転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4521話

 虚空瞬動を使って空中を移動する。

 だが……1分もしないうちに――それでもA組の面々と別れた場所からは大分離れてはいたが――こちらに向かって飛んで来る何かを察知した。

 なるほど、土を操る個性を使って作られたモンスターは、崖下で見た残骸のように地上を移動する奴だけじゃなくて、空を飛ぶのもいるのか。

 いや、考えてみればそうおかしな事ではないな。

 虚空瞬動については別に隠している訳ではないので、相澤は普通に知っている。

 であれば、プッシーキャッツにもその辺の情報は提供してるだろうし、ピクシーボブがその個性によって俺が虚空瞬動を使って空を移動するのに対処出来るようにしておいてもおかしくはない。

 そんな風に考えながら、こちらに近付いてくる空を飛ぶ土のモンスターを相手に、どうするべきかと考える。

 ぶっちゃけ、虚空瞬動を使って振り切る事も出来るのだが、合宿施設までこのモンスターを引き連れていくのは、それはそれで問題だろう。

 それならいっそ、一度地上に下りて木の陰に隠れてから影のゲートを使って合宿施設まで移動する……というのもあるかもしれないが、ピクシーボブの能力を思えば、森全体に監視カメラって訳じゃないが、何かあった時即座に対処出来るよう、何らかの目を設置していてもおかしくはない。

 それが個性によるものなのか、あるいは単純にサポートアイテムとして用意されているのか、その辺りは分からないが。

 とにかく影のゲートは今のところ秘密にしている個性だ。

 そうである以上、見られているかもしれない中で使おうとは思えない。

 ……これが直接自分の目で見ているのなら、視線や気配を感じたりも出来るんだけどな。

 ともあれそんな訳で、影のゲートを使うのは却下し……こちらに向かって飛んで来る鳥型の魔獣を、横をすり抜けながら拳で一撃を加え、撃破していく。

 バラバラと、砕けた魔獣は土の塊になって地面に落ちていくが……A組のいた場所からは大分離れているので、その辺りは問題ないだろう。

 そんな訳で、更に虚空瞬動を使いつつ、襲ってくる鳥型のモンスターは倒し……やがて10分も掛からずに合宿施設に到着するのだった。

 

「っと。……さて、当然だけどA組の面々は勿論、相澤達もいないな」

 

 バスが停まった場所から、この合宿施設までは結構な距離があった。

 3時間くらいで来るようにとピクシーボブではない方の女が言っていたが、あの高台から車で移動するにも、何だかんだとそれなりに時間は掛かるだろう。

 つまり……

 

「あれ? じゃあ、俺は暫くここで待っていないといけないって事か? ちょっと急ぎすぎたか」

 

 合宿施設を見て、そう呟く。

 暇な時間というのは、好ましいものではない。

 かといって……うーん、どうするか。

 まさか勝手に合宿施設に入ってゆっくりするといった事をする訳にもいかないしな。

 いやまぁ、やろうと思えばそういう事も出来るのだが、だからといって勝手に合宿施設の中に入って待っていれば、相澤が来た時には間違いなく怒られるだろうし。

 なら、周囲の木々にハンモックでも使って……と、そう思ったが、ハンモックはない。

 いや、正確には空間倉庫の中にはあるのだが、そこから出したハンモックでゆっくりしているのを相澤達に見られたら、一体どういう風に反応すればいいのかという問題でもある。

 影のゲートと同じく、空間倉庫についても今はまだ相澤達に隠している状態だしな。

 いっその事、その辺の諸々についても話してしまった方が面倒がなくていい……とは思うんだが、公安からは言わないで欲しいと頼まれているしな。

 となると、スマホに何か動画を保存していなかったか……と思ったんだが……

 

「あ、電波来てるな」

 

 予想外な事に、電波はしっかりとあった。

 それもギリギリ電波があるといった訳ではなく、最高の状態。

 ……電波塔の類はあるようには思えなかったのを考えると、合宿施設の中に何らかのサポートアイテムがあるのかもしれないな。

 そんな風に思いつつ、LINに書き込んでみる。

 三奈を始めとするA組の面々は魔獣の森を行動しているので反応出来ないだろうし、そもそも電波が向こうまで届いているかどうかが微妙なところだ。

 ただ、A組の面々は駄目でも、いつもの面子のグループの中には拳藤もいる。

 その拳藤が暇なら、構って貰おう。

 そう思ったのだが……

 

「反応はない、か」

 

 拳藤からの反応もないのを確認し、残念に思う。

 いや、けど……考えてみればそうおかしな事ではないのか?

 俺以外のA組の面々が今こうして魔獣の森を進んでいるのを考えると、俺達と同じく雄英を出発し、いつの間にか別行動をしていたB組の面々だって同じように何らかの試練を受けている可能性がある訳で。

 であれば、LINで拳藤の反応がなくてもおかしくはないだろう。

 ……茨辺りなら、その信仰心から何かを感じ取ったりしてもおかしくはないが。

 ともあれ、やる事もないのでネットで動画を見る。

 

「うわ、まだこの動画があるのか」

 

 そう呟いたのは、俺がステインを倒した動画がまだ残っていたからだ。

 残っていたというか、別に削除とかはされていない筈なので、探そうと思えばすぐに探す事は出来たりするのだが。

 ただ、ネットの世界というのは常に新しい動画がアップされ続けている訳で、そうなれば当然ながら俺がステインと戦った映像も見つけにくくなる筈なんだが……残念ながら、今もこうしてかなり表に出ている。

 まぁ、あの時は龍子から個性の使用許可を貰っていたので、この件が知られてもそれはそれで問題がなかったりするんだけどな。

 そんな風に思いながら別の動画を見る

 中には龍子の……リューキュウの特集動画とか、そういうのもあって興味深く見ていたんだが、ある程度時間が経ったところで車の音が聞こえてきた。

 ん? 来たか。

 丁度プッシーキャッツの紹介動画を見終わったところだったので、スマホをしまう。

 俺達のところに来た青いコスチュームの女はピクシーボブだと分かっていたが、その個性は予想通り土を操るというものらしい。

 しかも自立行動するという……炎獣に近い性質を持つ個性だ。

 もしピクシーボブがヴィランなら、I・アイランドの件で増えたスキル欄の空間を1個消費してもよかったけど、残念ながらピクシーボブはプロヒーローだしな。

 まぁ……炎獣がいるから、どうしても土のモンスターを作る個性が欲しい訳ではないと、自分でも半ば負け惜しみに近いと思いながら考えておく。

 で、赤いヒーローコスチュームの女は、マンダレイ。個性はテレパス。

 ……テレパス……テレパスかぁ。

 うーん、これ……大丈夫か?

 いや、一般的に考えて、テレパスというのは超能力に近いだろう。

 そんなマンダレイの個性のテレパスが俺に使われた時、一体どうなるか。

 あれ? これ……もしかしてちょっと不味いんじゃないか?

 とはいえ、前もって俺が何かを言ったりすると、それはそれで怪しいと思われてもおかしくはない訳で。

 これ、一体どうしたらいいのやら。

 そんな風に思っている間にバスと車は停まり……

 

「うっそでしょっ!? もういる!?」

「うわぁ……」

「けっ!」

 

 車から下りたピクシーボブとマンダレイの2人が既にそこにいる俺を見て驚きの声を上げ、子供が不満そうに鼻を鳴らす。

 ピクシーボブとマンダレイはいいが、この子供は一体何なんだ?

 そして少し遅れてバスから下りてきた相澤が、俺を見て大きく息を吐く。

 

「アクセル、お前は一体どのくらいでここに到着したんだ?」

「さっき森に下りて、土のモンスターについてA組の面々と話してから、虚空瞬動を使って移動して……それから10分掛かるかどうかくらいですかね」

 

 空を飛ぶ土のモンスターを無視していれば、恐らくもっと早く到着出来ただろうが……そこまでする必要はないだろうと判断し、それでこうして移動しただけだ。

 

「……そうか。どうやらアクセルは俺が予想していたよりも高い実力を持っていたようだな」

 

 はぁ、と。

 言葉では褒めつつも、相澤の口から出るのは大きな溜息だ。

 おい、と突っ込みたくなったものの、相澤の大変さを考えれば、その辺りについても理解出来ない訳ではない。

 もし俺が相澤の立場で、俺のような生徒がいたらどのように対応をしていいのか分からないだろうし。

 そう考えれば、相澤のこの対応には俺も不満を口には出来ない。

 

「で、俺はこうしてここで待っていた訳ですけど……これからどうします?」

「取りあえず合宿施設は解放するから、他の連中が到着するまでは自由にしていろ」

 

 あれ、てっきり何らかの課題が与えられるのかと思ったんだが、予想とは違ってしまう。

 まぁ、実力が突出しているんだから仕方がないのかもしれないが。

 

「ねぇ、アクセルだったよね? もしよかったら、私と一緒に訓練しない? イレイザーがあそこまで言う実力、ちょっと見てみたいんだけど」

 

 ピクシーボブがそう言ってくる。

 その言葉に相澤に視線を向けると、相澤は頷く。

 

「自由にしていてもいいとはいえ、プロヒーローとの訓練はPlus Ultraをするには重要だ。やってみたらいい」

 

 そんな勧めもあり、俺はピクシーボブと訓練をする事にする。

 

「分かりました。けど、訓練って、何をするんです?」

「私の個性で魔獣を作るから、それと戦ってみるというのはどう?」

「そう言われても……虚空瞬動を使って空を移動している時、空を飛ぶモンスター……魔獣と戦いましたけど、楽に倒せましたよ?」

「む。私の本領は、あくまでも地上を移動する魔獣よ。君を含めて空を飛べる生徒が何人かいるって話だったから空を飛べる魔獣を作ったけど、それで私の実力を認識するのはちょっとどうかと思うわね」

 

 何人か……まぁ、そうだな。

 麗日は無重力にして浮かぶ事が出来るし、爆豪は爆破で跳べる。轟は氷を使ってジャンプ台のようにすれば、かなりの飛距離を跳べるだろう。また、緑谷も増強系の個性なので本気で跳躍すれば轟と同じように大きく跳躍出来るし、瀬呂もまたテープを使って遠くの木に巻き付けるとかすれば一気に跳んで移動出来る。ヤオモモは飛行機とかを作れてもおかしくはない。

 うん、こうして見ると確かに空を飛ぶ、もしくは跳べる者は何気に多いな。

 ピクシーボブが空を飛べるモンスターを作るのはおかしくないか。

 

「じゃあ、やりますか」

「待て、アクセル。どうせ連中がやって来るまでは時間があるんだ。バスの中にある荷物を運んでおけ」

 

 相澤の話からすると、俺以外の生徒の面々がこの合宿施設までやって来るには、結構な時間が必要となるだろう。

 ましてや、ピクシーボブが作った土のモンスターと戦いながらなのだから。

 となると……少しくらいは楽をさせてやった方がいいか。

 

「相澤先生、それなら他の連中の荷物も運び込んでおいた方がいいですか?」

「うん? ……そうだな。それくらいならいいだろう」

 

 相澤の許可をもらい、バスから荷物を運ぼうとしたのだが……

 

「どれが誰の荷物なのか分からない」

 

 荷物は座っていた場所の置いてあったのもそうだが、夜行バスのように荷物を入れる専用の場所もある。

 着替えとかが入っているそういう大きな荷物はそこに入っていたのだが、どれが誰の物なのかは分からない。

 自分の荷物はさすがに分かるんだが。

 なので、部屋まで運ぶのは諦め、施設に入ってすぐの場所に纏めて置いておくことにする。

 ……バスからここまで運んだだけなので、荷物を移動した距離的にはそう大した事はないのだが、それでもわざわざバスまで行って荷物を運んでくるといったような事をしなくてもいいのだから、ある程度は楽だろう。

 

「部屋、分からないでしょう? 案内するわね」

 

 マンダレイがそう言い、俺を男子用の部屋まで案内するのだが……

 

「あー、こういうタイプですか」

 

 案内された部屋は、個室ではなく男が全員入るような部屋だった。

 分かりやすくいうのなら、ペルソナ世界でマヨナカテレビの件が起きていた時に、美鶴が率いるシャドウワーカーが天城屋旅館で借りていた大広間的な感じだな。

 

「ええ、そうよ。本来なら個室にしたいところだったんだけど、雄英からの要望でね」

「……雄英からの要望?」

 

 これはちょっと意外だった。

 てっきりもっとこう……合宿施設のスペース的な問題でこうなったのかと思ったんだが。

 

「何でも、A組の生徒には性欲の権化がいるんでしょう? そういう子を個室にしたら、どうなるのかって」

「あー……はい。まぁ、そうですね」

 

 マンダレイの言葉に、俺が思い浮かべたのは、峰田だった。

 合宿の買い物をした時も、ドリルやら何やらを買いたいと言っていたくらいだ。

 それを思えば、峰田を個室にするのは危険だという相澤の言葉も理解出来る。

 男を全員同じ部屋にしておけば、峰田が暴走しようとしても飯田辺りが止めるだろう。

 そう相澤が考え、合理的に判断したとしても、俺は特に驚くようなことはなかった。

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