転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4517話

「うおおおおおっ! アクセル、すげえ! それが個性の力なのかよ!?」

 

 切島がプールから上がった俺を見て歓声……と言ってもいいのかどうかは微妙だが、とにかくそんな声を上げてくる。

 

「別にそこまで驚くようなことじゃないだろ。個性がない以前ならともかく、今ならこのくらい出来る個性はいくらでもあるし。……ほら」

 

 俺から少し遅れてプールを……25mを息継ぎなしの潜水で泳ぎ切った梅雨ちゃんがプールから上がっている。

 梅雨ちゃんの個性蛙は、まさに水中での行動に向いている。

 もっとも、蛙はオタマジャクシの時はエラ呼吸だが、蛙になれば肺呼吸になるので、個性が蛙の梅雨ちゃんもずっと呼吸をせず水中にいるといった事は出来ない。

 出来ないのだが、それでも見ての通り25m程度なら無呼吸で泳げるらしい。

 そして……

 ジャボン、という水音と共にヤオモモも姿を現す。

 ただし、ヤオモモの背中には酸素ボンベがあり、口にはその酸素ボンベと繋がっているマスクがある。

 ヤオモモの個性、創造によって生み出された物だ。

 ああいうのも普通に作り出せるのだが、ヤオモモの個性はやっぱり凄いよな。

 万能性という、何にでも対応出来る手札がある事になる。

 もっとも、その手札を増やすにはヤオモモがしっかりと勉強をする必要があるし、また手札がありすぎる影響でいざという時にどの手札を使えばいいのか迷ったりもする。

 そういう意味では、便利すぎて困るという点もあるのは間違いなかった。

 

「うひょおおおおおおっ! 見ろよ上鳴! やっぱりプールを借りてよかっただろう?」「それは……あ……」

「え? ぎょぺっ!」

 

 水中にいる時はともかく、プールから上がると酸素ボンベは結構な重量となる。

 その結果、水着の生地が後ろに引っ張られる事になり、それにヤオモモの年齢不相応に巨大な双丘がこれでもかと強調されていたのだ。

 これがビキニとかそういう水着だったら、もっと凄い事に……もとい、酷い事になっていただろう。

 学校指定の水着だからこそこの程度ですんだ訳だが、それはそれでエロいんだよな。

 それを見た峰田が嬉しそうに声を上げ、上鳴に同意を求めていたのだが、そこに梅雨ちゃんの舌が飛んできて鞭の如く峰田の身体を叩き付け、悲鳴が上がった。

 男用の水着は当然ながらトランクスタイプで、上半身は裸だ。

 その背中に長く伸びた梅雨ちゃんの舌が叩き付けられたのだから、峰田が悲鳴を上げるのも当然だろう。

 ……不幸中の幸いというべきか、上鳴は峰田に対して同意するような事を言う前だったのもあってか、梅雨ちゃんの舌が振るわれる事はなかったが。

 それにしても……痛い痛い喚いている峰田だったが、今のって考えようによっては梅雨ちゃんが峰田の背中を舐めたのと同じようなものじゃないか?

 本人は痛みのあまり、全く気が付いている様子はなかったが。

 峰田が気が付いてないのなら、わざわざ俺が教えるまでもないか。

 教えたら教えたで、梅雨ちゃんが恥ずかしがりそうだし。

 

「ケロ。全く、峰田ちゃんったら」

 

 呆れた様子で梅雨ちゃんが峰田を見て言う。

 とはいえ、そこにはお仕置きをしたというのもあってか、嫌悪感の色はない。

 寧ろ、仕方がないなといったような色すらある。

 うーん……これは峰田にとって良い事なのかどうか。

 とはいえ、A組の女はその多くが大らかというか……峰田が暴走しても、お仕置きはしても本気で嫌悪感を抱いたりはしない。

 いやまぁ、そうなる前に飯田を始めとした面々が止めたり、あるいは峰田本人が意図的に失敗しているように見えたりとか、そんな感じがするからかもしれないが。

 

「切島は泳がないのか?」

「おうよ、勿論泳ぐぞ。ここはしっかりと漢らしいところを見せなきゃいけねえかれな」

 

 一体誰に?

 そう思ったが、切島がやる気になっているのなら特に俺が何かを言う必要もない。

 実際、俺達が泳ぎ終わった後も、何人か泳いでいたりするしな。

 

「そうか。なら頑張れ。……とはいえ、切島の場合は個性を使って泳ぐには難しそうだから、生身で泳ぐ事になるだろうけど」

「そうなんだよな。……潜水とかそういうのなら、わざわざ泳いだりしないで水中に沈んでいけるから、そういう意味では楽なんだが。このプールにそういう設備はないしな」

「雄英ならそういうプールとか、あっても良さそうだけど」

 

 日本でトップのヒーロー科を持つ雄英だ。

 また、セメントスという建築物を作る上でこれ以上ない程に向いている個性を持つプロヒーローもいる。

 であれば、切島が言うような深いプールとかそういうのがあってもいいだろうし、実際に俺達は知らないだけでそういうプールもあるんだろう。

 ただ、そのようなプールを使えるのは、俺達じゃなくて2年とか3年のヒーロー科の生徒といった感じで。

 

「うおおおおおおっ! 水中でもエンジンを動かしてみせる!」

 

 そんな声に視線を向けると、そこにはプールをかなりの速度で泳いでいる……いや、走っている? そんな飯田の姿があった。

 あれって、大丈夫なのか?

 いやまぁ、エンジンが個性である以上、防水とかそういう感じになっているのかもしれないが。

 

「よっしゃぁっ! じゃあ、アクセル。俺も行ってくるぜ!」

 

 そう言うと、切島は飯田を追うようにプールに入っていく。

 どうやら飯田の様子を見て自分もやる気になったらしいが、一体今のを見て何でそんな風になる。

 

「闇を統べる者よ。俺も行ってくる。ダークシャドウ!」

「任セロ!」

 

 そして切島に続き、常闇もダークシャドウと共にプールに入る。

 ダークシャドウは……あれはあれで、個性の1つの到達点っぽい感じなんだよな。

 何しろ自我を持つ個性だ。

 大雑把に指示をするだけで、ダークシャドウはある程度自分で考えて行動出来る。

 勿論、まだ成長する必要があるが……それでも成長度合いによっては、ダークシャドウはかなり強力な個性となるのは間違いない。

 俺のイメージとしては、ペルソナ世界のペルソナ的な?

 いや、けどペルソナが出てくるのは基本的に攻撃をしたりといったように何らかの行動を起こす時だけだ。

 まぁ、中には山岸やりせのようにバックアップをしている時は常にシャドウを出しっぱなしにしていたりもするけど。

 

「俺もいくぜ!」

 

 そう言うと、ドーナッツを食べ終えた砂藤がプールに飛び込み、かなりの速度で泳ぐ。

 砂藤の個性は緑谷と同じような増強系だ。

 ただし、ヤオモモがカロリーを消費して創造を使うように、砂藤の場合は個性を使う前に甘いものを食べないといけない。

 ……ヤオモモの場合は、個性でカロリーを消費するので幾ら食べてもダイエットは難しくないが、砂藤の場合はどうなんだろうな。

 甘いものを食べて個性を使うのは分かるが、それによって摂取したカロリーとかどうなっているんだろう。

 もしヤオモモのようにカロリーを消費して増強系のパワーを発揮している訳ではなく、あくまでも甘いものを食べるという条件があって個性を使えるのなら、健康的に結構問題のある個性になるな。

 

「皆、元気だよね」

「緑谷? お前はいいのか?」

「うん、僕はもう少し休憩をしてから泳ぐよ」

 

 そう言えば、緑谷は俺が泳ぐ前に結構頑張って泳いでいたな。

 今日プールを借りたのは、表向きはプールを使った訓練、あるいはメリッサに振られた……というか、そこまでもいってなかった瀬呂を励ます為に行われたものだ。

 真面目な性格をしている緑谷だけに、訓練をやる為に借りたのだから……という事で、しっかりと泳いでいたのだろう。

 

「そうか。……ちなみに、本当にちなみにだけど、緑谷はメリッサの連絡先を知らなかったりしないか?」

「でええっ!? メ、メリッサさんの!? 一体何で僕がそんなのを知ってると思うのさ!?」

 

 俺の言葉が緑谷にとってはかなり予想外だったらしく、そんな風に驚かれる。

 いや、けどそこまで驚くような事でもないと思うんだが。

 

「何で驚く? メリッサとはI・アイランドで緑谷が一番仲が良かっただろ? なら、連絡先くらい知っていてもおかしくはないと思っただけだけど」

「そう言われても、その……知らないよ」

「そうか」

「……あれ? あっさりだね。もっとこう……色々と聞いてくるかと思ったのに」

「どうしても知りたい訳じゃないしな。ただ、もし緑谷が知っていたら、瀬呂に教えてやったらどうだ? と思っただけだ」

「あ、あー……なるほど、うん。でもその……本当なの?」

「本当なのって、何がだ?」

「だから、その……瀬呂君がメリッサさんの事を……」

「どうだろうな。本気で一目惚れしたのか、あるいは美人だったからお近づきになりたいと思ったのか、もしくは他に何か思うところがあったのか。その辺については俺も分からない」

「……その、もし瀬呂君が本気だったら、何とかしてメリッサさんの連絡先を聞いてもいいけど……」

 

 何とか?

 具体的にはどうやって?

 そう思ったが、オールマイトの伝手を使ってのものだろう。

 メリッサの父親はオールマイトのかつての相棒だったらしいし、メリッサもオールマイトをおじさまと言って慕っている。

 それを考えれば、オールマイトならメリッサの連絡先を知っていても不思議ではない。

 

「楽しそうやね」

 

 ビクリ、と。

 そんな声が聞こえた瞬間、緑谷の動きが止まる。

 声のした方に視線を向けると、そこには麗日の姿があった。

 微妙にジト目っぽい感じなのは……この世界の原作のヒロインとしては、緑谷が他の女の話題をしているのが面白くなかったといったところか。

 いやまぁ、その気持ちは分からないでもない。

 レセプションパーティの時にめかし込んでいたメリッサは、まさに大人っぽい美人といった感じだったしな。

 麗日も顔立ちは整ってはいるものの、美人ではなく可愛い系だ。

 それだけに、メリッサには思うところがあるのだろう。

 ……もっとも、麗日が緑谷にどのような感情を抱いているのを自覚しているかどうかは分からないが。

 あるいは、今はまだ仲の良い男友達といった認識かもしれないけど。

 

「い、いや。その、麗日さん。違う。いや、メリッサさんの話をしていたのは間違いないけど、その……麗日さんが思っているような事じゃないから!」

 

 慌ててそう言う緑谷。

 さて、こっちはどうなんだろうな。

 今のやり取りだけを見れば、麗日に誤解されたくないと思って、その為に今のように慌てているようにも思えるが、もっと単純に緑谷が女慣れしてないからのようにも思える。

 とはいえ、雄英に入学して既に数ヶ月。

 A組の面々ともそれなりに接してきたので、今更麗日と話すのにテンパって今のようになるとは思えない。

 だとすれば、やはり考えられるのは麗日に誤解して欲しくないといったところか。

 

「おい、ヒモ野郎。勝負だ! デク、てめえも来い!」

 

 そんな中、爆豪がやってきてそう叫ぶ。

 いやまぁ、爆豪を煽って今日プールに来させたんだし、そう考えれば勝負を挑まれるくらいは想像出来てはいたけどな。

 なので、俺は素直に頷く。

 

「分かった。じゃあ、やるか。他には誰が参加する?」

「半分野郎だ」

 

 爆豪の言う半分野郎というのは、轟の事だ。

 いやまぁ、轟の事を考えれば半分野郎というのは決して間違ってはいないんだけどな。

 

「え? ちょっ、かっちゃん? アクセル君!?」

 

 戸惑った様子で緑谷が言うが、俺が素直に勝負を受けたのが嬉しかったのか、爆豪はご機嫌な様子で緑谷を無理矢理引きずっていく。

 俺もそんな2人についていくが……話が途中で遮られた麗日がジト目で緑谷を見ているんだが、緑谷は気が付いた方がいいぞ。

 そう思いながら、プールの……何て言うんだ? 飛び込み台? の上に立つ。

 

「それにしても、轟がこういうのに参加するのは珍しいな」

「そうか? だが……俺だってアクセルには勝ちたいと思っている」

 

 予想以上にやる気の轟に驚く。

 というか……轟は氷を出しており、爆豪は掌で爆発を生み出し、緑谷もまた個性を使っているのが分かる。

 あれ? これ……実は泳ぐんじゃなくて、泳ぐのもありな25m走的な感じか?

 そう判断する。

 

「では、行くぞ!」

 

 飯田がそう言う。

 どうやら先程水中で個性のエンジンを使ったのは特に問題がなかったらしい。

 緑谷から聞いた話だと、飯田の家は代々同じ個性らしいから、防水とかその辺についても対処方法があるのだろう。

 そう思っていると、飯田が手を挙げ……

 

「スタート!」

 

 そう叫ぶ。

 瞬間、俺は瞬動を使って空中を跳び、そして次に虚空瞬動を使い……次の瞬間には、俺の姿は先程までいた飛び込み台とは反対側のゴールになる場所にあった。

 

「ちょっ、それありかよ!?」

「いや、けど見ろよ。爆豪は空中を爆発で進んでるし、轟はプールを凍らせて滑ってるぞ? 泳いでいるのは緑谷だけだ」

 

 瀬呂の叫びに尾白がそう冷静に話しているのを聞きながら、プールを見る。

 ……なるほど、轟はプールの水を凍らせているな。

 驚くべきは、緑谷がプールの水が凍るよりも前に泳いでいる……つまり、轟よりも前にいる事だろう。

 俺の後にゴールした爆豪が睨み付けてくるの感じながら、そんな風に思うのだった。

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