転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4519話

「1時間後に1回停まる。その後は暫く……」

 

 出発したバスの中で、相澤が何かを言っているものの……林間合宿という、いかにも夏休みらしいイベントという事で、皆のテンションが上がって騒いでいた。

 相澤はその様子を見て、何を言っても無駄だと判断したのだろう。

 それ以上は何も言わず、アイマスクをして眠り始めた。

 

「って、なんで俺がヒモ野郎の隣なんだよ!」

 

 俺の隣で不機嫌そうに吐き捨てるのは、爆豪。

 ……そう、何がどうなってこうなったのかは分からないが、とにかく俺の隣が爆豪となってしまったのだ。

 本当に何がどうなってこうなったのか、俺には分からない。

 別にくじ引きとかそういうので決めた訳ではなく、半ば成り行きに近い感じで決まった形だ。

 けど、俺と決して相性が良い訳じゃない爆豪をピンポイントで俺の隣まで持ってくるってのは、どうなんだ?

 何しろ爆豪にとって、俺は倒すべき敵。越えるべき壁だ。

 自分の個性や実力に自信があり、実際A組どころかヒーロー科1年の中でもトップラスの能力は持っているのだが……それでも、雄英に入学してから俺に1度も勝った事がない。

 その為、俺に対して強烈なライバル心を抱いているんだよな。

 まぁ、そのお陰で爆豪が緑谷に突っ掛かる事がない……訳ではないにしろ、大分その頻度が減ってるので、それはそれでメリットかもしれないが。

 ともあれ、そんな爆豪が俺の隣にいるというのは、色々な意味で不味い。

 

「なら、誰かと席を替わるか? そっちの方が爆豪にとってもいいだろう?」

 

 そう言うと、爆豪は俺を睨んでくる。

 ……それでも爆豪の性格を考えると、もし本当にそうして欲しいのなら、一切の遠慮もなく、そう言うだろう。

 なのにそういう風に言わないって事は、思うところはあれども、俺が隣にいるのを認めたといったところか。

 とはいえ、爆豪が認めたからといって、それで何かを話す訳でもなく……

 

「ねぇ、ねぇ、アクセル。ポッキー食べない?」

 

 俺の前に座っていた三奈が、後ろを振り向きそう言ってくる。

 

「いいのか?」

「いいよ。このイチゴのポッキー、お気に入りだから一杯持ってきたし。ほら」

 

 そう言い、鞄を見せると……

 

「うわ」

 

 思わずそんな声が出る。

 何故なら、そこには20箱近いポッキーが入っていた為だ。

 幾らポッキー好きでも、これはどうなんだ?

 というか、よくこれだけのポッキーを買う金があったな。

 雄英の生徒は日本中から集まっているので、その多くが1人暮らしをしている。

 普通なら雄英のような学校には寮があってもおかしくはないので、俺や拳藤のように1人暮らしをしている者が多い。

 三奈もまたそんな1人暮らしをしている人物の筈だったが、そうなると生活費とかそういうのは親からのものしかない。

 あるいは奨学金を貰っているのなら……いや、三奈の成績を考えると、それはそれで難しいか?

 雄英に入学出来ている時点で三奈はかなり優秀なのは間違いないが、勉強ではクラスでも最下位に近い成績であるのは間違いない。

 そうなると、奨学金は……あ、でも雄英の生徒ならその時点で優秀な人物と認識されて奨学金は受け取れるかもしれないんだな。

 ……もっとも、これはあくまでも俺の認識だ。

 ヒロアカ世界にまだ奨学金という制度が残っているのかどうかは、微妙なところだった。

 

「黒目、お前……」

 

 爆豪もまた、三奈の持つバッグの中身を見て、唖然とした様子で言う。

 ちなみに黒目というのは三奈を呼ぶ時に爆豪が口にする言葉だ。

 俺をヒモ野郎と呼ぶのと同じだな。

 ともあれ、爆豪をこうして唖然とさせるというのは、素直に凄いと思う。

 

「どう?」

「あー……じゃあ、そうだな。1本もらうよ」

 

 イチゴ味のポッキーと一口に言っても、色々な種類がある。

 イチゴ味のチョコレートでコーティングされている奴もあれば、イチゴの粒々が付いている奴もある。

 また、イチゴ味のチョコレートと一口に言ってもイチゴの割合で違ってくる。

 言うまでもなく、イチゴの割合が増えればチョコレートは高額になり、ポッキーの値段も変わってくる。

 三奈が俺に渡してきたのは、そんな複数あるイチゴポッキーの中でもそれなりに高額な奴だ。

 

「……うん、美味いな」

「でしょ? 爆豪も食べる?」

「いらねえよ!」

 

 不満そうな様子で断る爆豪。

 爆豪にしてみれば、お菓子は決して好きではないのだろう。

 とはいえ、三奈も数ヶ月の学校生活で爆豪の性格は分かっているので、今の爆豪の様子を見ても不満そうにはしない。

 特に不満そうな様子を見せず、三奈は前を向く。

 俺は口の中のポッキーを飲み込み、爆豪に視線を向ける。

 

「それで、爆豪。何か俺に言いたい事があったりするのか?」

「……」

 

 爆豪の様子からすると、俺に何か用事がなければ特に声を掛けたり、視線を向けてきたりといった事はしない。

 だが、爆豪は先程から何度か俺の方を見たりしている。

 それを見れば、爆豪が何か俺に用事があるだろうと予想するのは難しい話ではない。

 

「……まぁ、無理にとは言わない。別に何も俺に言いたくないのならどうしても言えとは言わないし」

「お前達がやっている自主訓練ってのは、どういうのをやってるんだ」

 

 へぇ、まさかそこについて聞いてくるとはちょっと意外だったな。

 今の言葉を聞けば分かるように、爆豪は今まで一度も自主訓練に参加してはいない。

 ……それでもクラスNo.2の実力を維持してるのは、本人の才能もあるが、自分で色々と考えて訓練を行っているからだろう。

 同じNo.2の轟は毎回ではないにしろ、それなりに頻繁に参加しているので、相応に強くなっている。

 爆豪にしてみれば、轟に引き離されているのを理解しているのだろう。

 ここで黙っておいて、何をやっているのか教えないというのも、それはそれで面白そうだとは思う。

 思うのだが、爆豪は原作において主人公である緑谷のライバルなのは違いない。

 そうなると爆豪だけが置いていかれるというのは、原作の内容的に色々と問題だろう。

 もっとも、爆豪の代わりに他の者達が強くなっているのを見れば、もしかしたら爆豪の代わりの戦力としては問題ないかもしれないけど。

 

「やってる内容は色々とあるが、その中でも一番の目玉というか、毎回必ずやってるのは俺との模擬戦だな」

「ああ? ……模擬戦だぁ?」

「そうだ。地道な訓練……例えば体力トレーニングとかそういうのもそれなりに重要ではある。だが、ヒーロー科の生徒として、将来プロヒーローになるべき者として、重要なのは実戦経験だ。とはいえ、まさか街中に出てヴィランを捜し回る訳にもいかないしな」

 

 例えヒーロー科の生徒であろうとも、無許可で公の場で個性を使ったりしたら警察に捕まる。

 これがヒーローの資格の仮免でもあれば問題ないのだが。

 そんな訳でヴィランを相手にした実戦は無理なので、俺が模擬戦をやっている訳だ。

 とはいえ、俺はその辺のヴィランと比べても圧倒的な力を持っている。

 ぶっちゃけ、大抵のヴィランは手加減の上に手加減をして、更に手加減をした俺よりも弱い訳で……そういう意味では、俺と真っ正面から模擬戦をやるというのは、難易度的な意味ではヴィランとの実戦よりも上だ。

 ……ただ、模擬戦というのは他の連中も知っている訳で、もし俺に負けても命を落とすような事は、あるいはそれ以上に酷い目に遭うような事もないので、そういう意味ではあくまでも模擬戦は模擬戦で、実戦には及ばないんだよな。

 その辺りの説明をすると、爆豪は不満そうな、それでいて納得したような、そんな微妙な表情になる。

 

「言っておくけど、アクセルとの模擬戦はそう簡単なものじゃないんだからね。アクセルの話を聞いた限りだと簡単そうに、難易度が低そうに思えるけど」

「そうだそうだ、アクセル君って模擬戦でも……ううん、模擬戦だからこそ手加減をしてくれないし」

 

 三奈と葉隠がそう口を挟んでくる。

 いや、十分に手加減に手加減を重ねてるんだけどな。

 

「お前らが弱いだけだろ」

 

 ふんっ、と。

 三奈と葉隠の言葉に、爆豪は鼻で笑う。

 そんな爆豪の様子に不満そうな表情を浮かべる三奈と、手の動きで不満を表す葉隠。

 

「まぁ、それでも三奈も葉隠も俺との模擬戦を通じて強くなっているのは間違いない。このままいけば、いずれ……そう遠くないうちに、爆豪に勝つ事も出来るかもしれないな」

「え? それ本当!?」

 

 俺の言葉が意外だったのか、それとも単純に嬉しかったのか、とにかく葉隠が興奮した様子で手を大きく動かす。

 ……爆豪は自分が負けるという俺の言葉が気に食わなかったのか、ヴィランとしか言いようがない形相で俺を睨み付けていたが。

 

「絶対にそうなるって決まった訳じゃないけどな。あくまでもそうなる可能性があるってだけで」

 

 実際、葉隠の個性である透明というのは非常に凶悪だ。

 その上で、葉隠の一撃……男の股間を狙っての蹴りは、男にとっては致命的すぎる。

 とはいえ、音の出ないような歩き方とか、気配を消す方法とか、そういうのも葉隠はまだまだなので、今の状態でもし爆豪と戦ったら、爆豪に勝つのは難しいだろう。

 

「ヒモ野郎……てめえ、本気で言ってるのか?」

「冗談を言うつもりはないな。とはいえ、あくまでも将来的にの話だ。爆豪が自主訓練に参加して俺との模擬戦をやれば、どうなるのかは分からないが」

 

 今の爆豪はあくまでも自分だけで訓練をしている。

 そうなると、どうしても模擬戦とかそういうのは出来ない訳で、だとすればいざ実戦という時に困る。

 いや、別に困るって訳じゃないか。

 ただ、他の面々のように模擬戦を行っていた者達と比べると、どうしても訓練が足りなくなってしまう。

 ……とはいえ、そうした状況であっても未だにクラスNo.2の座にいるというのは、爆豪の才能あっての話だろうが。

 

「ふふん」

 

 俺が褒めたのが嬉しかったらしく、葉隠が自慢げに鼻を鳴らす。

 今の時点では爆豪に勝つのは無理であって、あくまでもこのまま訓練を続け、音を出さないような歩き方を身に付け、気配を消す技術を身に付け、格闘技とかそういうのをしっかりと身に付けた上での話なんだが。

 

「ねぇねぇ、アクセル。私は? 私は爆豪に勝てるの?」

「おい、黒目ぇ……」

 

 爆豪が不機嫌そうな様子で三奈を睨む。

 爆豪にしてみれば、自分が三奈に負ける筈はないと、そう思っているのだろう。

 とはいえ……

 

「葉隠と同じく、訓練を積み重ねれば将来的には勝てるようになるかもしれないな。それこそ何度もPlus Ultraをすれば」

 

 そう、俺は言う。

 実際問題、三奈の酸という個性は非常に強力だ。

 ……寧ろ強力すぎてヴィランを相手に使う場合は殺さないように、あるいは大きな怪我を負わせないよう、十分に注意する必要があるくらいには強力だ。

 寧ろ強力ではなく凶悪といった表現の方が正しいのではないかと思ってしまうくらいには。

 勿論、それを言うのなら爆破の個性を持つ爆豪だって同じようなものではあるが。

 

「ほらほら、ふっふーん、どう、爆豪?」

「ぐぎぎぎ」

 

 うわぁ……三奈が意図的に煽ったといったようなものではないのかもしれないが、爆豪がとてもヒーロー科の生徒とは思えない程の……それこそ、ヴィランといった表現が相応しい顔になっている。

 葉隠が引いているようにも見えるし。

 

「まぁ、とにかくそんな訳だ。勿論、それは今の状態で、爆豪が自主訓練に参加しなかった場合の話であって、爆豪が自主訓練に参加するような事になったら話は違ってくるかもしれないぞ? ……で、どうする?」

 

 そう言うと、三奈に対する態度を即座に忘れた様子で俺に視線を向けてくる。

 もっとも、その視線は俺を睨み付けるといった表現の方が相応しいものではあったが。

 

「ぐぎぎ……」

 

 周囲に響くような歯ぎしりをする爆豪。

 爆豪にしてみれば、自主訓練に参加するというのは、それはつまり俺に助けて欲しいと言うようなものだ。

 プライドの高い……その上で1学期には俺に1度も勝つ事が出来なかった爆豪にしてみれば、とてもではないが自主訓練に参加したいと俺に頼みたくはないのだろう。

 ……もっとも、自主訓練はあくまでも自主訓練だ。

 それに参加するのに俺の許可が必要な訳ではない。

 なんなら、俺に何も言わず、しれっと自主訓練に参加しても、それはそれで別に問題なかったりする。

 ただ、爆豪の性格というかプライドを考えると、そういう事はとてもではないが出来そうにない。

 筋を通す……爆豪にはあまり似合わない言葉であり行動だが、それでも爆豪にしてみればそうしないでしれっと自主訓練に混ざったりはしないだろう。

 

「まぁ、どうするのかは爆豪が自分で決めたらいい。それに……もしかしたらこの林間合宿において、何かを掴む可能性もあるかもしれないしな」

 

 I・アイランドに続き、林間合宿。

 このいかにもなシチュエーションを考えれば、原作的に何かが起きない筈もなく……何らかの騒動が起きるのは確実だろうと予想するのだった。

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