞かれるような事はない。

 いやまぁ、別にそういう関係って訳じゃないんだし、ヤオモモや三奈、葉隠、拳藤に優が家にいると言っても、別に困る事はないんだが。

 

「分かった、ちょっと待て。すぐに行く」

 

 用事があるからと断り、LINでのやり取りを終える。

 そうしてリビングに戻ると、こちらはもう準備万端といった様子の優がいた。

 ……へぇ。これはちょっと意外だったな。

 もうちょっとこう、やる気を見せない感じじゃないかと思ってたんだけど。

 

「何よ?」

「いや、何でもない」

「ふーん。それよりも、部屋の中で何をしてたの?」

「今日、体育祭の優勝の賞品としてI・アイランド行きのチケットを貰ってな。いつもの面子の中で行きたい奴を募集したんだよ」

「ふーん、それで誰と行く事になったの?」

「全員」

「……は?」

 

 一瞬、俺が何を言ってるのか分からないといった様子で、優がそんな声を上げる。

 いやまぁ、その気持ちも分からない訳じゃないけどな。

 実際、もし俺が優の立場なら、恐らく同じような反応をしてるだろうし。

 

「えっと、確認するけどチケットは2枚なのよね?」

「ああ」

「……それで一体どうやって全員で行けるのよ」

「ヤオモモが全員分のチケットを用意してくれる事になった」

 

 ヤオモモの実家万歳だよな。

 

「うわぉ……あ、でもそれなら私も一緒に?」

「いや、何でだよ。まぁ、気持ちは分からないではないけど、一応プロヒーローだろ?」

「プロヒーローだからって、アクセル達と一緒に行動したら駄目って事はないでしょ」

「いや、駄目だろ。一体どういう理由で優が一緒に来るつもりだ?」

 

 これで、あるいは他の面々とも顔見知りで、ある程度の関係を築いていれば何とかなるかもしれない。

 だが、いつもの面子で優について知っているのは、以前優のお漏らしの後片付けの為に呼んだ拳藤くらいだ。

 あ、でも一応体育祭の時、昼休みに優が俺と拳藤を強引に連れ出したので、その辺については分かっていてもおかしくはない。

 体育祭の打ち上げの翌日、男達が泊まったこの部屋に優がやって来て遭遇した事があったけど、あの時の優はヒーローコスチュームじゃなくて私服だったのもあって、皆が優を優だと気が付いていなかったしな。

 それにあの時もちょっと顔を合わせただけで、しっかりと話したりした訳じゃなかったし。

 あるいは職場体験で優と一緒に行動していた峰田から色々と話を聞いていたりするかも?

 ただ、結局のところ優と親しくない以上、優が一緒に行くのは無理だろう。

 そもそもI・アイランド行きのチケットと一口に言ったところで、結構な値段がする。

 それを殆ど関係のないヤオモモに用意して貰うというのは……うん、どうなんだろうな。

 もっともヤオモモの場合、頼られると弱いのであっさりとチケットを用意しそうではあるが。

 ヤオモモは何だかんだと、優しいというか……甘いしな。

 駄目男――ついでに駄目女――製造機的なところがある。

 

「えー……駄目なの?」

「駄目だな」

 

 正直なところ、もう少し早く……俺が帰ってきた時にその辺の話になっていれば、あるいはいつもの面子は全員がヤオモモに用意して貰ったチケットでI・アイランドに向かい、優は俺が体育祭優勝の賞品として貰ったチケットを使ってI・アイランドに行くといった可能性もあったのだが……もう拳藤が俺のチケットを使うことで、話が決まってしまったし。

 タイミングが悪いとしか言いようがなかったが。

 

「ほら、それよりも訓練を始めるぞ。龍子がいれば、優ももう少し真面目に訓練をするんだろうけど、今日はいないしな」

 

 生真面目……とまではいかないが、それでも龍子はかなり真面目な性格をしている。

 その上で、自分が強くなることにも貪欲だ。

 特に俺という異世界の……それも自分で言うのも何だが、圧倒的な強者がいるという事で、少しでも何かを掴もうと、強くなろうという思いが龍子にはある。

 ねじれも、何だかんだと自分が強くなるのにかなり必死だし。

 そういう意味では、優はちょっと他の2人に劣っている。

 いやまぁ、それでもこうして殺気を感じる訓練をする為に俺の部屋にやって来ているのを思えば、それなりに強くなろうとしているのは間違いないだろうが。

 

「分かってるわよ。先輩よりも早く殺気を感じられるようになってやるんだから。……ほら、アクセル。やってちょうだい」

 

 自信満々でそう言ってくる優。

 この様子だと、トイレには前もって行ってあるのだろう。

 まぁ、最初の訓練での一件があるから、優にとっては当然の事なんだろうが。

 

「準備はいいみたいだな」

 

 そう言うと、優を見る。

 この時に驚きなのは、いつもは優を敵視しているロボット掃除機が、何故か今は優を攻撃しないという事だろう。

 優に配慮しているのか、それとも俺に配慮してるのか。

 どちらにしろ、このロボット掃除機にAIはかなり高度な判断力を持っているのは間違いなかった。

 さすがロボット掃除機の中でも最高級クラスだけの事はあるな。

 

「ええ」

 

 真剣な視線で、優は俺を見返してくる。

 今日は久しぶりということもあってか、それなりにやる気みたいだな。

 なら、俺も少しやる気を見せるか。

 そう判断し、ジワリ……と殺気を放つ。

 最初は以前優が耐える事が出来た限界よりも少し軽い殺気から。

 耐えられるとはいえ、それでも平気で耐えられる訳ではない。

 今は何とか必死になって耐えようとしており……俺はそれを確認しながら、少しずつ殺気を強くしていく。

 優は必死になってその殺気に耐え続け……そうして、俺が優に少しずつ、少しずつだが殺気を放っていくのだった。

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