「アクセル少年、これからタワーに向かう。残念だが今は少しでも急ぐ必要がある為、アクセル少年の速度に合わせる訳にはいかない。場合によっては置いていく事になるかもしれないが……構わないか?」
「はい、それでいいですよ」
オールマイトの速度についていけないと思われるのは心外ではあったが、今のところ見せている俺の実力を考えれば、オールマイトならそういう認識をしてもおかしくはないと思う。
その為、オールマイトの言葉には素直に返す。
それに……ある意味ではメタ的な考えではあるが、こうしてオールマイトが自由になった今、このI・アイランドで行われている原作のエピソードは終わりに近い。
であれば、俺がその場にいなくても特に問題はないだろう。
もっともそのような状況だからこそ、何かが……俺には想像も出来ないような何かが起こる可能性もあるので、タワーに行かないという選択肢はないのだが。
「そうか。では……行くぞ!」
そう言うと、オールマイトは即座に移動を開始する。
俺の認識ではオールマイトは間違いなく弱っている筈だ。
実際、相応に強いとは思うが、言ってみればそれだけでしかない。
だからこそ、そんなオールマイトの速度についていくのは問題なく出来るのだが……それでも楽々とオールマイトについていくといった様子を見せるのは、色々と不味い。
そんな訳で、俺は意図的に速度を落としてオールマイトを追っていく。
とはいえ、あまりに遅れすぎてもどうかと思うので、そこそこの速度を出してだが。
後で瞬動を使わなかったのは何故だとか、そんな風に言われそうだが、その時は余力を考えて最低限しか使っていなかったという事にして、街中を……建物の屋根を走る。
いっそ影のゲートを使えば便利なのだが、こうして堂々と街中を移動しているとなると、当然ながら複数設置されている監視カメラによって録画されているのは間違いないから、影のゲートを使う訳にはいかない。
I・アイランドのどこを通った訳でもないのに、気が付いたらタワーの……現在戦いが起こっているのは屋上か。その屋上にいきなり姿を現したというのは、明らかにおかしいのだから。
……まぁ、瞬動とかを使って移動したりすれば、幾ら監視カメラの性能が高くても俺を映す事は不可能かもしれないが。
あ、でもここはI・アイランド。サポートアイテムの最先端の場所となる。
そうなると、もしかしたら瞬動を使っても俺の姿を映せるような監視カメラの類があっても不思議ではないかもしれないな。
ともあれ、そんな感じでタワーに向かっているのだが……
「うわ」
タワーに近付くと、その屋上から離陸しようとしたヘリコプターに向かってオールマイトが突っ込んで行くのが見えた。
あれは……もしかして、あのヘリコプターにヴィランの親玉が乗っていたのか?
何らかの手段でオールマイトが自由になったのを察して、タワーから脱出しようとしたところか。
となると……もうこれ以上時間を掛ける訳にはいかないな。
そう判断すると、そのままタワーの屋上に向かう……のではなく、タワーの中に突っ込む。
タワーの中でも監視カメラの類がないような部屋を見つけ、そこに入って影のゲートを使う。
次の瞬間、俺の姿はタワーの屋上にあった。
それも、誰にも見つからないようにして。
近くにあるヘリコプターの残骸を一瞥し、念の為に気配遮断を使う。
この気配遮断は、オールマイトにすら俺の存在を察知させないという優れた能力を持っているので、誰にも見つからないように周囲の様子を観察するのは難しくない。
この屋上にももしかしたら監視カメラの類があるかもしれないが、このヘリコプターの残骸があれば、隠れていたとか、そういう風に誤魔化す事も可能だろう。
……どうしようもなくなったら、それこそ公安に手を回して貰えばいいし。
そう思っていると、ヘリコプターの残骸の中から1人の男が姿を現す。
「はぁっ、はぁっ、はぁ……くそっ、何でオールマイトがここにいやがる」
血塗れ……という程ではないが、身体中から血を流しながら姿を現したそのヴィランの男に、俺は見覚えがあった。
先程までレセプションパーティの会場にいて、何かの連絡があった後でレセプションパーティの会場から出て行ったヴィランだった。
てっきり今回の騒動を起こしたヴィラン達の中でも指揮官というか、幹部的な存在なのかと思っていたのだが……あれ? もしかして、実はこのヴィランがリーダーだったのか?
リーダーが前線――という表現がこの場合正しいのかは分からないが――のレセプションパーティの会場に出てくるというのは、どうなんだ?
ああ、でもヴィラン、それもこうした組織を纏められるのなら、強力な……殺傷能力の高い個性を持っていても不思議ではない。
そしてレセプションパーティの会場には多くのプロヒーローがいた訳で、そうなるといざという時にプロヒーローに対処出来る人材がレセプションパーティの会場に出るというのは、分からないでもないのか。
もっとも、それはつまりこのリーダーのヴィランの他にプロヒーローを押さえられるだけの戦力がないという事を意味しているが。
……あ、でも緑谷達がタワーに向かったという事は、このリーダーよりも技術は下で、プロヒーローには勝てない程度の実力を持ち、それでいながらヴィランの兵士達よりは強いといった、中ボスとでも呼ぶべき存在はいたのかもしれないな。
まぁ、そんなのは関係ないが。
そんな風に思っている俺の視線の先で、ヴィランは手にした何か……何だ? ヘルメットという訳でもないし、マスクといった感じでもない。
サークレット? そう、そんな表現が正しい奴を頭に被ろうとし……
「それは駄目だろ」
ひょいっと、とそのサークレットっぽい奴をヴィランの男から奪う。
「は?」
ポカンといった感じで、そんな間の抜けた声を上げるヴィラン。
まさか手にしていたサークレットを俺に奪われるとは思っていなかったらしい。
いやまぁ、それも当然か。
まさかこの状況で自分が手にしていたサークレットを奪われるとは思っていなかったのだろうし。
「だ……誰だてめえ」
「うん? 俺の事を知らないのか? 日本ではそれなりに有名だと思ってたんだけど。……ともあれ、まずは吹き飛んでろ」
そう言い、ヴィランの男を殴る。
ボグッ、と。
そんな音を立てながら、ヘリコプターの残骸を破壊しながら吹き飛んでいくヴィラン。
その向こうではオールマイトや緑谷の騒ぐ声が聞こえ、そちらに向かおうとして……ピタリ、とその足を止める。
吹き飛ばしたヴィランの行動を考える。
オールマイトに一撃……それも鎧袖一触といった感じであっさりと倒されたあのヴィランが、それでもまたオールマイトに攻撃をしようとした。
普通に考えれば、それは自殺行為以外のなにものでもないだろう。
しかし、それでも先程のヴィランはそれをやろうとしたのだ。
当然ながらそのような行動を取ったのを考えると、それはこのサークレットだろう。
そしてこのサークレットを頭に被ろうとしていた事を考えれば……何か強力な武器とか、そういう感じなのか?
取りあえずここでこのサークレットをどうにかするのは危険なので……と思ったものの、すぐにその考えを変える。
しまったな。このサークレットをゲットしておくと考えたら、殴り飛ばすんじゃなくて、最初にこの場で殺しておくべきだった。
そうすればこのサークレットについては俺が貰っても知られる事はなかっただろう。
だが、あのヴィランを吹き飛ばしてしまい、その身柄がオールマイトや緑谷達の側にある以上、殺す事は出来ない。
いやまぁ、絶対に無理かと言われればそうでもないんだが、この状況でそういう事をすると、オールマイトや緑谷といった者達に色々と疑われかねない。
即断即決も考え物だな。
いや、それが正解だったら全く問題はないのだが、今回の場合は結果がちょっと問題だった訳で。
仕方がない、か。
ここで俺が皆の前に出ていけば、当然ながらあのヴィランが持っていたこのサークレットは返す必要がある。
そうなると、返す前に……使ってみるか。
幸い、あのヴィランの様子からすると、このサークレットは被るだけで効果を発揮する物の筈だろうし。
……もしかしたらサークレットを被った上でまた他の何かをする必要はあるのかもしれないが、そうなったらそうなったで仕方がない。諦めよう。
そう判断して、俺はサークレットを頭に被り……
ズグン。
「ぐ……あ……?」
ズグン、ズグン、ズグン。
「なん……だこれ?」
何か……そう、本当に何かとしか表現出来ないような衝撃が俺の中、特にサークレットを嵌めた頭部にある。
痛い訳ではない。
ただ、何かの衝撃が頭の中にあるのは間違いない。
これ、ちょっと危ないのでは?
一瞬そう思ったのだが……不思議と、念動力は何も危険を知らせてこない。
もしこのサークレットが俺に悪影響を……最悪命が失われるとか、そういう風になるのなら、念動力が知らせて来るだろう。
だが、その念動力はこのサークレットを、俺の頭の中にある衝撃を危険なものとは認識していない。
「ちょ……アクセル君!? 一体何をしてるのさ!」
「アクセル少年!?」
恐らく先程のヴィランが吹き飛んできた事で、誰がやったのかと緑谷とオールマイトが見に来たのだろう。
そこにいたのが俺で、そうしたらサークレットを身に付けていたと。
ズグン、ズグン、ズグン。
そんな緑谷とオールマイトを見ながらも、頭部に嵌まったサークレットは今この時も妙な衝撃を俺の頭部に流していた。
「アクセル君、本当に大丈夫なの!? 何か妙な音がしてるよ!?」
緑谷の叫ぶ声に、どうやら俺の頭に存在する衝撃の音は俺の頭の中だけに入っているのではなく、周囲にも聞こえているのだと判断する。
「……悪い。ちょっとしたミスでな」
頭の中に響く衝撃に眉を顰めつつ、緑谷にそう返す。
衝撃は痛みを伴わない。伴わないが、頭の中で衝撃が続くという、どこからどう見ても普通ではない行為に眉を顰め、そう返す。
「えっとその……本当に大丈夫なの?」
俺を心配する緑谷に問題ないと返そうとし……だがその瞬間、俺の頭の中に走る衝撃が一気に増した。
ズグン、ズグン、ズグン、ズグン、ズグン、ズグンズグン、ズグン、ズグンズグン、ズグン、ズグンズグン、ズグン、ズグンズグン、ズグン、ズグンズグン、ズグン、ズグンズグン、ズグン、ズグン……パキッ。
「あ」
衝撃が強くなった……そう思った瞬間、俺の頭にあったサークレットが壊れ、地面に落ちる。
「えっと……その、アクセル少年? 一体何を?」
地面に落ちた割れたサークレットを見て、そうオールマイトが尋ねてくる。
このサークレット、地面に落ちた衝撃で割れたとか、そういう事じゃないよな?
明らかに俺の頭から外れた時に割れていたし。
そもそもサークレットを頭に嵌めていたんだから、それこそ割れでもしないと外れるなんて事はないだろうし。
一体何がどうなっているのかは分からないものの、とにかく今の状況について話す必要があるのは間違いない。
「その、オールマイト先生を追って屋上に到着した時、さっきのヴィランがこれを頭に嵌めようとしていたので、これを奪って殴り飛ばしたんですけど、その時ちょっとした衝撃でこれが俺の頭に嵌まってしまって」
苦しい。
どこからどう考えても苦しい説明なのは間違いないが、今ここで咄嗟に説明出来る内容としてはこのくらいしかない。
とはいえ、かなり苦しい説明ではあるが、それでも嘘であると、俺が意図的にこのサークレットを被ったのだと証明するのは難しい。
……難しい、よな?
俺がサークレットを被ったのが、監視カメラで映され、録画されてないといいんだが。
その場合は、それこそ公安に出て貰うしかない。
龍子や優が俺の後見人としているが、それでもこの件が問題になったとすれば、龍子や優ではどうにかするのは難しいだろうし。
そうなると、やはりここで必要なのは公安の権力だろう。
……その公安の権力を使った場合、後々面倒な事になるような気がしないでもないが。
「そうか、分かった。取りあえず……この件については後にしよう。先程のヴィランの件は助かった。アクセル少年が倒していなければ、何があったか分からなかったからな」
オールマイトにも色々と思うところがあるのは間違いないのだろうが、とにかくそう俺に言ってくる。
そんなオールマイトに首を横に振ろうとし……
「マジか」
ふと思い立ちステータスを表示した俺の口からそんな声が漏れる。
「え? アクセル少年?」
戸惑ったようなオールマイトの声に何と答えるべきかというのを考えるよりも、俺の視線はステータスに……本来ならレベルが10上がる毎に増えるスキル欄の空いているスキル欄が2つ増えているのを見て、それに唖然とするのだった。
アクセル・アルマー
LV:45
PP:1180
格闘:313
射撃:333
技量:323
防御:323
回避:353
命中:373
SP:3003
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
空欄
空欄
撃墜数:2092