転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4522話

 男子用の部屋……大広間にスーツケースを運び込むと、マンダレイと共に合宿施設の外に出る。

 そこでは、既にやる気満々といった様子のピクシーボブが待ち構えていた。

 

「さぁ、アクセルだったわよね。私の本当の力を思い知らせてあげるわ!」

 

 律儀な事に、俺が表に出るのを待っていたらしい。

 地面に触れると、それによって土のモンスターが生み出される。

 なるほど、ピクシーボブの個性はそういう感じで使うのか。

 ピクシーボブ曰く、その個性で作られた土のモンスターは地面にいてこそ本領を発揮出来るのであって、俺がここに来る途中で倒した空を飛ぶモンスターはその本領を発揮していないらしい。

 それが強がりなのか、それとも本気でそう言ってるのか。

 その辺りは俺には分からなかったが、それを確認するという意味では、ここで戦うのは悪い話ではない。

 

「じゃあ、試させて貰いますよ」

 

 ちなみにヒーロー科の林間合宿という事で、俺はヒーローコスチュームを身に纏っている。

 ネットでも散々ヴィラン系とか、大魔王系とか、そんな風に言われているヒーローコスチュームを。

 今の俺を客観的に見た場合、ヴィランと向き合っているプロヒーローのピクシーボブって感じになってるんじゃないだろうな?

 そんな風に思っていると、ピクシーボブが口を開く。

 

「じゃあ……行って!」

 

 その言葉に土のモンスターが俺に向かって真っ直ぐ突っ込んでくる。

 突っ込んで来るのだが、その速度は決して速くはない。

 いや、この世界基準で考えれば、それもプロヒーロー本人じゃなくて、個性で作られた存在だと思えば、十分な速さなのかもしれないが、それでも俺を前にしては遅かった。

 それも結構な巨体なのもあって、その一撃は大振りで……うん、これに当たれという方が無理だろう。

 その一撃を回避し、土で出来た身体に向かって拳を振るう。

 カウンターの一撃。……その一撃だけで、土で出来たモンスターは破壊されてしまう。

 

「え……嘘、でしょ?」

 

 ピクシーボブが驚き、唖然としながらそう呟く声が聞こえてきた。

 ピクシーボブにしてみれば、まさかこんなにあっさりと自分の個性によって生み出された存在が負けるとは思っていなかったのだろう。

 そして俺の姿は次の瞬間にはピクシーボブの前にあり……

 

「これで終わりですね」

 

 ピクシーボブの肩にポンと手を乗せ、そう告げる。

 

「……何よこれ、将来有望って言葉だけじゃ……」

「あ……ピクシーボブ、その、アクセルについては、あまり気にしない方がいいかと。今の時点でもプロヒーローとしてやっていけるだけの実力はある奴ですから」

 

 呆然としたピクシーボブを慰めるように、相澤が言う。

 珍しいな。

 合理的な行動を優先する相澤が、まさかピクシーボブを慰めるような事を言うなんて。

 

「こんな生徒がいるなんてね。体育祭でも見ていたけど……やっぱり凄いわね」

 

 マンダレイが驚いた様子でそう言ってくる。

 ピクシーボブの代わり……という訳ではないのだろうが。

 

「ねぇ、アクセルだったわよね? 個性は何なの? さっきの動きを見ると、やっぱり増強系?」

「混沌精霊ですね。増強系も含めた混合型です」

「へぇ……じゃあ、他にどういうのが出来るの?」

 

 好奇心に目を光らせ、聞いてくるマンダレイ。

 本来なら相棒のピクシーボブを慰めるとかした方がいいんじゃないかと思うんだが。

 それに合宿を引き受けた以上、雄英から生徒の個性については情報を貰っていてもおかしくはないと思うんだけど……この様子だと貰ってないのか、それとも単純に忘れているだけなのか。

 その辺りは分からなかったが、どうせならということで指をパチンと鳴らす。

 すると俺の手が白炎となり、数匹の炎獣が生み出された。

 

「こういう事が出来ますね。ピクシーボブの個性と近い感じですが」

「これは……」

「炎獣。俺の個性の1つですね」

「……凄いのね」

 

 たっぷりと数十秒沈黙した後で、マンダレイはそう言うのだった。

 

 

 

 

 

「ほら、アクセル。昼食だ」

 

 ピクシーボブとの模擬戦をしてから数時間が経ち、丁度昼になるくらいになると相澤が俺に幾つかのパンと弁当を持ってくる。

 ただ、どれも露骨にコンビニで買ってきたといったような弁当とパンだったんだが……

 

「えっと、俺が聞いた話によると、早ければ昼くらいには到着するって話だったと思うんですけど」

「無理だ」

 

 俺の言葉に、あっさりとそう言う相澤。

 そんな俺に対し、ピクシーボブが先程の一件は全く気にしていない様子で口を開く。

 

「あれは、私達ならって意味なんだよね。だから……まぁ、実際には夜くらいになると思うよ。もしかしたら、もっと遅くなるかもしれないけど……その時は私達が迎えに行くから」

 

 どうやらこれもまた合理的虚偽だったらしい。

 あぁ、もう林間合宿は始まってるとかそういう風に言っていたのを聞いた覚えがあるので、これもまたPlus Ultraなのだろう。

 つまり最初から昼食は抜きという予定だったのだろう。

 あるいは夏の森の中を移動していると考えれば、山菜……はちょっと時期が遅いか。だとすれば、果実とか? あるいは川があれば魚、もしくは動物や野鳥の類もいるかもいれないから、それらを確保すれば腹ごしらえは出来るな。

 もっとも土のモンスターが放し飼いにされている森の中だ。

 魚とかはともかく、動物や鳥は逃げ出していてもおかしくはないが。

 

「あれ? 温かい」

 

 受け取った弁当が温かいことに驚く。

 

「電子レンジだ」

 

 相澤の言葉に、なるほどと頷く。

 食堂とかにはまだ行ってないけど、当然ながら調理器具とかもある訳で、そこには電子レンジもあるのだろう。

 ちなみに渡された弁当は、ミックスフライ弁当だった。

 中身は、エビフライにトンカツ、白身魚のフライに……この形はクリームコロッケか?

 後はそれらの揚げ物の下にあるパスタ……いや、この場合はスパゲッティと呼ぶ方が正しいのか?

 後はちょっとした野菜の煮物とポテトサラダがあって、梅干しが乗ったご飯がある。

 菓子パンの方は、正確には惣菜パンか。

 カレーパンと、パンの上にウインナーが載せられ、その上にチーズ? マヨネーズ? とにかくそれを掛けて焼いたパンがあった。

 惣菜パンの方は残念ながら温かいって訳じゃないけど。

 ただ、どうせ弁当を電子レンジで温めてくれたのなら、惣菜パンの方もオーブントスターとかで温めてくれればよかったのに。

 そう思いながら、昼食を食べる。

 ちなみに昼食を食べるのは、合宿施設の外だ。

 中には食堂の類があるのだろうが、外にも外で結構な人数が調理をして食事が出来るような……何て言えばいいんだろうな? キャンプ的な自炊? が出来るような感じになっている。

 そんな場所で食事をするのだが……

 

「あれ? ピクシーボブ、マンダレイ、あの子供はどうしたんですか?」

 

 ここにいるのは、俺、相澤、ピクシーボブ、マンダレイの4人だけ。

 将来爆豪になるんじゃないかって感じの子供が1人いたと思うんだが、気が付けばどこにもその姿はない。

 

「ああ、あの子は別の場所で食べてるんだと思うわ」

 

 マンダレイのその言葉に、何故? と疑問を抱く。

 いやまぁ、人によっては1人で静かに食事をしたいとか、そういう者もいる。

 ただ、あの子供もそうなのか? と思えば、何となくそういうタイプではないように思えるのだ。

 勿論、これはあくまでも俺がそう思っているだけなので、実際には違うのかもしれないが。

 

「街中ならともかく、こういう場所で子供1人だと危なくないですか?」

「大丈夫、大丈夫。あの子もそれなりにこの辺りについて詳しいから」

 

 ピクシーボブが、こちらもコンビニで買ってきたらしいパスタを食べつつ、そう言う。

 

「詳しい?」

「ええ、あの子は少し前から私が預かっている子なのよ」

 

 そう言うマンダレイの表情は、少し暗い。

 恐らくそこには何かがあるのだろうが……それについて聞いてもいいのかどうか、少し迷うな。

 こういうのはプライベートな事だろうし。

 これで俺がもしマンダレイと深い関係にあるのなら、深いところまで踏み込んでも問題はないだろう。

 だが、俺とマンダレイはそういう関係ではない。

 いやまぁ、マンダレイにしろピクシーボブにしろ、どちらも美人と称しても間違いない顔立ちをしているので、そういう相手がいてもおかしくはないと思うので、俺が何かをする必要はないだろうが。

 とはいえ、その割にはピクシーボブが……うん。

 ともあれ、このままだと雰囲気が悪くなりそうだったので、話題を変える。

 

「そういえば、今更の話ですけどプッシーキャッツって4人ですよね? ラグドールと虎の2人はどうしたんです?」

 

 これについては、合宿施設に到着して待っている間にネットで調べておいた。

 ピクシーボブ、マンダレイ、ラグドール、虎。

 この4人が揃ってプッシーキャッツというチームの筈だ。

 だが、ここにいるのはピクシーボブとマンダレイの2人だけ。

 残り2人はどこに行ったのかと思えば……

 

「B組の方を担当して貰っている」

 

 ピクシーボブやマンダレイではなく、相澤がそう答える。

 ……ああ、そうなるのか。

 4人いるプッシーキャッツだ。

 そしてA組とB組の2つのクラスがある以上、2人ずつにそれぞれのクラスと担当するのは当然だろう。

 それにLINに書き込んでもB組の拳藤からの反応はなかった。

 だとすれば、B組もA組同様、既に林間合宿が始まっており、その洗礼を受けているのだろう。

 もっとも、A組の場合はピクシーボブの個性による土のモンスターだったが、B組がどういう事をしているのかは分からない。

 普通に考えれば、B組の方にも土のモンスターが出ているのかもしれないが。

 もしかしたら、A組とは違う方向から合宿施設に向かって森の中を移動しているのかもしれないし。

 

「そうですか。B組にも頑張って欲しいですね」

「……拳藤や塩崎が心配か?」

「え?」

 

 相澤の口から、予想外の言葉が漏れる。

 何で相澤の口からその名前が出るのか。

 そう思ったが、すぐに納得する。

 相澤はA組の担任として、生徒の交友関係とかそういうのを知っているのかもしれなない。

 特に俺の場合は毎日のように拳藤と一緒に通学しているし、茨は……まぁ、うん。俺を信仰していたりするしな。

 そんなやり取りは普通に行動していてもかなり目立つし、相澤がその辺りについて知っていてもおかしくはない。

 

「あー……そうですね。まぁ、心配と言えば心配ですけど、拳藤と茨なら大丈夫だと思ってますから」

 

 寧ろ茨がやりすぎないかという心配すらある。

 拳藤の方はある程度自分の力をコントロール出来るので、そこまで心配はいらないと思うが。

 

「……前から聞きたかったんだが、お前は塩崎に何をしたんだ?」

 

 微かに眉を顰め、そう聞いてくる。

 まぁ……うん。

 塩崎の性格を知っていれば、一体何故あのような感じになるのかと疑問に思ってもおかしくはない。

 とはいえ、だからといって相澤にそのように言われても、俺は反応出来ない。

 何しろ自分でも何故茨がああいう感じになったのかは、俺にも分からないのだから。

 

「そう言われても」

「イレイザー、どういう事?」

 

 俺と相澤の会話に興味を持ったのか、ピクシーボブがそう聞いてくる。

 

「B組に塩崎茨という生徒がいるのですが、体育祭が終わってからアクセルに心酔しているんですよ」

 

 心酔というのは、俺の事を思って信仰という表現を使わなかったのだろう。

 

「ふーん……やるね」

「何か勘違いしてないですか?」

 

 ピクシーボブの言葉にそう返す。

 だが、ピクシーボブはからかうような視線を俺に向けてくる。

 

「青春というのは楽しめるうちに楽しむものよ。……青春……そう、青春……心は18!」

 

 いきなり叫ぶピクシーボブ。

 まるで自分に言い聞かせるように言っているように俺には見えた。

 まぁ……うん。色々と、本当に色々と思うところがあるだろうな。

 

「私もあの時、青春をしっかりと楽しんでいれば……」

「でも、ピクシーボブ。私達がこうしてプロヒーローとしてかなりの人気があるのは、高校生の時にしっかりと訓練を行ったからなのよ? もし高校の時に青春を楽しんでいたら……プロヒーローになれたかもしれないけど、今のような人気がなかったのは間違いないわ」

 

 マンダレイの言葉に、ピクシーボブも思うところがあったのか、がっくりとテーブルに倒れ込む。

 上手い具合に昼食の上には倒れ込まなかったが、露出度の大きなヒーローコスチュームの双丘が潰れたのが見えた。

 ピクシーボブはそこまで胸が大きい訳ではないだろうが、成熟した女の魅力とでも言うべきものがある。

 ちなみに純粋な胸の大きさという点では、ピクシーボブよりもマンダレイの方が上だったりする。

 もっとも、こうしたサービスシーンを見せてくれるのはピクシーボブなのだが。

 

「やっぱりヒーロー科って大変なんですね」

「お前が言うと、嫌味にしかならないがな」

 

 呆れた様子で相澤が俺にそう返すのだった。

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