転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4500話

「うん。まぁ……こんな感じか」

 

 部屋に戻ると、そこにはメリッサが前もって用意しておいてくれたのだろうスーツがあったので、それを着る。

 何をどう考えてそうなったのかは分からないが、真っ白の……純白のスーツがそこにはあった。

 いや、何で俺に純白のスーツ?

 そう思ったものの、メリッサが用意してくれたスーツである以上、着ない訳にはいかないだろう。

 一応空間倉庫の中にはどこぞで入手したスーツとかも入っていたりはするのだが、どうしてもそのスーツを着たい訳でもない。

 なので、折角だからメリッサが用意したスーツを着たのだが……うーん、どうもこう……

 自分で言うのも何だが、俺のイメージカラーは赤だ。

 こういう純白のスーツは、何だかこう、いまいち。

 いやまぁ、だからといって真っ赤なスーツを持ってこられても、それはそれで困る。

 というかパーティで着るスーツって、基本的には黒とかそういう色じゃないのか?

 俺のイメージ的には、パーティで色とりどりのドレスを着て目を楽しませるのは女だ。

 男は添え物ってイメージなんだけどな。

 それに白いスーツとなると、何かこう……そう、ホスト的なイメージがないか?

 爆豪にヒモ野郎と呼ばれる前にはホスト野郎と言われていたので、そういう意味では俺に似合ってるのかもしれないが。

 ただ、白いスーツは目立つし、見た目こそいいものの、白いだけにちょっとした汚れでも目立つんだよな。

 レセプションパーティで料理を食べた時、料理の汁とかが跳ねたら最悪の未来しか待っていない。

 カレーうどんとか、エビチリとか……いや、レセプションパーティだと考えれば、エビチリはともかく、カレーうどんとかはないか。

 まぁ、それ以外にも汁が跳ねるような料理はあるから、そういうのを食べる時は気を付ける必要がある……いや、そもそもそういう危険な料理は食べなければいいのか。

 レセプションパーティで出る料理だけに、他にも色々と美味そうな料理はある筈だし。

 そう考えて部屋を出ると、ちょうどそのタイミングで隣の部屋の扉も開く。

 

「あ」

 

 扉から出た……いや、出ようとした拳藤は、ちょうど同じタイミングで俺が廊下に出たのを見ると、顔だけを出して少し戸惑った様子を見せる。

 

「拳藤? どうしたんだ?」

「あー……いや、ちょっとその……こういうのって、あまり……な? 分かるだろ?」

 

 扉の隙間から顔だけを出して言ってくる拳藤。

 薄らと頬が赤くなっているのを見ると、拳藤が何を言いたいのか分かる。

 ヤオモモのように家が金持ちなら、着飾ってパーティに出る機会もあるだろう。

 だが、拳藤の家は別に金持ちという訳ではない、普通の家だ。

 いやまぁ、普通の家の中でも微妙に差があったりするのだろうが。

 それこそ中の上、中の中、中の下……といったように。

 その辺の違いまでは分からないものの、とにかく俺が知っている拳藤の家は俗に言う中流家庭という奴だ。

 そんな拳藤だけに、身内でやるパーティとかならともかく、本格的に着飾って参加するパーティというのはこれが初めてなのだろう。

 

「まぁ、気持ちは分かる。気恥ずかしいんだろ?」

 

 そう言うと、拳藤は無言で小さく頷く。

 

「けど、俺を見ろ。メリッサが何を思ってこのスーツを用意したのか分からないけど、純白のスーツだぞ? こう……凄く似合っていないと思わないか?」

「え? そんな事はないと思うけど。私から見ると、凄く似合ってる」

 

 拳藤の言葉は少し意外だったが。

 いやまぁ、俺も鏡でおかしいところがないかチェックした時、それなりに似合っているとは思ったんだが。

 ただ、やっぱり俺が白のスーツを着るというのは、落ち着かないものがある。

 ともあれ、拳藤の言葉は意外だったものの、それなら……と口を開く。

 

「俺は自分がこの白いスーツがそこまで似合っているとは思っていない。ただ、拳藤から見ると似合ってるんだろう?」

「ああ。その……ちょっとチャラいように見えるけど。物間とか着てそうだし」

「うん、やっぱり別のスーツにするべきだよな」

 

 B組のアレな奴代表である物間の名前が出た事で、即座にそう言う。

 

「ああああ、いや、そんな事はないって。その、アクセルには凄く似合ってるから。茨とかが見たら、きっと絶賛すると思うぞ」

 

 俺の言葉に慌てて拳藤がそう言ってくるのだが……

 

「いや、茨の場合はそれこそ俺がどんな服を着ていても褒めてくると思うんだが」

 

 そう返す。

 理由は不明だが、何故か俺に心酔している茨だ。

 それこそ俺の服装を見ても、余程の事がなければそれが似合っていないとか、そういう風には言わないだろう。

 

「茨じゃなくて、他の面子もきっとそう言うって」

 

 そう言い、部屋から出てくる拳藤。

 茨のフォロー……いや、違うか? とにかく慌てて言葉を続ける為にそうしたのだろうが、それによって拳藤の全身を……パーティドレスに身を包んだその姿を確認出来るようになった。

 拳藤が着ているのは、赤いチャイナドレスだ。

 かなり深いスリットが入っており、拳藤の太股の付け根まで見えるようになっている。

 運動が得意な拳藤の健康的な……魅力的な太股がチラつくのは、多くの男が――場合によっては女も――視線を向けてしまいたくなるだろう。

 

「似合ってるな」

「あ……えっと、その……本当に似合ってると思うか?」

 

 俺の言葉で、自分が部屋から出てしまったことに気が付いたのだろう。

 一瞬慌てた様子を見せたものの、すぐにも困ったように聞いてくる。

 

「ああ、似合ってると思うぞ。ただ、そうやって無駄な動きをしたり恥ずかしがったりすると、違和感がある。堂々としていろ、堂々と。そのチャイナドレスは拳藤に似合ってるんだから、堂々としていれば誰もおかしいとは思わないから」

「……本当にそう思う?」

「ああ、本当にそう思う。……というか、拳藤はヒーロー科の生徒としての実力には自信があるものの、自分の外見にそこまで自信がないのは何なんだ? 俺が見る限り、拳藤は間違いなく美人だと思うぞ? それもかなりの」

「ばぉっ! い、い、いきなり何を言うんだよ!?」

「でないと、職場体験の時だってCMに出たりとかは出来ないだろ」

 

 ヤオモモと拳藤の職場体験先である、プロヒーローのウワバミ。

 プロヒーローとしてもそうだが、モデル的な存在としても有名なお水系の美人だ。

 そんなウワバミから要望があったのが、ヤオモモと拳藤。

 そして職場体験中にウワバミのCMにヤオモモや拳藤も出る事になったのだが……もし美人ではなければ、ウワバミもCMに出そうとは思わなかっただろう。

 そういう意味では、拳藤の事をよく知らないウワバミであっても拳藤が美人であると認識しているのは間違いない。

 

「ううう……分かった、分かったからもう言わないでくれ。それより、待ち合わせ時間が……まだちょっと早いけど、先に行ってよう」

 

 拳藤は自分の恥ずかしさを誤魔化すように、そう言ってくる。

 もっとも、その頬は先程以上に赤く染まっているが。

 

「あー……うん、そうだな。じゃあ、待ち合わせ場所に行くか。ただ、早く行ってもずっと待っているしか出来ないけどな」

 

 それも待ち合わせの場所は人通りの多い場所だ。

 そうなれば、当然ながら多くの者達が拳藤を見るだろう。

 何しろチャイナドレスを着た美人だ。

 ……中には、そんな拳藤を口説こうとする者も出て来るかもしれない。

 今のI・アイランドには、多くの者達が集まっている。

 中にはヴィラン……とまではいかないが、強引に女に言い寄る男がいたりしてもおかしくはない。

 もっとも強引に口説こうとしても、その相手は拳藤だ。

 それこそ力ずくでどうこうしようとしても、拳藤を相手にどうにか出来る筈もない。

 いやまぁ、それが原因でこのI・アイランドで起きるだろう騒動が事前に発覚したりすれば、それはそれで悪くないとは思うけど。

 

「それでも、今ここでアクセルと2人きりで一緒にいるよりは、そっちの方がいいんだよ。全く……本当に三奈が言った通りだったな」

 

 後半は小声で呟いた拳藤だったが、混沌精霊の俺の五感があれば、それを聞き逃すような事はない。

 ……とはいえ、三奈が何かを言ったのは分かったが、それが具体的にどのような内容なのかという事までは分からなかったが。

 その辺を突いてみてもいいのかもしれないが、そうなればそうなったで微妙な感じになりそうなので、止めておく。

 

「分かったよ。俺としては拳藤のそのドレス姿をあまり他人に見せたくはないんだけどな」

 

 そう言うと、不意に拳藤の動きが止まり、プルプルと震え……あれ? これちょっとやりすぎたか?

 そう思った瞬間、顔を真っ赤にした拳藤がこちらに振り向くと、拳を振り上げる。

 それも、ただ拳を振り上げただけではなく、個性を使って右手を巨大化してだ。

 ……これで腕がそのまま巨大化するとかなら、チャイナドレスが破けたりするといった危険もあったのだが、幸いなことに拳藤の個性は手が……より正確には手首から先が巨大化するといったものだ。

 その為、チャイナドレスを着ていても何の問題もなかったらしい。

 

「アクセルゥッ!」

「落ち着けって。俺はただ正直な感想を……っと」

 

 俺に最後まで言わせず、拳藤が拳を振るう。当然だが正面から巨大化した拳の一撃が俺に当たる筈もなく、あっさりと回避する。

 とはいえ、拳藤も別に自分の一撃が俺に当たるとは最初から思っていないだろう。

 それでも今のような一撃を放ったのは、恥ずかしさに我慢出来なかった……といったところか。

 

「全く、これだからアクセルは……いずれ誰かに刺されるよ」

「……かもしれないじゃなくて、刺されると断言するのか」

「今のままだと間違いなくそうなるね。それが嫌なら、もう少し普段の言動をどうにかした方がいいよ」

 

 普通なら魔力や気がなければ、刺さっても意味はないと言うところだが、このヒロアカ世界の場合、個性を使った場合は普通に俺の身体に刺さったりしそうなんだよな。

 そういう意味では、拳藤の言うように注意をした方がいいのは間違いない。

 

「そうだな。……まぁ、拳藤に刺されるのなら俺も後悔はしないけど」

「っ!? ……アクセル、そういうところだぞ、本当に」

 

 先程よりも更に顔を赤くしながら、拳藤が言ってくる。

 あれ? 今ので照れる要素って何かあったか?

 特に何かそれらしい事は言ってないと思うんだが。

 そう疑問に思うも、俺がまた何かを言うよりも前に拳藤が口を開く。

 

「ほら、行くよ」

「いや、行くのはいいけど……少し休んで、顔が赤いのをどうにかしてからの方がいいんじゃないか?」

 

 そう言うと、拳藤も自分の頬が赤く……それも真っ赤といった表現が相応しいくらいになっているのを自覚しているのか、俺に不満そうな視線を向けてから口を開く。

 

「少し待ってて」

 

 そう言い、部屋に戻る拳藤。

 休むのなら別に部屋に戻らなくても……と思わないでもなかったが、多分拳藤にしてみれば俺の側にいると赤く染まった顔が元に戻るようなことはないとでも思ったのだろう。

 その件については、辛かった俺が一番よく理解しているので、特に何も言わなでおく。

 いっそ、俺も部屋に戻ろうかと少しだけ考えたものの、もし拳藤が部屋から出た時、そこに俺がいなかったら恐らく不機嫌になるだろうから、止めておく。

 それに……部屋に戻って休むにしても、白いスーツを着ている状態では、ベッドで横になったりとか、そういうのは出来ないしな。

 拳藤もずっと休んでいたりとかはしないだろうから、少し落ち着けば部屋から出て来る筈だ。

 飯田が示した約束の時間にはまだ多少の余裕があるとはいえ、それはあくまでも多少でしかない。

 であれば、拳藤も部屋で思う存分ゆっくりとして、顔の赤みが完全に消えるまで待つ……といったようなことは出来ないだろうし。

 そんな訳で、こうして廊下で待っていると……予想通り、5分程で拳藤が部屋から出て来る。

 先程とは違い、扉を少しだけ開けて顔だけを出すとかそういうのではなく、普通にだ。

 一度俺にチャイナドレスを見せたので、慣れた……というか、踏ん切りがついたのだろう。

 どのみちレセプションパーティに参加するとなれば、多くの人が集まっているんだから、多くの視線に晒されるのは間違いない。

 拳藤の脚線美をこれでもかと強調しているチャイナドレスは、結構な人目を集めるのは間違いない。

 だが同時に、拳藤は間違いなく美人ではあるけど、絶世の美女といった訳ではない。

 こう言っては悪いが、レセプションパーティの会場には間違いなくもっと多くの美人がいる。

 もっとも、拳藤の場合は外見もそうだが、中身も伴っての美しさだ。

 外見だけがどれだけ美人であっても、拳藤には敵わないだろう。

 

「そう思うんだけど、どうだ?」

「いや、唐突に何を言うんだよ。何がそう思うって言われても……」

「あ、言ってもいいのか? また拳藤が部屋に戻る事になりそうだけど」

「……行くよ」

 

 俺の言葉に何を想像したのか、拳藤はそう言うのだった。

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