転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4518話

 プールで遊んだ日から数日……

 

「おはよう、アクセル」

「ああ、おはよう拳藤」

 

 いつものように駅前で拳藤と待ち合わせをするのだが……

 

「何だか夏休みにこうして待ち合わせをして学校に行くのって、妙な気分だな」

「あはは、アクセルもそう思う? あ、でもアクセルはこの前プールに行ったんでしょう? その時も夏休みなのに学校に向かったんだから、そこまで違和感ないんじゃない?」

「いや、今日は合宿で、着替えとかの入ったスーツケースもあるし」

 

 そう言い、俺の後をついてくるスーツケースを見る。

 AI搭載のスーツケースなので、俺が移動をすれば後をついてくる。

 その為、手に持つ必要がないのは楽だ。

 空間倉庫について公にすれば、スーツケースがなくても問題がないんだが……とはいえ、空間倉庫については別に無理に公にする必要もないしな。

 

「持たなくてもいいってのは羨ましいね。……私もそういうのを欲しかったけど、高いんだよな」

「そうだな、それは間違いない」

 

 AI搭載のスーツケースは、普通のスーツケースと比べてもAIを搭載しているし、自力で移動出来る能力が搭載されている分、どうしても普通のスーツケースと比べると値段が高くなるのは仕方がない。

 ただ、それでも俺はこのスーツケースを買って良かったと思う。

 俺が使っているロボット掃除機に搭載されているAIと仲良くやってるようにも見えるしな。

 

「ともあれ、行くか。時間にまだ余裕があるけど、早めに行っておいた方がいいし」

 

 そう俺が言うと拳藤も頷き、そして駅に入ると電車に乗る。

 

「そういえば、俺達のプールはともかく、拳藤の方はどうだったんだ?」

 

 夏休みということもあり、雄英の最寄り駅に向かうこの電車はそれなりに空いている。

 夏休みは学生だけで、時間も今は午前7時すぎだけに、出社時間に被っているので、ガラガラって程ではないが。

 ただ、それでも雄英の生徒がいない分、空いているのは間違いなかった。

 1年は今日から林間合宿だけど、2年と3年はどうなんだろうな。

 もし俺達と同じなら、他にも生徒がいてもいい筈だろうけど、いないしな。

 俺達と日にちをずらして林間合宿をやるって事だろう。

 あるいは、そもそも林間合宿がないか。……いや、それはないな。

 雄英のヒーロー科である以上、相澤が1学期の最後に言っていたように、夏休み全てを休める訳じゃないだろうし。

 

「うん、その……アクセルが選んでくれた水着、ちょっと攻めすぎだったかなと思った」

「そうか?」

 

 俺が拳藤と会った店には、何を思ったのか紐としか言いようのない水着だったり、際どいといった表現でも足りないような水着だったりがあったりしたが、最終的に拳藤が選んだのは――正確には俺が選んだ候補の中から選んだという意味だが――ワンピース型の水着だった。

 紐とかビキニとは違って、拳藤が行くと言っていた滑り台のあるプールでも問題がない、そんな水着だったと思うんだが。

 

「……勿論、いわゆるポロリはなかったぞ? なかったけど……ちょっとハイレグがきつすぎるって言うか……」

 

 そう言いつつ、頬を薄らと赤くしながらそっと視線を逸らす拳藤。

 もし普段の拳藤を知っている者が今の拳藤を見れば、一体何がどうなっているといった様子で驚くだろう。

 

「あー……それは悪かったな。純粋に拳藤に一番似合う水着を選んだつもりだったけど、滑り台とかで激しく動き回るというのは考えから抜けていたみたいだ」

「似合うって……ま、まぁ、その……茨から恨めしそうに見られたんだからな」

 

 見事に照れ隠しといった様子が正しいように、拳藤は話を逸らす。

 

「茨が? 何でだ?」

「あのなぁ……茨はその……アクセルに心酔してるだろ?」

「まぁ、そうだな」

 

 心酔というのは、拳藤が言葉を選んでのものだろう。

 茨の場合は、心酔どころか信仰とでも呼ぶべき様子だし。

 それこそ普段から身も心も俺に捧げると言っているし、もし俺が冗談交じりにでも抱かせろと言えば、すぐにでも身体を開いてもおかしくはない。

 ……本当に、一体何であんな風になったんだろうな。

 

「その心酔しているアクセルが、私の為に選んでくれた水着だぞ? 茨がそれを知ったら、羨ましいと思ってもおかしくはないだろ」

「それなら別に、わざわざ俺が選んだとか言わなくても、自分で選んだと言えばよかったんじゃないか?」

「それは……つい……」

 

 どうやら何らかの拍子で口を滑らせてしまったらしい。

 うん、それなら茨に羨ましく思われても仕方がないが。

 その辺については、口が滑った自分が悪いと思ってもらうしかない。

 

「ともあれ、プールで楽しかったのは間違いない。……ナンパがうざかったけどな」

「あー……それはまぁ、仕方がないだろ」

 

 拳藤や茨、取蔭、小大……他にも何人かB組の女はいるが、誰もが方向性は違っても顔立ちは整っている。

 そして今は夏だけに、開放的になっている者も多いだけに、ナンパする方もワンチャンあると思って挑戦してもおかしくはない。

 取蔭辺りはそういうのが得意そうだけど……他の面々は、決してそういうタイプではないんだよな。

 その結果として、恐らくはナンパされては断るといった事になっていたのだろう。

 

「けど、B組の男は連れていかなかったのか? 物間は……まぁ、相手を逆撫でして騒動になりそうだから論外としても、鉄哲とかだったらナンパ避けにいいんじゃないか? 他にも威圧感のありそうな奴が何人かいたと思うし」

「いや、女だけで行ったしな」

「それならしょうがない」

「……あのな、普通ならこういう時はナンパされた私を心配するところじゃないのか?」

 

 不満そうな様子で拳藤が言ってくるものの、俺は首を横に振る。

 

「拳藤だぞ? ……もし相手が力ずくでどうにかしようとしても、それこそ即座に鎮圧されるだけだろ」

 

 ヒーロー科に入学しただけあって、拳藤は相応に鍛えられている。

 また、1学期は放課後に行われている自主訓練にも頻繁に参加していて、俺を含む多くの者達と模擬戦をしてもいる。

 それこそ、その辺のナンパ男がちょっかいを出してきても、即座に鎮圧するだろう。

 

「……ふん」

 

 怒っているのか、照れているのか、それとも何か別の感情か。

 とにかく俺の言葉に拳藤は薄らと頬を赤く染め、俺から視線を逸らして俺達が下りる駅に到着するまで黙り込むのだった。

 

 

 

 

 

「おはようございます、アクセルさん。一佳さんも」

 

 駅から出ると、夏休みだというのに1学期中の時と同じように茨の姿がそこにはあった。

 

「ああ、おはよう。……けど、暑くないのか?」

 

 真夏だけあって、まだ朝だというのに既に気温は30度オーバーだ。

 そんな中でこうして駅の外で俺達を待っているのは、熱中症的な意味でかなり危険な気がする。

 そう思ったのだが、茨は特に暑そうには見えない。

 いや、勿論薄らと汗を掻いてはいるのだが、言ってみればそれだけだ。

 

「はい、私の場合は髪の毛が個性ですので」

 

 そう言い、髪の毛を……棘の生えている蔦を動かして見せる。

 なるほど、どうやらこの蔦によって日陰を作ることで直射日光を避けているらしい。

 けど、それでも蔦は茨の髪の毛であるのは間違いない訳で、そうなると蔦に直射日光が降り注げば暑いんじゃないか?

 そう思ったのだが、茨の様子を見る限りでは強がりでも何でもなく、普通に少し暑い程度らしい。

 

「……そうか。なら、学校に向かうか」

 

 そう言うと、俺達は雄英に向かって歩き出すのだが……

 

「アクセルさん、一佳と何かありましたか?」

「いや、別にそういう訳じゃないんだけどな」

 

 俺と茨、拳藤と茨が話しているのに、俺と拳藤が話さないのを不思議に思ったらしい茨が、そう聞いてくる。

 だが、そんな俺の言葉が不満だったのか、拳藤はジト目を向けてくる。

 うーん、これから林間合宿で一緒の時間なのに、これはちょっと不味いか?

 

「拳藤、どうしたんだ?」

「ふんっ、何でもないわよ」

 

 そうした言葉に、どうしたものかと考えるが……結局微妙な雰囲気のまま、雄英に到着する。

 いつもならこのまま教室に向かうのだが、今日は林間合宿である以上、このままバスに乗って移動する事になるので、教室に向かう必要はない。

 

「じゃあ、A組はあっちにいるから、俺は行くな」

「はい、分かりました。……一佳の件は私にお任せ下さい」

 

 茨がそう言うも、拳藤は俺と視線を合わせようとしない。

 うーん……何でこんなに怒ってるんだ?

 そう思うも、取りあえず到着したのでA組の集まっている場所に向かう。

 

「アクセル、おっす」

「おう」

 

 声を掛けてきた瀬呂に軽く返しながら合流する。

 

「なぁ、アクセル。一応聞くけど……お前、一夏の経験とかしてないよな?」

「あのな、朝っぱらから何を言ってるんだよ」

 

 その場にいた1人、峰田が俺にそんな風に聞いてくる。

 何を話しているのかと思えば、朝からするような話じゃないだろうに。

 とはいえ、峰田だけではなく上鳴までもが俺に疑問の視線を向けてくる。

 

「アクセルならもしかしてと思ったんだけど、アクセルでも無理だったか……けど、あの塩崎って子なら、アクセルが誘えば、もしかしてどうにかなるんじゃないか?」

「あのな、上鳴……いやまぁ、別にいいけどな」

 

 マスコット枠の峰田はともかく、上鳴はそれなりに顔立ちも整っているし、ナンパをして一夏の経験をというのは、やろうと思えば出来ると思う。

 もしかして峰田と一緒にナンパをしてるから駄目なのかもしれないな。

 峰田の場合は黙っていればマスコット枠として女にも好印象なのに、口を開くと男の欲望丸出しで、女に引かれるしな。

 勿論、世の中には色々な趣味の奴がいるので、峰田が好みど真ん中といったような者がいてもおかしくはないと思う。

 思うが……もしそういう奴がいたとしても、もの凄く希少だろうな。

 

「おはよう、アクセル。……朝から一体何の話をしてるのかな? よければウチにも聞かせて貰える?」

 

 耳郎がイヤホンをヒュンヒュンと鞭の如く動かしながら、そう聞いてくる。

 おい、これ……朝から耳郎さんになってないか?

 こうなった原因については俺は分からない。

 ただ、俺が来てすぐにこうなったという事は、俺がどうこうというよりも、俺が来る前に峰田達が何かをやらかしてこうなった……と考える方がいい。

 そう思ったのだが、何故か瀬呂、峰田、上鳴の3人が俺にどうにかしろと視線を向けている。

 おい、これは……もしかして俺のせいで耳郎さんになったとか、そんな風に思っていないだろうな?

 俺はここに来たばかりなんだし、俺のせいじゃないと思うんだが。

 とはいえ、他の3人の視線を裏切る事は出来ず、耳郎に向かって口を開く。

 

「実は、ネットで面白い動画があってな。それが一夏の経験って奴なんだよ。簡単に言えば、夏休みデビューをしようとする奴のドキュメンタリー的な奴だな」

「ふぅん……」

 

 何とか適当に誤魔化そうと、ありがちな話をしてみる。

 ……それ、どういう動画なんだと言われるとちょっと困るが、上手くいけば耳郎さんを誤魔化す事が出来る。

 そう思ったのだが……

 

「へぇ、面白そうな動画だね。ウチも見てみたいから、どこで見られるか教えてくれる?」

 

 藪蛇だったぁっ!

 まさかここで耳郎さんが興味を示すとは思えなかった。

 とはいえ、ここで適当に誤魔化すのも、それはそれで不味い訳で……一体どうするか。

 そう思っているところで、爽やかな笑みを浮かべつつ、こちらに近付いてくる男の姿があった。

 その爽やかさとは裏腹に、B組のアレな奴代表という扱いになっている……つまり、B組の爆豪枠や峰田枠の人物、物間だった。

 

「え? あれ? あれあれあれ? A組に補習がいるって本当かい? つまり赤点取った人がいるって事!? ええ!? おかしくない!? おかしくない!? A組はB組よりずっと優秀な筈なのにぃっ! あれえええええええ!?」

 

 その爽やかな笑みから、こちらを煽る言葉が出てくる。

 いつもなら、うわぁ……と。そんな風に思うんだが、今は違う。

 よくぞ来てくれた。

 そう思いながら、俺は耳郎さんをスルーして物間に近付いていく。

 

「な、何だい? 幾ら本当の事を言われたからって、ここで僕に手を出したしりしたら、それはヒーロー科の生徒として失格だよ!?」

 

 なら、なんでお前が煽るのはいいんだよ。

 そう思わないでもなかったが、今のこの状況は俺にとっても悪いものではない訳で。

 物間に向かって何かを言おうとしたところで、スタスタと歩いてきた拳藤が無言で物間の首の後ろに手刀を入れる。

 

「ゲピ」

 

 一瞬にして意識を刈り取られる物間。

 

『あ』

 

 そしてそんな物間を見て、俺と瀬呂、峰田、上鳴の口から同じ声が出る。

 何しろ耳郎さんの一件を、物間の件でどうにかしようとしていたのに、それを問答無用で対処されてしまったのだから。

 

「ごめんな。……アクセルも。こいつアレだから」

 

 そう言い、拳藤は物間を引きずっていく。

 けど、あれ? 何だか拳藤の機嫌が直ってる?

 俺は後ろから聞こえるヒュンヒュンという耳郎さんのイヤホンの風切り音を意図的に無視して、そう考えるのだった。

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