転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4516話

 拳藤と水着を買いに行った翌日、俺は朝から雄英に向かっていた。

 もっとも、朝とはいえ今は午前10時ちょっと前といったところで、正確には朝というよりも昼前といった方が近い……かも?

 とにかくそんな感じである以上、周囲に人の姿はあまりない。

 ……と思っていたら、後ろから誰かが走ってくる足音と気配が近付いてくるのに気が付く。

 

「おーい、アクセル!」

 

 そう言い、手を振って近付いて来たのは、尾白だった。

 相変わらずその大きな尻尾はかなり目立つよな。

 

「尾白か。お前もプールに来たんだな」

「ああ、やっぱり夏休みというのはこういうのがあっていいだろうし。それに、林間合宿まで後少しだしな」

 

 尾白の言葉に、俺もだろうなと納得する。

 夏休み最大のイベントともいえる林間合宿が始まるのは、もう少しだ。

 ……もっとも、夏休み最大のイベントという事では、I・アイランドの一件もまた随分と大きなイベントではあったが。

 特に俺にとっては、デヴィットが開発したサポートアイテムの、あのサークレットによって、ステータスのスキル欄に空欄が二個出来たのは非常に大きな出来事だった。

 それこそ、これだけでヒロアカ世界に来た甲斐があったと言ってもいい。

 まぁ、その辺りについては誰にも言えないけど。

 

「それにしても、まさか爆豪が来るとは思わなかったな」

「いや、アクセルが挑発したからだろ」

 

 俺の言葉に、呆れの視線を向けてくる尾白。

 実際、爆豪は最初今日プールに来ないと言っていたのだが、LINで軽く挑発したらあっさりと来ると言ったのだから、尾白の言葉も決して大袈裟ではない。

 

「挑発しておいてなんだが、爆豪ってあのままで大丈夫なのか?」

 

 そう心配に思うのは、ちょっと挑発をすると爆豪はすぐそれに引っ掛かる為だ。

 もしヴィランにそういう事をされたら、一体どうなるのかは……それこそ考えるまでもないだろう。

 勿論、爆豪だって馬鹿ではない。

 いや、寧ろ性格はアレだが、純粋な能力という点はクラスでも……そしてヒーロー科全体から見てもトップクラスだ。

 だからこそ、爆豪だってヴィランが爆豪を挑発して何かしようとしても、そう簡単に引っ掛かるような事はない……と思う。

 うん、多分だけど。

 

「うーん、どうだろう。アクセルとのやり取りを見ていると、本当に大丈夫なのかどうかはちょっと分からないけど。ただ、アクセルに妙に突っ掛かってるような気はするな」

「それについては、爆豪だからとしか言えないな。……まぁ、個人的にはそんな爆豪も気に入っているのだが」

「ええ……」

 

 俺の言葉に理解出来ないといった様子で視線を向けてく尾白。

 いつも突っ掛かってこられる俺が、そんな爆豪を気に入っているというのが理解出来ないらしい。

 まぁ、普通に考えればそういう風に思ってもおかしくはないと思うけど。

 ただ、俺がヒーロー科にいるのは、あくまでも他の生徒達の前に壁として立ち塞がる為だ。

 そんな俺という壁に、一切諦める事なく挑んでくる爆豪はかなり好ましい存在でもある。

 ……もっとも、もし爆豪がそれを知ったら間違いなく怒り狂うだろうが。

 何しろ俺に対等の相手として見られていないという事なのだから。

 それどころか明確なまでに格下として見られている訳で、そう考えると爆豪が笑って許してくれるとは思えない。

 

「それにしても、今日のプールはどうなると思う?」

「どうなると思うって……一体何がだ?」

 

 尾白の言葉に首を傾げ、尋ねる。

 

「いや、ほら……峰田が暴走しないかと思って」

「あー……まぁ、うん。ついでに言えば、上鳴辺りも暴走しそうだよな。とはいえ、一応今回の件は瀬呂を励ますのが目的で行われるんだろう? なら、暴走しない可能性も……」

「自分で信じていない言葉は、言わないほうがいいと思う。峰田がどういう性格をしているのかは、それこそ毎日のように絡まれているアクセルが一番よく分かってるだろ」

 

 尾白のその言葉に、そっと視線を逸らす。

 何だかんだと、俺はA組の女子全般と仲が良い。

 勿論、だからといって男と仲が悪いって訳じゃないんだけどな。

 例えば今日のプールを借りる理由となった瀬呂だったり、尾白ともそれなりに仲が良いし、他にも緑谷とかもそれなりに親しい。

 ……いやまぁ、緑谷は原作主人公であるというのを知っているからという理由もあったりするんだが。

 また、青山も……いや、青山の場合は俺が仲良くしたいというよりも向こうから頻繁に話し掛けてくるというのが正しいか。

 入学当初はそこまで青山に話し掛けられたりはしなかったのだが、いつ頃からか何故か俺に声を掛けるようになってきたんだよな。

 もっとも、名前の影響で席が近いとか、そういう理由もあったりするのだろうが。

 そして毎回俺に絡んでくる峰田も……うん。別に俺が峰田を嫌いという訳ではない。

 寧ろ清々しいまでに女好きというのを表に出しているのを見ると、愉快な奴だとは思う。

 他にも上鳴とかはそれなりに話が合うしな。

 

「まぁ、今日のプールで峰田が暴走しても、耳郎辺りのお仕置きがされるだろうけど」

 

 耳郎のお仕置きは凶悪だ。

 峰田や上鳴もそれが分かってはいる。分かってはいるんだが……それでも暴走しやすいんだよな。

 出来れば耳郎のお仕置きで止まって欲しい。

 耳郎さんが出て来ると……うん、その時はもうしょうがないと思っておいた方がいいだろう。

 

「あー……うん。その、そうならないといいな」

 

 俺の言葉を聞いた尾白が、あらぬ方を見る。

 一体何を考えているのかまでは、俺には分からないが。

 尾白は耳郎さんを直接見た事は……あったか?

 あるいは直接見てなくても、誰かから話を聞いたりとか、そういうのはあったのかもしれないな。

 ともあれ、そんな風に話している間も歩き続け、雄英に到着する。

 いつもなら一度教室に向かうところだが、今日用事があるのはプールなので、真っ直ぐプールのある方に向かう。

 幸い……というか、当然か? とにかく更衣室はプールの近くにあるので、着替えとかそういうのも楽だ。

 そういえば、以前覗き穴があった更衣室だが、あの更衣室はセメントスによって修復されたらしい。

 あの覗き穴を作った容疑者として、真っ先に疑われたのが峰田だったのは、普段の言動からすると当然だろう。

 だが、峰田が作ったにしては自分だけで楽しむのではなく、それを見つけた! と周囲に知らせていたり、あるいは峰田の個性のモギモギではああいう穴は空けられないという事で、証拠不十分により無罪放免となったらしい。

 もっとも、別に個性を使われなくても何らかの道具を用意すれば壁に穴を空ける事は出来る。ドリルとか。

 実際に林間合宿の買い物でショッピングモールに向かう時、峰田の欲しい物の中にはドリルであったり、暗視スコープとか、そういうのも入っていたのだから、峰田が怪しまれるのはそうおかしな事ではない。

 結局は無罪になったのだから、それはそれで問題ないのだろうが。

 

「おや、アクセル君。それに尾白君も。2人とも早いな。まだ約束の時間には少しあるというのに……時間前行動をするのは立派だな」

 

 水着に着替え終わった飯田が、そう声を掛けてくるのだが……

 

「あれ? それって学校用の指定水着だよな?」

「そうだ! やはり学校で泳ぐのであれば、指定水着を使うべきだろう!」

「いや、俺は普通に昨日買った水着を持ってきたんだけど……尾白は?」

「え? 俺は指定水着だけど」

 

 ……あれ? もしかして指定水着にする必要があったのか?

 いや、けどそれは……あ、でも他にも私物の水着を持ってきている奴とかいてもおかしくはないよな。

 そうしているうちに何人もがやって来て、着替えていく。

 水着に着替えてプールに出ると……うわ、ビーチパラソルとかが設置されている。

 一応名目上は訓練という事の筈なのに、実際には遊ぶ気満々だな。

 いやまぁ、俺にとっても私物の水着で来た以上、そっちの方がいいんだけど。

 

「うわ、アクセル君。その水着って最新の奴じゃないの!?」

 

 おう?

 プールに出てくると、もう来ていた緑谷が興味津々といった様子で声を掛けてくる。

 ちなみに緑谷は学校指定の水着だ。

 ざっと見てみると……よし、セーフ。俺以外にも何人か私物の水着がいる。

 

「ああ、今日プールに集合ってのを見たから、昨日店で買ってきたんだけど……どうやら学校指定の水着にした方が良かったっぽいな」

「でも、これ……かなりいい奴だよね」

「そうなのか?」

 

 俺としては、そこまで厳密に選んだ訳ではない。

 勿論水着にも色々と機能があるのは知っているし、その辺りが目的でもあったのだが……ただ、それでも決め手になったのはその外見だ。

 惚れ込んだという程に強く欲した訳ではなく、取りあえずこれかなといった程度の感じではあったが。

 

「そうだよ。これを作っている会社はヒーローコスチュームを作る時に使われる繊維で小さなシェアを持ってる会社なんだ」

「……小さな? そこは普通大きなじゃないのか?」

 

 小さなシェアという言葉に疑問を感じ、そう緑谷に尋ねる。

 だが、緑谷はそんな俺の言葉に首を横に振る。

 

「ううん、小さなで間違いないよ。ただ、シェアは小さくても技術力は高いんだ。……えっと、確かアクセル君のヒーローコスチュームのマントに使われているのもこのメーカーの繊維じゃなかったかな」

 

 え? 怖……

 緑谷がさも当然のように俺のヒーローコスチュームにどのメーカーの繊維が使われているのかを言及してきた事に、思わずそう思う。

 俺は別に緑谷にマントをしっかりと見せたりはしていないし、他にもどこのメーカーで作ったのかといったような事を話した訳でもない。

 だというのに、緑谷はさも当然といった様子で俺のヒーローコスチューム……というか、マントか。そのマントをどこのメーカーで作ったのかといった事を口にしたのだ。

 それに驚くなという方が無理だった。

 いやまぁ、緑谷がヒーローオタクであるというのは知っている。

 知っているし、実際にクラスの面々もヒーローの情報とかについて分からない時は緑谷に聞いたりしている者が多いのは事実だ。

 だが……それでも、俺のヒーローコスチュームについて、そのメーカーについても即座に見抜いてくるというのは、一体何がどうなってそうなったというのか。

 そんな緑谷にドン引きしつつも、表情に出さないようにして口を開く。

 

「となると、この水着はそれなりにいい奴だった訳か。……拳藤が選んでくれた幾つかの中から選んだんだから、それはそれで悪くない結果だとは思うけど」

「アクセルゥゥゥッ、今お前なんて言ったぁぁぁあぁっ!」

 

 緑谷と話していたところで、いきなりそんな声と共に何かが……誰かが突っ込んで来る。

 いや、それが誰なのかというのは考えるまでもいだろう。

 1学期の間、何度となく繰り返されてきた事なのだから。

 そんな訳で、俺は素早く移動し、近くに置かれていたビート板を手にすると、それを使って突っ込んで来た相手……峰田に向かって振るう。

 あ、不味い。

 峰田の勢いが……それはつまり、俺に対する嫉妬が予想したよりも強かったらしい。

 このままではビート板が折れそうだと判断し、その峰田とぶつかった衝撃を受け流す。

 結果として。ビート板が折れるようなこともないままに、突っ込んできた峰田を打ち返す事に成功する。

 

「ぎゃあああああああ!」

 

 叫びつつ吹き飛んでいく峰田だったが、モギモギもあるので問題はないだろう。

 

「うわぁ……」

 

 そしてつい先程まで俺と話していた緑谷は、驚きというか、今目の前で一体何が起きたのか理解出来ないといった様子で声を上げていた。

 さて、どうしたものか。

 そう思っていると、女子更衣室から出て来た数人がこっちに近付いてくる。

 

「アクセルさん、あまり騒動を起こさないで下さい」

 

 そう俺に注意してきたのは、ヤオモモ。

 ……ヤオモモも含め、女子は全員が学校指定の水着を着ている。

 そういう意味では同じなのだが……うん、発育の暴力と称されることが多いヤオモモだけに、学校指定の水着でも胸が大きく盛り上がっている。

 それでいながら腰は細く、尻は大きく……まさに、ボンッキュッボンという言葉が相応しい体型を見せつけていた。

 そんなヤオモモの側には三奈と葉隠の姿もある。

 この2人も、平均以上のスタイルをしているのは間違いないんだよな。

 もっとも、本人達はその辺りをあまり気にしていない様子ではあったが。

 

「いや、今のは峰田が暴走して突っ込んできただけだよ」

「……ああ、なるほど。いつもの事ですわね」

 

 ヤオモモも1学期の経験から峰田が俺に突っ込むというのは、既に慣れたものなのだろう。

 俺の言葉にすぐに納得したように頷くと、それなら問題はないといった様子で話を続ける。

 

「ねぇ、アクセル。アクセルはその……学校指定の水着じゃないの?」

 

 そんな中、三奈が不思議そうに聞いてくるのだが、その件については適当に誤魔化すのだった。

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