転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1846 / 2196
番外編202話 その頃のホワイトスター

 アクセルがヒロアカ世界で頑張っている頃……ホワイトスターはアクセルがいなくても、特に困る事もなく普通に運営されていた。

 当然だろう。

 アクセルが未知の世界に転移すれば、いつ帰って来るのか分からないのだ。

 であれば、アクセルがいなくてもホワイトスターという国が普通に運営されるのはそうおかしな事ではない。

 勿論、アクセルはホワイトスターにおける最大戦力であるのは間違いないが……それはつまり、何らかのトラブルがあってもホワイトスターの戦力があれば問題ないのならアクセルが戦力として必要という訳ではない。

 ましてや、ホワイトスターの有する戦力はアクセル以外にも多数存在し、それを思えばアクセルという最高戦力が必要になるような事は滅多にない。

 とはいえ……それはあくまでもアクセルを戦力として見た場合の話であり、恋人という点から見た場合、それは違っていた。

 

「そろそろアクセル君が戻ってきてもいい頃だと思うんだけど。いつくらいになるのかしら?」

 

 円がソファに座り、TVを見ながらそう言う。

 

「アクセルがいたら、この状況は喜んでいただろうな」

 

 スレイがペルソナ世界で販売されているファッション雑誌を見ながら、そう言う。

 そんなスレイの言葉に、多くの者が頷いていた。

 何しろ、今日この家にはアクセルの恋人達が全員集まっていたのだから。

 それこそ普段は自分の世界で活動している美鶴やゆかり、シーマ、モニク、クスコ、クリス、クーデリアといった面々まで。

 また、アクセルの恋人という訳ではないが、クーデリアのメイド――というか側近――のフミタンもいる。

 逆にいないのは、アクセルの養子のルリとラピスだ。

 この2人は今日友人の家に泊まりにいくということで、出掛けている。

 その為、今日この家にはアクセルの恋人達だけが――フミタンもいるが――集まっていた

 とはいえ、特に何か理由があってこのような状況になっている訳ではない。

 普段からこの家に住んでいない者達であっても、ホワイトスターにやって来るのは珍しくないのだから。

 そこにアクセルがいればいいが、アクセルがいなくても、ここには自分と同じアクセルの恋人達がいる事もあり、この場所こそが自分の本来帰るべき場所であると、思っている。

 そんな訳で、こうして部屋の中に20人程もの者達が集まってはいるが、不思議と狭さはそこまで感じられない。

 元々このリビングがかなり広く出来ているからというのもあるが、お互いに全てを……文字通りの意味で全てを知っている者達が集まっているからというのも大きいのだろう。

 そんな訳で、こうして集まってもそれぞれが自分の好きな事を、あるいは仕事をしている。

 

「マリュー、ガンダムフレームの件はどうなってるのかしら?」

「高硬度レアアロイを使った奴でしょ? 設計の方は問題ないわ。ただ、ナノラミネートアーマーは……微妙なところね。エイハブ・リアクターがあってのものだし。クーデリア、エイハブ・リアクターの件ってどうなってるの?」

「ギャラルホルンからの連絡によれば、近いうちに製造施設を持ってくるという話でしたが……太陽のような恒星の件は解決したのですか?」

 

 オルフェンズ世界でMSや軍艦、それ以外にも様々に使われている動力炉が、エイハブ・リアクターだ。

 このエイハブ・リアクターは莫大なエネルギーを生み出す動力炉で、例えばUC世界で使われている核融合炉のように壊れて爆発するといった心配は……取りあえずオルフェンズ世界の技術では心配しなくてもいい。

 それはつまり、シャドウミラーの技術なら、もしくは他の世界の技術なら壊せるかもしれないという事を意味しているし、恋人としてアクセルという存在を理解しているこの場にいる者なら、アクセルならあっさりと壊せそうと思っているが、それはともかくとして……

 そんなエイハブ・リアクターだけに、当然ながらシャドウミラーの技術班の中には興味を抱く者もそれなりに多く、レモンやマリューも同様だった。

 優れた動力炉であるのは間違いないエイハブ・リアクターだが、そこには幾つかの問題もある。

 その中の1つが、現在エイハブ・リアクターの製造技術を持っているのはギャラルホルンだけであるという事だ。

 ……ただし、アクセルがギャラルホルンで起きた騒動に介入し、マクギリスを中心とした者達の革命が成功した結果、その報酬のうちの1つとしてエイハブ・リアクターの製造施設を、製造技術と共に譲渡される事になった。

 これは、オルフェンズ世界にとっては非常に大きな事だ。

 現在オルフェンズ世界において、MSを完全に作れるのはギャラルホルンのみとなる。

 アクセルと……そして鉄華団と協力関係にあるテイワズも独自のMSを有しているが、それはあくまでもフレームを作る事しか出来ておらず、動力炉となるエイハブ・リアクターはデブリから見つけたり、あるいはどこかから買い取ったりといったようにして入手する必要があった。

 MSの製造技術を独占しているからこそ、ギャラルホルンはオルフェンズ世界において大きな影響力を持っていたのだ。

 そんなエイハブ・リアクターの製造技術や製造設備をシャドウミラーに譲渡したのだから、オルフェンズ世界の者であれば目を大きく見開いて驚きを露わにするだろう。

 ただし、エイハブ・リアクターの製造には恒星の……太陽の近くでないといけないという条件がある。

 そしてシャドウミラーの本拠地であるホワイトスターがあるのは、世界と世界の狭間で、当然ながら太陽はない。

 

「ああ、その件ならマブラヴ世界で対処する事になったわよ」

 

 クーデリアの疑問に、マリューがそう返す。

 太陽を自由に使える世界という意味では、宇宙開発が殆ど進んでいない世界……いや、ある程度進んでいても、太陽の側となると気が付かれないかもしれないが、とにかく宇宙開発が進んでいない世界がやりやすい。

 そういう意味では、マブラヴ世界は宇宙開発がかなり進んでいる方なのだが……そこはそれ、マブラヴ世界にとってシャドウミラーという存在は、何がどうあっても頭が上がらない。

 ましてや、太陽の側の設備となれば、マブラヴ世界の住人には手の出しようもない。

 

「でも、マブラヴ世界でしょ? 人類の危機でも人間同士で争っている世界なんだし、何をしてもおかしくはないんじゃない?」

 

 綾子の言葉に、話を聞いていた他の面々も、確かに……と納得してしまう。

 実際、マブラヴ世界という世界の民度という意味での評価はシャドウミラー的には決して高くはない。

 技術的な意味では、戦術機を始めとした見るべきところはあるといった感じなのだが。

 

「もし何か妙な動きをしたら……私の出番かしらね」

 

 ウフフと笑いながら、どこからともなく取り出した長ネギを手にする千鶴。

 その長ネギで一体何を? と思った者が何人かいたものの、聞けば後悔するだろうという本能に従い、誰も聞くような事はなかった。

 

「そんな訳で、エイハブ・リアクターについては問題ないわ。……それと、ハーフメタルの方も問題はないしね」

 

 エイハブ・リアクターを運用する上で欠点の1つが、エイハブ・ウェーブによる精密機器に対する悪影響だ。

 だからこそオルフェンズ世界においては、MS……に限らず、エイハブ・リアクターを持つ機体が街中に入るのはタブー視されている。

 その点は、シャドウミラーにおいても当然のように問題になるが……幸い、シャドウミラーにはそのエイハブ・ウェーブに対処する為の方法があった。

 オルフェンズ世界の火星だけに存在する、ハーフメタル。

 その産地から火星ハーフメタルと呼ばれる事もあるこの希少金属は、エイハブ・ウェーブの影響を遮断するという特性を持っていた。

 オルフェンズ世界におけるMSも、その電子機器にエイハブ・ウェーブによる悪影響を与えない為にハーフメタルを使われているが、それでもMS以外の精密機器にエイハブ・ウェーブの悪影響が出る。

 なら、より多くのハーフメタルを使い、エイハブ・ウェーブを機体の外に出さなければいいというのが、技術班の結論だった。

 もっとも、そのような事をすれば当然ながら悪影響も出る。

 具体的には、MSの推進力として使われているエイハブ・スラスターが使えなくなるという事だろう。

 エイハブ・スラスターはMSや艦船が使うスラスターの1つだ。

 MSや艦船のメインスラスターは熱相転移スラスターと呼ばれるもので、こちらは推進剤が必要になるものの、エイハブ・スラスターはエイハブ・ウェーブの粒子を使用して使えるスラスターで、推進剤の類は必要ない。

 だが、エイハブ・ウェーブが発生するのは間違いなく、エイハブ・スラスターを使えば精密機器に悪影響が出るのは間違いない。

 ハーフメタルを使ってエイハブ・ウェーブが外に出ないようにしても、エイハブ・スラスターを使えば意味はない。

 であれば、エイハブ・スラスターを使わない設計にする必要があった

 

「あれ? ……ねぇ、マリュー。ちょっとその設計図を見せて貰ってもいい?」

 

 不意にそう口を挟んだのは、クリス。

 UC世界のルナ・ジオンにおいても、MSやMAといった兵器メーカーのディアナでテストパイロットをやっているだけあって、マリューが手にしているPDAに映されたガンダムフレームについて気になったのだろう。

 

「いいわよ?」

 

 マリューとしても、別に隠す必要もないので見せる。

 ……ただ、見せるガンダムフレームは、あくまでもベースとなっている物で、オルフェンズ世界のガンダムフレームを技術班で改良した方のガンダムフレームではないのだが。

 しかし、クリスにしてみればそれはかなり興味深かったらしい。

 

「どうしたんだい? 何かそこまで興味を引く物でもあったのかい?」

 

 シーマのその問いに、PDAを見ていたクリスが顔を上げる。

 

「ええ、そうよ。ほら、アクセルが開発に関わった連邦軍のガンダム開発計画があったでしょ?」

「ああ……」

 

 シーマは……いや、シーマ以外にも、モニクとクスコというUC世界出身者が、クリスの言葉に微妙な表情を浮かべる。

 デラーズ・フリートによって起こされた、デラーズ紛争と呼ばれるようになった戦い。

 それは連邦軍にとっては大きな被害を与え、その上で強硬派の集団とも呼ぶべきティターンズを生み出したが、ルナ・ジオンにしてみれば非常にプラスの要素が多かった。

 具体的には、デラーズ・フリートが本拠地としていた茨の園を確保する事が出来たし、アナハイムとの裏取引によってガンダム開発計画によって開発されたMSの設計データや予備機の類も入手出来たし、それを更に改修したガーベラ・テトラ改のような高性能機も入手出来たのだから。

 とはいえ、ルナ・ジオンと地球連邦は現状においては表向きではあるが、友好的な関係にある。

 その為、連邦軍が資金を使って行ったガンダム開発計画の機体を大っぴらに使う事は出来ない。

 ……とはいえ、それはつまりガンダム開発計画の機体、具体的にはガンダム試作1号機のゼフィランサス、それとゼフィランサスの改修機であるフルバーニアン、ガンダム試作2号機サイサリス、ガンダム試作3号機のステイメン……正確にはオーキスと合体したデンドロビウム。

 これらは表立って使えないものの、そうではない機体は話が別だ。

 具体的には、アナハイムが秘密裏に開発していたガンダム試作4号機ガーベラを改修して作った、ガーベラ・テトラ。

 この機体はかなりの高性能機で、ルナ・ジオンにおいても注目されている。

 具体的には、現在エース級が乗っているギャン・クリーガーに代わる機体の候補として。

 もっとも、ガーベラ・テトラはかなりの高性能機だが、その分乗りこなすのは難しい。

 その更に上位機種とでも言うべきガーベラ・テトラ改は、言うに及ばずだろう。

 ともあれ、ガーベラ・テトラについてはそのような状況なのだが、ガンダム試作1号機の方は、実戦には使えないが、その設計にクリスとしては……いや、ディアナとしては見るべきところがあった。

 

「ガンダム試作1号機の構造の一部に、このガンダムフレームに近い構造の物が使われているの。ディアナの技術者達の中にもそこに注目している人が多かったんだけど……このガンダムフレーム、かなり参考になると思うわ」

「へぇ、それは面白そうだね。マリュー、レモン、どうだい? ガンダムフレームのデータをある程度ディアナに渡してみたら」

 

 シーマのその言葉に、マリューとレモンは視線を合わせ……

 

「いいわよ」

 

 予想外にあっさりと、レモンが……技術班を率いる人物がそう言う。

 

「いいのかい?」

 

 シーマとしても、クリスの手助けになればと思って提案してみたのだが、まさかこうもあっさりと受け入れられるとは思っていなかったのか、驚く。

 しかし、レモンはそんなシーマの言葉に頷き……そして、翌日からルナ・ジオンのディアナにおいて後々ムーバブル・フレームと呼ばれる事になる技術の研究が始まるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。