転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4495話

 葉隠が希望した限定クレープを食べた後は、色々な店を見て回ることになる。

 

「なぁ、アクセル。俺達ってここにいる意味があると思うか?」

 

 瀬呂が虚ろな……というか、面倒臭そうな目で俺にそう尋ねてくる。

 いやまぁ、その気持ちも分からないではないけどな。

 現在俺達がいるのは、I・アイランドにある商店街の中でも服屋の前。

 I・アイランドは科学者やその関係者、もしくはスポンサーの企業の関係者とか、結構な数の住人がいる。

 そうなると、当然ながら生活をする為に各種の店も必要になる訳で……そこに俺達のような観光客とかもショッピングを楽しむ為に、かなりの店が用意されている。

 さっき食べた限定クレープのような屋台もそうだが、結構な限定品が用意されているのも観光客用のものだろう。

 

「言うな、瀬呂。ここで俺達がいなくなると、絶対に後で面倒な事になるぞ」

 

 今こうして服屋で女達が買い物をしている中、待っているのは退屈だ。

 それでもこの服はどうかといったように意見を求められるよりは、こうして店の外で待っている事が出来るのは恵まれているのだろう。

 

「えー……面倒になるのは、やっぱりアクセルだけじゃないのか?」

「いや、俺だけに押し付けるなよ」

「あのな、アクセル。それ本気で言ってるのか?」

 

 俺の言葉に呆れの視線を向けてくる瀬呂。

 うん? 今のやり取りのどこかにおかしなところがあったか?

 

「何がだ?」

「……いいか、アクセル。まずは塩崎だ。塩崎なら分かりやすいだろう?」

 

 瀬呂の言葉にそっと視線を逸らす。

 いや、茨が俺をどのように思っているのかは十分に理解している。

 だが、一体何故茨はそこまで俺に心酔し、信仰するようになったのか……その辺は未だによく分からない。

 体育祭が理由だというのは分かっているのだが、それでも何というかこう……不自然じゃないか?

 宗教というのはそういうものなのかもしれないが。

 

「茨も女同士で服を見るってのは、楽しんでいるんじゃないか?」

 

 俺がその服装を褒めれば、茨は間違いなく喜ぶだろう。

 それは分かっているが……まぁ、うん。

 

「あー……まぁ、いいや。ここで俺が何かを言って変な事になると……いや、アクセル。塩崎は素晴らしい女だぞ? うん、俺がいつもの面子の中でアクセルに勧めるとしたら、間違いなく塩崎だ」

「おい? 何だか急に意見が……あー……うん」

 

 シュルシュルと店内に戻っていく棘の生えた蔦を見て、言葉を濁す。

 あの茨が俺のスライムと同じく震動を感じる事によって声を聞いたりとか出来るのかは分からない。

 分からないが、瀬呂の様子を見る限りだと震動、あるいはそういうのは関係なく単純に個性によって蔦を使って相手の声を聞くことが出来たりするのかもしれないな。

 

「大変だな」

「あのなぁ……寧ろそれを言うのは俺の方だと思うんだが? アクセルはよく……いや。止めておくよ」

 

 何かを言いかけた瀬呂だったが、それ以上は何も言わない。

 もしかしてまた茨の蔦を見たのか?

 あるいはそれを抜きにしても、ここで迂闊な事を言えば問題になるかもしれないと思ったのか。

 

「取りあえず話題を変えよう」

「悪いな」

 

 疲れた様子で瀬呂がそう言ってくる。

 まぁ、瀬呂にとっては精神的に疲れているのだから、仕方がない事なのかもしれないが。

 

「じゃあ……女達の買い物が終わったら、どこに行くかだな」

「何だか疲れたから、そろそろホテルに行きたい気もするけど……勿体ないような気もするんだよな」

 

 ちなみに俺達と合流した時、瀬呂を含めた他の面々は既にホテルにチェックインをした後だったので、荷物は持っていなかった。

 俺と拳藤が持ってきた荷物……AI搭載のスーツケースだったり、拳藤の荷物についてはヤオモモの指示によって既に俺達が泊まるホテルに運ばれている筈だ。

 偶然ながら……いやまぁ、実際には偶然でも何でもないんだろうが、とにかく俺と拳藤の泊まるホテルはヤオモモ達の泊まるホテルと同じだ。

 ヤオモモの家の系列なのか、それとも単純にホテルの経営者とヤオモモの両親が知り合いなのか……その辺りは分からないが、とにかく融通を利かせて貰っているのだろう。

 ともあれそんな訳で、荷物についての心配はいらないので俺と拳藤もこうしてI・アイランドの中を見学している訳だ。

 

「間違いなく勿体ないな。I・アイランドにいられるのはそんなに長くないんだから、ホテルで休むなんて事で時間を潰したいとは思わないぞ」

 

 折角の夏休みなんだから、ここはしっかりと遊ぶべきだろう。

 ただでさえ夏休み後半には林間合宿があるので、本当の意味で夏休みというのはそんなに多くなかったりする。

 

「とはいえ、宿題も大変なんだよなぁ。……アクセルはどこまで終わった?」

「全部」

「そうか、全部か。……え? 全部? マジか?」

 

 俺の返答に驚きの声を返す瀬呂。

 無理もないか。

 さすが日本でもトップのヒーロー科と言うべきか、夏休みの宿題はかなりの量が出されている。

 それをもう既に終わらせたと言ったのだから、瀬呂にしてみれば信じられないと思うのも仕方がない。

 とはいえ、混沌精霊の能力だったり、あるいは単純に頭の良さだったりで、その辺はどうにかなったりするんだよな。

 夏休みの宿題というのは、早くやればやる程にいい。

 最終日になって焦るとかそういうのもなく、ずっと遊んでいられるし。

 もっともそうした方がいいというのは、恐らく殆どの者が理解している。

 理解してはいるが、それでもやはり出来ないで明日になったらやろう、明後日になったやろう……という風に思ってしまうんだよな。

 まぁ、夏休みというのは学生にとっては凄いイベントだ。

 ましてや雄英のヒーロー科は1学期の授業が厳しかったし、A組の生徒ともなればヴィラン連合に襲われたり、緑谷を含めて何人かだがヒーロー殺しのステインとの騒動にまきこまれたりと、色々とやるべき事があった。

 それだけに夏休みになれば羽目を外してもおかしくはない。

 

「ああ、全部だ。そもそも、夏休み後半は林間合宿もあるんだ。そう考えれば、宿題に割ける時間はそう多くないだろう?」

「う……やっぱりそうか? その、実は林間合宿で宿題をやる時間がないかとか、そんな風に期待してたんだけど」

「ないだろ」

 

 即座に断言する俺。

 何しろ、俺達の担任は相澤だ。

 その相澤の性格を考えれば、林間合宿の中でわざわざ宿題をやる時間を作ってくれるとは、到底思えなかった。

 それでも無理に林間合宿の中で宿題をやるとなると……それこそ、休憩の時間とか、朝や夜の自由時間でやるしかないだろう。

 元々相澤は、ヒーロー科に入った以上は放課後にハンバーガーを食べながら話したりするといったような日々はまず出来ないと思えといったような事を言っているくらいには、厳しい。

 林間合宿の中で宿題をさせるような時間を作るとは、俺には思えない。

 

「その……写させて貰うってのは……」

「可能かどうかで考えれば可能だけど、相澤ならその辺についても見破りそうな気がしないか?」

 

 瀬呂が写す以上、筆跡が問題になる事はないだろう。

 だが、答えが全て同じであったりすれば間違いなく相澤に見破られるだろうし、ところどころ適当に間違えるといったような事をしても、相澤なら何気なくそれを見破ってきそうな気がしないでもいない。

 瀬呂も俺と同じような事を考えたのだろう。

 その時どうなるのかを想像してか、顔が青くなっている。

 そしてもし相澤が答えを写したのを見破ったら、瀬呂は勿論、俺にも罰が下される可能性が高い。

 ……うん、やっぱり瀬呂は勿論、三奈や上鳴といった勉強が苦手な面々に頼まれても宿題を写させたりはしない方がいいな。

 

「取りあえず、1人で頑張るよ」

 

 そう瀬呂が言うのと、どうやら買い物を終えた女達が店から出て来るのは殆ど同時だった。

 

「何を1人で頑張るの?」

 

 瀬呂の声が聞こえたのだろう。葉隠がそう尋ねる。

 

「いや、夏休みの宿題の話をしていたんだよ。俺はもう終わらせたって言ったら瀬呂が写させて欲しいと言ってきたけど、相澤ならそれを見破るだろうなって事になって、結局瀬呂は自力で宿題をやる事になった訳だ」

「え!? ちょっ、アクセル、もう宿題終わらせたの!?」

「さすがアクセルさん」

 

 俺の言葉に耳郎と茨がそれぞれに反応する。

 耳郎は驚愕といった様子で、茨は何故か恍惚とした様子で。

 他の面々も驚きの視線を向けていたが……その中で1人だけ違った。

 

「あら、夏休みの宿題は早く終わらせた方がいいですわ、私も終わらせましたし」

「ヤオモモ!?」

 

 三奈が裏切られたといった表情でヤオモモの名前を呼ぶ。

 いや、なんで裏切られた?

 もっともこの様子から考えると、三奈はまだ宿題に殆ど手を付けていない……もしくは、手を付けてはいてもまだ本当に少しとか、そんな感じなんだとは思うが。

 

「うわぁ……A組は凄いな」

「拳藤さんはどうなん?」

 

 そんなやり取りから少し離れた場所では、拳藤と麗日が話していた。

 この2人って、あまり接点がないように思えるんだが。

 まぁ、一緒に服を買ったりして、それなりに付き合いが出来たのだろう。

 

「私? 私もある程度進めてはいるけど、それでもアクセルやヤオモモのようにもう終わらせるとまではいかないよ。茨は?」

「私ですか? もう少しといったところです」

「うわぁ……さすが茨」

 

 茨の言葉に拳藤が驚きと感心が込められた様子で言う。

 この様子を見ると、どうやら茨はB組の中でもテストの成績は良い方なのだろう。

 ヒーロー科と普通科、経営科、サポート科といったように科が違えば授業内容が違うわけで、当然ながらテスト内容も違う。

 そういう意味で1年全体のテストの順位を出すというのは無理かもしれないが、ヒーロー科ならA組とB組がある訳で、1年全体じゃなくてもヒーロー科での成績なら出してもいいと思うんだが。

 筆記試験も演習試験も、ヒーロー科なら同じ内容なんだろうし。

 そんな風に思っていると、I・アイランドまで来て勉強や宿題の話をするのは嫌だと判断したらしい、三奈が話題を変える。

 

「それより、クレープと服も買ったし、次はどこに行く? アトラクションか、最新鋭サポートアイテムの展覧会とかちょっと興味あるんだけど」

「買った服はどうしたんだ? 荷物は持ってないようだけど」

 

 三奈の言葉にふと気になって尋ねる。

 実際、全員が何も荷物を持っていない。

 いや、財布とかスマホとかちょっとした小物が入っているような小さなバッグを持っていたりする者はいるのだが、店で買った服を持っているようには思えなかった。

 

「買った服? それならホテルに届けて貰うようにしたよ」

 

 なるほど、どうやらそういう事も出来るらしい。

 考えてみれば、あって当然のサービスなのかもしれないが。

 

「そういうサービスもあるのか。なら、これから色々と買い物をしても問題はないな」

「あのね、アクセル。全部の店がこの店のようなサービスをやっているとは限らないんだよ?」

 

 そう三奈に言われる。

 とはいえ、この店でそういうサービスをやっているのなら、恐らく他の店でも同じようなサービスはあってもおかしくないとは思うけどな。

 何しろI・アイランドは観光客が多い。

 なら、その観光客用のサービスが充実していてもおかしくはないと思う。

 

「ほらほら、次にどこに行くのかを決めるよ」

 

 俺と三奈の会話を遮るように、拳藤がパンパンと手を叩いてそう言う。

 

「ケロ、やっぱり私はサポートアイテムを見にいきたいわ。最新鋭だから私には使えないだろうけど、そういうのを見ておくだけでも勉強になるもの」

 

 梅雨ちゃんのその意見により、アトラクションの前にサポートアイテムを見に行く事になる。

 実際、最新鋭の……このヒロアカ世界においても最新鋭のサポートアイテムというのは、この世界の技術力をしっかりと把握するという意味で、決して悪くない。

 いや、寧ろ俺にとっては出来れば確保したいと思われるサポートアイテムだ。

 もっとも、当然ながらそんな最新鋭のサポートアイテムだけに、I・アイランド側もヴィランに奪われる可能性を考慮し、非常に厳重な警備態勢を敷いているらしいが。

 また、俺もI・アイランドとは敵対している訳ではないし、影のゲートについては龍子達や公安も知っている以上、盗み出すといった事は止めておいた方がいいだろう。

 そうしてサポートアイテムを展覧している場所に向かったのだが……

 

「ふーん……デク君、楽しそうやね」

 

 今日2回目の麗日……いや、麗日さんの誕生。

 何故なら、俺達の視線の先でメリッサと緑谷の2人が近い……それこそ密着しているといった表現が相応しい様子で、それを麗日が見てしまったのだ。

 そんな麗日さんの声が聞こえたのか、緑谷はビクリとしてメリッサから急いで距離を取る。

 そんな光景を見つつ、俺はオールマイトの姿がない事に疑問を抱くのだった。

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